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[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! (第四期アフター)
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/20 19:29
はじめに

また、しょーこりもなく書き始めました。
設定は、Force の直後位という設定です。
前回の、To be tomorrow の続きから始まります。
読んでいない人は、こちらでご確認下さい。↓
http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=toraha&all=17137&n=0&count=1

前回が、あまりにも暗すぎる内容だったので、今回からは青春お馬鹿路線に振っています。

「それは突っ込まないお約束なの」という箇所には、あまり突っ込んで欲しくないです。

登場人物が非常に多いです。

学校の先生サイドの登場人物はほぼ設定しましたが、生徒サイドの登場人物の設定が出来ていません。
アイディアがありましたら募集しますのでよろしくお願いします。(感想掲示板に書いて頂けるとありがたいです)
別に何の賞品も出ませんが、小説の中で活躍して頂く事になるかと思います。

まだ、小説を書き始めたばかりで、拙い文章です。
気長におつきあい下さい。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School 設定資料1
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/14 20:24
特別戦技教導学校関係設定資料

1学年4クラス2学年制

1組フロントアタッカー
2組ウィングガード
3組センターガード・センターバック(新ポジション)
4組フルバック

校長:高町なのは
        教導隊の教官から、schoolの校長を拝命し、一尉から一佐へ無理矢理の昇進が決定したなのはさん、
        学園生活は波瀾万丈です。
        開校直前の模擬戦でパパにフルボッコにされる。以降、時々パパに酷い目に遭わされている。
        更に、いつユーノと結婚するのか?とか、早く孫の顔が見たいと毎日の様に言われ続けている。

教頭:ヴィータ
        教導隊の教官から、schoolの教頭を拝命した。
        三尉から三佐へ無理矢理の昇進となりました。
        無理矢理の昇進の理由は、なのはと共に今まで出世を拒否していた為で、
        レティ本部長直々に言い渡される。

1-1担任:高町士郎       
        学園が誇る最終兵器、模擬戦に於いて、3魔王+シグナムと戦って、僅か3分で
        全員をフルボッコにした超人。が、しかし、魔力は全くない。
        「なのはの一生のお願い」には弱く、学園の教師になる。
        生徒と共に青春している。

1-2担任:劉 月花(オリキャラ)
        八極拳の近代祖、劉月侠の子孫らしい。32才、独身、大人の色気を振りまくちょっと危ない先生。
        八極拳、八卦掌、ほとんどの中国武器を使いこなす。
        実力は、士郎よりはやや落ちるが、3魔王相手に互角に戦ったほどの実力者。
        士郎の紹介により、スカウトされる。

1-3担任:ビリー・ブラック(オリキャラ)
        元アメリカ陸軍軍曹、銃火器のスペシャリスト、45才、黒人、奥さんと娘が一人いる。
        陸軍に於いて新人教導していた経験と、軍絡みの依頼を、士郎に持ってくる仕事をしていた縁からスカウトされる。   
        Six on one など銃の扱いに関しては他を寄せ付けない。
        「このウジ虫野郎」など、ビリー節が炸裂する。

1-4担任:シャマル
        schoolの校医でもあり、はやての新部隊、遊撃隊「スペシャルフォース」の医務官も兼任している。
        保健室のシャマル先生として、生徒から慕われている。
        講義で医療魔法全般を教えている。
        学園から、遊撃隊まで、全ての健康管理を一手に引き受けている。
   
2-1担任:ギンガ・ナカジマ
        一〇八部隊から転属を命ぜられる。
        なのはにとって、本当はスバルが欲しかった様だが、それが叶わず、ギンガを獲得した。
        ギンガ先生と呼ばれて生徒に慕われる。
        ギンガの後任は、チンク・ナカジマ

2-2担任:エリオ・モンディアル
        環境保護隊からの転属を命ぜられる。
        嘗ての機動六課卒業生、開校直前に、キャロとの婚約を発表。
        生徒と年齢が近いため、友達感覚で慕われている。
        魔導師でありながら、唯一「神速」域のスピードを持つ。

2-3担任:ティアナ・ランスター
        執務官を休業して、schoolの先生になる。
        嘗ての機動六課卒業生、なのはの一番弟子でもある。
講義では、執務官志望者に受験対策を教えている。

2-4担任:キャロ・ル・ルシエ
        環境保護隊からの転属を命ぜられる。
        嘗ての機動六課卒業生、開校直前に、エリオとの婚約を発表。
        生徒と年齢が近い為、友達感覚で親しまれる。
        愛称は、「ロリキャロ先生」、召喚と転送のスペシャリスト

特別講師:ユーノ・スクライア
        クラナガン大学考古学教室教授・無限書庫司書長・随分昔から、なのはの婚約者ではあるが、未だに結婚していない。
        学園では、一般教養、歴史(ベルカ古代史)、バインド、転送、結界魔法などを教える。

     スバル・ナカジマ
        湾岸地区防災署の防災士、嘗ての機動六課卒業生、ギンガ先生の妹、なのはの二番弟子
        新しい救助のやり方や、戦闘のやり方を発案した人で、そのことについて講義しに来る事がある。
        現在、ヴォルツ指令の下で、現場隊長の研修を受けている。
     
     シグナム
        ミッドチルダ首都防衛隊所属、特別遊撃隊「スペシャルフォース」現場隊長。
        と言っても、今のところ戦闘員なし、はやてと二人だけの部隊。(アギトとリィンも入れれば四人)
        世界がおおむね平和で、基本的には暇人、SSSの第四席だが、「高町家」には一度も勝った事がない。
        時々模擬戦の授業に来ているが、高町パパにフルボッコにされている。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第1話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/14 20:26
プロローグ


 スバルの大演説から数日後、11月もあと数日で終わろうとしていたある日のこと、なのはは実家に帰省していた。

「ねえ、お父さん、大事な話があるんだけど」

「お、とうとう結婚する気になったか?」

「違うわよ!」

 相変わらずのやり取りである。

「実は折り入って頼みたい事があるの……なのはの一生のお願い聞いてくれる?」
「あのね……」

 なのはは、学校構想について話し始めた。

「……でね、先生出来る人が欲しいんだけど、別に勉強を教える訳じゃあないから、教員免許とかいらないんだけど、
とにかく人手が足らなくて……こちらから2~3人連れて行きたいの、出来ればいろんな武器が使えたり、新人教導が上手いとか……
御神不破流の人はお父さんだけにして、他の流派の人とか紹介して欲しいの」

「なるほど、話は分かったが、多分無理だ、俺、魔法使えないし、こちら側の人間じゃあ無理だろう?」

「それがね、話は魔法以前の事になるの」

 一昨日の事だった、新しく新入生となる候補者たちを見に行ったのだが、それはあまりにも酷い物だった。
とにかく、体力のなさ過ぎる者が多い事、格闘技一つまともに出来ていない有様だった。
以前(機動六課入隊当時のスバルやティアナ、キャロ、エリオ)と比較して、あまりにも体力がなさすぎたのだ。
先が思いやられた、これを1年ないしは、2年でAAクラスまで引き上げて、卒業させなければいけない。
どうしようか悩んだあげく、体力面の強化を出来る人材を求める事にしたのである。

「つまり、そいつらを徹底的にしごけという理解で良いんだな?」

「うん、まあ、そんなとこ……」

「しかし御神の技は教えられんぞ、あれは危険すぎるものだ」

「それは解ってる、それに二年じゃあ教えられないでしょ?」

「確かにな、まあ出来ても御式内(※)までが限界だろうな」
「仕方ない、知り合いを当たってみるか……」

ピポパポピポ…………トゥルルルル……

「よう、ビリーか?俺だ、士郎だ。今良いか?」
「今度いつ日本に来る?何、今来ている?ヨコハマか?」
「明日、こちらに来られないか?ちょっと頼みたい事があってな……」

(誰だろ?ビリーって人)

パポピポパポ…………トゥルルルル……

「よう、月花か?俺だ、士郎だ。だから……オレオレ詐欺じゃあねえって」
「今度いつ日本に来る?何?今来てるって?東京にいるのか?」
「明日、こちらに来られないか?ちょっと頼みたい事があってな……」

(誰だろ?月花さんて?まさか浮気の相手じゃあないよね?)

「これで3人揃えられそうだ、明日来るからよろしく頼むぞ」

「ありがとう、お父さん」

翌日やってきたのは、とんでもない人たちだった。


※御式内:
 会津藩御留流御式内という、またの名を大東流合気柔術、日本の武道の中で、空手と相撲以外はこれが発祥とされる。
 本式は、合気術と柔術以外に、剣術、槍術、杖術、手裏剣術、暗器術、馬術などを内包する。
 現在警察などで教えている合気道や講道館柔道も、御式内から派生した武道である。
 他にも、陣内流柔術、久我館流杖術、などがある。
 御神流もここから派生した物で、剣術、手裏剣、暗器に特化している。
 だが、体術はあくまで御式内をベースとしている。




[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第2話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/15 21:36
 翌日の午後、翠屋に姿を現したのは、一人の黒人だった。
背が高い、181~182センチ有るだろうか?
それ以上に、スーツの下に隠れてもなお判る、鍛えられた強靱な筋肉、
明らかに、ただ者ではない雰囲気、誰この人?

「あれビリーじゃない?」

「お久しぶりです、美由希さん」

「お姉ちゃん知り合い?」

 どおやらビリーは、お姉ちゃんの美由希さんと知り合いのようです。

「よう、ビリー、久しぶりだな」

「ねえ、また変な依頼を持ってきたんじゃあないでしょうね?」

「イイエ、コンカイハ、シロウサンニヨバレマシタ」

「どうしてそこだけ片言になるかなぁ?普通に日本語、話せるのに」

 ビリーは、アメリカ軍の将校だった。
いつもは、アメリカ軍絡みのとんでもない依頼を、持ってきていた様だ。
そして彼の癖は、やばい依頼や、困った問題があると片言になる事だった。

 しかも今回は、彼を呼んだのが士郎だったと言うのがまたおかしい、
どおやら彼は、そのヤバさを感じ取った様だ。

「すまんな、もう少しだけ待っててくれないか?もう一人呼んであるんだ」
「コーヒーはアメリカンで良いだろ?」

「所でこの女性は?」

「ああ、俺の娘だ、二人目のな」

「ああ~この子がそうか~」

 などとやり取りしている所へ、また一人、ロングコートの女性が入ってくる。

「は~い、士郎、とうとう私と付き合ってくれる気になったぁ?」

ロングコートの前をはだけると、中はミニのチャイナドレス、胸元が大きく開いて、腰まで入ったスリットからは、
パンツのヒモが見えている。
胸もでかい、シグナム以上だろうか?
ウェーブがかった黒髪を後ろで纏め、整った顔立ちに吠えぼくろ、いかにもエロそうな女性だ。

「ゲ、ビリーに美由希まで、もしかしてやばい仕事?」

「ああ、やばいぞ、とびきりにな」

「依頼者は、俺の娘だ」

「高町なのはっていいます。にゃはははははー」

「実は、なのはは、とある国の武装警察で、戦技教導官って役職をしてるんだが、おまえらをスカウトしたいそうなんだ」

「なに~、俺にアメリカ軍を辞めろってか?」
「まあ、給料が良ければ、それなりに考えんでもないがな」

「月花はどうなんだ?香港警察はクビになったんだろ?」
「就職活動で東京に来てたんだろ?」

「余計な事は言わなくて良い、で、どこの国なんだい?ヨーロッパ?アフリカ?それとも南米かい?」

「それが、この場ではちょっと喋れなくてなぁ、まあ、百聞は一見にしかずだ」
「この近くに、関係者が住んでる。紹介するからそこで話そう」
「美由希、ちょっと出てくる。夜には戻るからな~」

 四人は連れだって翠屋を後にした。
ハラオウン家に向かう道すがら、ビリーと月花さんについていろいろ聞かせてもらった。

 ビリーは、アメリカ陸軍の軍曹で、今現在は新人教育部隊の教官をしている事、射撃と爆発物のスペシャリストである事、
ソマリア事変の時、最前線から、拳銃一つで基地まで、ただ一人帰還した兵士だった事など凄い経歴の持ち主だった。

 月花さんは、八極拳の拳士だった。何でも、八極拳の近代祖、劉月侠の曾孫に当たるとかで、八極拳、八卦掌を極め、
中国武器武術もかなりの腕前らしい。
香港警察にいた時、黒龍会とか言う中国マフィアを、たった一人で全滅させたという。
しかし、その場にいた警察幹部(どおやらマフィアと癒着していたらしい)を斬り殺してしまい、
香港警察にいられなくなった様だ。

 ハラオウン家の前まで来た時だった。

「おまえら、魔法が本当に存在するって信じるか?」

「おいおい、何を言い出すんだ士郎?どうしちまったんだ?」

「士郎、なんか悪い物でも食ったのかい?」

「ふっ、多分それが正常な反応だろうな、だが、これから見聞きする事は、他言無用だ、話せばおまえらは死ぬ事になる」

「ここの4階だ」

 プロという者は何故かエレベータを嫌う、階段を上りながら、なおも話が続く、

「実はなぁ、俺の娘は魔法使いなんだ」

「おいおい、だからからかうのは止めろって」
「お嬢さんも何とか言ってやってくれよ」

「まあ、見れば判るでしょ、にゃは」

ピンポーン

「こんにちはー、なのはでーす、リンディーさんいますか?」

「はい、ハラオウンです。」
「あ、そちらが昨日話していた人ですね?どうぞお入り下さい」

「おじゃましまーす、さあ上がって、それと靴は持ってきて下さいね」

 なのはに続いて士郎が、その後を訳が分からない二人が上がっていく。
部屋の中には、リンディーさん以外に女性が一人と子供が三人……ん?
何かおかしい、一人だけ変なのが混じっている。
いぬみみ、しっぽ、どう突っ込んだらいいか判らない。

 二人は、相当やばい事に巻き込まれつつある事を、実感し始めていた。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第3話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/19 17:47
 トンネルを抜けると……じゃあなかった(笑

 転送ポートを抜けると、そこは管理局だった。

 ビリーと月花は、自分の見ている物が信じられなかった。
プロという者は自分の見た物しか信じない、しかし見ている物自体、信じられない光景だった。
まさに目が点、口がひまわり、耳が餃子である。(作:死語スマソ)


 リンディの説明が続く、だんだん話は飲み込めてきたが、それを信じるとするなら、自分のアイデンティティが崩壊してしまう。

「だから言ったろう。とびきりやばいぞと……w」

「Oh My God!」







「さて、次に行こうか?」

「あ、なのはさん、向こうの転送ポート、先ほど設置が終わったそうだから、使えるわよ」

「じゃあ転送ポートで行こうか?」



 一同また転送ポートに入っていく。


 再び転送ポートを抜けると、そこはミッドチルダ、なのはの暮らす世界だった。


「今出てきた建物が、仕事をして頂く場所になります」

 嘗ての機動六課のオフィス、今は無人だったのを改装し、職員室棟にする予定だ。
詳しく説明するなら、機動六課のオフィスは、玄関を中心に半分に仕切られ、向かって右半分が、はやてのスペシャルフォース、
左半分が、スクールの職員室棟である。

 付近は、土地が大きく空いていた為、教室棟、体育館、プール、グラウンド、男子寮、女子寮、職員マンションなど、
急ピッチで建設工事が始まっていた。
海上の訓練施設も急ピッチで拡張工事が始まっている。

 機動六課のオフィスも、まさに改装工事の真っ最中だったのだ。

「あ、おじさん、お久しぶりやぁ」

「ああ、はやてちゃんお久しぶり、また随分といい女になったねえ」

「やだおじさん、褒めても何もでえへんよぉ」

 どおやら、はやても、工事の状況を見に来ていた様だ。

 なのはとはやてが図面を見ながら話を始める。

「よう、ビリーここで働く気になったか?」

「働くも何も、俺は未だに信じられんよ、ちょっと頭の整理をさせてくれ」

 月花は完全に思考がフリーズしている様だった。



 その時、町の上空を飛行してくる物体が三つ、よく見ると人間だ、おまけに1対2で交戦している。
(スーパーマンじゃあ有るまいし、一体どうなっているんだこの世界は?)
ビリーと月花は、開いた口がふさがらなかった。

 交戦していたのは犯罪者と、武装隊の隊員2名だった。
それを見つけたなのはの服装と髪型が、一瞬で変わる。

 もの凄い勢いで飛び立っていった、そして……

「ディバイ~~~~~~~ン・バスタ~~~~~~~~~~!」

 ドゴ~~~~~~~~~ン

 犯罪者よりもかなり上空から放たれた巨大ビーム砲は、情け容赦なく犯罪者を飲み込んで、海に突き刺さった。
巨大な水柱が上がり、やがて犯罪者が浮いてくる。

「さあ、ちゃっちゃと逮捕して連行する!」

 なのはの指示で、武装隊の二人が犯罪者を、連行していった。

「Oh My God!」

 今日、何百回同じ台詞を吐いただろう?
ビリーと月花は完全に言葉を失っていた。

「よう、おまえら、あれとやり合って勝つ自信はあるか?」

 士郎の言葉に、二人が冷静さを取り戻す。

「遠距離からあれをやられたら、多分ひとたまりもないだろう。だが、近ければいくらでもやりようはある」

「私もそうだ、接近戦ならまず負けないし、奴らには、とんでもない欠点があるからな」

「さすがだな、もう弱点を見抜いてやがる」

 なのはが上空から戻ってくると、二人の視線に、恐ろしいほどの寒気を感じた。


 それからしゃべる事、十数分

「お二人とも今日はありがとうございました、ご返事はなるべく早くお願いします」
「私はこちらに残りますので、リンディーさんに送ってもらって下さい」

 三人はリンディーと共に地球へ帰っていった。






 三人が士郎の家に帰り着いた頃には、すっかり日が暮れていた。
美由希と桃子が、おでんを用意して待っていてくれた。

「どお、ビリー、驚いたでしょ?」

「驚いたなんて物じゃあないですよ、美由希さん、Oh my godです」

「月花はどうなのよ?」

「私は……あ~~~~~~~~~もう、訳分からん!」

「まあ、それが正常な人の反応でしょうね」
「私もお父さんも、あれを見た日には普通ではいられなかったから」

「確かにそうだ、なのはは9才の頃から空を飛んでたし、いきなり目の前で飛ばれた時は、本当に驚いたよ」
「それに、今日のあれは、まだ一割程度の力だったしなぁ」

「え!!?」

二人が真っ白になった。






「しまった、給料の事聞くの忘れた」

 月花がそう言った時、初めてそのことに気が付く士郎とビリーであった。

「返事は二週間以内に頼むぞ」

 こうしてビリーと月花は、スクールの教官になる事となった。










作:次回から、エリオ・キャロ・ティアナ編です。




[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第4話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/20 19:26
 なのはが帰省していた頃、ヴィータは本局人事部にいた。
人事部長と真剣に打ち合わせている。

「この部署に魔導師は必要ないだろう?」

「あ、ここの部署は人が余ってるな」

「この人の異動お願いします」

 12月の人事異動、4月に比べると普段ならそんなに多くはないのだが、
今回は、かなり大規模な玉突き人事となった。
そうやって、必要な人材を引き抜いた穴を埋めていくのだ。

 結局、武装隊から2名、環境保護隊へ異動させ、エリオとキャロを返してもらえる事になった。

 しかし、相変わらずの人手不足は、見るに堪えない物があった。
帰り際に、スクールの卒業生には期待していると、人事部長に泣きつかれる始末、ヴィータはかなり辟易していた。






 教導隊隊舎に戻った頃、なのはから連絡が来る。
どおやら3名GETできそうな感じらしい。

「ありがとうね、ヴィータちゃん。おかげで助かったよ」

「礼はいいって、それより結果説明だ」
「エリオとキャロは予定通り、代わりに武装隊から2名回して、その穴を別の部署の魔導師で埋めた、
更にその穴は、一般職員で埋めてあるから問題はないだろう。」
「それから、フェイトの仕事が速かったおかげで、ルーテシアとメガーヌ親子が、今回の人事異動に合わせて赦免され、
湾岸地区防災署に配属の手筈になっている。」

「それは良かった、きっとエリオとキャロも喜ぶよ」

「あと、ギンガも獲得出来たよ、後任はチンクだ」

「何から何までホントゴメンね~、今度何かで埋め合わせするからね」

「12月1日付の人事だから、実際の異動は、その2週間後位になるかな?まあ、そんな所だ」
「連絡は以上だ、じゃあな、また明日」


 その夜、ティアナからも連絡があった。
今抱えている仕事が、年内に片付きそうなので、年明けには合流出来そうだ、と言う事だった。
当面は執務官を休業するらしい。





 なのはは、また大変だった。
2週間後には、エリオとキャロがやってくる。
二人の住む部屋を、確保しなければならない。
幸いにして、なのはの暮らす家は、かなりの大きさと部屋数はそこそこ有る。
 ただ、空いている部屋は、ここ何年かの間に溜めた"余分な物"に占領されていたのだ。
これの片づけには相当手こずった様だ。


「えっ、エリオさんとキャロさんと一緒に住めるの?わーい」

ヴィヴィオがとても嬉しそうだ。

「そうだよ、でも3月いっぱいまでかな?3月にはマンションが完成するし、あんたは4月から寄宿舎だし」

 そうなのだ、ヴィヴィオは4月から高等部へ進学する、高等部からは寄宿舎なのだ。
日本では6-3-3-4制の教育形態なのだが、ミッドチルダでは5-2-2-5制である。
ヴィヴィオは今13才、機動六課の頃からは8年が過ぎていた。


 そうこうしているうちに、2週間が過ぎ、エリオとキャロがやってきた。
女の中に男が一人、これで何の問題が起きないはずもなく、エリオにとって悪夢の様な3ヶ月が始まろうとしていた。

「お帰り、エリオ、キャロ」

「ありがとうございます、なのはさん」

 そう答えたエリオは、あの頃のエリオではなかった。
身長は有に170センチを超え、体も細身ながら、かなりの筋肉質になって、声も低く太く変わっていた。

 一方、キャロは、相変わらずちんちくりんである。

「あの頃に比べたら、10センチは伸びたもん」

と言っているが、まだ140センチに満たない様だ。

「おかえりなさい」

「ありがとうございます、フェイトさん」








「部屋は階段の右側がエリオ君ね、反対側がヴィヴィオで、その奥がキャロの部屋だよ」

「荷物片付けたらその辺散歩しておいで、あと遅くならない様に、今夜はパーティーだから」





その夜、5人で囲む食卓は賑やかで最高の雰囲気だった。




「えっ、ルーも来てるんですか?」

「そうだよ、明日会いに行っておいで、どうせ年内は仕事はないから」
「他の先生方は、年明けから合流になるからね」

巨大なお役所である管理局も、当直任務以外の職員は、年末年始の休暇に入る時期だった。












作:次回パプニングの予感、エリオ君はいろいろと大変そうです。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第5話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/19 21:19
 管理局が年末年始体制に入っていても、年中無休で忙しい部署もあった。
防災署である。

 それでも、ここ何日かは大きな事故もなく、たまに救急患者の搬送がある位の、極めて平穏な日々が続いていたある日、
ルーテシアとメガーヌ親子は着任した。

 一番喜んだのは元ナンバーズの面々だった。

 そして、スバルからの新システムのレクチャーが始まった。

ヴォルツ指令も、この結束力の高さに目を細めていた。

 着任の翌日、エリオとキャロがルーテシアに会いに来た。

「ルー」
「ルーちゃん」
「「お久しぶり」」

「二人ともお久しぶり」

 そう答えた少女は、以前より随分背が高くなり、美しく成長していた。

 この時キャロは、言いしれようのない敗北感を味わっていた。
背も胸もまるで歯が立たない、向こうの方が圧倒的に上だった。
それだけではない、夕べ、ヴィヴィオと一緒にお風呂になった時、既にヴィヴィオにさえ負けていたのだ。
ヴィヴィオもかなり背が伸びていた、もう既にキャロより3センチも背が高い、おまけに胸も少しだけ大きかった。

(このまま行ったら、いつか誰かにエリオ君を取られてしまう)

キャロの中に、言いしれようのない焦りが広がりつつあった。

 ルーとたわいもない話をしている間に時間が過ぎ、二人が帰ろうとした時、ルーが二人を引き留めた。
何か大切な話があるらしい。

 防災署の近くの空き地に異動すると、ルーは召喚魔法陣を展開した。
魔法陣からわき出してきたのは、ジライオウそれも尋常な数じゃあない。
養殖場のカブトムシよろしく、うじゃうじゃと後から後から湧いてくる。

「実は無人世界隔離の間、管理出来なくて、凄く増えちゃったの、少し貰ってくれると嬉しいの」

「「えええ~~~~~~~~~~~~~~?」」

ジライオウ:昆虫獣類、甲虫亜目、カブトムシ科、野生では夜行性で普段は地面に潜っている。
      栄養分のある液体なら何でも食べ、非常に繁殖力が強い。
      寿命も30年近く生きる。天敵から身を守る為、角から強力な電撃を放つ。
      天敵は、サンドワーム、サーベルタイガーなど。

「これが、飼い方と管理のマニュアルね」

 結局、80匹も引き取る事になってしまった。

「これどうしようか?」

「まあ、スクールが始まったら、生徒に配ろう。そうすれば何とかなるって」






 家に戻ると、もう、夕方だった。
事情を説明し、ジライオウを見せると流石のなのはさんもビビっていた。
でも、生徒に配る事は了承してもらえたし、何とかなりそうな予感だった。

 キャロと、なのはさんとフェイトさんが夕食の準備をしている。
エリオは、テーブルについてテレビを見ていた。

 不意にヴィヴィオが横にやってきた。

「ねえ、エリオ君、これから『お兄ちゃん』って呼んじゃダメ?」

 突然の事に、エリオの顔が真っ赤になる。

「ねえダメ?」

 下から悪戯っぽい目線で見上げられると、何だか照れくさい、それに、こうやってヴィヴィオを見ると……

(か、かわいい……とても萌え~な感じだ、もしかして、これが妹属性という奴なのだろうか?)

たまにキャロにもやられるけれど、やはりこれには弱い、どうしていいのか分からなくなる。

「べ、べ、べつにいいけど……」

「やったあ!じゃあキャロさんは『お姉ちゃん』って呼ぶね」

「きゃ~~~~~、ゆ、指切った~~~~~」

キャロも話を聞いていたらしい、それで指を切ってしまった様だ。

どおやら、ヴィヴィオは二人の事を、兄弟と認識しているらしい。







「しっかし食べるね~、スバル以上だよ。」

なのはが感心している。

「ええ、まだ背が伸びてますから、すぐお腹が空くんです」
「あ、それと食費はちゃんと入れますから、心配しないで下さい」

「そんな事は心配しなくていいよ、ここは、エリオの家でもあるんだから」

フェイトが優しく微笑んでいた。















作:次回18禁ハプニングの嵐です。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第6話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/19 20:19
 エリオとキャロは早起きだ。
環境保護隊にいた時は、朝と夕方の運動を毎日欠かさなかった。
冬休みと言う事もあり、一家揃ってのマラソンなのだが……

 エリオは一人で走り出す、誰も追いつけないスピードで……

「エリオ君っていつもああなんですよ、なんかスピードの限界に挑戦してるんですって」

 そう、エリオは持ち前のスピードをどこまで維持出来るのか?それに挑戦していたのだ。
その速さは、もはや「神速」の域に達し、自己ブーストする事で、持続時間を10分弱程度まで引き上げる事に成功していたのだ。

 まあ、町中でそれをやる訳にも行かないので、適当な場所を探す。

 マラソンしながら、いつの間にかスクールの前を通り過ぎ、一旦右に曲がって広い国道に突き当たると、海沿いの一本道だった。
平行して砂浜がどこまでも続いている。

「ここなら」

 砂浜を全速力で走り出す。
暫く走ると、前方に人影発見……そこにいたのはヴィータだった。

「お久しぶりです、ヴィータ副隊長!」

「違う!教頭先生と呼べ」

 久しぶりの再会だった。

「しかし、随分でかくなったなあ~~~~~~~」
「この前は、あたしとそんなに変わらなかったのに、随分育ったもんだ」

「所で、なんでこんな所にいるんですか?」

「あたしの家はあそこなんだ、あそこで、はやてとみんなと暮らしている」

 ヴィータが指さした高台の一軒家、そこでヴォルケンリッターとはやては暮らしていた。

「おまえこそ、なんでこんな所にいるんだ?」

「早朝マラソンですよ、体が鈍ってしまうのは嫌なので……」

「じゃあ付き合え、久しぶりに一戦やるぞ」

 ヴィータが嬉しそうに模擬戦に誘う。
現在のランクは、ヴィータがS、エリオはAAA+ だ、そんなに差がある訳ではない。

 始まって、一瞬で勝敗が付いた。
なんとエリオの圧勝、持ち前のスピードを生かした戦い方に、ヴィータが付いていけなかったのだ。

「う、嘘だ、あたしがエリオに、こんな簡単に負ける訳がない」
「もう一回勝負だ」

 結果は同じだった。

 辺境惑星にいた頃、エリオは一人で、毎日の様に猛獣などを相手に技を磨いていた。
マラソンしていった先で見つけた、サーベルタイガーの群れや、サンドワームの群れに突撃し、練習相手にしていたのだ。
恐らく彼の実力は、SS 以上有るだろう。
もはや、ヴィータを圧倒している事がその証明だった。

「おい、勝ち逃げはゆるさんぞ」

「また明日やりましょう」

と言ってエリオは全速力で帰っていった。






 その頃、マラソンから帰ってきたヴィヴィオたちは、シャワーで汗を流していた。
一足先に汗を流したなのはとフェイトが、朝食の準備を始めている。

「ただいまー」

「あ、お帰り、エリオ君」

「汗になったでしょ?シャワーを浴びておいでよ」

 タオルと着替えを持って脱衣所のドアを開けると……
まだ、ヴィヴィオとキャロが体を拭いていた。

「きゃ~~~~~~~~~」

「お兄ちゃんのエッチ!」

 思わず二人の裸を目に焼き付けてしまった。
慌ててドアを閉めた物の、体は正直である。
股間は既にしっかりテントを張っていた。

「あ、ごめーん、まだキャロとヴィヴィオが入ってたの忘れてた」

「なのはさん、言うのが遅いです」

(不味い、こんなのを二人に見られたら、また何を言われるか分からない、ひとまず退散しよう)

 取り合えず、自室に退散して、彼女たちが出てくるのを待つ事にした。

 二人がなのはさんに文句を言っている隙をついて、脱衣所に滑り込む事には成功、
そして、シャワーを浴びながら、なんとか、いきり立つ物を鎮める事に成功した。

「エリオ君、脱いだ物は洗濯機に放り込んでおいてね~、後で纏めて洗濯するから」

 向こうでなのはさんの声がする。

 服を着て、今まで着ていた物を、洗濯機に入れようとした目の前には……パンツ、赤いリボンの付いた可愛いピンクのパンツ……
多分、キャロのだ……
何を思ったのだろう?彼はそのパンツをズボンのポケットにねじ込んでしまった。

 そそくさと朝食を済ませると、彼は自室に閉じこもった。
目を閉じれば、先ほどの裸が浮かんでくる。
それにパンツもある、臭いをかいでみる。
汗の臭いと、女の子の甘酸っぱい香り、彼は興奮せずにはいられなかった。

(こ、この布の向こう側にキャロのあそこが……)

 思わず、自分のモノを取り出してしごき立てていた。

「あれ?私のパンツだけ無い」

 外で洗濯物干しを手伝っていたキャロは、自分のパンツがない事に気が付いた。
洗濯機を確認したり、脱衣篭を確認したが見つからない、まさかとは思った。

ガチャ

「エリオ君、あのね……」

どぴゅ

ドアを開けた瞬間、放たれた白い液体は、彼女の顔や服にまでかかるほど飛んでいた。

「きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

彼女の悲鳴に、隣の部屋にいたヴィヴィオが、下からは、なのはとフェイトが駆けつける。
彼女たちは見てしまった、彼の股間にそそり立つ巨大なそれを……

(大きい……ユーノ君のよりも大きい……)

(大きい……ふた握り半はある……あんなのが…………)

(うそ、男の人ってあんなになるんだ?)

