歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

“ピーター=フランクルになりそびれた男”の母国での評判(12)

2010-01-20 05:12:06 | トルコ関係
→(11)からの続き

アルピン:アニメについての研究もありますね。


セルカン:アニメは私にとっては真新しい世界でした。正直、大変素晴らしいものでしたね。人生において、
自分が書いた本がアニメ化されますように、なんて考えたこともなかったですよ。

現在、トルコのさる科学センターが例の映画に関心を示しています。私も、日本の会社との仲介役となって、彼らが安く上げられるよう尽力している。トルコでも上映される可能性は高いですね。でも、たった一ヶ所です。私としては、トルコもこのプロジェクトに乗ってほしい。日土共同のアニメーション・プロジェクトなんてものは実際には存在しませんが、少なくともそれを準備する動きはあります。

それをトルコにもたらそう!トルコで見せよう!という声を望んでいるのです。でも、トルコの側に関心は無い。というか、その著作権料等を払うのに膨大な費用が掛かるのも、嫌がられているわけですよ。私は日本の会社との仲介役になるつもりです…..。

今度、4月の21日にイスタンブルのカドゥキョイにある“ジュベイデ・ハヌム教職員会館”で、“一日科学者“プロジェクトの講演会に参加します。4月20日にはその展示会にも参加することになっている。昨年行った講演では、1200人の子供が来場しました。昨年と同様、風刺雑誌”Leman”も漫画家全員を伴ってやってくるでしょう。皆、大変親しい友人たちです。AKUTも来るとか。来場する子供たちに色んなプレゼントがあるでしょう。

※“Leman”は有名な風刺漫画雑誌。“AKUT”の方はよく分からない。

(追伸:
http://anilir.blogcu.comのアドレスにアクセスすれば、セルカン=アヌルルのブログや“一日科学者”といった展示/講演活動の詳細について知ることができます。)


アルピン:あと、大友克弘と“Evolution(エヴォリューション)”というアニメを作るプロジェクトがありましたね。あれはどうなりました?


セルカン大友とは最初に来日した際に知り合ったんですよ。アニメの監督だ、みたいなことを言ってたのですが、私は大友が誰だか知りませんでした。私も、“そうですか?とても素晴らしいものを作っておられるんですね。あなた方、日本人は大変良いアニメーションを作っておられる。”と言って、逃げたのです(笑)。

我々は時々会うようになりました。私は彼の仕事には大して関心が無かったのですが、ある日、彼が私に“日本のアニメの中で、君が一番好きなのはどれ?”と聞いてきました。私が、“AKIRAみたいなのが好きだな”と言ったら、彼は“おい、AKIRAは俺が作ったんだぞ”と言うではありませんか?私も、“ああ、あんだだったの?”みたいなことを言ったような( 笑)……。

そんな風に始まったんですよ。でも、今思えば実に恥ずかしい。彼についてまったく何の情報も無かったという。何ともショックなことでしたね

※ セルカン氏の来日は1990年代末辺りのはずなので、氏の言葉を信じるなら、ほぼ10年来の親しい友人ということになる。ただ、それから2年くらい前に書かれた、セルカン氏の講演を聞いたと思しき人物の日記によれば、当時の氏は大友氏との関係を以下↓のように語っていたようだ。

2006-06-15     セルカンさん
■[出来事]これから宇宙に行く人

夢は何ですかという質問に

1つは前に書いた技術の応用

もうひとつがビックリだったんですが

「アキラ」や「スチームボーイ」で有名な大友克洋さんとアニメーションを作りたいと!!

彼は大友さんのアニメーションの大ファンらしくもう何度が会っているそうです。シュメール語を読める数少ない一人なので、古代の石盤に書かれたことをアレンジしてストーリーを考えているそうです。本当に多才だ!

“夢”とか“大ファン”とか、日本人の聴衆相手だと妙に謙虚だなw。いや、親しき仲にも礼儀あり、前向きにとらえておくべきか。その先の部分は大友氏には特に関係ないんだけど、今読むと何とも感慨深いものがある。

最後に一番伝えたいこととして次のメッセージをくれました。 みんなが就職するから就職するとか、みんなが進学するから進学するとか流されているともったいない

「不可能はないから、どんどん好きなことをやっていくといいよ!」と。


いや、セルカン氏に限り不可だろうw


アルピン:少なくとも、アニメが嫌いだとかそんなことは言わなかったんですよね。


セルカン:じゃないですかね。昔、我々が見ていたハイジですらアニメでした。知りませんでしたよ。ハイジが日本製だなんて夢にも思わなかった。大友が、ハイジも日本製だと言った時、私も“ああ、それも日本製なのか”と言ったものでした。これまでの人生で考えたこともなかったな。


