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宮崎大学農学部・後藤義孝教授に聞く

(2010年4月21日付)
■人に感染しない 拡大防ぐ初動重要

 県内で10年ぶりに家畜の伝染病「口蹄疫」の疑いのある牛が見つかった。「人へはうつらないのか」「県民が取るべき行動は」など、家畜の伝染病に詳しい宮崎大学農学部獣医学科の後藤義孝教授(獣医微生物学)に聞いた。(聞き手 報道部・川路善彦)

 ―人へは感染しないのか。

 後藤 ウイルスは「種の壁」を簡単には乗り越えられないため、少々の変異が起きても人にはうつらない。似たような症状を起こす人の病気としては手足口病があるが、ウイルスは全く別物だ。

 ―家畜が死亡に至る例は。
 後藤 子牛や子豚では死亡率が上がる場合があるが、高病原性鳥イ
ンフルエンザほどではない。

 ―ではなぜ厳重に警戒しているのか。

 後藤 看病してもらえない家畜にとっては大変な病気なので、世界中で根絶すべき病気のリストに挙げている。日本では家畜法定伝染病に指定し、感染疑いの家畜をすべて殺処分することを定めており、ウイルスそのものを駆逐する強い意志の表れだ。

 ―感染経路として想定されるものは。

 後藤 人間や餌についていた確率が高いと考えられる。かつて欧州では風が運んだふしもあるが、風だと本県だけで発生する説明がつかない面もあり、よく分かっていないのが実情。気温が低かったため感染力を保ったまま運ばれたことも考えられる。

 ―県民が取るべき対応は。

 後藤 パニックになる必要はない。現場に行くなど不用意な行動は慎むべきだ。感染の拡大を防ぐ初動防疫が重要。農家は行政や獣医の指示をきちんと守ることが大切になる。(宮崎大学で)