「それ、私のパン……ツ」

気まず~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い空気がその場に流れた。











作:次回、なのはさんがこの場をなんとか治めてくれます。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第7話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/20 18:08
 エリオは一人、さめざめ泣いていた。

「見られた、もう最悪だ~」

 もう、これでキャロに嫌われる事は確定的だろう。
穴があったら入りたい、いや、もうどこか誰も知らない所へ行ってしまいたい、
出来る事なら、無人世界に隔離して欲しい、そんな心境だった。

 なのはは、キャロのパンツを取り返すと、エリオ以外全員下に降りる様に指示をした。
まずは、キャロに顔を洗わせて、着替えさせた。

「えぐっ、えぐっ、エリオ君が変態さんになっちゃったよ~」

 泣き崩れるキャロに対して、なのはがとんでもない話をし始めた。

「あなた達、まだHしたこと無いでしょ?」

 あまりに突拍子もない一言だった。

 その唐突さにキャロは泣くのを止めた、と言うか唖然とした。
確かにした事はない、出来ればしたい、彼と結ばれたいと願っていた。
これまでに、何度かそのチャンスはあったのだが、ことごとく邪魔が入ったりして、
そのチャンスを失い、後には気まずい時間が流れていた。

 キャロは、自分に魅力がないから、彼は何度も挑戦してくれない、自分を奪ってくれないのだと考える様になっていた。
しかし、なのはに聞かされた話は全く違う物だった。

「いい、キャロ、エリオ君のあの行動は、健康なあの年代の男の子なら当たり前の事なの」

「えっ?」

「本当は、エリオ君はキャロの事が大好きなはずよ、でも、それを言い出す勇気がないから、ああなってしまうのよ」
「だから心配しないで、後で聞いてみるけど、彼が『キャロのパンツだったから』って答えたら、それが証拠よ」

「それってどういう意味?」

「昔ね、ユーノ君にもそんな時期があったから……」
「男の子はね、一旦気まずくなると、なかなか勇気が出てこない物なの、代わりにその子の持ってる物をオカズにしちゃうの」
「それに、今回はかなり傷付いているから、あまり責めちゃダメよ、二度と立ち直れなくなっちゃうから」

「何だかよく分からないな~、男の子って」

「そう言う物よ、それに彼だってあなたとHしたくて仕方ないんだから、かなり溜まっていたみたいだし」

 そう言って、なのはがクスリと笑う。

「でも、どうして私なんだろ?もっとグラマーな人なら、いくらでもいるのに」

「キャロはまだ、自分の魅力に気付いてないのね。キャロにはキャロにしかない魅力があるの」
「私が男の子なら、ほっとかないんだけどな~」

 キャロは、そんな事を言われたのは初めてだった。
それよりも、特に最近は、自分に自信が持てないでいたのだ。
そう、あまり背も伸びてないし、胸も申し訳程度にあるだけだし、回りの女の子たちと比べたら、明らかに負けているのだ。
コンプレックスから、見えないバリアを張っていたのは、むしろキャロの方だった。 
そんなバリアを敏感に感じてしまうから、エリオもまた手が出せないでいたのだ。

「もっと自分に自信を持ちなさい、あなたは十分に魅力的だから」

 なのはさんの一言で、ぱっとキャロの顔が明るくなる。

「でもね、エリオ君を、このまま放っておく訳にも行かないのよ」
「今彼は、重要な分岐点に立っているの」

「もし、彼が立ち直れなかったら、女性を愛せない、パンツしか愛せない変態になってしまうわ」

「ええ~~~~~~~~」

 またキャロの顔が曇る。

「大丈夫よ、分岐点だって言ったでしょ。間違った方に行かせなければいいの」
「だからね、きちんと叱って、きちんと謝らせる。その上でしっかりと許してあげれば大丈夫よ」
「決して問い詰めたら、ダメだからね」 

 さすがは、なのはさん、人生経験が豊富である。

「さてと、次はエリオ君か……」
「っと、その前に」
「そこの二人、暫く散歩してきなさい、このままではエリオ君を叱る事も出来ません」

 ヴィヴィオとフェイトは追い出されてしまった。

コンコン

「エリオ君、ちょっといいかしら」

 エリオはベッドの上で、大きな体を小さく丸めて落ち込んでいた。

「あーあ、やっぱり落ち込んでる」
「何故あんなことをしたかについては聞かないわ、聞いた所で答えは出る訳がないのだし」

「………………………………」

「でもね、何故キャロのだったのかしら?洗濯機の中には、私やフェイトちゃんやヴィヴィオのもあったはずよ?」

「……分かりません……ただ……それがキャロのだって……分かったら……つい……」

「あんたたち、まだHしたこと無いでしょ?」

「なっ!?」

 なのはがくすくす笑う。

「本当はあの子のことが好きで好きでしょうがないんでしょ?」
「でも、押し倒す事も出来なかったって所かな?」

「……そのとおり……です……でも……もう……終わりです……きっと……キャロに……嫌われてしまったから……」

「そんな事無い!そんな事無いもん!」

「あ、キャロ、いいって言うまで、入って来ちゃダメじゃない」

 飛び込んできたキャロは、そのままエリオに抱きついた。

「ね、分かったでしょ、キャロもあなたの事が大好きなの」
「それにこの子が、あの程度で、あなたを嫌いになる訳無いわ」

 エリオは脱力してその場にへたり込む、もう落ち込んではいない様だ。

「これで、お互いの気持ちが分かったでしょ?」

「「はい!」」

 二人の目には、自信に満ちた光があった。

「さて、分岐点も無事通過したみたいだし、これを渡しとくね。失敗されて、気まずくなられても困るから」

 渡されたのは、How to sex 本とコンドーム一箱だった。
これで、予備知識を仕入れてから、やりなさいと言う事らしい。

「なんで、なのはさんが、こんな物持ってるんですか?」

「それは突っ込まないお約束なの」












作:もう少しこの話題で引っ張りたいと思います。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第8話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/21 16:19
 ヴィヴィオは考えていた。
さっきのあれを触ってみたい、どうなっているのか、よく観察してみたいと……
そう考え始めると、何だか体の芯から熱くなってくるのを感じる。

 拙い知識ではあるが、「する」と言う事が、どういう行為かということぐらいは知っている。
出来れば、「している所」を見てみたいと思い始めていた。

 フェイトは、もっと大変だった。
考えては行けない事、エリオを押し倒してしまいたい、エリオのアレを自分の中に入れてみたい……

 いけない妄想がどんどん広がりつつある二人だった。

 近所の公園まで歩いて、ブランコに腰掛ける、お互い話も出来ないのに、変なため息ばかり漏れてしまう。

 30分ほど時間を潰し、帰っていく、と、そこには新婚夫婦の様なラブラブな二人がいた。
二人が作り出すピンクな空間には、誰も入る余地など無い。
流石のなのはさんも、笑って見ているしかない様だった。

 だが、その日の夕方から、それまでの暮らしが一変する。
食事の内容が、異常にスタミナメニューなのだ。
どおやら、フェイトが作っているらしい。

 エリオがお風呂に入っていると、

「エリオ君、湯加減どお?」

「開けないで下さいフェイトさん」

 とか、

「お背中流してあげよっか?」

「入ってこないで下さい、フェイトさん」

「だめ~~~~~~~~~」

 キャロが阻止する。

「お兄ちゃん、あ・そ・ぼ」

 ヴィヴィオが、やたらとエリオの腕に絡み付いたり、胸を背中に押しつけたり、
明らかにエリオを挑発している。
極めつけには……

「お兄ちゃん、一緒に寝よ?」

 先回りしたヴィヴィオが、ベッドに潜り込んでいた。

「だめ~~~~~~~~~~~~~~~」

 またしてもキャロが阻止する。

(まずい、こんなことが続いたら、近いうちに取り返しの付かない事をしてしまう)

 エリオは、もはや自分を押さえておく事が出来ない事を、確信していた。

(まずい、このままでは、エリオ君をあの二人に取られてしまう)

 キャロも、状況の悪化に困り果てていた。
今、この家では、美女と野獣状態ではなく、美女が野獣で、美少女も野獣状態なのだ。
哀れな仔羊はエリオの方だった。

 そんな状態が暫く続いたある日の夜、

コンコン

「キャロ、ちょっと良いかな?」

 エリオがキャロの部屋に入ってきた。
正直、もう限界らしい。
誰かに相談しないと、この事態は良くならないと判断した様だ。
なのはさんも、この事態を楽しんでいるみたいだし、どうしよう?と言う事らしかった。
相談相手に選んだのは、ティアナだった。

 通信をすると、ティアナはまだ仕事をしていた。
今、丁度最後の書類を書き終えるところ、だったようだ。

「あーはっはははは~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 大爆笑するティアナ、
ひとしきり笑った後、とんでもない事を話し始めた。

「あなた達、早くする事を済ませなさい。済ませてしまえば余裕も出るし、そんなに気にする事もなくなるから」
「もし何なら、堂々と目の前でしちゃいなさい」

「「えええ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」」

「そ、そんな恥ずかしい事出来ませんよ」

「大丈夫、最初の一回をクリアすれば、後は自然と出来る様になるから」

「それと、いつまでもキャロの部屋にいると、あの三人が様子を見に来るわよ、もうドアの外にいたりしてね」

 慌ててドアを開けると、本当にいた。

「三人とも何やってるんですか?」

 エリオに怒られて、逃げていく三人……油断も隙もあった物ではない。

「あーはっはははは~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 大爆笑の止まらないティアナだった。

 









気が付けば年の瀬だった。

「私たちは、恒例の年越しミサがあるから、明日のお昼までは帰ってこないけど、大丈夫?」

「僕たちは、はやてさんの所で、年越しの忘年会&新年会ですから(大嘘)」

 既に、はやてとは口裏合わせが出来ている。

「やっと二人きりになれたね」

 もう二人を邪魔する物は何もない、予備知識もたっぷりある。
口付けを交わす二人、最初は軽く、二回目は長く、三回目はお互いの舌を絡めさせて……









作:すいません、肝心な部分は割愛させて頂きます。これ以上書くと強制削除されそうなので……






「「「ただいま~」」」

 三人が帰ってきたのはお昼過ぎだった。

「どおしたのエリオ君?」

「お、お腹減ったっす」

 朝から何も食べていない様だった。

 キャロも何だか苦しそうだ。

「お、お股が痛い……」

「あらあら……ふふふ」

 なのはさんが、嬉しそうに微笑んでいた。











作:年が明けて先生方集結、そしてバトルの予感。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第9話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/22 06:10
 エリオとキャロが結ばれて三日後、取り合えず、お仕事が始まる。
年末に改装が終わった職員室棟は、嘗ての機動六課のオフィスとはまた違った趣だった。

 5階建ての建物の、玄関を挟んだ左側が職員室棟である。
玄関の真正面は階段で建物を仕切っている。

 階段の裏側はエレベーターホール、エレベーターの真正面がトイレで、トイレと受付の間に廊下がある。
廊下の突き当たりは、保健室だ。
正確に言えば、廊下は短く、すぐに突き当たって窓側が保健室、壁で仕切られた奥側に手術室がある。
ここはシャマルの仕事場だ。

 2階は職員室、職員室の一番左奥には給湯室がある。

 3階は男女それぞれのロッカールーム、4階は会議室、5階が校長室兼応接室だ。

 転送ポートは、建物右側のロビーの奥に、モジュールが2機並んで設置されている。

 初仕事は、月花先生とビリー先生の引っ越しからだった。
まだ、職員マンションが完成していないので、当面はウィークリーアパートで凌ぐらしい。

 転送ポートから次々と運び出されてくる荷物、そのほとんどが武器というのも笑える。
いや、笑い事ではない、一応は質量兵器なのだから。
取り合えず、武器類は職員室棟裏のヘリのハンガーが空いていたので、そこに収容した。

 他の荷物はアパートへ、意外とすんなりいった。

 翌日、やっと教師一同が顔を揃える。
そして自己紹介……

 一通り自己紹介が終わった所で、ティアナがとんでもない事を言い出す。

「高町士郎先生の実力については聞き及んでおりますが、そちらのお二方の実力については、どの程度の物なのでしょうか?」

 どおやら、この中での序列が気になる様だ。
瞬間、ビリー先生と月花先生がとてつもない殺気を放つ。

(な、何この感覚)

 凍てつく様な、いや、もっと寒い、恐怖を伴う冷たさが背中を伝う様な感覚。
これが「殺気」である。
ミッドチルダの魔導師にとって殺気を知る者はまずいない、僅かにこの感覚を味わった者はこう言う。
「恐怖と悪意に満ちた寒さだった」と。
キャロとシャマルが抱き合ってふるえ出す、声にならないほどの恐怖を味わった様だ。

「失礼な事言わないの、お二人は、うちのお父さんをかなり苦戦させるほどの強者よ」
「とてもじゃあないけど、あなたが束になった所で、とても敵う物じゃあないわ」

 なのはに諭されたティアナがその場にへたり込む。
やはり、相当怖かった様だ。

「お二人と、うちのお父さんは、明日、模擬戦を受けて貰います」
「その結果次第で、階級とランク、お給料が決定しますのでよろしくお願いします。

 そう、管理局に勤める以上、階級がなければ給料が決定しない。
フリーの魔導師の様に、金額を決めての仕事の発注や、仕事に応じた評価払いではないのだから。

「俺たちを試すのは良いが、強い奴を連れて来いよ、でないと本気が出せねえよ」








 翌日、ウエストバレー演習場、(首都クラナガンから西へ400Kmほど行った所にある大規模な演習場だ)
現地には、なのはの他、はやて、フェイト、シグナムがスタンバイし、キャロが転送準備をしている。
救護所ではシャマルがいつでも手当てできるよう準備を整えていた。
ギャラリーは、残りの先生方と、レティ本部長、地上本部の重鎮が顔を揃えていた。

 まずは、ビリー先生からだった。
ルールは、ビリー先生の発射するペイント弾に当たるか、なのはたちが、ビリー先生を戦闘不能にすればそこで勝負有り、
と言うものだった。

「一人じゃあ弱すぎて相手にならん、3人纏めてかかってこい」

 ビリー先生はあくまでも強気だ。

 しかし、相手をするのは、仮にも管理局3魔王と呼ばれるなのは達だ、まさか3魔王が揃って負けるとは、
誰も考えられなかった。

 なのは達とビリーが対峙する、距離はおよそ20m、仮に神速を使ってもぎりぎり届かない距離だ。
ビリーは、いつも腰の後ろに着けているホルスターを腰の右側に持ってきている。
ホルスターに収まっているのは、コンバットマグナム4in 、ビリーが最も信頼している拳銃だ。
空中に浮かんだシグナルが、一つずつ消えていく。

プッ、プッ、ポーン
パ~~~ン
プァ~~~~~~~

 開始の合図と共に1発だけ銃声がして、直後に終了のブザーが鳴っていた。

 一体何が起きたのか?見ていた者は、ほとんど気が付かなかった。
それが分かっていたのは、士郎と月花の二人だけである。

「Six on one 奴の必殺技だ」

 士郎がそうつぶやく。

 なのは達は、今起きた事が信じられずにいた。
額と胸のど真ん中に1発ずつペイント弾が命中していたのだ。
何も出来なかった、いや、何もさせてはもらえなかったのだ。
しかも、3人とも正確に心臓と額のど真ん中に弾を受けているのだ。
これが鉛弾なら確実に2回殺されていた事になる。
ビリーのとてつもない強さに戦慄せずにはいられない、なのは達だった。

「士郎先生、今何が起こったんですか?」

 そうティアナが尋ねた。

「銃で撃ったんだよ、とてつもなく早くな」
「音速の6倍のスピードで撃つとああなる、音は全て重なって、1発にしか聞こえない、それだけだ」

 そうこれこそが、あの地獄のソマリアを生き抜いた、ビリーの強さの秘密だった。
一体どうしたら、そんな動きが出来るのだろう?
戦慄せずには、いられないギャラリーだった。

「あいた~、ペイント弾って当たると結構痛いんだね」

「でも、まさか開始0.1秒で負けるとは思わなんだわ~」

「これまでの最短時間だよね、しかも、まさか私たちが、その不名誉な記録を献上するとは、思わなかったよ」

3魔王様達は、額に付いたペイントを拭いながら、次の作戦を立て始めていた。












作:次回もバトルが続きます。人間を超えた戦いに刮目せよ。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第10話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/25 18:18
 次は月花先生だ。

「取り合えず上に逃げない?」

「そおやなあ、でも私らが、揃って逃げを打つって言うのも、ちょっと不味い気がするけどなあ」

「取り合えず、私が真ソニックフォームになっておくから、それで斬り込んでみるよ」
「なのはは、シューターで牽制ね」

「じゃあ私が最後にデアボリックエミッションでトドメを刺したるわ」

 どおやら、作戦が決まった様だ。

 一方、月花先生は、ストレッチを終えると棍を準備していた。
管理局の面々から怒号が飛ぶ。

「なめているのか!」

「馬鹿にするのも大概にしろ!」

 月花先生は涼しい顔である。

「じゃあ、おまえらはアレに勝つ自信があるのか?」

 士郎の一言で、局の幹部達は黙ってしまう。
レティ本部長だけが険しい顔で、じっと様子を見ていた。

 15年ぐらい前だったか、管理局と不破一族はいざこざを起こし、管理局側に多数の死傷者を出していたのだ。
それ以来、管理局は、二度と高町家を初めとする不破一族に、手を出す事はなかったのである。

 この時、管理局側代表として事態の収拾をした人物こそ、レティ本部長だったのである。
その当事者から見て、あの高町士郎を、苦戦させるほどの使い手は、脅威そのものでしかないのだ。

「まさか、本当に、あの木の棒一本でやるんですか?」

 ティアナが驚いている。

「棍をなめない方が良い、中国拳法に於いて、武器の基本であり、奥技でもある」

 士郎の言葉は、とてつもなく重かった。

「どおやら、棍一本でやるみたいやねえ」

「上に逃げる必要は、なさそだね」

「ライオットザンバーで、さくっとへし折って、終わりにしようか?」

「取り合えず作戦通りに行こうよ」

一同がにらみ合う、距離は、また20mほど、
空中に浮かんだシグナルが消えていく。

ポ~~~~ン

合図と共に、月花の姿がかき消えた。

(え、神速?)そう思った瞬間、月花はもう、なのは達の前にいた。

「捻糸頸」

 はやての鳩尾に強烈な一撃が入る。
はやては10メートルほど飛ばされて、岩にたたき付けられ、気を失った。

 捻糸頸:捻糸棍に発頸を上乗せして打つ強力な中距離技である、その威力は岩を砕き、鉄板をも貫通する。
まともに食らえば、即死間違いなしの殺人技である。

「飛毛脚から、捻糸頸とは、えげつないな」

 士郎が解説を入れる。

 はやてがやられた直後、なのはは、上に逃げようとした。
瞬間、何かが飛んできた。
それをかわした直後、何かに絡め取られて、なのはは動きを封じられてしまう。

 流星錘:中国暗器の一つである。
鋼糸の先に小さな重りを付けた武器で、弾丸の様な破壊力を出せるほか、捕縛にも使える。

 動きを封じられたなのはは、捻糸頸の格好の的だった。

「さてと、あなた一人だけに、なったわねえ」

 フェイトを威圧する視線が恐ろしいほどに鋭い、まるで獲物を狙う猛獣の目だ。

「あなたは特別に素手でやってあげるわ」

「なめるな!」

 二刀流で斬りかかるフェイト、しかし、そこにはもう、月花はいない。
月花を見失ったフェイト、しかし月花はフェイトの後ろに現れる。

「ここよ、ここ」

 つ~~っと背中を人差し指で撫でると、またかき消える。

「くっ」

 スピードに自信があるフェイトだけに、かなり悔しい。

「じゃあ、今度は別のことして遊ぼうか?」

 今度は、フェイトの目の前に現れた、それも顔と顔が触れあう位の距離に。
この距離では、武器は何の意味もなさない、当てる事さえ出来ないのだ。
それどころか、フェイトの動きを利用して、武器を使わせない様に上手くいなしていく。
その動きはまるで、社交ダンスの様な、優雅にワルツを踊っている様な動きだ。

 そう、これこそが八卦掌である。

「くっ、この動き、御式内か?」

「ざーんねん、八卦掌よ」

 そう言われた直後、フェイトは肩の関節を外されて、戦闘不能になっていた。





 またしても負けた、今度は完膚無きまでに叩きのめされて、3魔王の面目丸潰れである。

 シャマルが忙しそうである。
取り合えず、なのはとはやては、治療魔法で何とかなった。

「ちょっと痛いわよ」

 腕を上に引っ張って関節を入れて貰うフェイト、めちゃくちゃ痛かった。

「なんで私だけ魔法なし~~?(涙 」

「それ壊されてる訳じゃあないから、治療魔法が使えないの」
「関節を入れてから、痛み止めと炎症を抑える魔法を掛けるからね」

 やっと回復したフェイト、でも涙目でした。








 次はあの人か……
もう負ける訳には、いかないのだけれど、あの人相手に勝てるという希望はない。
どうしようか……
非常に気が重いなのは達であった。














作:次回、士郎さんが刀の自慢をします。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第11話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/25 18:20
「さっきのあれは何?お父さん」
「なんであの人が『神速』を使える訳?」
「もしかして、浮気ついでに教えたとか?」

「何を言う、『神速』の本家本元は向こうだ」
「八極拳にも神速はある、技名を飛毛脚という」
「元々、弘法大師空海が、中国から、五人の武人を日本に連れてきたのが、御式内の始まりだ」
「その中に、八極拳や八卦掌があっただけの事だ」
「それが改良されて御式内となり、そこから派生したのが、御神の剣だったと言う事だ」
「だから同じ技や、似た様な戦い方をしても不思議ではあるまい、それに向こうは四千年の歴史がある訳だし」

 とんでもない事になった。
まさか、御神の技の源流に出会う事になろうとは、しかも、それは、恐ろしく強かった。

 なのはは、自分の無知を呪った。
もう少し知っていたら、何とかなったかも知れない、後悔先に立たずである。



 さて、今度は高町士郎である。
息子の高町恭也をして「鬼」と言わしめた化け物である。

 なのは達は、子供時代、兄の恭也と「軽い模擬戦」を行い、全員フルボッコにされているのだ。
それだけに、士郎の強さは脅威以外の何者でもない。

「どうしようか?今度は完全に勝ち目がないよ」

「なんとか一人でも逃げて、上空からの砲撃で倒すしか、方法はないやろね」

「んー、良い事思いついた、フェイトちゃん、捨て石になって」

「なんで、私が真っ先に、痛い目に遭わなきゃならないのよ?」

「そうだ、シグナムさんを入れよう」

 もう、勝つ為なら、どんな卑怯な手でも使おう、と言うなのは達、とても黒いぞ。

 一方、士郎は、新しい小太刀を準備していた。

「お父さん、新しい刀買ったんだ?」

「お、よく分かったな、新しいのを、注文で作ってもらったんだ」
「見てみろ、ダマスカス鋼の百八層重ねだ、京都の名工、藤原安繁に発注したんだよ」
「二千万もかかったんだぞ~」

「そんなお金どうしたのよ、お店の運転資金に手を付けたとか?」

「そんな事をしたら桃子さんに怒られるだろ」
「依頼用の口座にまだお金があったら、それで何とかなったんだよ」
「去年、美味しい依頼があったしな」

「ふーん」

 そんなやり取りをしながら、士郎が抜いた刀は、黒い刀身に、一際黒い木目模様が美しい、一風変わった刀であった。




 気を取り直して、向かい合う。
士郎に対して、20m離れた位置にまずシグナム、5m後ろにフェイト、
その10m後ろに45度開いて左がなのは、右がはやてである。
ウィシュボーンと言う陣形だ。

 まず、シグナムが受け止め、フェイトが斬りかかる。
その間に、なのはとはやてが上に逃げる作戦だ。

 シグナムは燃えていた。
今日こそは高町家に、不破一族に土を付けると……

 最初は、恭也に負けた。
なのは達三人と、ヴォルケンリッターの四人で恭也に挑んでフルボッコにされた。
美由希に挑んで、またフルボッコにされる、なのはの親戚の人たちにも挑みかかったが、ことごとくフルボッコにされた。
なのはが、エースと呼ばれる様になってからは、なのはにすら勝っていない。

「今日こそ勝つ!」

 シグナムはアギトをユニゾンし、更にレバンティンにカーットリッジロードをした。
今日、この日の為にレバンティンに新モードを追加していた。

「レバンティン、カタナモード」

 レバンティンが少しだけ長くなり、柔らかに反りが出来る、束も少し長くなり、全体的に細身になった。
いわゆる居合い刀だ。

 シグナムは、高町家に勝つ為に、ありとあらゆる努力をした。
そして、神速に対抗する手段として、居合いを身に付けていたのだ。
黒澤明の椿三十郎に、勝つ為のヒントを見出した、そしてデッキが壊れるまで何度も見て研究を重ねたのだ。
超神速の抜刀術、これならいける、勝てると踏んでいた。

「アギト、炎熱加速だ」

 試合開始直前、もう、いつでも抜ける準備は出来ていた。

ポ~~~~ン

 開始の瞬間、士郎がかき消える。

「そこだ!」

キンッ

 神速で突っ込んできた士郎に、いきなり抜刀したシグナム、しかし……

「今の一撃、申し分ない。しかし、相手が悪かったな」

 レバンティンが、まっぷたつに折れて……いや斬られていた。

ボゴッ

 強烈な峰打ちで、シグナムはリタイヤした。

(また……勝てなかった……無念……)

 一方、上に逃げるはずだった、なのは達だが、逃げられなかった。
いつの間にか、空中に鋼糸のネットが設置されていたのだ。

「上には逃がさんぞ~」

「く、いつの間に?」

「模擬戦始める前に仕込んだに、決まってるだろう」
「どんな手を使っても勝つ!」

 卑怯なのは、おやじの方らしい。

 また士郎が、かき消える。
現れたのは、はやての前だった。

「雷徹」

 強力な峰打ちで、はやてリタイヤ。

「flsh move」

 地面すれすれをフラッシュムーヴとブーストの併用で、逃げるなのは、しかし、士郎に追いつかれる。

「はははー、随分早くなったじゃないか、お父さん嬉しいよ、でも、それだけじゃあダメだぞ~、薙旋」

 強烈な四連撃で、なのは轟沈。

「さて、また一人になっちゃったねえ、フェイトちゃん?」
「痛いのと、恥ずかしいのと、どっちが良い?」

「い、痛いのはいや!」

 その瞬間、士郎はフェイトの後ろにいた。
フェイトの回りを刃風が舞ったのが分かった。

「え?いや~~~~~~~~~~見ないで~~~~~~~~~!」

「おおお~~~~~~~~~~~~~~!」

 局の幹部が大喜びである。
一瞬にして、フェイトのバリアジャケットは、切り裂かれ、素っ裸にされていたのだ。
キャロから、バスタオルが転送されてきた。

タオルが入って試合終了だった。








作:次回、お給料と階級が決定します。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第12話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/24 21:31
 流石に金を掛けただけの事はある。
士郎は、新しい小太刀の切れ味にほれぼれしていた。
しかも、相手の刀を真っ二つに斬っていながら、刃こぼれ一つ起こしていない。


「あいたたー、実の娘になんてことするのよ、フルボッコなんて酷いじゃない」

「おまえが弱すぎるのが悪い」




「あのーもしもし?その人、それでもかなり強いのですが……」

 とても人間の会話とは思えない状況に、回りはそう突っ込むしかなかった。



「高町士郎殿、申し訳ないが、あなたに意見書の提出を求めたい」
 レティ本部長は、地球における、このレベルの強者がどれだけいるのか?
なのは達の強さについてどう思うのか、意見書を提出して欲しいとの事だった。

 その意見書が、その後、管理局を震え上がらせる事になるとは、誰も知るよしもなかった。





 管理局の幹部連中は、もめていた、まさか3魔王が短時間の間に3回も負けた。
しかも、魔法を全く使わない相手に簡単にやられた。
有ってはならない、由々しき事態である。
かといって、あの3人の実力を認めない訳にも行かない。
彼らは、まだ本気のほの字も、見せていないのだから。

 結局、士郎達のランクと、階級については、数日後に回答すると言う事で、その日は解散となった。





 同日、夕刻
 士郎は見た、自分の娘が如何に化け物であるかを。

「だから、はやてちゃん、樽で飲むのは止めようよ?回りのお客さんが引いてるよ」

「なのはちゃんかて五升瓶やん、そんなに違わへんて、飲まなやってられへんし」

 彼女たちのリンカーコアは、非常に優秀だった。
魔力の含まれている物なら、何でも魔力に変えてしまうのだ。
お酒や、高級珍味、魅惑のスイーツなんて物は、魔力値が非常に高いらしく、
彼女たちには元気ドリンクと、あまり変わらないらしい。

「な、なあ、なのは、なんでここに日本酒があるんだ?」
「それに、なんか日本の居酒屋見たいなんだが」

「あ、ここ、アリサちゃんとこの系列なの」

 そう、ここはアリサの会社の系列なのだ。
2年前、地球は未曾有の不況に堕ちた。
当然、不況の影響をもろに食ったアリサの会社、倒産すら危ぶまれた。
中には、会社の資産を持ち逃げする役員も出る始末、これには流石にキレた。
資産を持ち逃げした役員は、アリサの依頼によって、ことごとく闇に葬られた。