アルピン:ハイジのデザインは宮崎駿が担当したんですよ。ただのアニメではない。


セルカンそうそう、彼もいました(笑)。“エヴォリューション(Evolution)”はシュメール時代から始まる私の大変古いプロジェクトで、そのシナリオ化は今も続いています。この間、大友は“スチーム・ボ−イ(Steamboy)”を作りましたね。


アルピン:今でも“フリーダム(Freedom)”を作っています。


セルカン“フリーダム(Freedom)”の次は“エヴォリューション(Evolution)”になるかも、と言っています。でも、今のところ、プロジェクトはちょっと休止の状態にあります。“エヴォリューション(Evolution)”を製作しているのと同時期に、私も”宇宙エレベータ“の方に入ってしまいましたから。

でも、これは私の最新の2つのプロジェクトを具現化したものです。“エヴォリューション(Evolution)”が優先されるでしょう。恐らく、“タイムマシン”よりすら前に完成するかもしれない。特に4月以降は、とてもすごいことが起きると信じています。

あと、我々は日本でこれほどのプロジェクトを実現しています。もし、こうしたアニメのプロジェクトにトルコで関心が集まり、評価されるとしたら。もし誰かが、“私たちはこの映画をカルスの学校で上映したい。私はコンピューターを持っているので、映像を壁に投影して見せるつもりだ。でも、我々には金が無いのです。”みたいなことを言うならば、我々は映画を送りましょう。

※カルス(Kars):トルコの東部に位置し、アルメニアやグルジアとの国境にも近い小さな町。イスタンブルやアンカラに住む西部のトルコ人にとっては、最果ての辺鄙な土地というイメージが強い。


そして、貴方のサイトでも告知を行うと。もし彼らが映画をカルス中で公開すると約束するなら、私もカルスに行きますよ。もしくは他の町でそういうことをやりましょう….。でも、トルコだと貴方のやっていることに誰も敬意を持っていませんね。アニメーションはとても良いものではありませんか?未来への展望を開き、想像力を高めるものとして…..


アルピン:トルコでアニメに興味を持つほとんど全ての会社が、当サイトをフォローしています。記事を読んで、興味を持つ人も出てくるかもしれない。でも残念なことに、トルコでは一般にアニメーションは単なる子供の娯楽だとみなされ、重くは扱われないのです

※この辺りはトルコでも旧ソ連圏でも同じで、あちらのオタっぽい大人たちは日本よりもはるかに風当たりの強い環境で暮らしていますw。


セルカン:例えば“Leman”誌(トルコの風刺漫画雑誌)の中で、読むのは若者だけで、大人は読まないといったことが書いてありました。4月21日の講演でポイントとなるのはここでしょうね。将来の展望を生み出すのは、学校でのみできることではない。アニメーションを見ることでも、本を読むことでも、風刺漫画雑誌も読むことでも可能です…..。でも、確かトルコでも一時期ポケモンとかいうのが流行ってましたよね。


アルピン:ええ、とても。


セルカン:トルコでポテト・チップスみたいなものを買うと、中からポケモンのカードが出てました。カードを捨てると、前から全然知らない子供が私の目を覗き込んでいて….カードを拾って走って行った、みたいなことが…….(笑)


アルピン:でも、問題もたくさん起きています。二人の子供が“僕はピカチューになった”と言って窓から飛び降りたことがありました。ポケモンはRTÜKで禁止されてしまった。

※RTÜK=“ラジオ・テレビ上級委員会”の略。ラジオ、テレビなどトルコのメディア全てを監査する公的団体。


セルカン:そうなんですか?彼らも沢山空想したのでしょう。問題は彼ら自身に特有なものであったはず。一体ポケモンに何の関係があるのですか?

今では、宇宙エレベーターはガンダムでも定着しています。これも“宇宙エレベーター”の本やアニメの成功による賜物ですね。もはやガンダムにすら入っている。プロジェクトがこのレベルまで来たと言うのはすごいことです

※“ガンダム00”に登場する“軌道エレベーター”のことらしい。まさか、セルカン氏の著作にインスパイアされたものだったとは(棒読み)!