 美由希の所に来た依頼だったが、士郎も手伝ったので、何割かの分け前があった。
おかげで、刀を新調する事が出来たのだ。

 一方、アリサは、取り返したお金の投資先に困っていた。
いつまで続くとも分からない大不況、地球で投資しても回収出来るとは限らない。
そこで、一計を案じたアリサは、なのはを通じて、レティに取り入ったのである。

 通常、管理外世界との貿易は禁止されている。
しかし、そこを曲げさせる為に、あの手この手を使って、やっとの事で、貿易出来るまでにこぎ着けたのだった。

 因みに、ミッドチルダでの株式の保有は、アリサに係わった人物に限られている。
大株主はレティで、その次に、なのは、フェイト、はやての順だ。
今年は配当が良かったらしい。

 まあ、そう言う事で、ミッドのあちこちに、アリサの会社がいつの間にか進出していた。

「今夜は朝まで飲むで~やけ酒や~」

 何もさせてもらえずにボロカスに負けた為か、はやての機嫌が特に悪い。
樽が、五升瓶が次々と空になる。
結局、店中の酒を飲み尽くした所で、お開きとなった。





数日後、管理局から、回答が来た。

高町士郎:ランクSSS+、一等陸尉とする。

劉 月花:ランクSSS+、一等陸尉とする。

ビリー・ブラック:ランクSSS+、一等陸尉とする。

 ランクはこれ以上、上がない最高ランク、新規採用としては破格の一尉扱いである。
月給は、日本円に換算して、85万ぐらいとの事だった。
因みに、ミッドのお金を地球に持ち帰るには、スイス銀行に口座が必要だそうな。
士郎は持っていた、スイス銀行の口座を……依頼用の口座がスイス銀行にあったのだ。









 その頃、管理局、一つの意見書が波紋を広げつつあった。

「何、5万人だと?」

 士郎は、まだミッド文字に慣れていなかった。
『強い奴は五万といる』と表現したかったのだが、五万人位いる、と書いてしまっていた。

「つまり、把握しているだけで、5万人もいると言うのか?」

「恐るべし97番世界」

「なんて危険な所だ……」

「間違っても、手を出さない方が良い」

 たった一言書き間違った事が、管理局を恐怖のどん底に、たたき込んだのであった。













作:次回、なのはさんがヴィヴィオに問い詰められます。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第13話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/30 22:28
 次の日、夕刻

「エ・リ・オくーん、お背中流そうか~?」

 タオル一枚でお風呂に突撃するフェイトさん、しかし、そこには、キャロと仲良く洗いっこするエリオがいた。

「え?うそ~?」

「あ、フェイトさん、何やってるんですか?」

 完全にやる気をそがれて、退散するしかないフェイトだった。

 一度体を重ねてしまえば、もう恥ずかしい事はなかった。
堂々と見せつけてやれば相手から引いていった。
もう、恋人と言うよりは、新婚夫婦だ。

 でもまだ諦めていないのが一人、

「おにいちゃーん、あ・そ・ぼ」

「で、何して遊ぶんだ?ヴィヴィオ」

 そう言って目を見つめられると、何も言えなかった。
挑発しているだけで、何にも考えていないから、返された場合の対応が出来ないのだ。

 流石のヴィヴィオも、これはどうしようもなかった。

 いつの間にか、エリオは相当手強くなっていた。
相変わらず続いているのは、スタミナ料理攻撃だが、キャロを喜ばせるだけだった。

 なんとか次の手を考えながら、チャンスを窺う二人、この後、チャンスらしいチャンスは訪れる事はなかった。





 そんなこんなで、1月が過ぎ、2月に入った最初の土曜日、
スバルは、出動の帰りだった。
消防車の窓から町を行く人たちを眺めながら、防災署へ帰っていく、
隣にはヴォルツ指令が、その隣で他の隊員が運転している。

「あれ?なのはさんじゃあ?」

 コートの襟を立て、腕を組んで歩く二人、どう見ても、なのはとユーノだ。

「え、ええ、えええ~~~~~~~~~~~~」

 二人がホテルへ入っていった、Hなホテルへ。

 防災署へたどり着くと、特殊装備のトランクケースを持って、走り出した。
ついでにヴォルツ指令も引きずっていく。
ホテルの隣のビルは都合の良い事に空きビルだった。

 二階に陣取ると、隣のホテルの壁を特殊ゴーグルで見てみる。
この特殊ゴーグル、本来は、瓦礫に埋もれた人を探す為の物である。
壁の一枚や二枚なら、その向こうの人がどんな状態なのか、一目で分かる。
丁度サーモグラフィーの様な、シルエットで見えるのだ。

 二人は、目の前の壁の向こうにいた。
窓から、手を伸ばして特殊マイクロホンを壁に取り付けてみる。
この特殊マイクロホンも、先ほどのゴーグルと同じ使い方をする。
瓦礫に埋もれた人が、生きているかどうか、心音や呼吸音を拾う物だ。

「アン、ユーノ君、そこイイ!」

 凄い事になっていた。

(え、今度は後ろからですか?)

 シルエットと、声だけというのが、これほどエロいとは……
スバルは興奮していた、ヴォルツ指令も同じくだった。
まさか、あの二人が……で有る。

 でもまだ、ヴォルツは気付いていなかった、一番の危険人物が目の前にいる事に……

「し、指令、もう我慢出来ません!」

 そう言って、ヴォルツを押し倒したのは、スバルだった。
目が血走っている、鼻血も少し垂れている、完全にスイッチONだった。
その後、白くカサカサになるまで、ヴォルツ司令は、解放してもらえなかったそうな……





 約2時間後、ホテルから出てくる二人、そのまま、通りへ出て歩き出した直後、
後ろから声を掛けたのは、ヴィヴィオだった。

「ママ?ユーノ君?二人ともこんな所で何やってるの?」

「えっ、ヴィヴィオ?」

 驚いた、まさかヴィヴィオに見られるとは……しかもかなり怒っている。







「ただいまー」

 フェイトが帰宅すると、ヴィヴィオに尋問されるユーノとなのはがいた。
どこかの刑事ドラマよろしく、卓上ライトまで準備して、取調中だった。
何でも、不純異性交遊で逮捕連行したのだとか。

「情けないなあもうー」
「するなら、もっと堂々としようよ、あの二人みたいにさあー」
「私には、男はダメだとか、まだ早いとか言うくせに、何よそれは~」

 こんな感じで、もう小一時間問い詰められているらしい。
仕方がないので、フェイトが助け船を出す。

「別に良いのよ、この二人は昔からの婚約者なんだから」

「えっ、ママとユーノ君って婚約してたの?」

「そうよ、子供時代から婚約者なのに、いつまで経っても結婚しないから、みんなやきもきしてるの」

「ま、まあ、いろいろと事情がありまして……にゃは」

 フェイトの助け船で、なんとか、その場を逃れる事が出来たなのはだった。








 その夜、ヴィヴィオが、なのはのベッドに潜り込んできた。

「ねえ、ママ、教えて、昔の事や、ユーノ君との事」
「なんで結婚しないのかとか」

「うーん、どうしようかな」
「あまり話したくない事も、たくさんあるんだけどな~」

 なのはは語り始めた、ユーノとの出会いの話、その時初めて魔法に出会った事や、初めて空を飛んだ話、
そしてあの事件の話、忌まわしい事件の記憶と、体をこわしてしまった事……

「アレは、入局から2年目の12月だったの……」

 モニターに映し出されたのは、血まみれのなのはだった。
生きているのが不思議な位の大怪我、医者からは、助からないかも知れないと言われた。
たとえ助かったとしても、もう、障害者として生きる事になるだろうと。

 それでも諦めなかった。
どんなに痛くても、どんなに辛くても、それに耐えて頑張った。
そして半年後、努力と根性で、現場復帰を果たしたのだ。
しかし、医者からはこう言われた。
将来、結婚しても、子供を望まない方がよいと……子供を産もうとすれば、
自分の命と子供の命を、生きるか死ぬかの天秤に、掛けなければならないと。
そんななのはに、それでもいい、それでもいいから結婚してくれ、と言ってくれたのがユーノだった。

「それからねえ、働きながら少しずつ体を治してたの」
「でも、JS事件でまた体を壊しちゃって、今まで掛かっちゃったの」

「えっ、それどういうこと?」

「シャマル先生がね、体が随分良くなってきてるから、もしかしたら、子供の一人ぐらいなら、大丈夫じゃないかって」
「後は、結婚するきっかけとかが欲しいんだけどな」

「じゃあ、ママ、結婚するんだ?」

「するよ、きっかけとかが有ればね」

「じゃあ、じゃあ、今まで私がいたから結婚しなかった、とかじゃあないんだよね?」
「私がお邪魔だったから、じゃないんだよね……」

 そう言って泣き出したヴィヴィオ、なのはが優しく声を掛ける。

「泣かないの、別に邪魔だとか思った事はないし、きっかけさえ有れば、もっと早く結婚してたかも知れない」 
「でもね、体が治るまでは、結婚しないって決めてたから」
「もし、私が死んでしまったら、残されたユーノ君やヴィヴィオはどうなるの?死んだって死にきれないわよ」
「それにね、二人分の命を天秤に掛ける勇気なんて、持ち合わせていないわよ」

「ママ……」

 もう言葉は要らなかった。
ひとしきり泣いて、二人で抱き合って眠った。
触れあった体より、なおいっそう、ふれ合った心が温かかった。
この夜以来、親子の絆はいっそう強くなった。 















作:次回、エリオとキャロが婚約宣言?



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第14話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/26 21:53
コンコン

「キャロ、ちょっと良いかな?」

 その晩、いやに真剣な顔で、エリオがキャロの部屋に来た。

「大事な話があるんだ」

「大事な話?」

「多分、フェイトさんは忘れていると思うけど、後で話さなければいけない、大事な話」

「何?それ」

「来月いっぱいで、フェイトさんの、保護責任者としての期間が、終了するんだ」

「えっ、それはどう言う事?」

 ミッドチルダでは、法律上、保護責任者としての期間は、18才の誕生月の最終日までとされていた。
正式に、養子縁組をしていない以上、もう赤の他人なのである。
因みに、親や保護責任者の同意無く、結婚出来るのは20才以上になってからである。

「僕は、先月で終了していたんだ」
「キャロも、来月いっぱいで終了するんだ」
「だから、どうしようって話なんだ」

 キャロは、そう言われてはっとする。
このまま、フェイトさんと一緒いられるには、どうするか?
そして、エリオと一緒に暮らすには、どうするのか?
現実的な問題が二人にのし掛かっていた。

「実はキャロ、このことで、ティアナさんに相談してみたんだ」

「ティアナさんは何て?」

「今の内に婚約しなさいって言われた」
「フェイトさんを後見人にして、誰か立ち会って貰って婚約すれば、関係は、切れることなく一生続くって」
「こんな話、突然迷惑かな?」

 キャロは暫くボーっと考えて、頬を赤く染めながら答えた。

「ううん、迷惑じゃないよ、ホントに私で良いの?」

「僕はキャロが好きだから、大好きだから、一緒に暮らしたい」
「こんな僕だけど、プロポーズ受けてもらえますか?」

 すかさず取り出されたのは婚約指輪だった。

「謹んでお受けします」

 そう答えたキャロの目に涙が光っていた。

「じゃあ、明日の朝、フェイトさんに話そう」

 そして二人は激しく求め合った。
すぐ下の部屋に居るフェイトさんが、良い迷惑だった事は知るよしもなく。






 翌朝、

「「フェイトさん、大事な話があるんですが、なのはさんも聞いて下さい」」

 改まって話をする二人、なのはもフェイトも最初は驚いていたが、優しい眼差しで認めてくれた。
これで、婚約は成立、結婚は、キャロが二十歳の誕生日を迎えたらと言う事で、話が付いた……と思ったら、
ヴィヴィオがかみついた。

「なんで私を立会人から外すの?最強の立会人は私でしょう?」

 と怒っている。

 そう、ヴィヴィオは、将来、ベルカ聖王教会を背負って立つ人なのだ。
将来の就職先はベルカ聖王教会、職業は王様である。
まあ、何とも贅沢なお話である。
将来の王様が立会人なのだから(笑

「結婚式の時の司祭は、私が勤めます」
「夫婦喧嘩とか、浮気とか、離婚なんて、絶対許しませんからね」

 恐ろしい人に釘を刺されてしまった。
もしそんな事になったら、教会そのものを敵に回す事になる。
もの凄いプレッシャーに、エリオもキャロもタジタジだった。






 話は遡る事2年前、なのはは、教会の騎士、カリム=グラシアから、相談を受けていた。
ヴィヴィオを将来、教会のトップに据えたいと言うのである。

 現在、協会本部では、司祭が不在である。
前司祭は、ことも有ろうか、重要な宝物を犯罪者に売り渡してしまい、罷免された。
他の教会にいる司祭では、司祭としての身分が違う為、本部の司祭は勤められないのである。

 そのため、カリムが教会の代表代行を勤めていたのである。

 現在、ベルカ自治領では、管理局の介入を許してはおらず、自治領における政治、
治安の維持などは全て教会が行っているのである。

 だが、それを快く思わない管理局幹部も多く、ことあるごとに、難癖を付けては介入しようとして、
そのたびに、政治的ないざこざを起こしていた。

 カリムは一計を案じていた。
今は自分と、なのは達のパイプがある為、管理局との関係は良好に保てている。
しかし、自分の後を担ってくれる人材は、今のところ教会には居なかったのである。

 そこで目を付けたのが、ヴィヴィオだった。
彼女は、無限書庫司書の資格を持って、管理局に出入りしている。
管理局内に非常に顔が広く、彼女のファンクラブまで存在しているほどだ。
自分の後継者としては、打って付けである。

 おまけに、聖王のクローンであり、聖王を名乗る資格は充分にある。
聖王として教会のトップに立てば、司祭の問題も、管理局との関係も全て片が付く。
だからこそ、なのはに相談を持ちかけた訳である。

「やだよ、そんな堅苦しそうで面倒くさいの」
「それに、陛下って呼ばれるの好きじゃないし……」

 初めは、そう言ってだだをこねたヴィヴィオだったが、なのはの説得に応じる事になる。

「これはヴィヴィオにしかできない事なの、それにいきなり王様をやれって言う訳じゃあないから」
「まずは、アルバイトで王様見習いってことにしよう」

 こうして彼女の『御公務』が始まった。

 髪の毛を頭の後ろで一つに纏め、小さなティアラをちょこんと載せた青いドレスの少女は、それは美しかった。
まるで聖王女オリヴィエが再臨したのだと噂になった。

 マスコミには、まだ子供である為、実名は伏せられ、有る程度の情報が公開された。
それによると、JS事件の時、天涯孤独となった少女が居た。
管理局員が引き取り、養子として育てていたのだが、たまたま検診に訪れた聖王病院で、
その容姿が、オリヴィエの肖像画によく似ていた事、同じオッドアイであったことから、
冗談のつもりでDNA鑑定した所、聖王家の末裔である事が確認されて、大騒ぎになったとの事であった。

 ヴィヴィオは、件の、青いドレス姿で孤児院や病院、老人ホームなどを慰問する。
それは、合う人に癒しと勇気を与えてくれた。
神が降臨したと言う人も居たほどだった。

 こうして、ヴィヴィオは、将来の教会を、背負って立つ事が、決定したのである。













作:次回、いきなりスクールがピンチ、定員割れ?



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第15話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/28 07:23
 二月上旬の某日、その日の会議は、もめていた。
一通りの学校行事は決定した物の、生徒が定員割れしそうなのだ。
1年、2年の1~3組はどうにか集められそうなのだが、問題は4組、
召喚師、医療魔術者が集まらないのだ。
今のところ、1年生2年生予定者、合わせて20人しかいない。
これは、由々しき事態である。


 今まで、召喚師と言えば、召喚獣を召喚して、戦闘支援を行うだけの、あまり役に立たない存在だったが、
スバルのおかげで、その利用価値は、計り知れない物となりつつあった。

 その利用価値と、一般常識のズレを解消しない限り、あまり人を集められそうにはないのだろう。
まあ、元々、召喚師自体、レアスキルで使い手が少ないのだ。
医療魔法にしても、簡単な回復魔法なら誰でも使うが、高度の医療魔法となると、超レアスキルである。
使い手としては、更に少ない。

 会議の結果、足りない生徒を一般募集する事になった。
スカウト、推薦、面接入試、なんでもいいから、とにかく後60人、集めなければならない。
スクールは、発足前から、いきなり躓いた形となった。

 ギンガとシャマルが、エリオとキャロが各地の魔法学院を回ったり、人づての噂を元に生徒を捜す。
ティアナとなのは、ヴィータは、ネットに生徒募集の広告を出し、応募者に面接する。
こうして、多忙な二月が過ぎ、どうにか予定をクリアして、スクール発足の準備が出来た。

 3月上旬、校舎が、寮が、体育館が次々と完成していく。
最後まで完成の遅れていた職員マンションも、3月の12日にどうにか完成し、翌日から入居となった。

「なのはさん、フェイトさん、今までありがとうございました」
「今日からキャロと一緒に暮らします」

「寂しくなったら何時でもいらっしゃい、ここは、あなた達の家でもあるんだから」

「はい、週に一度は遊びに来ますね」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん……」

「大丈夫だよ、そんなに遠くへ行く訳じゃあないし、ここからなら30分で来られるじゃないか?」

「引っ越し手伝わなくて大丈夫?」

「大丈夫ですよ、私、召喚師だし、二人の荷物と言っても少ないし、転送するだけの事ですから」

 そう言うとキャロは、纏めた荷物をさっさと転送してしまった。

「後は向こうで、荷物をほどいて完了です。」

「なんか随分便利なのねえ、召喚師って」

「引っ越しやさんとか始めたら、儲かりそうです」

「じゃあ、行ってきますね」

 そう言って、二人は、魔法陣の中へ消えていった。

 エリオとキャロは、自分たちの愛の巣へやってきていた。
荷物をほどくと、その中に、引越祝いと書かれた包みを見つける。
中に入っていたのは、コンドーム1グロス、「まだ子供を作っちゃダメよ」と書いた紙が添えられていた。
苦笑いするしかない二人だった。

 自分たちの引っ越しを済ませると、今度は他の先生方の引っ越しを手伝う。

「ヘ~便利だねえ、流石はキャロだ」

「魔法ってのは、結構便利なもんなんだねぇ」

「Oh My God」

 それぞれの先生方の荷物を転送する。
ティアナは流石に荷物が少ない。
ビリーは、奥さんや娘さんが居るので、凄い荷物である。
それでも関係なく、転送出来てしまうのが凄い所だ。
月花先生は、なにやら古い本や、訳の分からない図面、細かな引き出しのあるタンスみたいな物など、
変わった物が多かった。

「じゃあ僕たちは、足りない家具を、買いに行ってきますから」

 取り合えず足りない家具や食器を次々に買っていく、買った物はすぐに転送する。

「へ~魔導師ってのは便利なもんだ」

 店のおじさんも感心しきりである。
これがきっかけで、その後、転送魔法の出来る魔導師の需要が、逼迫する事になるとは、二人はまだ知るよしもない。
何しろ、流通業界に大きな革命をもたらしたのだから。

こうして、3月が過ぎ、スクールが開校する。
いろんな人のいろんな夢を載せて。








第1部開校編完







作:次回生徒設定資料公開



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School 設定資料2
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/29 20:34
スクールの生徒側設定資料です。
全員オリキャラです。

1-1

ロサード・デ・ララグリマ:男
1年4馬鹿の一人、ヴァンサン、ハウメとは幼なじみ、
ソリスが気になっている。
盾と剣が融合した様なアームドデバイスを所有、ベルカ式
セカンドフォルムでは、盾が肩の位置へ移動、剣が外れてツインタガーとして戦う。

ヴィーニャ・デルマル:女
何故かハウメに思いを寄せている、容姿も性格も目立たない普通の子
官給品の杖型デバイスを使っている。ミッド式

スクラティ・アテンザ → スクラティ・ナカジマ:女
戦闘機人、スバル達の妹に当たる。
ISは振動破砕、電子レベルの超々高周波であらゆる物を両断する。
ヴァロットがちょっと気になる。

1-2

ハウメ・セラ・レセルバ:男
1年4馬鹿の一人、ヴァンサン、ロサードとは幼なじみ、
双頭槍のアームドデバイスを使っている。ベルカ式
エリカと付き合いたいらしい。

ヴィラ・エミール:女
ツインテールのめがねっ子、(美由希さんが、かぶっている、なのは談)
剣型アームドデバイス所有、ベルカ式
バローロに惚れている?

ソリス・カオール
ショートヘアが可愛い美少女、(はやてちゃんが被ってる?、なのは談)
デスサイズのアームドデバイスを持っている。
ミッド式


1-3

バローロ・R・ブッシア:男
1年4馬鹿の一人、かなり破天荒な性格、「俺のギターを聞きやがれ」は口癖、
職員からも、生徒会からも目を付けられている。常に騒ぎの中心にいる、学園の超迷惑男。
エレキギター型インテリジェントデバイスを持っている。音波魔法というレアスキルを持っている。
こいつのデバイスにはちょっとした秘密がある。ベルカ式

キュヴェ・エリカ:女
1年のアイドル的存在、年相応なかわいさが溢れている。
通称エリカ、明るく活発な少女。エリオ先生に夢中「たとえ婚約者が居たって」
マシンガン型アームドデバイス(トンプソン)所有、カートリッジが210発入るドラムマガジンが魅力、
やる事が、かなり過激である。
転送魔法を練習中、魔力変換資質「電気」を持っていることが判る。
セカンドフォルムでは、ロングライフルに変化し、魔力変換資質と合わせてレールガンを放つ。

レヴ・ドトーヌ女
ボウガン型アームドデバイス所有、ミッド式、
ヴァンサンに密かな思いを寄せる。



1-4

ピノ・グリージョ:女
魔法学院からのスカウト、14才、回りより年齢が低い、見た目は11才位にしか見えない。
通称ピノ、首飾り型インテリジェントデバイス所持、クラスのマスコット的存在。
表と裏が非常にはっきりした性格、裏の性格はかなり黒い。
まだ未熟、転送と召喚しかできない、
今、エマルジョンコレクトを習得中


アスティ・スプマンテ:女
面接試験合格組、非常に影が薄い、居ても気付かれない事が多い。
実は、海賊ギルドが送り込んだスパイ、かなりドジっ子な性格
籠手型ストレージデバイスを所持。ベルカ式
まだ未熟、転送と召喚しかできない、
今、エマルジョンコレクトを習得中


ヴァンサン・ロシェット:男
本編主人公の一人、通称ヴァロット、ロサード、ハウメ、バローロを合わせて馬鹿四人組と呼ぶ。
杖型ストレージデバイスを所持、ベルカ式、エリカを巡って、ハウメと対立する。
転送と召喚しかできないが、それを武器に戦う。
6面防御陣、6面結界陣、攻撃転送、エマルジョンコレクト、すっぽんぽん光線と言った魔法を使う。


2-1

クロ・デ・ロバック:男
通称クロ様、ツインタガー型アームドデバイス所有、生徒会第一書記
かなりネコ的な性格、神出鬼没、

エミリオ・プリモ:男
大剣型アームドデバイス所有、通称プリ男、
生徒会第一会計、性格が暗い
セカンドフォルムで、ただでさえでかい剣が更に大きく禍々しく変化する。



2-2

ロロニス・ヒュメ:男
全くつかみ所のない性格、何を考えているやら、よく分からない。
生徒会第一庶務、ブーメラン型アームドデバイス所有、ベルカ式
セカンドフォルムは、ブーメランが二つに分離して大型のブレードになる。
二刀流だ


キァンティ・クラシコ:女
かなりSの女王様的性格、アマローネとキャラがかぶる。胸は小さい。
鞭型アームドデバイス(デスウィップ)所有。
セカンドフォルムで、鞭が二本になり、更に二刀流にチェンジする。
生徒会第2書記



2-3

ネロ・ダヴォラ:男
通称、暴君、または、めがね君、かなり自己中な男、ジャイアンな性格、これでも生徒会長。
デバイスはアームドデバイス、砲撃鎧(ランチャーアーマー)見た目はガンタンクに似ている、ミッド式
簡易ジャケットは、ガンダムXに似ている、正直、こっちで戦った方が強い気がする。


アマローネ・D・ヴァルポリーチェ:女
自称学園の女王、胸もでかいが態度もでかい、かなり女王様な性格、通称アマネ、
生徒会副会長、デバイスは、アームドデバイス、ダイナマイトバズーカ(2連バズーカ砲)ベルカ式


2-4

フィノ・ハラーナ:女
容姿端麗、均整の取れたプロポーション、学園での人気ナンバー1美少女
見た目と裏腹に、かなりMADな性格、生徒会第2会計(忍さんが被っている、なのは談)
腕輪型ストレージデバイス所有、ベルカ式
夏休み中に、召喚獣「カトリーヌちゃん」に新システムを組み込む、
新システムは、コクピットとユニゾンリンクシステム

モスカート・ダスティ:男
エリオ先生と人気を二分する色男、かなりもてる。生徒会第2庶務
杖型ストレージデバイスを所持、ベルカ式、かなりいい加減な性格
魔力はかなりの物、相当大きな物や、かなりの距離を転送することが出来る。
近いうちに、次元の壁を越えそうだ。



作:次回、波乱の入学式、なのはさんキレる



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第16話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/03/30 20:05
「オッス!俺の名はヴァンサン・ロシェット、通称ヴァロットだ!よろしくな!」
「実は今、大変不味い状況になっている。これから、先生方にお説教を喰らう所だ」
「何故かと言えば、隣にいるバローロに唆されたのが、運の尽きだった」

 4月2日、入学式。

「……で有りますからして、皆さんは管理局の未来を背負って立つ人材として、………………」

 長い長い来賓の挨拶に、うんざりしながら、入学式を迎える生徒達。
どこの世界でもよく見かける光景だ。

「以上をもちまして、入学式を終了します」

 次の瞬間だった。

「俺のギターを聞きやがれ!」

 ギターを持ったアホが、一人、舞台に駆け上がった。

「いいぞー!やれやれ!」

「そう言ってクラッカーを焚いた馬鹿3人が、俺とハウメとロサードだった」
「だが、バローロの奴は、ことも有ろうに音波魔法を使いやがった」
「音波魔法は、曲によっていろいろな効果をもたらす。今回は頭にガツンと来るヘビメタロックだった様だ」

 曲を聴いた生徒達がばたばたと倒れる。
途中で誰が投げたか分からないが、パイプ椅子が飛んできてバローロに直撃する。
音が止まった所で、校長先生がバローロの前にやってきた。

「そこの君、ちょっと頭冷やそうか?」

 指一本で放たれたディバインバスターは、バローロを飲み込んで、壁を直撃し、大穴を開けた。
新年度初日から、いきなり体育館を損傷してしまう、波乱の入学式だった。
そして現在、バローロ他3名は、校長先生のお説教を受けているのだ。

「あなた達は、明日から、特に念入りにしごいてあげますから、覚悟なさい」

(いや、あなたにそう言われると、脅しや冗談に聞こえないから怖いよ)

 なのは校長は、生徒にとって憧れであり、目標であり、畏怖の対象である。
士官学校では、伝説の先輩として話が残っている。
僅か10才で士官学校に来て、半年で首席卒業した天才であり、
士官学校での、模擬戦300戦無敗の記録は、誰にも破られていない。
その後、犯罪者からは、『白い魔王』と恐れられ、管理局3魔王とさえ呼ばれている。
そして、やると言ったら、絶対にやる人なのだ、だから怖い。





「……話は、以上です」
「今日はこれで終わりですが、明日は、訓練服に着替えて、海上訓練施設に集合です。遅れない様に」

 こうして、波乱の入学式は、どうにか終わった。







翌日、海上訓練施設

「今から、1年、2年を決定するテストを行う、俺は体力測定担当のビリーだ、よろしくな!」
「じゃあ、まずは、軽く100m走から行こうか?」

「こらー!おまえら!20秒も切れんのか!?」

 半分近くが、20秒の壁さえ切れなかったらしい。

「次は、背筋力だ、その次はジャンプ力だ」
「最後は持久力だ、この訓練施設を、3周走って貰おう」

 この訓練施設、機動六課時代に比べると、約5倍の広さに造成されていた。
1周走るだけで、5~6km有るのだ。

「き、きつい、死ぬ~」

 流石にきつかった。
途中、リタイヤしようとした奴もいた様だが、ビリー先生は、それを許してくれなかった様だ。

「どうでした?ビリー先生」

「あ、校長、とんでもないですよ、体力なさ過ぎて、この先どう鍛えていこうか悩みます」

「やはり、最初の半年は合同で、体力作りからでしょうか?」

「そうなりますね」

 さて、気を取り直して、午後からは魔力測定、
測定器に向かって、ありったけの魔力を放出して、魔力値と、魔力量を測定する。

 こうして、1年で何とかなりそうなのを2年生に、そうでないのが1年生に選ばれた。
ヴァロット他3人はいずれも1年生だった。



 ピンポンパンポーン
「1年、2年、各4組の生徒は、グラウンドに集合して下さい」
「ただいまより、召喚獣をお配りします」

 そう、ここの生徒は、まだ召喚獣を持っていないのがほとんどだった。

「全員に1匹ずつなんて、太っ腹だよな~」

 誰かがそう言う。

「確かにそうだ、でも、ろくなレベルじゃあないだろ?」

 そうだ、数を揃えようとすれば、低いレベルの召喚獣が関の山だ。
どうやっても、そんな大量に揃えられる訳がない。

「まあ、貰える物は貰っておこう、その辺のハトよりはマシだろう」

 誰もがそんな考え方だった。
しかし、期待は良い方向に裏切られた。

「ジ、ジライオウじゃないですか~」

 Aクラスの召喚獣だ。
何て太っ腹なのだろう、いきなりAクラスとは驚きである。

「みなさ~ん、並んで下さいね、一人に一匹有りますからね」
「これが、飼育と管理のマニュアルですよ~」

 キャロ先生が、忙しそうにジライオウ達を配っていく、
配り終わった頃、誰かから質問が飛ぶ、

「キャロ先生、そんなに配っちゃって大丈夫ですか?先生の召喚獣居なくなりません?」

「チッチッチ、甘いですよ、私のは他にいますから」

 そう言って、キャロ先生が召喚したのは飛龍だった。
AAクラスの召喚獣、しかも、滅多にいない、超レアものの飛龍だ。

「この子は、私が卵から孵して、育てたんですよ」
「他にもこんな子がいます」

 ズン!
 突然地震が起きたかと思った。
巨大な魔法陣から出てきた、巨大な化け物、もとい、龍の様だ。
身長は50mぐらいありそう。

「し、真龍だ~」

 SSSクラスの召喚獣だ、一体、どうやって手に入れたのだろう?
普通、召喚獣は、自分で捕まえて召喚契約しなければならない。
生徒達の間に、キャロ先生最強説、ランク詐称疑惑がまことしやかに囁かれた。









作:次回、生徒会決定



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第17話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/01 21:17
 入学式から三日も経つと、生徒達の間で、主導権争いが激化してくる。
ヴァロット達4名もそう言う口だったのだ。

 一番最初に、かまして頭を取る。
そうすれば、その後の学園生活がいろんな意味で有利になる。

 しかし、やる事が、いかんせんアホすぎた。
後先考えずに、突っ走った揚げ句がこの座間だった。

 先生方は、たとえ暴力沙汰が起きようが、静観の構えである。
この中から、頭を取る奴が現れたら、それを押さえればいい、と言う考え方であった。

 しかし、中には、なかなか頭の良い奴もいる訳で、生徒会の発足を進言してきた者が居た。
反対する理由もないので、次の日、全生徒を集めて即日立候補、即日選挙となった。

「あーあ、面倒くせえ」
「生徒会なんて真面目にやる奴居るのかね」

 俺とロサードがそんな事を話していると、バローロが口を出す。

「立候補する奴も、頭が取りたいのさ」
「でも、力ずくじゃあ出来ないから、せこい手を使ってるだけの事さ」

「そんなもんかねえ?」

 などと、愚痴っている間に生徒会役員は決定してしまった。
それぞれの役に一人しか立候補してなかったので、そのまま決定らしい。

「なんか随分と簡単に決まったな、本当にこれでイイのかよ?」

さて、それでは役員の顔ぶれを見ていこう。

 まずは会長、2年3組、ネロ・ダヴォラ、かなり自己中で有名な奴だ。
とても、会長に向いているとは思えん。

 副会長は、同じ2-3のアマローネ・D・ヴァルポリーチェ、もの凄い胸がでかい。何でも1m有るとか。
ルックスがどうのよりも、性格が女王様だ。

 書記は2名、第一書記のクロ・デ・ロバック、2年1組、通称はクロ様だ。
どこにでも現れる神出鬼没な人だ。

 第二書記は、キァンティ・クラシコ、2年2組、ルックスは、まあまあだが、性格がどうにも怖い。
副会長同様、Sの女王様だ。

 会計も2名、第一会計のエミリオ・プリモ、2年1組、通称プリ男、もの凄い根暗だ。
第二会計は、2年4組、フィノ・ハラーナ、容姿端麗、均整の取れたプロポーション、彼女にしたい女の子ナンバーワンだ。
でも何故か、彼女と付き合った男は居ない。

 最後が庶務2名。
第一庶務が、2年2組、ロロニス・ヒュメ、全く何を考えているのか分からない、思いつきで行動するタイプだ。

 第二庶務が、2年4組、モスカート・ダスティ、どこかのホストクラブにいそうなタイプ。
典型的な女たらしだ、そして最も俺の嫌いなタイプでもある。

 まあ、生徒会も決まった事だし、これで少しは落ち着いた学園生活が送れるかと思いきや、
俺たち4人は、ことあるごとに、生徒会と衝突する事になる。





 何はともあれ、翌日から授業が本格化する。

「このウジ虫共!良く聞け!俺が本日より、おまえらを鍛える事になったビリーだ!」
「俺の授業中は、口答えはゆるさん!おまえらが答えて良いのは、イエスのみだ!『サー』を付けろ!」
「分かったか?!」

「ハイ!」

「ハイじゃあねえだろ!イエスだろ!『サー』を付けろ!」

「イエッサー!」

「ヨシ、訓練の内容を説明する」

 こうして、約半年間、午前中は、全てのクラス合同の、体力強化メニューの授業となった。
何でも、97番世界の、とある国の軍隊での訓練方法らしい。
重さが何十キロもある、リュックを背負い、銃の形を模した鉄の塊を持ってのマラソン、ダッシュ、障害物走など、
とても洒落にならないきつさだ。

 こんなことを半年も続けたら、そりゃあ体力付くでしょ、なのは校長も言ってましたね、
魔法を使うには、まず体力と根性が必要だって。

「き、キツイ~」

「おい、そこ、誰が休んで良いと言った?罰として腕立て100回だ」

「ええ~」

「なんだその口答えは?200回追加だ、分かったな?」

「……イェスサー」

 まさに鬼の仕打ちだった。

 午前中だけで、このきつさである。
午後は一体、どうなるのやら?










作:次回、午後からの授業で、なのはがフルボッコ?



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第18話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/03 07:55
「気持ち悪くて何も食えねー」

「食べとこうよ、でないと午後からまたキツイよ」

「そうだな、とにかく喰わねーと力出ないし」

「同じく」

 入学式以来、俺たち四人は、つるんでいる事が多くなっていた。





 午後の授業、
2時間通しの授業が2限準備されていた。


 1年1組と4組は合同で、高町士郎先生の授業だ。
体育館に、畳という物を敷いて、その上で格闘技の授業を行うらしい。

 高町士郎先生……なのは校長の父親にして、次元世界最強を誇る豪傑だそうだ。
何でも、SSSランク4人を同時に相手して、僅か3分で全員倒したと噂に聞いている。
普通、あり得ないだろう?SSSランクと言ったら、神の如き存在だ。
そんなのを、4人も相手にして、しかも魔力なしで勝つなんて、常識ではあり得ない事だ。

「さて、今日から、おまえらには『御式内』という武術を教える」

「それと魔法は禁止だ、使っていると、余計に痛い目に遭うぞ」

 それに、校長先生も授業の様子を見に来ていた。

「じゃあ、まず技の一つも見せようかな」

「なのは、ちょっとこっちに来てくれ」

「さて、なのは、俺を投げ飛ばすなり、殴るなりして畳に転がしてみろ、出来る物ならな」

 なのは校長は、渋々士郎先生の胴衣に手を掛け……た、その瞬間、

 グシャ

 何が起こったか分からないが、何かの力で、なのは校長が、いきなり畳の上に、潰された形で、すっころんだ。

「何をやったんだ?魔法か?」

「いや、魔力は感じなかったぞ」

「あいたたた~、いきなり酷いよお父さ……きゃ~~~~~」

 なのはが、立ち上がろうと掴んだのは、士郎の胴衣の袖だった。
その瞬間、勢いよく壁まですっ飛ばされて、顔から壁に激突する。

「はっはっはー、これが御式内だ」

「この武術はな、攻撃を仕掛けた方が、確実に負ける武術なんだ」

「そんな事言ったら、最強じゃあないですか?」

 誰かが、ぽつりとそう漏らす。

「まあ、有る意味最強だが、離れた所から、飛び道具を使われたら、負けるがな」
「だが、実際の戦闘ならどうだろう?」
「おまえ達魔導師は、欠点だらけだ」

「あのう、欠点とは具体的に、どの様な物でしょうか?」

「おまえら、自分たちで、気付いてないのか?」
「おまえらは、遅すぎるんだよ。おまけに、隙だらけだ」
「攻撃だって、非常に避けやすい」

 いきなり、核心を突かれていた。
しかも、今まで誰も思っても見ない事だった。
確かに、動きの速い相手に、魔法はほとんど当たらない。
魔力を、威力に代えたアームドデバイスで、ぶん殴るか、斬りつける位しか、有効な手段はない。

「シュート」

 いきなりだった。
なのは校長が、アクセルシューターをぶっ放した。
弾数4発、士郎先生に向かって飛んで行く、士郎先生は避けもしない。
と思ったら、士郎先生の体を、魔力弾が通過したかに見えた。
避けられた弾が、向きを変えて、また士郎に襲い掛かる。

 今度は、生徒にも見える早さで、避けてみせる。
避けきった、最後の1発を士郎が手で掴む、そして、そのまま他の弾に、投げてぶつけた。

 ドン!

 目の前で大きな爆発が起きる。
3発が消滅した。
残り1発、飛んできたそれを、また手で掴む、

 ボシュ!

 今度は握り潰してしまった。

 士郎先生、あなたは化け物過ぎです。
魔導師の常識が通用しません、一体何なんですか?さっきのアホみたいな握力は?
生徒達は唖然とするしかなかった。

「まあ、こんな物だろう」
「見たとおり、非常に避けやすいだろ?」

「…………………」

「おい、なんかリアクションしてくれよ、寂しいじゃないか?」

「普通は出来ません、あんな事」

「そうか?俺は簡単に出来たけどなぁ」

「大体、あんな早さで飛んで来る物を、避けられる方がどうかしています」

「おまえら、魔法に頼りすぎなんだよ、なまじバリアとか有るから、避ける技術がなさ過ぎるんだ」
「それに魔法は光っている、光っていて弾速が遅いから、簡単に目で追えるし、避ける事も簡単なんだ」
「それが魔導師の欠点その1だ」

「その1って、他にまだあるのですか?」

「まだいくつかあるぞ!」

「じゃあ、なのは、そこから一番得意な技で、私を倒して見せなさい」

 今度は、フル装備のなのは校長が、ディバインバスターをぶっ放そうとしていた。

「ディバイ~~~~~~~~ン・バスタ……」

「はいそこまで~~~~~」

 一瞬だった、目の前にいたはずの士郎先生が一瞬で消えて、なのは校長先生の喉元に、刀を突きつけていた。

「これが欠点その2だ」
「おまえら魔導師は、隙だらけだ。魔法を打つ、その前の数秒は、完全に無防備だ」
「まあ、何か唱えなくても、発動出来る魔法がある様だが、実際に打つと思ってから、発動するまでは、一瞬の間がある。」
「それだけあれば、俺なら10回は殺せるぞ」

「そしてこれが欠点その3だ」
「捕まれてしまえば、シールドもバリアもまるで使えない」
「この状態で、刃物で刺されたら一貫の終わりだな」

「そして最大の欠点は、体力がなさ過ぎる事だ」
「午前の授業では体力を、午後の授業では、これらの欠点を克服していく」
「そのための御式内だ。魔法は出来る限り使うな、使うとすれば、トドメを刺す時まで、取っておけ」
「魔力は使えば減るんだろ?そんな空欠で戦えるか?」
「と言う訳だ、じゃあ授業を始めるぞ、まずは柔軟体操からだ」




こうして、何となく楽しい午後の授業が始まった。










作:他の先生の授業も見学



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第19話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/03 19:25
「今月中に、小手返し、四方投げ、受け身を覚えて貰うぞ!」

「じゃあ、まず一人ずつ、俺に掴みかかってこい!」

 そう言って士郎先生が、促す。
それでもって、真っ先につかみかかっていったのは、ロサードだった。
しかし、ロサードは手を捕まれた瞬間、簡単に投げられた。

 いや、投げられたと言うよりは、自分から飛んだ様にも見える。
一体どうなって居るんだか?不思議な武術である。

 ヨシ、俺が行こう、実は俺、召喚師の割には、ちょっとだけ腕っ節にも自信があった。
ケンカは、そこそこ強いし、身体強化魔法も得意だ。
こっそり、身体強化魔法を使って、捕まえれば、何とかなると思った。

「どわー」

 天井に叩き付けられ、更に畳に落下する。

「だから言ったろう、魔法なんか使うと、余計痛い目に遭うと」
「この武術は、自分の力は、1割程度しか使わん。後は全て、相手の力を利用しているだけだ」
「力を込めれば込めるほど、酷いダメージが返ってくるぞ」

 何て反則な武術だろう?これでは、どんなに強くても、勝てるはずがない。
これを身に付けたなら、一人でも、かなり戦える様になるだろうと思った。




一方、変わって2年4組、キャロ先生の授業である。

「皆さん、これからは召喚師の時代です。召喚師として一人前になれれば、就職先は引く手あまたです」
「より高度な召喚と、転送魔法を身に付けて下さい」
「これからは、召喚師は、ほとんど戦場に出る事はなくなります。しかし、最も重要なポジションになるのです」
「ハイそこの君、従来、武装隊の戦場への投入と回収は、どうやっていましたか?」

「ええと……確かヘリで運んで、またヘリまで自力で返ってきて貰うとか……」

「他には?」

「自力で飛んでいって、自力で返ってくるとか……」

「まだありますね」

「転送機で、現場投入します」

「その場合の回収方法は?」

「最初に投入された場所まで、自力で帰り着く事が絶対条件です」



「皆さん、分かりますか?これらのやり方の大きな欠点が?」
「もし、現場でやられて、重傷を負ってしまったら、帰ってこられないのです」
「そんな状態で、敵に見つかれば確実に殺されます。これが、今まで殉職者が多かった理由です」


「先生、それをどうやって克服するのですか?」

「簡単ですよ、戦場へ出る前線メンバーと、召喚契約するのです」
「召喚による強制回収なら、例えどんな状態になっていても、どこにいても、自分の手元に、呼び寄せる事が出来るのです」
「だから、召喚師は、戦場には出ません、基本的にはですけどね」

「じゃあ先生、どう言う時、戦場に出るのですか?」

「召喚契約をしていない人が、戦場でやられた場合です」
「近くに契約している人がいれば、その人と一緒に回収は出来ます」
「そうでない場合は、体を張って自分で回収に行きます」

「じゃあ、もし、その時、敵が襲ってきたら、どうするのですか?」

「そのための召喚獣です、召喚獣に時間稼ぎして貰っている間に、回収して逃げます」
「もし、どうしても戦わなければいけない時のため、士郎先生に、格闘技を教えて貰っているのです」
「とにかく、召喚師は、チームの命綱なのです、後は医療魔法が出来れば、鬼に金棒です」



 キャロ先生の授業は、生徒達にとって、非常に為になる授業の様だ。
生徒達が、真剣に耳を傾け、ノートを取る。
この数年先には、殉職者を、ほとんど出さない体勢が、取れる様になるのである。





 こちらは、1年2組の授業、月花先生だ。

「あー、まず、デバイスが槍とか杖の奴、棍を教えるから、そちらのグループに分かれろ」
「残った奴には、中国拳法の基本的な鍛錬法と組み手を教える」

 クラスの3分の2は槍や杖のデバイスだ、残りは剣だったり、ハンマーだったり、鞭だったりする。
まず、拳法組に丸椅子と、何本か釘を打った木片が配られる。

「おまえ達には、足腰の鍛錬として、空気椅子をやって貰おう、まずは軽く30分からだ」

 これはキツイ物がある。
まず、椅子の上に、釘が突き抜けた木片を、釘が上になる様に置く、その上に尻を10センチほど浮かせた中腰で、
手をまっすぐ前に伸ばして、拳を握る。

 これで、30分耐えろと言うのだ。
下手に尻を降ろそう物なら、ぶっすりと釘が尻に刺さる。
これは、また大変な授業だった。

「ヨシ、次は棍だ」

 生徒に次々と棍が配られる。
この木の棒が武器だとはとても思えない生徒もいる。

「先生、何故デバイスでやらせて貰えないのですか?」

「馬鹿者!棍一つ扱えん奴が、武器を使うなど、おこがましいにも程があるわ!」
「棍は全ての武器の基本であり、奥技だ。これを見ろ!」

 先生が腕に付けた機械を、操作する。
空中に映し出された大型モニターには、3対1で、模擬戦を始めようとする、月花先生の姿があった」
3人の中に、なのは校長も写っている。

「もしかして、管理局3魔王ですか?」

 誰かがそう尋ねる。

「そうだ、が、あの3人では、弱すぎて相手にもならなかったな」

 生徒から、どよめきの声が上がる。
そして、それは1分あるなしの映像だった。
一瞬にして3魔王が敗れ去っていた。
最初の二人は棍で、最後の一人は素手で倒している。

「これを覚えられたら、俺たち最強になれるかも?」

 なんて言っている生徒も出るほどだった。

「じゃあ、舞花棍行ってみようか?」

 ヒュォォオオオ~~~~

 月花先生がもの凄い早さで棍を振り回す。
振り回すと言うよりも、綺麗に回転させている、信じられない早さで。
その状態で体の右から左、前、後ろと回す場所を変えていく。
時々、びしっと動きを止めると、独特の構えになっている。

「今やった棍の回し方と、型を完璧に出来るまで、何度も練習して貰う」

 早速棍を回し始める生徒達、しかし、先生の様には上手く行かない。
槍だったり、杖だったりのデバイスで慣れているはずなのに、あそこまで早く、回す事が出来ないのだ。 
おまけに少し振り回すと、自分を叩いてしまったり、すぐ近くの誰かを叩いてしまう。

「うう、なんで、こんな簡単な事が出来ないんだ?」

「それは、あんたが武器をなめてた、証拠だよ」
「単純な武器ほど、使い手の力が、はっきり現れる物さ」
「とにかく練習有るのみだ、授業中は、ずっと回し続けて貰うよ」

 その時だった。
向こうの方で、誰かが「ぎゃ~~~~~」と悲鳴を上げる。

「だらしないねえ、まだ15分しか経ってないのに」

 どおやら、釘の上に尻を降ろしたらしい。








作:次回で、残りのクラスの授業をご紹介します。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第20話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/04 15:48
 こちらは、2年3組の授業、ティアナ先生の授業だ。
場所は海上訓練施設。

「ハイ、よく聞いて下さい」
「これからは、ポジション名と、ポジションの位置が、変わります」
「フルバックだった召喚師を、前線司令部まで下げる代わりに、センターガードが、後ろへ下がって、センターバックになります」
「センターバックの役割は、最終防衛ラインの維持と、最前線への援護射撃です」
「とにかく誰よりも早く、誰よりも遠くの敵を、確実に倒す事が要求されます」

 ティアナ先生が、コンソールを操作する。
空中に現れたのは、夥しい数のガシェットドローン、もちろんヴァーチャル映像なのだが、魔力が当たると消滅する。
味方のキャラもいる。
味方は、フロントアタッカー1体、ガードウィング2体である。

「味方に当てない様に、援護射撃でこの戦闘を終了させてみて下さい」
「後、ガシェットドローンが撃ってくる弾に当たると、痺れますよ」
「じゃあ、一人ずつ行ってみようか?」

「俺から行きます」

 そう言ったのは、生徒会長のネロだった。

「ランチャーアーマー、セットアップ」

 ネロのバリアジャケットは、普通じゃなかった。
まるで鉄の塊の様な、見た目ガン〇ンクの様な鎧なのだ。
おまけにバリアもシールドも無駄に分厚い。
両肩に大砲が1門ずつ、両腕にガトリングバルカンが、両足に3連砲がそれぞれ付いている。
背中のランドセルユニットには、大量のカートリッジが詰まっている。

「ファイヤー!」

 もの凄い砲撃が始まる。
しかし数秒後、突然砲撃が止まる。

「先生、魔力が尽きました」

 まだガシェットは十数機が残っていた。

「おまけに、重くて動けません」

 もう袋叩きだった。
まだ、バリアとシールドを張るだけの魔力は、維持していた物の、それ以上何も出来ない。
徐々に、バリアが破れ、シールドも壊れていく、それでも攻撃を通さない頑丈な鎧。
それも5分が限界だった。
プスプスと煙を上げて横たわるネロが居た。

「あなたはアホですか?」
「味方まで撃墜した上に、自分の魔力切れなんて、情けない」
「もっと考えて砲撃しないと、実戦だったら全滅してますよ」

 このネロという男、攻撃力だけならAクラスなのだが、魔力量と、体力に問題があった。
そして、性格も自己中なアホである。
これで、良く生徒会長に、立候補した物だと思うが、いかんせん、アホなのだから仕方がない。

「気を取り直して、次の人、準備は良いですか?」






 変わって2-1、2-2の合同授業

 ギンガ先生と、エリオ先生が教えるのは、模擬戦を通しての戦い方。

「フロントアタッカーは、正面から敵に斬り込んで、防衛ラインを押し上げる事が仕事です」
「生存率が高く、そう簡単には落とされない事が要求されます」

 と、ギンガ先生のお言葉、

「その防衛ラインを維持しつつ、更に押し上げたり、突っ込んでくる敵を、迎撃するのが、ガードウィングの仕事です」
「ポジションとしては、1対多数もあり得る厳しい所なので、より強くなる事が要求されます」

 とは、エリオ先生のお言葉であった。

「じゃあ、軽く模擬戦を行ってみようか?」
「全員で、あの旗を取れたら、あなた達の勝ちです」
「範囲は300×200mのこれだけのフィールドです」

 コンソールを操作するギンガ先生、訓練場の一角に光の仕切が出来る。
その一角の隅っこに、赤い旗が立っていた。

「あなた達は、あの青い旗を取られるか、全員倒されたら負けね」

 生徒達の後ろにも青い旗が立っていた。

「じゃあ、模擬戦やるよ~」

 両腕に、白いリボルバーナックルの、ギンガ先生がフロントアタッカー、エリオ先生はストラーダを構える。

「ストラーダ、フォルムⅢ(ドライ)」

 ストラーダが強力なビームの矛と化す、かなり本気だ。
そして80対2の模擬戦が始まった。

 数分後、生徒はほとんど全滅かと思った。
しかし、

「あー、僕の勝ちですですね」

 赤い旗を取った一人の生徒が居た。
クロ・デ・ロバック、2-1の生徒だ。

「そ、そんな馬鹿な、一人も後ろに通した事はないはず」

 愕然とするエリオ先生。

「確かに通していませんでしたよ、人間はね」

 そう、彼は、小さな黒い子猫に変身していたのだ。
その姿で、区切られた、フィールドの隅っこを、こっそり抜けて旗に近付いていたのだ。
最後の一人に、してやられた訳だ。

「やられたー、全く気付かなかったよ」
「でも、もっと真面目に授業受けようね、でないと強くなれないよ」

 まさに、神出鬼没なクロに出し抜かれた。
その日、クロは、クラスのヒーローだったという。





 同じ訓練場の一角、1年3組、ビリー先生の授業だ。

「このウジ虫共!訓練を始めるぞ!」

 相変わらずのビリー節が炸裂している。

「今日からこの時間は、射撃の訓練だ」
「おまえらのポジションは、センターバックと言うそうだが、主に援護射撃が仕事になる」
「援護射撃に求められる事は、絶対的な正確性だ」
「外せば自分の仲間が死ぬ、良く覚えておけ」

「イエッサー」

「デバイスが銃の奴は、自分のを使え、そうでない奴はこちらに集合だ」

 クラスの3分の1は銃のデバイスである為、自分の物を使用する。

「あのー先生、俺どうしたらいいですかね」

 バローロだった。
こいつのデバイスは、ギターの筈じゃあ?そう思ったが、何故と聞いてみる。

「このデバイスは、もう一つの姿があるんです」

 そう言って、ギターのネックの付け根に、マガジンを差し込む。
そうすると、ネックの先端からは銃口が出てきた。

「仕込み銃だったのか?」

「そうです、どんなマガジンでも刺さる、マルチポートになってます」
「実弾でも、カートリッジでも撃てる様に、自動的に口径も変化します」

「う~ん、だが、その形状では上手く狙えまい、こちら側に入れ」

 こうして射撃組も編成が終わった。

「今配った銃は、M1ガーラント狙撃銃だ」
「管理局に頼んで、魔力弾が打てる様に改造して貰った」
「カートリッジは5発入って、1カートリッジで、3発の魔力弾が打てる様に、なっているそうだ」
「つまりは、15発撃てる訳だ。それをふまえて、アレを見ろ!」

 海上に的が付いたブイが、10個浮いていた。

「今から、アレを狙っての、射撃訓練だ」
「最初は50mからだ、絶対に外すなよ」

 ブイに付いた的はゆらゆら揺れる。
そう簡単に狙える物ではない。
しかもスコープもないのだ、簡単には当たらない。

 まずは、地面に伏せた状態で、次は膝を立てて、最後は立った状態で狙え。
とにかく当たるまで、撃って撃って撃ちまくれ、そうすれば必ず当てられる様になる。

「先生、あんな揺れる的に、簡単当たる物なのでしょうか?」

「じゃあ、俺が手本を見せてやろう」

 ビリー先生は、自分の背負っていた銃を構える。

 ターン

 実包の炸裂する音は、流石に迫力が違う。
そして、的の一つのど真ん中に、小さな穴が空いていた。

「まあ、こんな物だろう」

ビリーの計り知れない実力に、生徒達は言葉を失った。











作:次回は、午後の2限目です。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第21話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/05 20:13
 さて、午後の2時限目、また2時間ぶっ通しの授業だ。
今度は選択授業、いろんな場所で行われる授業のどれかに、出なければいけない。

 取り合えず、一番人気は、ティアナ先生の執務官試験対策講座だ。
執務官を目指す者にとって、かなり丁寧に教えてくれるこの講座は、講義室から人が溢れるほどの人気ぶりだ。

 続いて人気なのが、キャロ先生の転送魔法講座、将来役に立ちそうな講座だ。
シャマル先生の医療魔法講座も人気だ、クラナガン大学の医学部を狙うならこの講座だ。

 強くなりたいなら、士郎先生か、月花先生の格闘技講座が良いだろう。
他の講座は、あまりの人気のなさに中止されてしまった。

 全体の3分の1は、ティアナ先生の、執務官試験対策講座だ。
80席の講義室では座りきれず、110席まで増やして、どうにか収まった。

 まあ俺は、執務官なんて面倒くさい物にはなりたくないし、あまり血を見るのも好きじゃあないから、
キャロ先生の転送魔法講座に出る事にした。
基本的には、一度選択してしまうと、1年間は同じ講座を受けなければいけないらしい。

 講義室へ向かう途中、廊下でうろうろしている女の子を発見する。
隣のクラスのエリカだった。
可愛いとは聞いていたが、こうしてみると本当に可愛い。

 彼女は、ビリー先生の精密射撃講座に出る予定だったが、3人しか集まらなかった為、講座が中止になってしまった様だ。
まあ彼女のデバイスじゃあ無理だろう、マシンガンだし……

 当然俺は、彼女をキャロ先生の講座に誘う事にした。

「ねえ、転送魔法講座に行かない?」
「アレ覚えれば、将来食いっぱぐれる事はないみたいだし、就職にも有利だよ」

「え?何?」
「……ああそう言う事ね」
「でも私、誰とも付き合う気はないから」

 どおやら、ナンパしているのかと勘違いされたらしい。
まあ、間違っては居ないんだが、そこまで下心があった訳でもない。
この出会いが、将来、大きな悲劇を引き起こす事になろうとは、まだ知るよしもなかった。

 因みに、バローロは執務官講座を、ロサードは士郎先生の格闘技講座を、ハウメは、月花先生の中国拳法講座を受ける様だ。

 まあとにかく、彼女を転送魔法講座に誘う事は出来た訳だ。
そして、この流れで、1年間授業が続けられる事になった。

 エリカの隣の席に着こうとすると、回りからの視線が突き刺さる。
どおやら、相当競争率の激しいポジションらしい……困った。
そこへ、同じクラスの、ピノが来てくれた。
ピノは、同じクラスながら、俺たちより年齢が低い14才だそうだ。
何でも、魔法学院からのスカウトなのだとか、見た目は、11才位かそんなもんにしか見えない。
見た目に小さくて可愛いので、4組のマスコットキャラだ。
因みに、彼女は寮ではエリカと同室である。

 ま、まあ、間にピノが入ってくれたので助かったが、このお子様、とんでもなかった。

「おう、貸し1だ、今度何かおごれよ」

 と黒く囁く。
本当、嫌なお子様だ。

「わ、私もいますのでよろしく」

 俺の隣、ピノとは反対側には、アスティが居た。
驚いた、居たことにすら気付かなかった。
彼女の影の薄さは、また異常である。
教師ですら、出席を取る時以外は、居ることに気付かないことが多いのだ。

 取り合えず、両手に花で、授業に望むことが出来る。
これは、文句を言ったら罰が当たる、という物だ。







 同日夜、女子寮
はあ~、とため息をついたのは、エリカだった。

「エリオ先生……」

「多分無理だよ~、エリオ先生、婚約者居るし、私たちとじゃあ、釣り合い取れないし」

 そう突っ込んだのは、ピノだった。

「ええ?婚約者?」

「キャロ先生だよ、あの二人、六課時代から付き合って、8年になるって話だよ」
「しかも、10才で機動六課に呼ばれたって事は、スーパーエリートだよ」

「いいの、たとえ婚約者が居たって、まだ、希望は捨てないわ」

「無理無理、後見人が3魔王の一人、フェイト執務官で、立会人が聖王様だよ、教会は敵に回せないでしょ?」

 トドメだった。
それでも彼女はこういった。

「良いの、遠くから見ているだけでも、いつか必ず振り向かせてみせるから」

 恋は盲目と言うけれど、何とも諦めの悪いエリカだった。

「所でピノ、なんでそこまで、よく知ってるの?」

「キャロ先生に聞いたから」





 同時刻、男子寮

「なに~エリカ様と同じテーブルだっただと?ヴァロット、てめ~覚悟は出居てるんだろうな?」

 俺は、ハウメに締め上げられていた。

「まあまあ、同じテーブルだった位で怒りなさんな」

 ロサードが仲裁に入る。
小学校の時以来、毎回の様に行われる、いつもの光景だった。

「ハウメ、まさかお前もエリカ親衛隊だったとは……」

 そう突っ込んだのは、バローロだった。

「だからどうした?」

「べつに~、どうもしないけど、それより、自分の将来を考えた方がよくね?」

 ただのアホから、真っ当な意見が出たことに、俺たちは唖然とした。









作:次回はやてさん達が遊びに来ます。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第22話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/06 21:18
 授業が本格化して1週間、生徒達は相変わらず、しごかれている。
そんな折、ふらっと職員室にやってきたのは、はやてだった。

「あ、はやてちゃん、お久しぶり、最近姿が見えなかったけど、どこに行ってたの?」

「本局の造船ドックや、新しい、移動オフィスを建造中なんよ」

 そう答えたはやては、提督の制服が似合っていた。
スペシャルフォース設立の際、一佐、提督を拝命したのだ。
リンディーさんも、提督の制服が似合っていたけれど、はやてもまた制服美人だった。
その手の趣味の人なら、放っておかないだろう。(作:すまん、俺の趣味だ、制服Play最高!)

「やっと固定武装の決定やら、基本設計が終わって、メインフレームの建造に入った所や」
「戦艦名 Brassica(ブラシカ:ラテン語で菜の花の意味)なのはちゃんを体現した様な船や」

 嘗て、機動六課の時、臨時オフィスとして、アースラを使ったことがあった。
その時の教訓から、はやての部隊には、新型戦艦が用意されていたのだ。
ただ、最初の案では、L級戦艦をあてがわれる筈だったが、アースラ型では使いにくいと言うことで、
はやての意見を取り入れて、新設計されることになったのである。

「私を体現した様な船って、一体どんな?」

「大きさ的は、アースラと変わらないL級や、でも、VX級の動力炉を無理矢理載せた」
「まあわかりやすく言えば、軽自動車に無理矢理GT-Rのエンジンを載せた様な物や」

 基本設計からして既に無茶である。
船足の速さなら、次元世界最速だろう。

「また、設計からして無茶だね~」

「通常火力も、かなり強力な物にしたよ、聖王のゆりかごと、ガチンコしても勝てる位、強力な装備に」

 もう、無理をしまくっても平気な位、頑丈な基本フレームに、あり得ない位強力な火器を載せて、
それで居て、大気圏内でも使えることが、前提条件となる、そう言う無茶な装備を、備えた船だというのだ。

「で、船の自慢をしに来た訳じゃあないんでしょ?、何かご用?」

「流石に鋭いなあ、でも、この場で話せへんから、上にいこか」

 そう言って、なのはを職員室から連れ出した。

「ここなら盗聴器も無いやろ」

 屋上に二人、肩を並べて話し込む。
こんな事は、何時以来だろう?