はっきり言って、ある概念があって、それを他人に説明したいと思うのであれば、アニメーションは素晴らしい手段でしょう。私の著書“宇宙エレベーター”は、科学技術の分野では今のところ日本で最も売れた本ですね。2006年から現在に至るまで、これを追い抜いた本はありません

※すごいなあ(棒読み)。

どういうことかと言うと、映画“宇宙エレベータ”を見た人はガンダムも見て、これは何だろうって感じでインターネットで検索します。おお、こんな本があるんだ!と知って、“宇宙エレベーター”の本も買うわけで。

無数の子供たちが本から影響を受け、科学者になろうと心に決めているのですよ…実に素晴らしいことです。


アルピン
:本をトルコ語に訳する計画はありますか?


セルカン:トルコからは何の依頼も来ないですね。誰も関心を示さない(笑)。あの本はこれから漢語と朝鮮語に訳されるというのに

※セルカン氏のサイトによれば、朝鮮語版はこれ↓らしい。漢語版が実際に存在するか否かは不明。
http://anilir.blogcu.com/gecmis-mi-yoksa-gelecek-mi/5951014

それと、トルコ用に別の本を用意しています。この4月に出版社と会うことになるでしょう。もし、可能であればそれをトルコで出版しようではないですか。出版された場合、その全ての売り上げを教育資金が必要な恵まれない子供たちに寄付するつもりでいます。貧しい子供たちが、多少なりとも将来の展望を描くのに十分な額であれば良いのですが…

※セルカン氏にとって、トルコで初の著書となった“トルコ人は日本でサムライになれるか?”のことか?ただし、その印税が実際に貧しい子供たちに寄付されたか否かは不明。

我が国の子供たちは活発です。まあ、準備はできている。でも可能性が無いのですよ。だから国外に逃げよう、と考えている。これはとても残念なことです。もし彼らにトルコで働いてもらうことができれば、トルコはいかに発展することでしょう。アニメーションもこのための手段の一つであってほしいですね。

セルカン兄貴ができたんだから、君にもできるんだ!。でも、必ずしもこれを日本でやることはないんだぞ!っ
てね

※確かに。詐欺ならトルコでもできるw。

アルピン:今の所、日本では全てがお望みのままに展開しているようですが。


セルカン:全て順調です。しかし、社会生活は退屈なものとなっています。特に、職場では。例えば、私は色んな種類の人々と対立しています。というか彼らを信用できない。でも、ある程度自分を曲げて彼らに対しても適応しつつ….結果としてここに住む選択をしたのが我々です。適応するのは困難でした。いやだ、やらない、できないみたいなことを言う代わりに、いくつかの点で、
普通の生活でなら下手に出ないような場面でも下手に出ねばならなかった。

一つには、私が若いというのもあります。私はJAXAで宇宙物理グループの部長をやってましたが、下にある人々は皆自分よりも年上でした。実に厳しいものがありましたよ。まあ、私はケンブリッジ物理賞を受賞しています。これは物理学においてはノーベル賞の次に権威ある賞ですから、ともかくも彼らは私に対し敬意を払ってましたね。その賞にしても、私一人で受賞したわけではありません。8人で一つのグループを作ってやっていた研究により取ったのです。

※セルカン氏はJAXAで部長の職にあったこともないし、またケンブリッジ何とか賞もあくまで自称であって、実際には受賞していないことが確認されている。つまり、このエピソードはほぼ完全に氏の脳内での出来事だろう。

この他、私は日本の第二級国家公務員(“国家公務員2種”のことか?)でもあります。


アルピン:いつかは日本で年金生活者となられて….


セルカン
:もし60歳まで残っていれば、そうなれますね。でも、私は60歳まで日本に住もうとは思ってない。良い頃合を見計らってトルコに帰りたいと思っています。現在は、一人の教育者としてここで経験をつむよう努めていますよ。そして将来は、この経験を使って自国の子供たちと一緒に何かをやりたい。

トルコではあれだ、誰もが他人の足を引っ張ろうと頑張るものだといいますけど、これは日本でも同じなのです。同じようなシステムの帰結として。助教と教授、その間に准教授という….誰もが互いに食いつぶしあっている。世界のどの場所でも同じですよ。

日本において科学に対する敬意とか……そんなものは無いですね

※確かにそうなのかもしれないが、でもお前が言うな!w

日本では“あんた、何歳?”が全てです。こちらで言えば、“バックに誰が居るんだ?(≒どんな有力者とコネがあるんだ?)ってわけで….。

→(13)に続く
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2 コメント

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AKUT (真実の目)
2010-01-21 03:05:02
これの事ではないでしょうか?

http://www.akut.org.tr/
typoが、 (Shigeru)
2010-01-24 02:44:46
こんにちは。

>アルピン:あと、大友克弘と(略)

大友克洋ですね。後の方の小さい字の方は合ってますけど。

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