「で、本当の用事は何?」

「三日前、フェイトちゃんが逮捕したスパイが、おったのよぉ」
「そいつが、もっとったデータの中になぁ、この学校の生徒か先生でないと、知らへんことがあったのよぉ」

「なっ!」

「恐らく、この学校の中に、海賊ギルドから送り込まれたスパイがおる」
「こういう事態を見越して、レティ本部長も、生徒の中に諜報員を、紛れ込ませているそうや」
「もしかしたら、学校の中で、血の雨が降るかも知れへん、覚悟だけはしといてや」

「でもなんで、うちの学校なんかに?」

「戦力が知りたいんやろねえ、この学校が、どれ位の戦力を生み出すのか?」
「それにここは、先生方も全員Aランクオーバー、SSS も4人おる、ただでさえ、とんでもない戦力の集まりや」
「マークされへん方が、おかしいのよ」

「でもフェイトちゃんは、そんなこと、一言も言ってなかったし」

「心配掛けたく無いんやろうね、表沙汰になる前に、始末を付けるんや無いやろうか?」

 随分、深刻なことになった。
生徒を疑わなければならないとは……

「このことは、ヴィータには話してもええけど、他には黙っててな」

「うん、分かった、とは言えないな」

「なんでぇ?」

「聞いていたんでしょ?お父さん」

「はっはっは、良く気付いたな」

「そりゃ、殺気をぶつけて、ちょっかい出せば、気が付きます」
「こんな事出来るの、お父さんしか居ないじゃない」

「まずは、盗聴器の撤去、お願いしてもいい?」

 三日後、職員室棟(はやてのオフィスも含めて)の盗聴器を士郎が撤去した。
なんと、ダンボール2箱分にも及ぶ盗聴器が、仕掛けられていた。
さすがは、こういう事のプロである。

「恐らく、リフォームの工事業者に紛れて設置したのだろう」

 と士郎が語った。

「これで全てとは言えないが、多分、残っているとしても、一個か二個だろう」

「取り合えず、ご苦労様でした、後は、生徒の中から、スパイを見つけることだけだね」

「いや、無理に探さなくても良い、必ず、向こうから尻尾を出す、それまで泳がせようじゃないか」
「恐らく奴は、自分の上司と、連絡が取れていないはずだ、近いうちに、必ず何らかの行動を起こすだろう」
「それまでは、我慢比べだ」

 流石に、こういう事のプロは違うなと、感心しきりの、なのはだった。










作:次回、1年、2年対抗、ガチンコ模擬戦



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第23話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/07 21:31
 盗聴器の撤去から二日、なのはは、ビータと士郎を交えて話し合った。
そして、意を決して、他の教師達に、話をすることにしたのである。

「ここじゃあ不味いから、どこか外で話をしよう」

 飲み会にカムフラージュした、会議となった。
同じ場に、はやてとフェイトも同席する。

「居酒屋なら、盗聴器もないだろうし、ごった返しているから、かえって安全なの」

 そして、話し合いが始まる。
職員室棟に仕掛けられた盗聴器、スパイが居るかも知れないこと、深刻な事態であった。
その話を更に深刻にさせたのは、フェイトだった。

「昨日のことだけど、逮捕したスパイが死んだわ」

「えっ?どういう事?」

「彼の体の中に、口封じの為の仕掛けが、してあった様なの」
「口を割ろうとすれば、内蔵を一気に食い荒らして、死に至らしめる、おぞましい生物が、発生するよう、
彼の体の中に、カプセルが埋め込まれていたみたい」
「恐らく、生徒の中に紛れているスパイにも、同じ事がされている可能性が高いわ」

「捕まえても、口を割らせることも、出来んのか?」

「まず、捕まえたら有無を言わせず、手術でカプセルを摘出してしまえば問題はないと思うけど」
「もし相手が、自分でカプセルを発動させてしまったら、それで終わりよ」

 と、シャマルが答える。

 重苦しい雰囲気が、なのは達を包む。
例えスパイでも、生徒は生徒である、死なせる訳にはいかない。

「そもそも、何故、そんな海賊共が、うちの戦力なんかを知りたがった居るんだ?」

 と士郎が尋ねる。

「ジェイル・スカリエッティが、からんどるのや」

「そのジェイルなんとか、というのは誰なんだ?」

 はやてが手短に、説明をする。

「なるほど、要するに、その犯罪者のスポンサーの一つだった訳か?」

「正確にはスポンサーのスポンサーや」

 そう、海賊ギルドは、今は無き最高評議会の資金源だったのだ。
ジェイル・スカリエッティが、未だに口を割らない為、捜査は難航している。
しかし、評議会ルートの捜査から、海賊ギルドの存在が明らかになりつつあった。

「海賊ギルドゆうても、正確にはマフィアの集まりや、その上に、海賊も乗っかってるって言うのが、正しいかも知れへんなあ」

 海賊ギルドは、その8割が、次元世界各地に存在するマフィア組織である。
残りの2割が海賊で、次元航行旅客機や輸送船を襲う連中は、その中でもごく一部である。
大方は、マフィア関連の物資の輸送で生計を立てていたりする。

「なるほどねえ、でも、このヤマはそれだけじゃあ収まらないよ、香港警察の時と同じ臭いがする」
「ここにいるメンバーと、はやての部下は信用出来るとして、他にはこの話はしないことだね」
「フェイト執務官って言ったかな?暫く、捜査は控えた方が良い、でないと殺されるよ」
「恐らく、局の上層部に、マフィアと癒着している奴が居るはずだ」

 流石のフェイトも唖然とした。
まさか、自分の命が、狙われているかも知れないと言う。
しかも、また、局の上層部が、係わっているかも知れないのだ。

「取り敢えずは、信用のおける仲間を、増やすことから始めるべきだね」

 と、アドバイスを頂いた。

「さて、話は振り出しに戻るけど、スパイをどうしよう?」

「それなんだけどさあ、いい手を思いついたぞ」

 そう言ったのはヴィータだった。

「合法的に生徒の体を、調べられる方法がある、つまり、みんな怪我させちまえば良いんだ」

「は?」

「どういう事?」

「模擬戦をやるんだ、ガチンコで」
「ルールは、相手チームを完全に、戦闘不能にすること」
「やられた奴から順番に、シャマルが体を調べればいい、カプセルが有れば、そいつがスパイだ」
「仮に、カプセルが無くても、こんな美味しい情報を、報告しない訳には、いかないだろう?」
「模擬戦の後で、絶対に動く」

「さすがはヴィータや」

「じゃあ、そのプランで行こう、細かい詰めは、また明日」
「さて、飲もうか?」

 と言う訳で飲み始めた訳だが……

「だからはやてちゃん、樽で飲むの止めようよ……回りのお客さんが引いてるよ……」

「なのはちゃんかて五升瓶やん、あんま変わらんて」

 相変わらず、化け物の様な飲みっぷりの二人である。







 翌日、午前の授業が始まる前に、なのは校長から、とんでもない話があった。

 今月末、第1回、ガチンコ模擬戦大会をやる、優勝賞品は、学食1ヶ月無料券で有る。
各クラスから1名ずつの4人1チームで戦うこと、相手チームを完全にK.O すること。
また、模擬戦をスペシャルフォースを初めとした、武装隊のお偉いさんも見に来るので、
活躍出来れば、就職には、非常に有利に働くとのことであった。

 ただでさえ、金の無い俺たちにとって、非常にありがたい賞品だ。
丁度、4人別々のクラスだし、気心が知れていて、簡単にチームを組むことが出来た。
問題は、どうやって勝ち抜くか、何か奥の手は?
後半月、いろいろな作戦を立てることが出来た。
目指すは優勝、そして2年生への下克上だ!










作:次回、いよいよ開幕、ガチンコ模擬戦大会。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第24話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/08 21:37
「クソ、正攻法じゃあここまでか」
(ロサード、ハウメ、バローロ、作戦名リベロ行くぞ!)

 俺たちは今、4回戦を戦っていた。
戦っている相手は、生徒会長率いる生徒会Aチームだ。

 1回戦、参加80チームから40チームへ、2回戦、40チームから20チームへ、3回戦、20チームから10チームへ、
そして今、4回戦、10チームから5チームへ、ここで負けても、敗者復活で準々決勝には行けるのだが、負ける気はない。
むしろ相手が相手だけに、絶対に勝つ!と言うのが俺たちの考えだ。

 準々決勝では、勝ち残った5チームに、敗者復活を勝ち抜いた、3チームを加えた8チームで争われる。
とにかく優勝したい、それ以上に、生徒会だけには負けたくなかった。
だが、生徒会も優勝候補の一角である、なかなかに手強い。

 1回戦から、俺たちは付いていた。
くじ引きの強さにかけては、ロサードがその実力をいかんなく発揮してくれた。
同じ1年の最弱チームと当たれたのは、ラッキーだった。
その後も、前衛の二人だけで余裕勝ちすること2回、4回戦に来てやっと強敵と当たった感じだ。

 どのチームも、急造のため連携はあまり良くない。
その点俺たちは、4人中3人が小学校からの知り合いで、最高の連携で動ける。
それに後から加わったバローロも、入学初日から俺たちに加わって、有る程度お互いを信用出来る間柄だ。

 敵の生徒会Aチームは急造ながら、個人技では2年生ほぼ最強といえる。
キャプテンで生徒会長のネロは、攻撃力だけなら既にAAクラスはあると言われている。
前衛は、クロ様とキァンティ、召喚師は学園一の美少女といわれる、フィノだ。

 今現在は、それぞれの前衛、アタッカーとウィングガード同士が戦っている。
いかんせん、魔力で劣るこちらが押し込まれつつある。

 今俺の居る位置は、一番後ろのセイフティーサークルの中、ここは、前の3人が倒れるまでは、攻撃してはいけないルールだ。
前線司令部に、見立てている様だ。




「「さーてだいぶ面白くなって参りました、実況兼ゲストコメンテーターの私、八神はやてと、審判長兼解説の、高町なのはで
お送りしております」」

「さて審判長、この戦いはどう見ますかねえ?」

「魔力でこそ劣る物の、連携がいい1年生チームと、個人技の高さで圧倒する2年生チーム、まだまだ何か隠していますよ」

「おおっと、ここでヴァンサン・ロシェット君がセイフティーサークルを飛び出しましたよ、何をするのでしょうか?」




 作戦名「リベロ」、フルバックが戦場に飛び出して引っかき回す攪乱戦法だ。
サークルを飛び出した俺は、いくつもの魔法陣を展開する。

「鳩たち、行け!」

 この数日の間に捕まえて、召喚契約した鳩たちを召喚する。

「鳩たち、フン攻撃だ!」

 鳩たちが、ネロ、クロ、キァンティに一斉にフンの雨を降らす。

「貴様ら~ゆるさ~ん!」

 とうとうネロがぶち切れた。
実はこれが狙いだったのだ。
ネロは、この大会の間、一度も攻撃をしていない。
それは、相変わらず味方まで撃ってしまう癖が、抜けていなかった為だ。

「ファイヤ~!」

 同時に俺たちは魔法陣の中に避難、鳩たちは飛び去った。
狙い通りだった。
クロとキァンティは撃墜されていた。
そして、ネロは魔力切れ寸前だった。

 取り敢えず、4人でネロをフルボッコにした。

「後はフィノ、あんただけだ、それともギブアップかい?」




「さ~て大変なことになりましたよ、なのはさん、どう見ますか?」

「大丈夫でしょう、一人になってあの余裕は、何か仕込んでいる証拠でしょう」




 ギブアップかと聞かれたフィノの口元が、ニヤリと歪む。

「出ておいで、カトリーヌ」

 彼女の前に巨大な魔法陣が広がる。
魔法陣の中から出てきたのは、何故かZガ〇ダムだった。
俺も、プラモなら持っている。
確かバニングス商会で販売していた様な……

「何だよ、反則だろ!」

「いいえ、反則じゃないわ、れっきとした召喚獣よ」

「どこがじゃ?」

「私の召喚獣の一人、カトリーヌちゃんに1/1金属モデルを着て貰っているの」
「兵曹や飛行能力も全て魔力で再現しているわ」

「先生~アレ質量兵器ですよね?反則ですよね?」




「審判長、どう判断しますか?」

「う~ん、面白いからOKにします。それに反則にするなら、キャロ先生のボルテールだって反則になります」

「所で、カトリーヌちゃんの正体とは何でしょうか?」

「え~手元の資料に因りますと、イドという魔獣です。巨大なアメーバみたいな生物です」
「と言う訳でバトル再会しなさい」




 えらいことになった。
身長18m 体重57tの化け物と戦わなくればならなくなった。

「さあカトリーヌやっておしまい」

 だが、勝機は俺たちの方にあった。
相手はでかいだけで、動きがのろい上に、関節の可動範囲が狭かった。
所詮は巨大プラモである。

(おい、彼女をよく見てみろよ、あれから何も出来てないぜ)

(さすがはハウメだ、彼女を倒せば終わるんじゃないのか?)

(俺が行こう)

(サポートするぜバローロ)

 逃げ回りながら、そんなことを念話で話していた。
彼女に気付かれない様にそっと魔法陣を彼女の後ろに配置する。

 もう一つの魔法陣にバローロが飛び込む。
次の瞬間、彼女の後ろに現れて、強烈なハードロックをぶちかました。

 音波魔法である。
脳みそからガツンとやられた彼女は、そこで気を失った。
Zガン〇ムもそこで動きを止めた。

 俺たちの完全勝利だった。










作:次回、決勝戦、そしてスパイは……



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第25話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/09 22:32
 さて、準々決勝進出も決めたし、午前中はもう試合がないので、早々に昼飯を取ることにした。
昼飯を取って、体力と魔力の回復を図っておかないことには、次の試合に響く、何せ魔力は簡単には回復しないのだ。
最大魔力値は、カートリッジでどうにかなるが、魔力量は一旦減ってしまえば、回復するまではかなり時間がかかる。

 実際、生徒会長がそうなのだが、カートリッジを何発も残したまま、自分自身の魔力切れで魔法が撃てなくなっている。
少しでも魔力を残している方が、優勝するには有利なのだ。
今のところ、俺たちは全てのチームの中で、最も魔力消費が少ないと言えた。

「やっぱ真面目に授業を受けてて、良かったわ」

「まだ奥の手も1個しか出してないし、出来れば決勝まで使いたくはないし」

 そうなのだ、俺たちは他のチームが連携の練習に時間を取られている間に、奥の手をいくつも仕込むことが出来た。
そのうちの一つが、さっきの作戦『リベロ』である。
捕まえてある小動物やら昆虫も、まだほとんど出していない。

 魔力を温存する作戦、士郎先生に言われたあの一言を、俺たちは愚直なまでに守っていた。
出来る限り魔力を使わないこと、今の所、飛ぶことと一撃を加える一瞬だけデバイスに魔力を込めるだけで、
ほとんどの攻撃を体一つで避けている。
まあ、転送や召喚もあまり大きな物を呼び出したりしない限り、大した魔力は消費しないし、
バローロの音波魔法も、大した魔力を消費しない。

「ロサード、午後からの組み合わせ抽選はまた頼むぜ、なるべく楽な所を引き当ててくれよ」

「なるべくなら、敗者復活組の、一番弱そうな奴な」

「おう、まかしとけ!」

「でも、準決勝か、決勝で、生徒会Bチームと当たるよ」

「それが問題だな」

「後は、どこで当たるかだね」






 その頃、なのは達

「校長、経歴の分からなかった何人かのうち、残り3人まで絞り込むことが出来ました」

 ティアナだった。
ティアナは、この2週間、履歴書と情報が一致しない者をピックアップする作業をしていたのだ。
ピックアップされた者を、他の教師達が手分けをして調査していく。

 大方は、履歴書を提出した後に、家族が引っ越していたもので、空振りに終わっていた。
だが、残った3人については、どうも情報がおかしい、かなり有力な容疑者と言える様だ。
しかも今のところ、準々決勝に勝ち残っている。

 容疑者は次の通り、

 1-4 アスティ・スプマンテ
 2-1 クロ・デ・ロバック
 2-4 フィノ・ハラーナ

「なのはさん、2-4フィノ・ハラーナについては、白であることが判明しました」

 開いたモニターに連絡してきたのは、エリオだった。
実家の住所にしていたのは、彼女の家の別荘だった様だ。
これで、容疑者は後二人、内どちらかは、こちらの味方である。

「分かりました、二人ともご苦労様、後はこちらで対処します」

「シャマル先生、容疑者が絞り込めたので、他の生徒は調べなくてもいいですよ」

「はーい、分かりました。でも、万が一ということもあるので、念には念を入れておきますね」

 流石にプロである、全く抜かりという物がない。






 さて、午後一の抽選会

 俺たちは、アスティの居るチームと当たった。
1年生チームは俺たちを含めて3チーム、残りは2年生チームだ。
おまけに、生徒会チームは両方とも生き残っている。
1年チームは他にエリカのチームが、敗者復活組と当たっていた。


 試合開始

 開始早々に、前衛の二人を落とすも、レヴとアスティが手強い、レヴはもう魔力が残っていないはずなのに、
魔力の矢を効果的に撃ってくる。
取り敢えず、魔力切れまで近付かないことにした。
アスティは、最後の切り札であるジライオウを投入してきた。

「ふ、甘いな」

 俺は3ガロン瓶を召喚した、量にして約14L中身は白ワインに蜂蜜をたっぷり混ぜた物だ。

 フィールドのど真ん中に瓶を投げ込んでやる、瓶が割れて甘い香りが広がると、それにジライオウがむしゃぶりついた。
もう、飼い主の言う事なんか聞かない。

「こらー私の言う事を聞け~!」

 怒ったアスティがジライオウを蹴飛ばした。

 ゲシッ

 逆にジライオウの蹴飛ばされて、アスティは気を失った。

「さあレヴ、後はお前一人だがどうする?」

 流石に4人に囲まれてはどうしようもない、彼女は降参して試合終了、俺たちは準決勝進出を決めた。

「イヤー流石に上手く行ったね」

「しかし、ジライオウがあんなに簡単に言うことを聞かなくなるとは、思わなかったよ」

「アレは、ジライオウを捕まえる時に使う餌なんだ、アレに目がないジライオウだからこそ、それを逆手に取ったのさ」








「校長先生、カプセルの摘出終わりました」

「ありがとうございます、シャマル先生」

「この後どうしますか?」

「本人に気付かれないよう、このまま泳がせましょう」

 アスティが気絶している間に、クラールヴィントを使って、シャマル先生がカプセルを摘出していた。
これで、このまま泳がせるらしい。






さて、準決勝

 残っているのは、生徒会A、Bの両チーム、エリカのチーム、そして俺たちだ。
準決勝なんと生徒会対決となった。
まあ、Aチームの方は、余分に3戦もやってボロボロだったので、あっけなく敗退した。
やはり優勝候補のBチームは残った。

 さてエリカのチームと対戦だ。

 アタッカーはヴィーニャ・デルマル、貧乏学生で、官給品の杖型デバイスを使っている。
直射型の魔法があるが、威力は大したこと無い。

 ガードウィングは、ヴィラ・エミール、デバイスは細い剣型のアームドデバイスだ。
剣というか、サーベルだな、どおやらこのデバイス、刀身が伸びるらしい。

 センターはエリカ、マシンガン型のアームドデバイスだ。
威力はともかく、弾数の多さと、連射性に注意が必要だ。

 召喚師はピノ、召喚獣はジライオウのみだが、何を考えているのか分からん黒い部分がある。
それだけは要注意だ。



 さて、試合開始

(お前ら、作戦名インセクト行くぞ)

 俺は、そう支持を出す。

「あなた達、バリアぐらい張りなさいよ、危なくなくて攻撃も出来ないわ」

「そりゃどうも、ヴィーニャさん、でも、あっという間に負けるのはあなた達ですから」

 ハウメが減らず口をたたく、その隙に彼女たちの上空に魔法陣を展開する。

「これでも食らえ!」

 召喚されたのは、ゴキブリにネズミ、蛙に蛇、ナメクジ、毛虫、芋虫、ミミズなど、女の子が嫌がりそうな物ばかり、
流石に効果覿面だった。

「きゃ~~~~~」

「イヤ~~~~~~」

 逃げ回る彼女たちを、一人ずつ撃破するのは、容易なことだった。 








 さて決勝戦、今度の相手は、今までの様な一筋縄ではいかない強敵だ。
もう魔力の温存も、出し惜しみもしない、どんな卑怯な手を使っても叩き潰す。
そして、俺たちが優勝するのだ。














作:次回、決勝戦決着



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第26話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/10 19:19
さあ、いよいよ決勝戦です、面白くなってきましたねえ審判長」

「そうですねえ、泣いても笑っても、これで優勝が決定する訳ですから、どちらも負けられないです」

「さて、セコい、エグい作戦で勝ち上がってきた1年生チームと、前衛の力押しで勝ち上がってきた生徒会Bチーム、
どちらも魔力を温存していますが、どちらが有利だと思われますか?」

「まともに戦ったら、生徒会チームの勝ちは確実でしょうが、先ほどの戦いを見ると、1年生チームは、かなりの仕込みをしているようです」
「それに、なんと言ってもチームの連携がいいです。こういうチームは怖いですよ」






 さて、充分に体力は回復したし、魔力にもかなり余裕がある。
後は敵の出方だけだが、生徒会Bチームは、前衛の力押しだけで勝ち進んできたチームだ。
後ろの二人が何をしてくるか分からない。
用心に用心を重ねても、用心しすぎと言うことはない。

 ここで戦力分析してみよう。
アタッカーは、2-1 エミリオ・プリモ、大剣使いだ。
一撃の威力はとてつもない破壊力だ。

 ガードウィングは、2-2 ロロニス・ヒュメ、巨大ブーメランを投げてくる。
これも当たると、破壊力がでかい。

 センターは、2-3 アマローネ・D・ヴァルポリーチェ、ツインバズーカのアームドデバイスだ。
かなり高威力の砲撃を仕掛けてくる。

 召喚師は、2-4 モスカート・ダスティ、こいつはよく分からん、ただのチャラ男にしか見えないが、
それなりの実力を持っているはず。
召喚獣は、ジライオウと鳥が一羽である。

 チームとしては、パワーでごり押しするタイプと見ている。



「どうするよ、まともにぶつかったら勝てねえぞ」

「そうだなあ、ハウメ、はったりを咬ましてジライオウを出させない様に頼む」

「それから、あのおっぱいねーちゃんを丸裸にしてやろう」
「その間、あちらの前衛二人を3人で引きつけておいてくれ」
「後は、バローロの奥の手を使おう」



一方Bチーム

「あなた達、分かってますね、まず、前の二人を力ずくで落としなさい」
「残り二人は押し込んで、砲撃で倒します」

「でも、副会長、絶対あいつら何か仕込んでますよ」

「そんな物は、力で押し切るのです」



 そんな作戦タイムが終了し、決勝戦開始である。

 お互い陣形を組んでにらみ合う。
奇しくも全く同じ陣形であった。

 陣形は、前衛2名が横並びで、その20m後ろにセンターが、セイフティーサークルに召喚師が配置されている。
始まる前に、ハウメが話しかける。

「よう、そちらは召喚獣を出さなくてもいいのかい?」

「出した所で、また餌で釣るんだろうが、お前らが出していないのがいい証拠だよ、バレバレだ」

「分かってりゃ世話ねーや」

 はったり作戦は大成功だ。
これで鬱陶しいジライオウには、やられないで済む。
後は敵の召喚師が何をしてくるかだけだ。

 一応、試合開始直前まではフィールドに入る事が出来ない、だからトラップの設置はかなり難しい訳だが、
やり方によってはそれも可能である。

 俺たちは全員飛べるし、ハウメ以外は、トラップバインドも使える。
相手は後ろの2名が飛べない様だ。
 有る意味、こちらに有利な要素が多いことになる。

 陣形を取った瞬間、ロサードは自分で自分の3m手前にトラップを設置、ハウメは俺が5m手前に設置した。
それ以外にも、すぐに魔法陣が立ち上がる様に、いろいろと細かい仕込みをさせて貰った。


 試合開始!
合図と共に、生徒会の前衛2名が突っ込んでくる。
そして見事にトラップに引っかかった。

 すかさず、ロサードとハウメが一撃をお見舞いする。
しかし、相手もそれをデバイスで受けて流す。
そのまま、力ずくでバインドを断ち切ったのは、ロロニスだった。

 「もらった」

 巨大ブーメランを、ハウメに向かって投げ付ける。
その瞬間、俺は魔法陣を立ち上げた。
ブーメランは転送魔法陣に飲まれて消えた。
そして、ロロニスの後ろに魔法陣が浮かぶ、そう、彼の投げたブーメランは、最大の破壊力を持って彼に命中したのだ。
 
 自分の一撃を食らいながら、それでも彼は持ちこたえた。
まあ、ほとんど虫の息だが、まだ油断はならない。
ハウメが迎撃に向かう。

 その瞬間、俺は、転送魔法陣へ飛び込んだ。
出た先は、アマローネのすぐ後ろだった。

「喰らえ!必殺脱げビーム」

 俺の杖から放たれたビームが彼女を直撃する。
必殺脱げビームの正体は、転送魔法である、あまり大きな物は転送出来ないが、命中すれば着ている服やデバイス程度なら、
指定した場所に強制転送してしまう魔法だ。

 一瞬にして、彼女は丸裸だった。
108のIカップが惜しげもなく披露される。





「おおおお~~~~~~! 未だ嘗てこれほど大きなおっぱいは見たことがありません!出来れば是非揉んでみたいです!ハアハア」

「はやてちゃん、鼻血鼻血、興奮しすぎだって」






 これが俺の切り札だった。
すかさず、また魔法陣に潜って、セイフティーサークルに戻ってくる。
このセイフティサークル、中にいれば、他の3人が倒れるまで攻撃されないが、直接中から攻撃してはいけないのだ。
これで、砲撃は封じた。
相手の召喚師は間抜けにも、ずっとセイフティサークルの中だ。

 彼女はもはや、自分の大事な部分を隠すだけで精一杯だ。
その場にへたり込んでいる。

 ハウメは、ブーメランを振り回す相手に苦戦していた。

(ハウメ、最後の仕上げだ、アレをやるぞ!)

 渋々、ハウメがみんなの所に帰ってくる。

 エミリオはまだバインドに捕まっていた、バローロがギターを構える。

「何だ、音波魔法で一人づつ倒すのか?」

「いや、全員同時だ」

「アホか、お前の魔法は40db(デシベル)以上の範囲しか効果がないはず、どうやってこの場で全員倒すんだ?」

 その瞬間、俺は野外ライブ用の、巨大スピーカー、アンプ、ウーファーなどを召喚する。
バローロの実家は、音楽スタジオを経営している。
野外ライブ用の機材なんかもかなり充実しているのだ。

 俺たちが、完全防音耳栓をすると、地獄のロックが始まった。
それは、観戦していた他の生徒をも巻き込んで、完全に生徒会チームをノックアウトしていた。

  
 こうして、俺たちは優勝した。
感無量と言うよりも、非常に疲れた1日だった。

 忘れていたが、副会長のデバイスと、着ていた物は、女子更衣室に転送させて貰った。
翌日から、俺たちはヒーローだ……と思ったのだが、周りからの目が厳しかった。
どおやら、これからは、常に狙われる立場らしい。










作:次回、アスティの意外な行動 



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第27話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/11 23:17
 衝撃の模擬戦大会から三日、丁度週が開けて月曜日、なのは達は今回の大会の分析をしていた。
今は午前の授業中、ビリー先生のサポートには、ギンガとエリオが付いていた。

「まさか、あの4馬鹿が優勝しちゃうとはねえ」

「はっはっは、なのは、あいつらを甘く見すぎて居るぞ、あいつらは、自分たちを冷静に分析し、理解していたからこそ勝てたんだ」
「敵を知り、己を知れば、百戦危うからずって奴だ」

 そう答えたのは士郎だった。

「だよね~、強さはともかく、悪賢さだけならこの学校最強だよ」

「それに、召喚師の使い方が圧倒的に上手い」
「他のチームは、せいぜい召喚獣を出す程度だったが、相手の攻撃そのものを転送してしまう辺りは、見事だった」

「召喚師って、あんな使い方も出来たんだね~」

「それについてなんですが、私の所にも聞きに来ましたよ彼らは」

 キャロが一言入れる。

「何を?」

「相手の攻撃やデバイスそのものを、転送出来るかどうかについて……」
「多分出来るって答えたら、嬉しそうな顔をしてましたから、その後練習したんじゃないでしょうか?」

「だが、何よりも、あの息の合った連携は凄い物があったな」(士

「彼らは幼なじみで、随分昔からああ言うことをしていたようです」(キャ

「誰かさんとは大違いだね~ティア、昔は随分卑屈になってたもんね~、私に怒られて、シグナムさんにぶっ飛ばされてさあ」

「うう、何も言い返せない自分がイヤだ」

「しかし、あいつらは、やることこそガキだが、的確に相手がされたらイヤなことを仕掛けてきていた」
「もの凄い分析力と言うべきか、ただの悪戯っ子と言うべきか」

「多分、後者の方でしょうね」

「だが、あの発想力は大きな戦力だ、アレを伸ばしてやれば、将来きっといい指揮官になる」

「じゃあ、今回のまとめとしては、戦力に勝る相手にも、情報の分析力とアイディア次第では、充分に勝てることが証明されたと言う所かな?」



「さて、次はあの子のことだね」

「ヴィータちゃん、そっちはどうなってる?」

 なのはが、モニター越しに話しかける。

「今のところ動きなしだ」

 そう、ヴィータはこの三日、アスティに付かず離れずで監視していたのだ。

「そう、引き続き監視をお願いするわ」




 アスティは困っていた。
今回の大会で、まさか学校一の馬鹿4人組が優勝してしまうとは思わなかった。
戦ってみて自分たちの弱さにも驚いたが、まさか思っても見ない連中が優勝してしまったことが、彼女を混乱させていた。
彼女に出来ること、それはもう一度、馬鹿4人組と戦うことだった。




 昼休み、俺たちは賞品のただ券で昼飯を食べていた。
何せ、仕込みに使ったお金が結構な額だった。
白ワインに、蜂蜜、瓶代、機材のレンタル料、俺たちの1ヶ月分の生活費がぶっ飛んでいた。
これで、優勝出来なかったら、本当にどうなっていた事やら、まさに背水の陣だった。

「優勝出来たはいいけど、金がねえよな~」

「そう言うなよ、バローロ、それともどこかでバイトするか?」
「まあ、今回は模擬戦大会初代チャンピオンにその名を刻んだ代償って事でヨシとしようや」

 そう言って俺はバローロに言葉を掛けた。

「そうだ、どこかでバイトしよう!」

 ハウメがそう言いだした。

「でも、校長先生に許可取らないとね」






 午後2の授業

 俺はいつものテーブルに座る。
端から、エリカ、ピノ、俺、アスティの順だ。
エリカとピノからの視線が痛い、ジト目でこちらを睨まれている。

(やっぱり、アレは不味かったかなぁ~)

 そんな痛い視線に耐えていると、アスティからメモを受け取った。

『果たし状、本日の放課後、海上訓練施設にて、模擬戦の再戦を申し込みます』

 やれやれ、大変なことになった。
野郎から、申し込まれることは覚悟していたが、女の子から申し込まれるとは思わなかった。

 授業の終わり頃、他の3人と連絡を取る。

(仕方ない、やるか?)

俺たちは、果たし合いを受けることにした。











作:次回、果たし合いの行方は?



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第28話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/12 18:24
 放課後、海上訓練施設

 再戦は、校長先生、教頭先生、キャロ先生、ティアナ先生、ピノ、エリカが見守る中で行われることになった。
前回とチーム編成が変わっている。

アタッカー、1-1 ヴィーニャ・デルマル
ウィングガード、1-2 ヴィラ・エミール
センター、1-3 レヴ・ドトーヌ女
召喚師、1-4 アスティ・スプマンテ

「おいおい、そんな急造チームで俺たちに勝てるのか?」

「多分良い勝負になると思いますよ、今日はジライオウが使えますから」

「そんな急には、餌は準備出来ないでしょ?」

「それはどうかな?この前準備したのがまだあるんだぜ?」

「それは、はったりだと思いますがね?」

 いきなり舌戦の応酬だった。

 実のところ、餌はあると言えばあるが、無いと言えば無い。
サンプル用の小瓶が2本取ってある。
2本と言っても合わせれば500CC程有るが、そんな量では心もとない。
なけなしの2本をどのタイミングで使うかが問題だ。


 作戦タイム

「あなた達、こんな急造チームでは連携は不可能だから、三人で一斉攻撃します」
「今日は魔力の温存を考えなくてもいいから、思いっきり行けるでしょう」
「アスティは、タイミングを見てジライオウを出してね、恐らく餌はないと思うから」



「やべーな、完全に読まれてやがる」

「今から餌は作れねーし、どうするよ」

 バローロとハウメにそう言われる。

「一応、サンプルに残しておいた餌が少しだけ有る、使い方は俺に任せて貰おう」

「今使える作戦は、リベロと、インセクト、攻撃転送、脱げビーム改めすっぽんぽん光線だ」

「お前、そのネーミングセンス変」

「仕方ないだろう、脱げビームは著作権法上不味いんだよ、藤間先生に怒られるし」

「誰だそれ?」

「業界的に不味いって、言ってるんだよ」

「で、作戦なんだが」
「恐らく相手は一斉攻撃ぐらいしか、手がないだろう」
「だから、攻撃してきたら、攻撃転送で後ろから喰らわせてやる」
「後は、タイミングを見て全ての作戦を実行する」

 やたら長い作戦タイムになった。




 さて、では試合開始。
陣形は向こうが3人横一線、こちらがツートップで、召喚師はお互いセイフティサークルの中だ。
飛べないのは、アスティとレヴの二人だ。
今は、お互い地上で配置に付いている。

(おいロサード、ハウメ、トラップを設置したから前に出るなよ、ついでに魔法陣も設置してあるから攻撃は心配しなくていい)

 始め、の合図を待っていたかの様に、3人が一斉に攻撃に出る。
ヴィーニャとレヴが砲撃で、ヴィラは突っ込んできたが、見事にトラップバインドに掛かった。
二人は思っても見なかっただろう、まさか砲撃そのものが転送魔法陣に吸い込まれるとは?
そして、真後ろから自分の砲撃を浴びることになった。

 かなりのダメージを受けて一度は倒れたものの、再び立ち上がる二人、ヴィラは、ロサードがバインドを追加して既に動けなくなっていた。
ここでリベロ発動、彼女たちの後ろへ現れた俺は、二人に向けてすっぽんぽん光線を発射する。
見事に命中し、二人はオールヌードになった。

 が、横からとんでもない電撃が飛んできた。

「くっ、いってぇ~」

一瞬早くバリアで防いだものの、結構キツイ衝撃があった。
慌てて、魔法陣に潜りサークルまで戻ってくる。

 ジライオウだ、とうとう出してきやがった。
ここで、小瓶を召喚、1本をアスティの上空へ投げる。

「打ち抜け、ハウメ!」

 今まで、直射砲を見せていなかったハウメが、小瓶を打ち抜く。
甘い香りの雨が彼女に降り注いだ。
理性を失ったジライオウが、彼女を抑え付けてブラシの様な口でなめ回す。

 流石の彼女も、こうなっては為す術がない。
ここで勝負有り、結局、彼女たちでは俺たちの敵にはならなかった。

 ジライオウになめ回されて、ちょっとだけ感じている彼女は、見ていて萌えた。



「やっぱりあなた達は、とんでもないわね」

「何がですか?校長先生」

「その、作戦を考え付く所よ」
「どうやったら、それだけのアイディアが出てくるのかしら?」

「いや~俺たち、まだそんなに魔力がないもので、まともにガチンコしたら彼女たちにだって負けます」
「だから、まともにガチンコしない手を考えて戦ったまでです」
「後は、自分たちの能力の範囲内で出来ることを実行しているだけです」

「例えばどんな?」

「相手の隙を突くこと、強いて言えば、魔法を撃つ直前から撃った直後は無防備です、ここを突かれたらどんな相手でも大概落ちます」
「それに、自分自身の魔法には、自分のバリアジャケットは反応しません、だからバリアは張れないんです」
「後、攻撃性のない魔法も、バリアジャケットは反応しません、やはり、勝手にバリアを張ってはくれないんです」

 そう、攻撃性のない魔法にはバリアジャケットは一切反応しないのだ。
だから、バインドや転送魔法が使える訳で、俺のすっぽんぽん光線も攻撃性は皆無だから、まず防ぎようがないのだ。

「あなた達、良くそこまで研究したわね」

「まあ、散々自分たちで試しましたから」

「それより、校長先生、ちょっとお願いしたいことが……」
「……と言う訳で、バイトがしたいのですが……」

 なのは校長は、笑って許してくれた。

「あなた達、バイト先の当てはあるの?良い所紹介してあげるわよ」

 非常にありがたかった。
こうして、俺たちのバイト生活が始まる。










作:次回、アルバイト



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第29話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/13 18:30
 校長先生が紹介してくれたのは、居酒屋の店員だった。
何でもバニングス系列の店らしい。

 ここミッドチルダでは、どこかの管理外世界と違って、不況でバイト先さえ無いなんて事は全くない。
むしろ人手不足のおかげで、働き口もたくさんあるし、時給だってかなりいい。

 学生のバイトで、時給1500は、かなり高額だ。
ただ、居酒屋なので始まるのは夕方6時から、学生なので働けるのは、夜10時までである。
翌日の授業に響かないよう、バイトは金曜日と土曜にすることにした。

 この居酒屋、バイト代以外にも、まかないまで付いていて言う事無かった。
何しろこっちは貧乏学生だ、学食の休みな土日の中で1食ないしは2食節約出来るのは大きい。

「イヤー君たち、ホント助かるよ、丁度何人かの店員が他の店に移った所で、シフトが組めなくて困ってたんだ」

 店長さんにありがたがられて、何だか照れくさかった。

 俺たち4人で始めたバイトは、かなり好調だった。
店長さんに、女の子が後3人ぐらいいたらと言われ、二つ返事でエリカ達を誘うことにした。

「あのさ、バイト先の店長さんに頼まれちゃってさ、良かったら一緒にバイトしない?」

 声を掛けたのは、エリカにヴィーニャ、ヴィラとレヴ、そしてアスティである。
特に金のないヴィーニャはすぐに飛びついてきた。

「ピノもバイトしたいの~」

 そう言われても、飲食店のバイトは15才からと法律で決まっている。
残念ながら後1年我慢して貰うことにした。

 結局、女の子5人とも採用になり、俺たちと一緒に働くことになった。




 ガシャーン

 またやってしまった。
アスティに何か持たせるとすぐこうなる。
流石に店長も怒る、少し離れた位置から見ていた俺とバローロが、こう提案した。

「ヴィーニャとアスティをセットで、注文取り専門にしてみては?」

 効果覿面だった。
愛想は悪いが記憶力抜群のアスティと、非常に客当たりの良いヴィーニャ、セットで使えばまず注文を間違えることはなかった。
他では、レヴが意外なほどに料理の盛りつけが上手くて、店にはなくてはならない地位を確立していた。

「お前ら現場がよく見えてるなぁ、このまま行けばいい店長になれるぞ」

 なんて言われたりして、なんかこのままここに就職しそうな勢いだったりする。


 ただ、こういう店をやっていると困った客が結構居る。
酔っぱらって、女の子のおしりを撫でたり、抱きついてきたり、店の中で暴れる客が結構居るのだ。
いつしか、そう言う客の始末が俺たちの仕事になりつつあった。

「お客様、ここはそう言うお店ではありませんので、おやめ下さい」

 初めはこんな感じだ。
それでも言う事を聞かない酔っぱらいは多い。

「お客様、営業妨害になりますので、警防署の方へ来て頂くことになりますが、よろしいでしょうか?」

 大体ここで、引いてくれる客が多い。
それでも言う事を聞かない所か、殴りかかって来るのもいる。
そうなると俺の出番だ。

「お客様、こちらへ」

客の肩へ手を置くと、店の裏の路地に転送する。
店の中でデバイスを出す訳にはいかないので、転送魔法が発動する特殊な術式が印刷された紙を持っているのだ。

「おう、いい加減にしねえとこいつの電撃をお見舞いするぞ、払う物払ったらとっとと帰りな」

 転送と同時にジライオウを召喚していたりする。
ジライオウの角の先で、強力な電気がスパークしている。
これを見れば、まず間違いなく支払いをして帰ってくれる。
俺の仕事は、ほぼ用心棒になってしまった。

 バイトを初めて2週間、それぞれのポジションが決まり、店の売り上げにもかなり貢献し始めていた。
何せ、元から料理と酒の旨いことで有名な居酒屋チェーンである。
そこへ来て、バイトの女の子が可愛い、安全でクリーンな店と言う事で、売り上げは順調に伸びている。
最近は、バローロが、ギターの弾き語りを披露することもあり、これが客に大受けだったりする。

 後、気付いたことが一つ、飲み残しや食べ残しの食材や酒が異常に多いことである。

「あーあ、もったいねえなあ、店長、これ捨てる位なら俺に下さい」

「どうするんだそんな物」

「ジライオウの餌にするんですよ」

 そう、食べ残し(デザートのアイスクリームや果物)を大きめのお盆に盛りつけて、店の裏へ、
そこで、ジライオウを召喚する。
ジライオウは大喜びだ、あっという間に平らげてしまう。

 この方法のおかげで、店から出るゴミの2割がジライオウの餌になることが分かった。
こちらとしても、餌代が浮くので非常に助かる。
店長さんからも、ゴミの処分料が減ったことに感謝された。

 それだけじゃあない、飲み残しの酒も、種類別に瓶に詰めて持ち帰っている。
これも、ガムシロップや香料、水飴などを加えてジライオウの餌にする。
作り方のレシピは秘密だが、以前蜂蜜を加えて作っていた時より安いコストで、大量に作れる所が魅力だ。
おまけに、ジライオウの反応もすこぶるいい。
この新しい餌を作れる様になったことで、ジライオウ対策の餌は常時大量に保管できるようになった。

 こうして5月が過ぎ、初めてのバイト料が入った。

6万有った、僅か8日それも1日4時間働いただけで、結構な額だ。
店長が、それぞれの貢献度に応じて色を付けてくれたらしい。






「やはり、あの子達は違うようね、タダの馬鹿だと思っていたけど、相当な頭脳の持ち主よ」

「ヴァンサン・ロシェットとバローロ・R・ブッシアこの二人は、相当な出世頭になるな」

「問題は、あの性格と魔力か……」

「まだ2年近くある、いくらでも鍛えようはあるさ」

 既に先生方は二人の実力を見抜いている様だ。










作:次回、先生方来店「来るな!」



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第30話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/15 00:06
 俺たちがバイトを始めて一月と少し、招かれざる客が来た。
うちの先生達だ、ついでに言うなら、はやてさんもいる。
うちの料金システムは、コース料理5000+3000で、2時間飲み放題になる。
お酒の飲めない人は+2000で指定料理食べ放題だ。

 この人達、化け物だった。
イヤ、化け物と言ったら化け物に失礼だ。
化け物以上の化け物、店にとっては悪魔だ、イヤ、悪魔以上の何かとしか言いようがない。

 この人達、きっちり金は払う、しかも前払いで…… 
その後は、異常な量の酒を、料理を注文し、全てを平らげる。

 まず、校長先生とはやてさん、何ですかその樽と、異常に大きな瓶は?
エリオ先生とギンガ先生、そんなに食べないで下さい、他のお客さんの分が無くなってしまいます。

 回りの客も、それを見て逃げる様に帰っていく者が続出する。
店長がトイレでしくしく泣いている。

 それだけじゃあない、先生達以外に、フェイト執務官と、ギンガ先生の妹さんで、スバルさんが来た時もこうなる。
この人達、クラナガン市内の飲食店では、ブラックリストに名を連ねるイヤな客だ。

 ギンガ先生、スバルさん、エリオ先生は、クラナガン市内の大食い挑戦の店、全てを制覇した強者でもあった。
一体、あの人達のエンゲル係数はどうなっているのだろう?と、他人事ながら要らぬ心配をしてしまう。

 ただ、あまりお店に損害が出ると、こちらの給料にも響く、出来ることなら来て欲しくない。
いや、「二度と来るな!」と言いたいが、アルバイトの立場でそれを言えるはずもなく、非常に腹立たしい。

「お、真面目に働いてるね~少年よ、若い時の苦労は買ってでもしたまえ」

 なんて言われても、嬉しくない。



 エリカが、エリオ先生の食べっぷりを見て呆然としていた。
そりゃショックだろう、そんなの見てたら食欲なくすって。


 しかし、えげつないというか、意地汚いというか、素晴らしい先生方だと思っていたのに、やはり人間である。
どこかそう言った部分がある様だ。

 結局、先生達はきっちりと元を取って帰っていく、いや、元以上に店に被害を与えていく、
先生達が来た後は、店を閉めるしかなかった。

 まあ、それでもこのバイトは当分辞められそうにない、出来ることなら免許を取って、バイクが欲しいのだ。
卒業するまでには、買えると良いなと思う。







 さて、6月も後半に入り、授業の方もだいぶ楽になってきた。
ビリー先生の体力作りも慣れてきたせいか、以前の様にばてることもなくなってきた。
生徒全体でも、数名を除いてはそんな感じだ。

 俺たちのチームでは、もうばてる奴なんかいない、随分体力が付いてきたと実感できるようになってきた。
それに伴って、魔力が少しずつだけど上がってきている。
これなら、2年の連中とガチンコしたって勝てるか?とさえ思うが、向こうも相当魔力が上がってきていた。

 結局の所、全体的にレベルアップしているといった感じなのかも知れない。

 あの生徒会長ですらも、魔力切れが無くなってきたのである。
背中のランドセルユニットに装填された1000発のカートリッジを撃ち尽くせるまでになっていた。


もうすぐ、夏休みだ。

 そして、1学期の仕上げは、またもや模擬戦大会だという。
今回は、武装隊選抜チームやら一般参加を混ぜるらしい。
前、128チームが参加してのトーナメント、一体どこまでやれるかが楽しみだ。
今回ばかりは、俺たちの優勝は難しいだろう。

 俺は密かに、新魔法の開発に取りかかった。









作:次回、学期末大模擬戦大会



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第31話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/17 16:17
「「さーて、始まりました第2回ガチンコ模擬戦大会、司会兼ゲストコメンテーターの八神はやてと、審判長兼解説の高町なのはで、お送りしています」」

「さて今回は、一般参加がおる言う展開ですが、これは一体どういう事なのでしょうか?」

「それはですねえ、作者が試合数が多いと書きにくいと言うことで、簡単にトーナメント出来る様仕組んだ物です」

「では、一般参加が入っていますが、この中で注目しているチームはおるでしょうか?」

「そおですねぇ、やはり八神家所属、チーム・ヴォルケンリッターが優勝候補ではないでしょうか?」
「フルバックのシャマル先生が救護所から抜けられない為、リィンが穴を埋めています、どこまで穴を埋め切れているかが、勝負の分かれ目でしょう」

「なるほど、他に注目は?」

「チーム・ナカジマシスターズがダークホースでしょうね」
「このチーム、3人フロントアタッカーで一人が、センターです、突破力なら全てのチームの中で最強でしょう」

「では学生チームはいかがでしょうか?」

「やはり生徒会A・Bの両チームでしょう」
「前回よりも遙かにパワーアップして、恐ろしいまでの攻撃力です」
「後、前回優勝の4馬鹿チームもなかなか良い感じに仕上がっています」
「組み合わせさえ良ければベストエイトぐらいまでは残るでしょう」






 俺たちは、現在4回戦を戦っていた。
いつものごとく、ロサードのくじ運が冴える。
一般参加の弱そうなチームと1回戦を当たり、前衛二人の力押しで余裕勝ち、2回戦もそんな感じだった。
3回戦は全員で囲んで、バローロの音波魔法をお見舞いしてやった。

 やはり注目のチームは生き残っている。
どこも異常な強さだ。
これに生き残ればベストエイトだ。

 今戦っているのは、士官学校時代同期だったエリートチーム、どいつもAクラスだ。
だが、どうにも頭が固い。

 既に俺の攻撃転送で、二人落とされ、センターと召喚師が残っているだけだ。
別にすっぽんぽん光線で脱がしても良いのだが、男の裸は見たくないのでやめた。

(どうする?、バローロ)

(そうだなぁ、相手の召喚師は、まだサークルの中だし、ロサード、ハウメ、ボコって来いよ、援護するぜ)

(じゃあ俺は、あの召喚師をここまで引きずり出すわ、ついでにフルボッコだ)

 作戦は決まった。
ロサードとハウメが相手のセンターに襲いかかる、バローロは後ろからマシンガンショットでセンターに魔力弾を撃ち込む。

 俺は、相手の召喚師に気付かれない様に、そっと彼の足下に転送魔法陣を仕掛けた。
すぐさま、ロサード達の目の前に転送してやる。

 あっという間に、彼らはフルボッコだった。
ベストエイト進出決定である。



 ベストエイトには、流石に強豪がひしめいている。

 まず優勝候補のヴォルケンリッター、SSS のシグナムさんを筆頭にヴィータ教頭、犬耳のザフィーラさん、ちっこいリィンさん、
いずれもSクラスの強者揃い、まず勝てないというか、シグナムさんだけでも優勝出来るでしょ。

 ナカジマシスターズは、ギンガ先生、スバルさん、ノーヴェさん、ウェンディさん、いずれもランクはAAA+だが、実力はSだ。

 生徒会A・Bチームも前回とは比べ物にならないほど強い。

 今、名前の挙がったチームは、ほとんど魔力の消費をしていないまま、ここまで勝ち残っている。
桁外れに魔力がある上に、ほとんど温存は反則に近い。
これをどうにかしないと上に勝ち上がることは出来ない。

 だが、今回当たるのは、ナカジマシスターズ、どおやら、くじ運もここまでの様だ。





「おい、どうするよ」

 試合が始まる前から既に作戦を練り始める。

「相手は、突破力に物を言わせて相手チームを秒殺してきた奴らだぜ、ちょっとやそっとじゃ防げない」

「まずは、トラップをしこたま仕掛けるか?」
「それで一旦止めて、仕切直す」
「後は、俺の新魔法に任せて貰おう、例え魔力が弱くても、使う魔法の種類とやり方では、充分に勝てる所を見せてやる」
「それでもって、あの人達を全員素っ裸にしてやる」

 作戦は決まった。
後はどこまで通用するか?で有る。










作:次回、準々決勝



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第32話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/29 20:37
「さーて始まりました、準々決勝第2試合、4馬鹿チーム対ナカジマシスターズ」
「さあ、なのはさん、どちらが勝つと思いますか?」

「力押しならナカジマシスターズでしょうが、4馬鹿チームは馬鹿ではありません、かなり頭が切れます」
「作戦の立て方によっては勝ち残ることもあるでしょう」




 まずは作戦タイムである。

 俺たちは先ほど話し合った作戦で行くことが決定していた。




「いいこと、あの子達は、99%強い相手にはトラップバインドから入るわ」
「だから、絶対に突っ込んじゃダメよ、それから直接砲撃もダメよ、確実に返されるから」

「そう言うことだったら私に任せるっす~」
「まず、バインドを全て潰すっす」
「後は直接フルボッコっす~」




 どおやら作戦は決まった様だ。



 試合開始のブザーが鳴る。


 それはいきなりだった。
ウェンディさんは俺たちに当てない様に強烈な砲撃の雨を降らせたのだ。
土埃が晴れてくると、そこにはいくつものバインドが、うねうねと立ち上っては消えていく所だった。

 やられた、いきなりバインドを全て潰されていた。

「3人とも飛べ!」
「そこで止まったら動くなよ!」
「6面防御陣展開!」

 俺の新魔法である。
ロサード達はそれぞれ、前後左右上下とも転送魔法陣に囲まれた。
これで、どこからどんな攻撃が来た所で当たりはしない。

 ただ欠点として、こちらから攻撃も出来ないのだが……
後は、相手が勝手に自滅してくれるのを、待つしかない。

 ギンガ先生達3人が突っ込んできた。

「リボルバースパイク」

「リボルバーキャノン」

「振動拳」

 だが、真正面から6面防御陣に突っ込んだ所で何の効果もない。
三人とも、魔法陣に飲み込まれた。

 すかさず出口の魔法陣を、三角形になる様に配置してやる。

 三人とも見事に激突した。
振動拳を受けてしまったノーヴェさん撃墜、スバルさんもギンガ先生もダメージが大きい。
それでも立ち上がる二人、目つきというか目の色そのものが変わった。
危険な匂いがぷんぷんする。

「ディバインバスタ~」

 いきなり力押しだった。

「エマルジョンコレクト・イン」(一時保管)

 ハウメに向かって放たれた強力な直射砲は、魔法陣に吸い込まれた。
だが、スバルの所には帰ってこない。

「えっ、どうなっているの?どこかに転送?」

「これでも喰らうっす」

 ウェンディさんの強烈な砲撃が何百発も飛んでくる。
しかし、全て魔法陣に飲まれて消える。
攻撃転送の様に帰ってくることはなかった。

 仕方なく、ナカジマシスターズ3人と、ロサード達3人が向かい合った。
その瞬間、俺はもう一度、新魔法を発動する。

「エマルジョンコレクト・アウト」

 その瞬間、魔法陣から強力な砲撃が放たれる。
エマルジョンコレクトは、攻撃転送の進化形である。
吸い込んだ攻撃を、一時保管し、任意のタイミングで返すことが出来るのだ。
まあ、はっきり言ってしまえば、究極の他力本願である。

 効果は大きかった。
3人とも、もう動くことが出来ないほどだ。

 ここでリベロ発動、すっぽんぽん光線発射!
3人を素っ裸にして、試合は勝利した。

 因みに、デバイスと着ていた物は、はやてさんの目の前に転送しておいた。

 第一試合では、エリカのチームが、生徒会Aチームに完敗していたので、次は生徒会Aチームと当たる様だ。









作:次回、準決勝。




[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第33話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/04/24 21:31
「いや~、さっきは上手く行ったな~」

「ギンガ先生、良い乳してたな」

「俺、スバルさんの乳が良かった」

「ウェンディさんもなかなか良かった、今夜のオカズかも」

「でも、俺たちの学年、乳が足りてないよな」

 先ほどの快勝で、勢い付く俺たち、次は生徒会Aチームだ。




 一方、転送された下着をチェックするはやてであった。

「おお~、スバルもギンガもなかなか育っとるな~」

「はやてちゃん、そう言うのやめないかなあ」

「しかし、まさかスバル達がああも簡単にやられるとは思わなかったね」

「相性言うのがあるからな~、相性によっては、S ランクオーバーが、A クラス以下に負ける事も有るんやなぁ」
「まあ今回は、そう言う悪い相性の結果やった言う事や」



「さて、第3試合、第4試合とも順当に勝ち残る所がしっかり勝ちまして、準決勝となりました」

「準決勝第1試合は、4馬鹿改め、チームトンガリキッズと生徒会Aチームの対戦です」





 さて困った、次は生徒会なのだが、前回と同じ手は通用しないだろう。
それに今回は、魔力の消費を極力抑えたい。
決勝で、チームボルケンリッターと当たるのは、間違いない事だった。

「おい、どうするよ」

「まずはバインドだろ、もう一度、山ほど仕掛ける」

「会長の砲撃は貴重だから、なるべく多く保管したい」
「まださっきの砲撃が200発近くと、ディバインバスターが1発保管してあるが、それだけじゃあ決勝を戦うには足りなすぎる」

「じゃあ、またハトを出すか?」

「多分読まれているだろう」
「それに向こうには、カトリーヌちゃんが居るからなぁ」

「やはりバインドを山ほど仕掛けよう、更にバインドの上にも魔法陣を仕掛ける」
「これで、出来る限りの砲撃を拾いまくる」

「じゃあまた俺たちは囮か?」

「まあ、そう言う事になるが、もし奴らが至近距離まで来た時は、ガチンコをして貰うかもしれんぞ。



 一方、生徒会Aチーム

「お前達、俺の後ろに下がっていろ、奴らと魔力勝負に出てやる」
「奴が吸い込むのと、俺が倒れるのと、どっちが先か勝負してやる」
「もし万が一俺が倒れたら、お前らに全て託す」

さすがは会長、漢である。

「じゃあ、私たちは会長が倒れた事を想定して動きましょう」
「私がカトリーヌちゃんでバインドやその他諸々を踏みつぶすわ、あと生き残った連中を始末して下さい」

「なるほど、それならほぼ確実に勝てるでしょうね」

「でも、何か納得行かない、私が目立ってない気がする」

「今は目立つ事よりも勝つ事ですよ、勝った者だけが目立てるのですから」

 作戦タイム終了である。




 試合開始の合図と共に、先頭に出てきたのは生徒会長だった。

「これでも喰らえ!ハイパーバースト、ファイヤー」

 もの凄い砲撃が開始された。
こちらの陣地のほとんどに降り注ぐ砲撃の雨、しかし、その全てを魔法陣が飲み込んでいく。
俺のエマルジョンコレクトは、なのは校長のディバインバスター1000発分を想定して安全係数はその3倍の容量に設計してある。
ちょっとやそっとの砲撃じゃあ容量をオーバーフローすることはない。

 10分近く続いた砲撃は、とうとう終わった。
会長は力尽きてその場に倒れ込んでいた。
こちらも危なかった、数千発に及んだ砲撃は安全容量ぎりぎりの所まで来ていたのだ。
これ以上は、俺の魔力を消耗しながら耐えるしかない。

 一旦、出していた魔法陣を全て収納する。

「今のはやばかったぜ、もう少しで腹一杯だ」

 だが、今度はZガ〇ダムもどき、カトリーヌちゃんが出てきた。
こちらにビームライフルの砲口が向いている。
仕方ないので、魔法陣を出して防御にはいる。

 1発目で、安全容量を超えた。
それでも耐え続ける。
10発ほどで危険容量の半分まで来てしまった。
はっきり言って校長のディバインバスターを遙かに超える砲撃の威力だ。

「少々勿体ないが仕方ない、これでも喰らえ!」

 俺は攻撃転送に切り替えた。

 まさかこのタイミングで攻撃転送が来るとは読んでいなかったのだろう、クロとキァンティは後ろからまともにビームを食らってリタイアした。
2発目の攻撃転送が、Zガン〇ムの装甲を貫いた。
煙を上げて倒れるZガ〇ダム。

「さらば、カ〇ーユ」

 ロサード、ハウメ、バローロが、フィノに襲いかかっていた。
なんとか決勝進出、厳しい戦いだった。




 第2試合、勝負は一瞬だった。
シグナムさんの、連結刃が炸裂した。
4人ともたったの1撃で倒されて終わった。
やはりあの人達は、ただ者じゃあない、よほどの隙をつかない限りは、勝ち目はないだろう。
ただし、俺にはあと一つ切り札が残っている。
どのタイミングでそれが使えるか?勝負所はその1点だ。










作:次回、決勝戦



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第34話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/10 21:36
 さあ、いよいよ決勝戦だ。
相手は武装隊最強を誇るシグナムさん、ヴィータ教頭、ちっこいリィンさん、そして犬耳のザフィーラさんだ。
このチーム、全ての試合を誰か一人の力だけで勝ち上がってきている。
つまり、まだチームの底力なんて物は全く出していないのである。

 これで連携されたら、とてもじゃあないが勝てる希望なんて全くない。
まずは戦力を分断する事だ。

 試合前から作戦を打ち合わせる。

「おい、どうするよ、とてもじゃあないがあの攻撃なんて受けたら終わるぞ」

「まあ落ち着けよロサード」

「最後の切り札が残っている、これで勝てなきゃ俺たちの負けだ」
「とにかく、3人で直射砲なり魔力弾なりを撃ち込んでバリアを張らせてくれ」
「足が止まった瞬間が勝負だ」


そして作戦タイム

「……なるほどそう言う事だったのか?」

「そうだ、だから一発勝負、それでダメなら保管してある砲撃を全て叩き付けるしかない」






「今回は全員で攻撃したい、あいつらは何をしてくるか判らないし、まさか負ける訳にも行かない」
「だからあたしは、リィンとユニゾンする」

「判った、私は援護に回ろう、ただしやられそうになったら打って出るぞ」



 そして試合開始、

 合図と共にロサード、ハウメ、バローロは直射砲と魔力弾を思い切りぶっ放していた。
相手の方が驚いただろう、今まで一切砲撃をしなかった俺たちが正攻法でいきなり砲撃である。

 ヴィータ教頭とザフィーラさんがそれぞれバリアを張って防御した瞬間だった。
俺は3人に向けて魔法陣を展開した。

「なんだこれは?」

 そう、ヴィータ教頭とザフィーラさんは全方位を魔法陣に囲まれてそれぞれの空間に閉じこめられていた。

「必殺、六面結界陣」

 ただ、シグナムさんだけは、閉じこめられる直前にその場を飛び退いてこれをかわしていた。

「なんだよこれ~出られねーぞ」

 そう、この魔法の特徴は出られない事だ。
これも攻撃転送の発展版である。
閉じこめられたら最後、どの魔法陣に突っ込んでも、他の魔法陣から元居た所に帰ってきてしまう。
どんな攻撃をしたって自分に返ってくるのだ。

「おまけだ、これでも喰らえ!」
「エマルジョンコレクト・アウト!」

 魔法陣のBOXが赤く輝いて、閉じこめられた空間に全方位から強烈な砲撃が加えられる。
先ほどまで保管していた砲撃の一部を解放したのだ。

 ウェンディさんと会長の砲撃を合わせて300発づつ解放してやった。
ザフィーラさんとヴィータ教頭、そして教頭先生の中に入っていたリィンさんも撃墜されていた。

 さて残りのシグナムさんだが、簡単には足止め出来そうにない。
こちらを見ながら不敵な笑いを浮かべている。




「さあ、大変な事になって参りました。まさかヴィータとザフィーラまで落とされるとは思っても見ない展開です」

「完全に隙を突かれましたね、しかも、最後の砲撃は彼らの魔法ではありません、他人の魔法を借りてきて使っています」
「アレなら、強い魔力が無くても強力な砲撃が可能です」

「いやはや、随分けったいなと言うかせこい手と言うか、相も変わらず汚いやり方が得意な連中やね」

「まあ、それが彼らの取り柄ですから(笑」

「でも、これは不味い事になったよ、シグナムを本気モードにしてもうた、あの笑いが出る言う事はかなり本気やで」





(おいどうするよ、これじゃあもう勝ち目はないぞ)

(そうだな、ハウメ、もう一度結界陣を仕掛けてみるか?それと試合中にトラップバインドは出来るか?)
(それでもダメなら、バローロに従おう)

 俺たちは、そんな事を念話で話していた。


「ふ、楽しいじゃないか、今度はこっちの番だ」

「そうはさせない」

 バローロとロサードの直射砲と魔力弾が彼女を襲う。
しかし、その全てを避けきって突っ込んでくる。

「もらった」

 ハウメの仕掛けたトラップバインドに見事に引っかかる。
しかし、そこからがこの人の恐ろしい所だった。

「はぁ~」

 もの凄い魔力を込めると、バインドが壊れていく、もう持ちそうにない。
その瞬間、俺は六面結界陣を展開した。

 今度こそ、完全に閉じこめた。
これで逃げる事はおろか攻撃も出来ないはず……

「これで私を閉じこめたつもりか?」
「カートリッジ、エクスプロージョン」

 ガシュ、ガシュ

 2発のカートリッジがロードされ、レバンティンがただの剣から、連結刃に姿を変える。
でもまだ攻撃を仕掛けてこない。

「トドメだ、これでも喰らえ!エマルジョンコレクト・アウト」

 その瞬間だった。

「飛龍一閃!」

 魔法陣の質が変わる瞬間を狙われた。
魔法陣で作られた密閉空間は、あっさりと切り裂かれその中から彼女が悠々と出てくる。

「さあ、どいつから血祭りに上げてやろうか?」

 その時だった。

「すいませ~ん、僕たち降伏しま~す」

 バローロが白旗を揚げた。

「こら~貴様ら!真剣にやらんか~!」

 当然の様にシグナムさんが激怒する。

「いや、真剣にやってますって、勇気ある降伏と呼んで下さい」

「何が勇気ある降伏だ、最後まで戦え!」

「だって、もう攻撃手段というか、奥の手が残ってない状態で戦って玉砕というのもイヤですし、
ここで痛い目を見るより降伏した方が何倍もマシですから」

 そう、彼の言う事は正しい、これはスポーツの試合ではないのだ、あくまで模擬戦である。
これが本当の戦いなら、勝てなければ逃げる方が良いのだ。

 振り上げた拳の治め所を失ったシグナムさんは、その後もとても機嫌が悪かった。



 こうして、俺たちの連覇は成らなかったが、学生チーム1位だけは死守出来た。





次回:いつもの居酒屋で先生達が反省会。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第35話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/11 19:52
 ここは俺たちがバイトするいつもの居酒屋、そして今日は貸し切りである。
それもそうだ、さっき大会が終わってすぐにここへ直行したのだ。

 貸し切りにしないと、どれだけ被害が出るか判らない。
とてつもなく恐ろしいのだ。

 ここに揃っているのは、先生方、スバルさん、ウェンディさん、ノーヴェさん、チンクさん、ディエチさん、
リィンさん、ザフィーラさん、アギトさん、はやてさん、そしてシグナムさんだ。

 飲み会の前に反省会が始まる。


「どうしても納得行かない」

 そう言ったのはシグナムさんだった。

「イヤ、アレは正しい判断だ、もし本当の戦闘なら降伏じゃあなく撤退だっただろう、どうなんだバローロ君?」

「その通りです、間違いなく撤退してました」

 料理を配りながらバローロが士郎先生にそう答える。

「じゃあ仮に聞くが、シグナムさん、あんたなら自分の部下に死んでこいと命令するかね?」

「なっ」
「そんな命令は一度もした事がないし、万が一の場合は真っ先に私が相手を食い止めています」

「それじゃあダメなんだよ、指揮官は」

「何がダメだというのですか?」

「頭を失った部隊は簡単に崩壊するんだよ、それから部下を簡単に死なせる様な指揮官には誰も付いては来ない」
「真っ先に自分が、と言うのは、もし万が一自分がやられたら、部下を道連れに部隊が崩壊する事になる」
「部下を死なせる様な指揮官も簡単に部隊を崩壊させてしまうんだ」
「だから彼の選択は正しい、部下を傷つけさせず自分も傷付かず、最後に責任だけ取るやり方こそ指揮官たる者の努めだ」
「そう考えれば、彼の降伏は納得行くだろうし、それが今一番自分に足りない所でもあると判るだろう」

 士郎先生の言葉はとてつもなく重かった。

「あたしはもっと納得行かない、格下の奴に負けた事が……」

「アレは油断しすぎだろう?なあ、なのは」

「そうね、アレは相手を舐め過ぎじゃあないかしら?」
「ねえ、ヴァロット君から見てヴィータはどう見えた?」

 ジョッキを準備していた俺になのは校長が質問をする。

「そうですね、ヴィータ教頭とザフィーラさんは、動きが直線的で読みやすかったです」
「それに、前から直射型の魔法を喰らうと足を止めて必ずバリアを張るし、その癖を逆に利用させて貰いました」

「なっ」

 言葉もないヴィータとザフィーラ、だが格下の相手を舐めすぎた結果だった、これも自業自得である。

「それにしても恐ろしい観察力だね~もしかしたらもうシグナムさん対策出来てるんじゃないの?」

「はい、出来てますよ、って言うかアイディアだけなんですけどね」
「後2~3ヶ月も練習すれば、もしかしたら勝てるかも知れません」

「何だと、貴様ら聞き捨てなんぞ」

「でも事実は事実です、もう既にとんでもない欠点を見つけてあります、次回はそれを突かせて貰います」

「欠点だと?何だ言ってみろ!」

「言いませんよ、言ってしまったらこちらの負けが決定しますから」

 何とも面白くないシグナムだった。

「俺は、」

 ビリー先生がぽつりと漏らした。

「俺は、部隊が崩壊する怖さも、戦場の恐ろしさも味わった、生きているのが今でも不思議だと思うし、
あの時の恐怖は、未だに夢に見る」
「あのソマリアの内戦は地獄だった、介入したアメリカ軍は先遣隊がゲリラの襲撃を受けたんだ。
しかも、部隊の中に半分近く黒人が居た事が仇となった、いつの間にか、ゲリラが紛れ込んでいた事に気付かず、
そのまま進軍した町で、紛れ込んだゲリラの発砲を合図に襲撃を受けたんだ」

「上官が、戦友が目の前でただの肉塊に変わり果て、救出に来たヘリさえ落とされて、僅かに生き残った俺たちは戦場を逃げ出したんだ」
「逃げる時、死んだ奴全てのドックタグを拾い集め、持てるだけの武器を持って逃げた物の、ゲリラ達の追撃に合い、仲間は一人また人と死んでいったんだ」
「結局、前線司令部に帰り着いた時、俺は部隊全員のドックタグと、この拳銃しか持っていなかった」

「結局アレは、指揮官が悪かったんだ、ろくな作戦も立てずに進軍した事と、部隊の編成を間違った事が部隊全滅の憂き目に遭ってしまった」
「だから、指揮官は判断を間違ったらダメなんだ、自分はおろか全ての部下の命を預かっている事を意識していないと判断を間違うし、
部隊さえ全滅させてしまう、責任は非常に重いんだ」

 ビリー先生の話に、その場が静まりかえっていた。
ビリー先生は、ウィスキーをぐいっと一杯飲み干すと、

「嫌な事思い出しちまった、今夜はとことん飲むぞ」

 と、一人で飲み始めた。

「ビリー先生、貴重なお話ありがとうございました」

 俺たちは、整列して頭を下げた。
ビリー先生の目尻に涙が光っていた。








次回も反省会の続きです、
フェイトさんとヴィヴィオが乱入



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第36話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/12 19:25
 ビリー先生の壮絶な話に、シグナムは自分の至らなさを思い知らされていた。
あまりに部下の事を軽く見過ぎていた、そして、それ以上に自分の命を軽く見過ぎていた事に反省するしかなかったのだ。
そして翌日から彼女の働きぶりが変わったと、後からはやてさんが言っていた。

「さて、湿っぽい話はこの辺にして私たちも飲みましょ」

 と、なのは校長に促されて飲み会が始まる。

「こんばんは~遅れてごめーん」

 入ってきたのは、フェイト執務官、その後ろに、もの凄い美少女が付いて入ってきた。
可愛い、もの凄く可愛い、ミッドチルダの国民的美少女コンテストをやったら確実に優勝しそうな美少女だ。

「皆さーんご機嫌よー」

「あ、ヴィヴィオ帰ってきたね」

「うん、フェイトママが迎えに来てくれたけど、道が混んでて遅くなっちゃった」

 そんなやり取りに絶句したのは、エリカだった。

「ヴィヴィオって、まさか聖王様?」

「そだよ」

 料理をパクつきながら、あっさりとそう答えるヴィヴィオ、驚いたのはこっちだった。

「みんな、ヴィヴィオの事はマスコミ報道で知ってるよねえ?」

「え、まさか聖王様の親代わりって校長先生だったの?」(ヴァロット

「今は正式に親だよ」

「ってことは校長先生は、聖王母様?」(エリカ

「そ、そうなるかなぁ」

「で、でも、そんな高貴な人がこんな庶民的な場所にいて良いんですか?」(バローロ

「今はまだ聖王じゃないよ、ただの高町ヴィヴィオだよ、ねー」(ヴィヴィオ

「ねー」(なのは

 どう突っ込んだらいいのだろう?
突っ込みどころが満載過ぎて、突っ込むに突っ込めない。

 しかし、一体何なのだろう?このアットホームな雰囲気は?
近い将来王様になる人が目の前にいるのだ、それなのに誰もそんな事を気にも留めないし、
まるで家族の様な付き合いだ。

 どうやら、この人達は相当凄い人たちらしい。

「しかし、ヴィヴィオも随分大きくなったなぁ」
「今高校生?」

「うん、この4月からだよ~」

「で、高校出たら聖王に即位するんやなぁ?」

「今のところそう言う予定」

 はやてが目を細めながらそんな会話していた。

「おーいこっちもう料理が無いぞ~」

「え?もう食べちゃったんですか~?」

「レヴさーん、次の盛り付け出来てる?」

 ギンガ先生、スバルさん、エリオ先生の前はすぐに料理が消えて無くなる。
その上、酒が消えるペースも速い、この人達来て欲しくない客ランキングに顔写真入りで乗っているのだ。

 因みに、来て欲しくない客ランキングワースト10はこうなっている。

 第1位 八神はやて とにかく酒の量が普通でない、飲み放題の店で全ての酒を平らげる。
 第2位 高町なのは 酒の量の差で2位になるが、理由ははやてと同じ。
 第3位 スバル・ナカジマ 食べる量が半端でない、食べ放題の店は常に狙われている。
 第4位 エリオ・モンディアル
 第5位 ギンガ・ナカジマ 3位から5位は食べる量の差だけであるが、その差は僅かである。
 第6位 フェイト・T・ハラオウン 飲み放題メニューの中の高級酒を専門に飲む、主にワイン等を中心に飲み干す。
 第7位 レティ・ロウラン ご存じ!酒乱大魔王
  ・
  ・
  ・  8~10位は一般人の為割愛させて頂く。

 とにかく、とんでもない人たちの集まりだった。

 この面子を見ていると、今回の大赤字を取り戻して余りある方法を思い付いた。
店長に相談する。

「なるほど、その手があったか!」

「こういう事は女の子にやらせた方が良いな」

「ヴィーニャさん、ちょっとお願いしてもいいかな?」

「はーい、ヴィヴィオ様、サイン下さいな♪」
「後は寄せ書き風に全員のサインをくださーい」

 ヴィーニャさんが上手く乗せてサインをさせていく、最後は記念撮影だ。
後に、このサインのおかげで店は大繁盛する事になる。



「しかし、今日の大会も凄かったね」

 そう切り出したのは、なのは校長だった。

「ねえ、ヴァロット君、あのエマルジョンコレクトって一体どんな魔法なの?」

「アレは転送魔法です、俺、転送と召喚しかできませんから」

「ええっっ?」

 そこにいた全員が驚いただろう、だけど実際そんな物だ。

「でも、もの凄く後になってから砲撃を出してたじゃない」

「アレは、転送する際の時間をずらしているだけの事なんです」
「最初それに気付いたのは、転送する際僅かにタイムラグが発生する事でした」

 俺は魔法陣を二つ出して片方に酒の空き瓶を突っ込む、一瞬の間があってもう片方の魔法陣から空き瓶が出てくる。

「この一瞬の間をどこまで広げられるか試している内にどんどん間が広がって、好きなタイミングで取り出せる様になったんです」

「なあ、あの魔法ってどのくらいの容量があって、どのくらい保管出来るのかいな?」

「容量的には、校長先生のディバインバスターを1発150万M(マナ)と見積もって1000発分です。

「150万M(マナ)って何時のデータよ、それなのはちゃんの子供時代の数値よ」

 そう言ったのはシャマル先生だった。

「今は500万M(マナ)越えてるわよ、通常モードでね」

「通常モードって、その上があるんですか?」

「通常モードの上に、エクシードモードがあって、その上にブラスターモードが1~3まであるの、
モードが一つ上がるごとに、魔力値は3倍ずつ上がるのよ」

「っなアホな、そんな事言ったら4億500万M(マナ)ですよ、SSS でもあり得ない数値です、どんだけ化け物なんですか?」
「普通100万越えたらS級なのに」

 なんかこの人が白い魔王と呼ばれる訳が判った気がする。

「でも、もっと凄い人が居るわよ、そこに」

 そう言って指を差されたのは、はやてさんだった。

「はやてちゃんは、通常モードで軽く5000万M(マナ)を越えてるの、その上を使ったら、この星が滅んでしまうわ」

「んなあほな、完全に人間じゃあないですよ、そんな魔力使ったら普通術者も死ぬでしょうに」

 管理局3魔王とは、とんでもない人たちだった。
まさに無敵の魔王、化け物が可愛く見えるイヤ、化け物なんてゴミほどにも思わないだろう。
更には、その魔王様を越えるとんでもない人たちが居る、あの3人の先生方、一体この学校どうなっているのだろう?
むちゃくちゃなレベルの先生ばかりだ。

※M(マナ):魔力を示す単位






次回、宴会の締めになのは校長がとんでもない事を言い出す。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第37話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/13 18:59
「所でさあ、容量は判ったけど、どれくらいの期間保存出来る物なの?それと攻撃魔法以外の物は保存出来るの?」

「保存期間についてはまだ判っていません、実験中です」

 そう言って俺は小さな魔法陣を開いた。
魔法陣の中に手を突っ込んで取り出したのは、スチロールトレイ、上に氷が乗っている。

「実は魔法が完成したのは10日前で、まだどのくらい持つのか判ってないです。
それでもって、この氷は一週間前に入れた物なんですが、まだ溶けていません。
どうやらこの魔法は温度とか鮮度も維持してくれるみたいなんです」
「中に入る物は相当大きな物でも入ります、取り出す場合は召喚魔法陣か転送魔法陣を使います」
「どんな物でも入るし、かなりの期間保存が可能です」

「なんかお買い物に便利な魔法だねぇ」

「まるでド〇えも〇の四次元ポケットや」

「何ですか?そのド〇えも〇って?」

「こっちの人には判らんネタやったな」
「しかし、どこでもドアに四次元ポケットとは、召喚魔導師ってつくづく便利やなぁ」

 確かに便利だった、この魔法が今後もの凄く役に立っていくとは、まだ気付いていなかった。


「ねえ、今日の試合って~なんで一般の人たちも出てたの?」(ヴィヴィオ

「それはね、作者が敗者復活を考えるのが面倒くさいと……」(なのは

「所でなんでヴィヴィオさんがそんな事を知ってるんですか?」(ヴァロット

「ぁ、あの試合、TV中継されてたんですよ」(ヴィヴィオ

「ちょっと、それどういう事ですか?なのはさん」(スバル

「もしかして私たちの裸、世界中に中継されたんじゃあ」(ギンガ

「ゴメン、放送権料が欲しくてTV局に売ったんだわ」

「なんでそんな事するんですか?」(スバル

「イヤ~あの学校最初は1学年3クラスの予定だった物を4クラスにした上に、スカウト組は特待生だから予算が足らなくなって……」
「……その、ミッドチルダの人たち、ああ言う試合とかの中継大好きだし、前回も凄く評判良かったし、今回は契約金も良かったし……」

「前回も売ってたんですか?」(ヴァロット

「うん、売った」

「あーあ、アマネさん可愛そう」(ヴァロット

「だったら裸にしなきゃいいじゃない?」

「いや~アレが僕に出来る最善ですから」(ヴァロット

「どう言う事?」

「魔導師は、デバイスもバリアジャケットもなければ大したことは出来ません、ただの人になってしまうんですよ」
「つまり、誰も傷つけなくて済む訳です」(ヴァロット

「ふ、優しいな君は」(士郎

「敵も味方も関係なく怪我人を出さずに相手を制する事、それを目標に戦ってますから」(ヴァロット

「活人剣の世界だな、とても俺には真似出来んよ、俺の様な殺人剣にはな」(士郎

「お父さん、その話はしないでよ」(なのは

「おっと、そうだった」(士郎


「おーい料理がもう無いよ~」

 また、料理が消えていく、この人達の胃袋はどうなっているのだろう?

 結局、店中の酒と料理を平らげて、そろそろお開きだ。

「あ、そうそう、君たち、夏休みに林間学校やるからね、楽しみにしてる様に」

 その瞬間、エリオ先生とキャロ先生がニヤリと黒い笑いを浮かべていた。
それがただの林間学校でないと判るのは、もう少し先の話だったりする。


 さて、この場をお開きにしたいんだけど……まずはこの人をどうにかしないとね。
飲み始めた後、はやてに潰されてしまったビリー先生、取り敢えずシャマル先生が診断して問題がなかったので、
マンションまで転送となった。

「じゃあ、キャロ、お願いね」

 なのは校長、士郎先生、フェイトさん、ヴィヴィオさんも転送で帰っていった。
こうすれば歩かなくても簡単に帰る事が出来るし、飲酒運転で捕まる事もない。
転送って便利だ。

「見られた、全世界の人たちに……」

 落ち込む3人を宥めながら中島家が帰っていく、この次試合をしたら恐ろしい事になりそうだ。

「じゃあ、そろそろ私たちも帰ろうか?」
「じゃあ私が転送しますね」

「えっ、シャマル先生、転送出来たの?」

「私だって転送ぐらい出来るわよ、昔はよく使ったんだけど最近は使ってないわね」

 八神家一同が魔法陣の中に沈んでいく。

 残りの先生達はキャロ先生の転送魔法で帰っていった。

 それから1時間後、後片付けの終わった俺たちも、俺の転送魔法で寮まで帰った。
なんか非常に疲れた1日だった。








次回:新しいバイトを始める、そしてあの人が動く。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第38話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/14 18:25
 週が明けて、夏休みまで後2週間、それぞれに過ごす生徒達、そんな中で非常に困っている連中が居た。
生徒会である。

「諸君、これは由々しき事態である、俺たち生徒会は発足以来何も出来ていない、ちっとも目立って居ないぞ」

「会長、そりゃそうでしょう、何の活動もしていないのだから」

「このままでは不味い、何か活動をして目立たないと我々の存在意義が無くなってしまう」

「1学期はもう無理でしょう、2学期に全てを賭けるしかないと思いますよ」

「後で学校行事を校長先生と打ち合わせてみたらどうでしょう、もしかしたら何か目立てる事があるかも?」





 その日、職員室棟の前に黒塗りの高級車がやってきた。

「あれ?家具屋のおじさん、こんな所でどうしたの?」

 丁度玄関に出てきたエリオ先生とキャロ先生とばったり出くわした。

「あ、丁度良かった、夏休みの学生のバイトの口を持ってきたんだよ、校長先生は見えるかな?」
「それと、私は家具屋は辞めたんだよ、今は宅配屋をやっているんだ」

 コンコン

「校長先生、お客様です」

「初めまして、私ローエン商会のローエン・タイラーと申します」
「ここの生徒さんに是非うちにバイトに来て欲しくて勧誘に参りました」


「えっ?最低時給3000~からですか?学生のバイトにしては随分高額ですねぇ」

「ええ、それなりにキツイ職場ですから」

 こうして新しいバイト先が増える事になる。





「校長先生、相談したい事があるんですが」

 校長室に入ってきたのはティアナだった。

「実は、執務官志望の生徒にこの夏の執務官補佐試験を受けさせて見ようかと思うんですが、宜しいでしょうか?」

「別にいいよ、で、受かった子達をどうするの?」

「はい、私の下で執務官補佐として働いて貰おうかと思います」
「私がスクール専属の執務官として活動を再開しようかと思います」
「2学期からは授業内容が大きく変わりますし、現場研修で犯罪者を逮捕する事もあると思います」

「なるほど、フェイトちゃんに負担を掛けない様に考えてくれて居るんだ?」

「はい、それに、今年の2年生は無理ですが、1年生で合格して1年間補佐をやれば執務官の本試験を受ける事が出来ます」
「在学中に執務官の資格を取って、卒業と同時に活動をする事も可能です」

「なるほどねぇ、それだけ優秀な人材を送り出せればレティ本部長も喜ぶでしょう」

「つきましては、予算の方を本部長に……」

「判ってるわよ、それにもう一つ試験を考えている事があるからそれを含めて明日本部長の所に行ってくるよ」

 翌日から、執務官講座を受けている生徒の追い込み勉強が始まった。





 時空管理局、ミッドチルダ地上本部、本部長室

「……と言う訳で、予算の方をお願いしたいのですが、宜しいでしょうか?」

「判りました、準備しましょう」

「しかし、あなたの選んだ先生方は優秀ですね、あそこまで酷い落ちこぼれ達をこの短期間でここまで成長させるのですから」

「どういう事でしょうか?」

「今年送り込んだ生徒は士官学校の落ちこぼればかりです、その中から有る程度の人材が育てば、
それなりにスクールの存在意義があったと評価されるのですが、これは期待以上だと思います」

「本部長それ酷いです、いろんな意味で……でもあの子達はそんな落ちこぼれじゃあないですよ」

「ふっ、その一言を聞いて安心しました、期待していますよ、未来のスーパーエリート達を」

「お任せ下さい、ビシバシ鍛えてそれなりに優秀な人材にして見せます」





 一方、生徒サイド

「えっ、校長先生が聖王母様?」

「白い魔王の真実は……とんでもない化け物だな」

 など、先週の出来事が噂話として流れ始めていた。




 俺は、新しいバイトを追加する事にした。
ただ、バローロは参考書を片手に試験対策が忙しそうだ。
合格すれば、もうバイトの必要もなくなるみたいだ。


 バイト先は、ローエン商会だ、今回は転送魔法を使える事というのが条件だ。
ローエン商会は、二人の魔導師と3人の事務、一人は労務管理、一人は経理、最後の一人は業務管理と言う体勢で仕事をしていた。
やっている事は宅配と運送である。

 この会社、運送業であるにも係わらず、トラックの1台も持っていない。
全て転送魔法でやっているのだ。
これなら、燃料代も、車検代も、保険料も要らない、おまけに事故の心配もない。
上手い事を考えた物である。

 夏休みのこの時期は、ヴァカンスで移動する人も多く、荷物だけ先に現地へ送ったり、
その逆に現地から自宅へ荷物を運んだりする事があり、流通量が異常に多い時期である。
また、97番世界出身の人たちの間では、「お中元」と呼ばれるギフトを配る時期でもあるので、非常に大変である。

 ここでバイトを始めたのは、俺と、ピノ、アスティ、エリカ、そして何故かモスカート・ダスティだ。
いずれも転送魔法講座に出ている人たちばかりである。

 仕事のやり方は、転移魔法(これも転送魔法の一種)で相手先に出向いて荷物を回収、倉庫へ転送したり、
倉庫から荷物を宅配先へ転送する。
その際の決済手続きをついでにして来るという物で、さして難しい物でもない。
ここミッドチルダでは、支払いは全て電子マネーなのだ。

 ここの仕事形態は、1日50個の荷物を6時間以内で捌く事がノルマで、その間は時給3000、
それを越えて仕事をすれば出来高払いの上乗せが付いた。
はっきり言って非常に美味しい仕事だった。

 そんな事をしているうちに、夏休みに突入していった。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第39話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/15 18:29
 夏休みに入ると、本格的にバイトが始まる。
俺は平日の昼間宅配屋のバイト、金曜と土曜日の夜は居酒屋のバイトだ。
バローロの奴は、三日後に控えた執務官補佐の試験に向けて徹夜の勉強が続いている。

 エリカ達は1日おきに宅配屋のバイトをしながら、居酒屋のバイトをしていた。
因みに、バニングス系列の居酒屋は市内に8件ほど有るが、スクールの生徒がかなりバイトしている様だ。

 執務官補佐試験の次の日だった。
ヴィータはついにその動きを捕らえた。
アスティがついに動いたのだ。

 彼女は、4月以来自分の上司と連絡が付かなくなっていた、意を決して彼に会うべく地上本部を訪れていたのである。

「失礼します、シュナン・ブラン捜査官はお見えでしょうか?」

 彼のオフィスに入っていく。

「やあ、よく来たね」

 何かがおかしい、彼のしゃべり、イントネーションがいつもと違う。

「あなたは誰ですか?」

 アスティが身構えた瞬間、彼の姿にノイズが走り、やがて変わる。

 そこに現れたのは、八神はやてだった。

「フェイクシルエット・ジャケット、幻術の着ぐるみに入る魔法よ」

 既に出口をティアナに固められていた。

「転移魔法で逃げようとしても無駄よ、今AMFのスイッチを入れたから、この部屋はAMF空間よ」

 もはや逃げる事も出来なかった。

「悪いなあ、ちゃんとあんたの口から話して欲しいんよ」

 逃げようとしても逃げられない、下手に抵抗すれば殺されるのはこちらだ。
アスティは、その場にへたり込んだまま黙ってしまった。

「喋っても大丈夫やで、あんたの体の中のカプセルはもう摘出してあるから」

「えっ?」

 驚いただろう、いつの間にかカプセルの事まで知られていた上に、自分が知らない間に摘出までされていたのだ。

「いつから……」
「いつから知っていたんですか?」

「第1回ガチンコ模擬戦大会の時からや」
「あの時、ジライオウに蹴られて気絶したやろ?その時カプセルを摘出させて貰った」
「それまでは、誰がスパイなのか、さっぱり判らなんだけど、あれではっきりしたんや」

「さて、ここまで話した以上そっちも話して貰うで」

「彼はどうなったんですか?」

「シュナン・ブラン捜査官は死んだ、カプセルが発動してな」

「彼は、4月15日に亡くなられているわ、それ以来あなたも連絡が取れていないでしょ?」
「それにこんな事をされていると言う事は、何か弱みを握られているとか?そう言う事がなければここまでの事はないはずだけど」

「お父さんとお姉ちゃんが……」

 それは、彼女の父親が原因だった。
普段から酒を飲み、仕事もろくにせずにゴロゴロしていた父、終いにはマフィアから借金をした。
その借金を棒引きにして貰う代わりに彼女を差し出したのだ。

 彼女は、スパイとして教育され、スクールに送り込まれたのである。
しかも、彼女が裏切らない為に、今は父親と姉が人質に取られている状態だった。

「許せんなぁ、なんとか逮捕して人質を救出せなあかんなぁ」

「大丈夫よ、アスティ、このことは信用出来る人にしか話さないし、人質は必ず救出するから」
「あなたは安心して待っていなさい、今日は帰って良いわよ」

 ティアナは、あっさりと彼女を解放した。




 二日後の事だった、俺は突然学校から呼び出しを受けた。
他にも、バローロや生徒会長、アマネさんもいる。

「突然呼び出してゴメンね」

 校長先生はそう言った。

「ここに集めた12人は、夏休み直前に行った指揮官適性検査の成績上位者です」
「あなた達には、これから時々、指揮官養成研修を受けて貰います」
「卒業後は、いきなり2尉か3尉として現場隊長をして貰う事になりますので、そのつもりで居て下さい」

 いきなりとんでもない事を言われた。

「でも何故会長まで居るのですか?この人ただのアホでしょ?」

「そんな事無いわよ、この中では3番目の成績だったから」

「俺だって納得行かん、なんでこの馬鹿共が居るんだ?」

「それはこの二人が断トツの1位だったからよ」

「ええっ?」

「模擬戦大会でも、その片鱗を見せていたでしょ?そう言う事よ」
「それにあなた達にはいろんな部隊からオファーが来ているの、就職先は引く手あまたよ」

 なんかとんでもない事になってきた、まさか俺たちが断トツの1位とは思っても見なかった。
ただ、この研修、他にも裏があるとは、まだこの時知るよしもなかった。






研修に隠された裏とは?
次回、救出策戦



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第40話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/16 20:04
「さて、あなた達に今日集まって貰ったのは、指揮官養成研修の事を伝えるだけではありません」
「既に研修は始まっています。そしてこれが今日のお題です」

 それは、人質救出作戦だった。
敵に捕らわれた人質2名を、救出せよという物、条件として、敵に察知されても人質に知られても、
体内に埋め込まれたカプセルが発動して、人質は死亡する。

 敵の中に、このおぞましいカプセルを埋め込む魔法を使う魔導師が居る事。
敵はおよそ100名、実弾銃で武装する者がほとんどで、中には20~30名ほど魔導師が居る。

 人質は、どこかの建物に監禁されている。

 以上の条件をふまえて、どの様な救出作戦を立てるか?どの様に指揮するか?を答えなさいという物だった。

「なお、相談する事も可能です」

「先生、どの様な機材を使っても、どの様な能力者を使っても良いのでしょうか?」

 最初に聞いたのは、会長だった。

「許可しますよ」
「じゃあ、2時間以内にレポートを纏めなさい、後で発表して貰います」

「先生、相手はどの様にカプセルを埋め込んでくるのでしょうか?転送系なのか、医療系なのか?その辺が知りたいです」

「その質問には答えられません、と言うか、そこまでの質問が来る事を想定していませんでした」

 質問をしたのはバローロだった。

 流石に困った、いきなりこんなお題を出されても、経験もないし、そんな知識もない。
ただ、現場隊長になればどんな事が起きてもすぐに作戦を立案し、行動に移らないと行けないらしい。
現場隊長とは相当キツイ職業である。

「どうするよバローロ、二人で共同でレポートを出すか?」

「そうしようか?その方が楽だしな」

 同じように2年生達も共同でレポートを出す様だ。

 長い議論が始まった。






 話は一昨日に遡る、アスティを返した後はやて、ティアナ、フェイト、なのは、シグナム、士郎、月花、ビリーで作戦を立てようとしていた。
しかし、思う様に作戦が纏まらない、やはりネックになっているのはあのカプセルだった。

「人質の救出だけなら俺一人で出来る。だが、カプセルの発動は止めようがない、何せ魔法が使えないからな」(士郎

「いや、魔導師であっても、そんな特殊な魔法を止める術を持っている者なんてまず居ないでしょう」(シグナム

「仕掛けた奴を一瞬で殺したら止まるのか?」(ビリー

「それは誰にも判りません」(ティアナ

「困ったな、良いアイディアが出てこないな」(士郎

「いっそうの事、あの子達に聞いてみたらどうやろ、何かいい手を思い付くかも知れへんで」(はやて

 これが、この研修の裏側にあったのだ。
それを知ったのは翌日の事だった。




 さて、時間です。
では順番に発表して貰いましょう。

「私たちの意見は…………多人数で囲んで牽制、その間に医療技術者を含んだ突入部隊が……」

「それはちょっと強引すぎますね、人質、突入部隊とも危険にさらしてしまうだけで成功の確率が低いし、こちら側の被害が大きいと思います」

 次は会長達の番だ。

「俺たちはこう考えます。確か、地上本部にAMF発生装置を積んだ特殊車両があったはずです」
「その特殊車両で建物を囲んで、AMFフィールドを形成します。AMFの中ならカプセルは発動しないと思います」
「そして、物理兵器で武装した突入部隊を2班に分けます。1班は犯人グループの殲滅または逮捕、もう1班が人質を救出する訳ですが、」
「その際に、人質に気付かれることなく麻酔銃か麻酔ガスで眠らせます」
「後は、現場近くに待機したドクターカーで摘出手術を行います」

「なるほど、それなら成功する確率は随分高くなりますね、でも、AMFから人質を出した瞬間、カプセルが発動する危険は拭い去れませんが」

 次は俺たちの番だった。

「俺たちはこう考えます。まず、探索能力者、転送能力者2名、冷凍魔法を使える魔導師1名、強力な近接戦闘を行える者を1名準備します」
「後、現場近くにAⅢ規格のドクターカーを準備します」
「まず、探索能力者により人質の位置を特定、転送能力者その1が、転送能力者その2、冷凍魔法を使える者、近接戦闘員の3名を人質の前に送り込みます」
「冷凍魔法を使える魔導師が、冷凍で人質を仮死状態にします。こうすればカプセルが発動する確率はかなり低いと思います」
「その上で、転送能力者その2が人質をドクターカーに転送、作業完了次第3人を転送能力者が回収します」
「近接戦闘員はあくまでボディーガードです」

「よく分かりました、この方法なら人的被害も少なくて済みそうですね」
「でも、犯人は逮捕しないのですか?」

「今回はあくまで人質救出作戦なので、出来る事なら気付かれることなく人質を救出したい」
「逮捕するなら人質救出が成功した後でも遅くはないと考えます」

「理想的だとは思いますが、敵に囲まれた場合、3名が危険にさらされる可能性は捨て切れませんね」
「それから、今回の様に、いろいろな作戦を立てて、実際どの案を使うか?と言う様な会議を行う事をブリーフィングと言います」
「この先よく使う言葉ですので覚えておく様に」

 こうして、この日の研修は終了した。
だが、翌日の夕方にまた呼び出されるとは思っても見なかった。






ついに始まる人質救出策戦、成功するのだろうか?



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第41話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/17 18:35
 それは、翌日の夕方だった。
今日は居酒屋のバイトもないし、暇を持て余していると突然連絡が入る。

「校長先生、一体何の用ですか?」

「今から有る作戦を行います、すぐに会議室に集合しなさい」

 訳も分からず会議室まで転移すると、先生方、ネロ会長、アマネさん、バローロが揃っている。



「実は、昨日のブリーフィングの結果、あなた達の作戦を採用して、人質救出を行う事が決定しました」
「ついては、あなた達にも作戦に参加して欲しいのです」

「ええっっ?」

「既に現場では、108部隊とスペシャルフォース、武装隊の精鋭が準備に入っています」
「今から合流して作戦が開始されます」

 もはや迷っている暇など無かった。
先生方全員と一緒にキャロ先生に転送して貰う。




 そこは、クラナガンから少し離れた地方都市だった。
町の外れ近くに6階建てのビルが建っている。
このビルを囲む様にビルからやや離れて、4方向に大型の工作車が何かの準備をしている。

 そこから少し離れた場所に大型のトラックが1台止まっている。
こちらのトラックはAⅢ規格のドクターカーだ。
中ではシャマル先生とその弟子達が手術の準備を始めていた。

 そして、目標のビルが見える、とあるビルの屋上に作戦本部が設けられていた。

「今回の作戦の指揮を執るのは、私だ」

 シグナムさんだった。

「あそこに見えるビルは、有るマフィアの組事務所です」
「あのビルのどこかに問題の人質が囚われているの」
「また、問題の二人以外に人質が居る可能性も捨てきれないの」
「それにこの作戦はあなた達の考えた作戦だから、必要な助言やタイミングはあなた達から出して欲しいの」

 校長先生からとんでもない事が告げられた。
責任重大なんて物じゃない、一つのミスで敵、味方、人質の誰かが死ぬ、もう逃げ出す事すら出来なかった。
それだけでなく、校長先生はとんでもない事を言い出した。

「人員の配置を説明します」
「探索能力者は私が勤めます。第一転送者キャロ先生、第二転送者ヴァロット君、氷結魔法使いリィン、ガードはうちのお父さん」
「現場でどの様なトラブルが起きるか判りません、最初はバローロ君の作戦で行きますが、トラブルが発生すればネロ君の作戦に切り替えます」

「えっ、俺、突入隊員ですか?」

「ちょっと危険かも知れないけど頑張ってね」
「まあ、怪我をさせない為にうちのお父さんを付けるんだから、安心して良いわよ」
「それから、AMFが発動した場合に備えてこれを渡しておくね」

 それは小さな拳銃だった。
手の平にすっぽりと入る小さな拳銃、弾が6発入っている。

「それ麻酔弾が6発ずつ入っているの、それぞれ有効に使ってね」

 俺と士郎先生はそれぞれ1丁ずつ拳銃を渡された。




「では作戦を開始する」

 俺はまず、シャマル先生の位置をデバイスに登録する。
なのは校長がゴルフボールくらいの小さな魔力の玉をいくつか作り出していく、
その玉を、目標ビルの屋上に向けて放った。

 全面ガラス張りのビルの換気は、屋上のダクトを通じて行われている。
魔力の玉は、このダクトから侵入していった。

 校長先生の回りには幾つものモニターが開いて、魔力の玉が見た物を映し出している。
現場のビルは地上6階地下1階の構造、地下は駐車場の様だ。

 ダクトを移動しながら、WASが人質を捜していく、そして見つけた。
3階の西側の端っこだった。

 その部屋に人質は監禁されていた。
見張りは部屋の外に二人、それから時々部屋へ入ってくる男が一人、こいつが鬱陶しそうだ。

「なのはちゃん、救助対象者はこの2名やそうや」
「残りの人も、手錠をされている事から見て要救助者やろう」

 通信管制をしていたはやてさんから連絡が入る。

「それから、この鬱陶しい動きをしとるこの男、例のカプセルを使う魔導師やそうや」

「3人とも準備はいい?」

「俺は何時でも」

「俺もです」

「ハイです」

 足下で転送魔法陣が輝きだした。







次回、いよいよ突入→トラブル発生



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第42話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/18 18:31
 それは、鬱陶しい魔導師が部屋を出た瞬間だった。
俺たち3人は、監禁部屋へ転送されていた。

 驚いた人質の一人が声を上げようとした瞬間だった。
後ろから、強烈な峰打ちを喰らってその人は倒れた。
それだけじゃあない、全員一瞬で気絶されられていた。

 士郎先生の驚くべき早業だった。

「さあ、今の内に早く」

 リィンが次々と人質を氷漬けにしていく。
まず優先順位の高い二人から転送、次いでもう3人を転送する。

 転送し終えた瞬間だった。
俺の魔力に気付かれたらしく、あの魔導師が部屋に飛び込んできた。

「てめえ、何者だ?」

 相手は手にカプセルを持っている。
こちらに向けて、指でカプセルを打ち出そうとした瞬間だった。

 彼の腕がポロリと落ちた。
いつの間にか、士郎先生が腕を切り落としていた。

 それだけじゃあなかった、腕を切り落とした上に峰打ちまで入れていたのだ。

「こちらスクール03、コマンダーへ、敵と接触、1名を確保、2名を殺害、これよりプランBを中止してプランCへの移行を進言する」(士郎

 一瞬何を言って居るのか判らなかった、だが、入り口の向こうで血飛沫が上がっていた。

「こちらコマンダー了解した、だがプランCは認められない、プランDへ移行する、撤退せよ」(シグナム

 その瞬間、俺たちの足下で召喚魔法陣が輝いた。

 

 俺たちは作戦本部に戻ってきた、キャロ先生に召喚して貰ったのだ。
次の瞬間。ビルの根本で爆発が起きる。

「こちらスクール04、車両及びエレベータを破壊した、回収を頼む」

 月花先生だった。
キャロ先生がすぐに召喚する。

「ロングアーチからコマンダーへ、これ以上の人質は居ない模様、繰り返す、これ以上の人質は居ない模様」

「コマンダーから各隊員へ、プランDを発動する、全員撤収せよ」

「じゃあ私の出番ね」

 校長先生が飛び立っていった。

「よく見ておけ、お前達が卒業後、武装隊に配属されればこういう事もこなさなければ行けない事だ」

 シグナムさんの言葉は、非常に重かった。
いや、それが俺たちの未来だと、未来の日常だと言っているのが言葉以上によく分かった。

「コマンダーからスクール01へ、全員の撤退を確認した、これよりプランDを発動する」

 その瞬間だった。

「ディバイ~~~~~~~~~ン・バスタ~~~~~~~~~~~~」

 組事務所の直上400mから放たれたディバインバスターは、ビルのど真ん中を地下駐車場まで打ち抜いた。
その瞬間、ビルが上の方から順番に全てのガラスが外へ向かって吹き飛ぶのが印象的だった。

 次の瞬間、ビルが内側へ向かって崩壊を始める。
轟音と共に一つのビルが消えて無くなった。



「こちら医療チーム、コマンダーへ、人質全員のカプセルの摘出に成功、全員無事です」

 また一つ、作戦が成功していた。

 それから、あの魔導師は手当の後AMFの特別留置室に入れられた。
今は、ビルの残骸をどかしながら、組員達の逮捕が続いている。
逮捕者半分、怪我人が少し、そして死亡者が少しと言った所だ。

 でもまだ信じられなかった、まさか士郎先生が目の前で人を斬り殺すなんて……

 会長達もバローロも青い顔をしている。
死体が運び出されるたびに、驚いている様子だった。
後片付けが終わると、その場で解散し、また会議室まで戻ってきた。
既に真っ暗な時間になっていた。

「皆さん、今日はご苦労様でした、これで解散します。それから今日の事は夏休みが明けるまでにレポートに纏めて提出をお願いします」
「それから今日の働きは、貢献度に応じて日当が出ます。皆さんは嘱託魔導師扱いで、今回の作戦に参加した事になっています」

 職員室を出る俺たち、余りのショッキングさに言葉もなかった。
寮へ戻る途中、話しかけてきたのは会長だった。

「お前、あの場で何があった?」

「士郎先生が……士郎先生が、目の前で人を二人斬り殺した」

 俺の言葉に戦慄する一同、でも、それも作戦の内でしかない事、そして士郎先生は、そう言う事に随分慣れている様子だった。
こうして、突然の人質救出作戦が終わった。

 だが、この後一騒動有る事を俺たちはまだ知らなかった。






次回、アスティの父親にフェイトさんのリアル雷が落ちる。 



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第43話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/19 17:02
 次の日、アスティは昼間のバイトを休んだ。

どうしたのかと、ピノに聞いてみたが知らないという。





 その頃アスティは108部隊の隊舎にいた。
昨日はモニター越しにしか会えなかった親子、姉妹の再会だった。

「お父さん、お姉ちゃん……」

 抱き合って喜ぶ3人だった。

「せっかくの所申し訳ないんだけど、そろそろ事情聴取させてくれないかな?」

 フェイト執務官だった。


「そう……、3年前にお母さんが亡くなられて……」

 それ以来、姉がアルバイトで家計を支えてきたのだ。
ただでさえ、働きが悪かった父、それ以来酒を飲んでゴロゴロしているだけになった。
そのうちにギャンブルにのめり込み、借金がふくれあがった。
怖い人たちがやってくる様になり、アスティは借金の形に連れて行かれたのだ。

 フェイトが怖い目で父親を睨む、視線をそらす父親、

「あなたはどう思っているのかしら?」

「………………」

「答えなさい!」

 フェイトさんがかなり怒っている。

 パリッ

 彼女の体の回りに一瞬電気がスパークした。

「働きたくない………」
「働いたら負けだと思って……」

 ビシャーン

 突然彼の頭上に強烈な雷が落ちる。
電気変換資質を持つ者だけに許された雷落としである。

 プスプス

「い、痛い」

「どこかの厨二病みたいな事言ってるんじゃない!」

 ビシャーン

 プスプス

「暴力反対です」

「働きなさい!」

「やだ!」

 ビシャーン

 3発目の雷である。
アスティ達が目の前にいる事など関係ない、怒ったフェイトさんはとっても怖いのだ。
その後、延々何時間にも渡って説教が続いた。

(これが3魔王の一人、フェイト執務官)

 アスティは、彼女が何故「雷公」と呼ばれているか?理解した。

「どうやら、あなたは再教育の必要がありそうですね」

「あなたには強制労働を命じます、労働先が見つかるまで暫く留置室で頭を冷やしなさい」

「久々に見たね、フェイトちゃんのリアルカミナリ」

「そおやなぁ、10年ぶりくらいになるかなぁ」

 様子を見に来たなのはとはやてが、そんな話をしていた。



「さて、シャルル・スプマンテさん、あなたについてですが、もしマフィア関係者がこのクラナガンにいた場合、
また誘拐される可能性があります。あなただと判らない様に整形するか、どこか違う世界に行って貰うかに成りますが、
どちらが宜しいですか?整形にしろ引っ越しにしろ費用は捜査経費の中から出ますので、心配しないで下さい」

「お姉ちゃん……」

「じゃあ整形でお願いします」

「シャマル先生、お願いします」

 すぐにシャマル先生が呼ばれて、彼女をスクールの手術室に連れて行く、数時間後……

「嘘?これがお姉ちゃん……?」

「ただでさえ整った顔立ちをしていたアスティの姉は、もの凄い美人になっていた」

 鏡を見た彼女でさえ、自分の姿に驚いている。

「元々素材が良かったから、良い感じに仕上がったわ」

 と、シャマル先生も鼻高々だ。

「後は、住む所と仕事ね」

「住む所が決まるまでは、アスティの所に転がり込めばいいわ、丁度一人部屋だし」

 こうして数日間、彼女はアスティの部屋に滞在する事になった。





次回、アスティがとんでもない事を言い出す。
そして青春ドラマへ……



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第44話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/20 17:11
 その晩、アスティは居酒屋のバイトも休んだ。

 次の日、彼女の部屋に、もの凄い美人が居ると噂が立っていた。
早速見に行く俺たち、でも、女子寮には入れて貰えない(当然の事だが)。
ヨシ、こうなったら転送で行こう……と思ったが、バシッと弾かれる。
どうやら外壁にAMF処理がしてあるらしい。
女子寮は思ったよりガードが堅い。

 そんな事をしていたら、中からその美人さんとアスティが出てくる。
何と、彼女の姉だという。

 声を掛けた瞬間、お姉さんが相当驚いた顔をしていた。
なんか人見知りの激しい人だ。

 アスティの話だと、田舎から職探しに出てきたらしい。

「だったら、あの居酒屋で働けばいいじゃん、あそこなら今、正規の従業員募集してるし、姉妹揃って働けるし」
「住む所だってきっと何とかなるよ、この寮だって何部屋か空いてるみたいだし、生徒の兄妹だったら暫く住めると思うし」

「私たちに構わないで欲しいのです」

 そう言うと姉の手を引いて歩いていく、途中で職員室棟に寄ると、また市内へ向かって歩き出した。

「アスティ、ちょっと待ってよ、あなた本当にあれで良いの?」

「良いの、だってもうあそこには私の居場所はどこにもないから……」

 姉の手を引きながら、彼女は泣いていた。



 同時刻、108部隊隊舎

「なるほどなぁ、あの魔導師は転送系やったんか?あの子の予想した通りやな」(はやて

「打ち出したカプセルが命中した物の体内へ転送される仕組みだそうです」(チンク

「発動条件は二つ、一つは術者が発動させる場合、もう一つは何種類かの言葉の組み合わせがトリガースペルとなって発動するみたい」(フェイト
「早い段階で彼を止められた事が、人質の命を救えた要因でしょうね」

「でも、危ない所だったね、見つかった時は」(なのは

「まだ余裕だったぞ、俺が居たからな」(士郎

「今回の作戦に関してなぁ、あれはやり過ぎだという声があってなぁ、俺はそっちの対応が大変だよ」(ゲンヤ

「ちょっとやりすぎたかな?」(なのは

「所で、逮捕した組長達は何か自白したのかいな?」(はやて

「それが簡単には口を割らないわね、持久戦よ」(フェイト

「まあ、口を割った後は死刑でしょうね、それが判っているから簡単には口を割らないって所かしら」(ティアナ

「うん、まあ、同じ手口で随分何人か殺して居るみたいだし、誘拐、監禁、殺人、恐喝、脅迫、スパイ容疑、暴行、傷害の罪状が適用出来るし、
それだけの罪状で組長以下、幹部連中は起訴出来そうよ、裁判が確定すれば死刑は確実ね」(フェイト

「ザコはどうするんや?」(はやて

「まあ、それぞれの罪状の幇助罪って事で最低でも懲役10年、場合によっては終身刑ね」(フェイト

「今度あの子達に取調をやらせてみようか?いい研修になると思うよ」(なのは

「まだちょっと早いんとちゃうかなぁ、私たちでもこれだけてこずってる訳やし」(はやて



「さてと、今度はあの人をなんとかしないとね」(フェイト

「スプマンテさん、あなたにはまずこれを着けて貰います」

 そう言って取り出されたのは、金色の輪っかだった。

 ガシッ

 それはしっかりと頭に食い込んだ。

「いててて」

「その輪っかは、働いたら負けとか、働きたくないと考えただけで絞まる様に作って貰いました」

「うぎゃ~~~~~」

「もうそんな事を考えたみたいですね」

「い、痛いです、外して下さい」

「無理です、それは一度はめてしまったら、一定の条件をクリアするまで外れない設定になっています」

「一定の条件って何ですか?」

「働いてお金を貯める事です。目標金額を5000万に設定してあります、それだけ貯める事が出来たら自動的に外れます」
「また、誰かからお金を騙し取ったり、奪ったりすると自動的に爆発してあなたは死にます」
「とにかく真面目に働くしかないのです」

「うぎゃ~~~~~~~」

 また痛い目にあった様だ。

「さて、あなたは大型重機の免許をお持ちである様なので、ここで働いて貰いましょう」

 そう言ってモニターに出されたのは、別の世界だった。

「第64番世界、鉱山惑星エルグストンです。この惑星ではデバイスに使われる希少金属を掘っています、
まあ、ここの鉱山で働いてしっかり貯めればその内に帰って来られるでしょう」

「向こうの社長には話が付けてありますので、頑張って下さい」

 そう言うと、フェイトさんは彼を転送機に放り込んだ。

 だが、彼女はまだ知らなかった、彼が数年後この世界でも有数の富豪にまで出世する事を。


 一方なのはは、108部隊隊舎を後にしていた。
一旦職員室に寄って、帰宅する予定だったのだが、自分の机の上に封筒を見つける。
アスティからだった。
「退学願い」と書かれている。

 それを持って、慌てて職員室を飛び出した。



「辞めさせてくれってどういう事だよ?」

 俺はアスティを問い詰めていた。
夕方店にやってきた彼女は、ここを辞めたいと言ってきたのだ。

 だが、理由については話せないという。

「理由も無しに辞めるだとか、そう言うのは納得いかねえんだよ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ここのバイトを紹介してやった俺たちの面子はどうなる?それにお前が居なくなったら困る人も居るんだよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「お願い、もうその辺でこの子を許してあげて欲しいの」

「お姉さん、そう言われてもここで甘やかしたら、アスティはこの先ろくな人間になりませんよ」
「せめて、人の目を見て理由ぐらい話して貰わないと困ります」

 その時だった、俺の横にモニターが開く。

「アスティ見なかったかしら?」

 校長先生だった。

「アスティならここにいますよ、今説教中です」

「今行くから、アスティをそこに留めておいてね」

 アスティがビクッとする。

「アスティ、お前何かやらかしたな?」
「俺が一緒に謝ってやるから、話してみ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「大丈夫だ、俺は怒られ慣れてるし、あのディバインバスターだって喰らったのは1度や2度じゃない」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「もう本当に許してあげて欲しいの、悪いのはこの子じゃあなくて、私たちの方だから」

「……悪いのは私の方よ、……私が……私がスパイだったからいけないの……」

 アスティは話し始めた、家族の事、父親の借金の事、スパイにされた事、そして重要な情報を盗んだ事、
洗いざらい全て話してくれた。

「まさかお姉さんが昨日助けた人質だったなんて……」

「俺も驚いたよ」

 いつの間にか後ろに来ていたバローロがそう言った。

「だけどな、悪いのはお前じゃあない、悪いのは大人達の方だ、お前が気にする事じゃあない」

 こういう時のバローロは、非常に頼もしい。

「でも、私の居場所はどこにもない……」

「馬鹿野郎!居場所ならここに有るじゃねえか!それに今の事は俺たちが黙ってりゃいいことだ」
「居場所がないなんて事はないんだよ」

「そうよ、それにあなたに抜けられたら私だって困るわ、模擬戦のチームだって組めなくなるし」

 そう言ったのはレヴだった。

「あなたの居場所ならここにあるの、お友達でしょ?」

「そうだぜ、俺たち仲間じゃないか?同じ釜の飯を喰ってる仲間だ、そうだろ?」

「……みんな………グスッ……うわーん……」

「おーおーよしよし」

 レヴに抱き付いて大泣きし始めたアスティ、その頭を優しく撫でながらレヴがそっと抱きしめた。

「なんか良いよね、青春してるって感じでさぁ」

 振り向くと校長先生が立っていた。

「いつから居たんですか?」

「アスティが話し始めた辺りからよ、キャロに転送して貰ったの」
「それから、これはもう必要ないわね」

 校長先生が何かを破り捨てた、アスティの退学願いだった。

「こんな物出した所で辞めさせないわよ、私の生徒として預かったからには、ひとかどの魔導師に育て上げるまでは、
絶対に辞めさせたりしないし、放り出す事もないからね」

「……先……生……グスッ……うわーん……」

 今度は校長先生に抱き付いて泣き出した。
こうしてアスティの起こした騒動はひとまず収まり、俺たちの中に共通の秘密が出来た。


「所で店長、アスティのお姉さん雇って貰えますよね?」

「良いだろう、こちらとしても大歓迎だ」

 俺たちに新しい仲間が出来た。

「あ、そうそう、あなた達のお父さんだけど、フェイトちゃんが仕事を斡旋してくれたから、
暫く別の世界で働く事になるだろうけど、こちらから会いに行く事は出来るからね」

「それから、お姉さんにはアパートを見つけてくれたから、明日見に行ってみる?」

「ハイ、宜しくお願いします」

「おい、泣き虫アスティ、そろそろ仕事を始めるぞ」

 今日も忙しくなりそうだ。






次回、恐怖の林間学校編に突入します。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第45話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/21 17:55
 あの騒動から三日、俺たちは相変わらずバイトを続けている。
昼間は宅配屋のアルバイト、金曜と土曜の夜は居酒屋のバイトである。

 宅配屋のバイトは、1日50個の荷物の処理というノルマがあるが、俺にとっては何の問題もない。
と言うより少なすぎるので、同じ時間の中で100~150個ほどの荷物を捌いている。
いちいち倉庫に帰ってくるのが面倒なので、エマルジョンコレクトに荷物を放り込んでおいて、配達したり、
回収した荷物をエマルジョンコレクトに放り込んで、倉庫に戻ってきた時出すようにしているため大量に捌けているのだ。

 まだ、転送を覚えたばかりのエリカにはキツイらしく、手に持てる程度の大きさの荷物を専門に、市内のみ配達している。
そして驚いたのが、モスカート・ダスティだ。

 この人、教えられた事はそつなくこなすが、応用が利かないタイプだ。
確かに、模擬戦の時何も出来なかったが、魔力だけは凄い。
俺がまだ無理なほど大きな荷物も楽々転送するし、海の向こうの大陸まで転送でいろんな物を運ぶ。
この人は、管理局よりも、運送屋の方が向いていそうだ。

 更に驚いた事に、アスティとピノがエマルジョンコレクトの真似を始めやがった。
まだ上手く行かないらしく、容量が増えないとか、保存期間が短いとか言っている。

「仕方ないなあ、ちょっと術式その物を展開してみ」

 術式を見てやる。

「おい、こことここ、ここも術式の記述が間違ってるぞ、それに抜けている記述だらけだし、よくこんなんで術が発動してるな?」

「どこがどう間違っているのか教えてよ~」

「それはダメ、間違いの箇所だけ教えてやったんだから自分で調べろ」

 そんなこんなで、あっという間に7月が過ぎていった。
因みに給料は、予定18万の所46万有った、頑張ったかいがあった。
でも、流石にダスティには負けた、長距離の大型荷物は料金が高いだけ有って給料が非常によい。
この人わずか2週間で80万近く稼いでいた。

「社長、俺たち来週から3泊5日の林間学校なんで来週は休みますよ」

「それは困るよ、なんとかならんのかね?」

「無理です、死ぬ気で働いて下さい」




 そして月曜日、俺たちは戦艦クラウディアの中にいた。

「さて皆さん、全員揃ってますか~?」
「今から管理世界61番「スプールス」に向かいます、今日の夕方には到着しますので、それまではこの船の中で研修があります」

 キャロ先生がもの凄く張り切っている。

 そう、今からスクールの生徒全員、次元航行隊見習いとして丸1日研修があるのだ。
もし、次元航行隊に配属されてもいい様に、今から研修しておこうというのだ。

 流石にVX級の戦艦は中が広い、俺たちは広い船の中を掃除して回ったり、機械に興味がある奴は機関室に入れて貰ったり、
ブリッジで実際に計器を触らせて貰ったりした。

「なかなかいい動きをしてるじゃないか、なのは、実によく鍛えられている」

 クロノ提督が目を細めていた。



 そうこうしているうちにスプルースに到着した。

 そして、転送機で降ろされたのは、夏の大陸、今そのジャングルの中に出来た結構な大きさの広場にいたりする。

「皆さん、ここは以前僕たちが環境保護隊にいた時勤務していた星です」
「環境保護隊の前線基地は春の大陸にありましたが、ここは何もない大陸です。また、危険な生物も非常に多いです」
「皆さんには、この大陸で3泊4日生き延びて貰います。これはサバイバル訓練でもあるのです」

 エリオ先生は、さらっととんでもない事を言った。

「皆さーん、では食料と水をお配りしまーす、今夜と明日の朝の分しか有りませんよ、
その後は自分で安全な水と食料を見つけて下さいね」
「それと、一緒にお配りするポケット図鑑に目を通しておいて下さいね、危険な生物や、
食料になりそうな動物、植物、そして絶対に傷つけては行けない希少動物が載っています」

「それから、林間学校で男女の甘い出会いを……なんて考えてた人は死にますよ、ここはそんなに甘い所ではありません、
生き延びる事に必死でないと生きていけない世界ですから」

 キャロ先生、恐ろしいです、しかもこの企画を考えたのはキャロ先生だと言うではありませんか?
はっきり言って無茶です。

「俺からはこれをやろう」

 そう言ってビリー先生が全員に配ったのは、大型のサバイバルナイフだった。
ナイフの柄の部分には釣り糸やら釣り針、ライターなどが入っている。

 因みに、今回引率の先生方は、校長先生、士郎先生、ビリー先生、エリオ先生、キャロ先生、ギンガ先生、シャマル先生だ。

 そして時刻は現在現地時間で午後4時、後2時間ほどで日が沈む。
早く安全な塒を見つけないと恐ろしい事になりそうだ。

「では皆さん、解散して下さ……」

 そう言い終わらない内だった。

 突然ジャングルの中から、恐竜が飛び出してきた。

「みんな逃げろ~」

「ちぃ、仕方ねえ!」

 士郎先生が刀を抜いて斬りかかろうとするが、それをエリオ先生が止める。

「あれは希少動物です殺さないで!」

 士郎先生はそれでも斬りかかる、そして尻尾を見事に切り落とした。
巨大な尻尾がビクンビクンと跳ね回る。
流石の恐竜も恐れをなして逃げていった。

「しかし、今の恐竜、誰かに一度尻尾を切られてるな、今斬ったのと同じ場所から皮膚の色が違っていた」

「それやったの僕です、2年前に」

「えっ?」

「いや、あまりにお腹が減っていた物でつい……それに、は虫類なら後で尻尾ぐらい生えてくるし……
て思って、ついやっちゃったら後から隊長にこっぴどく怒られましたけどね」
「でもステーキにすると凄く旨いですよそれ」

「あなた達、どんな食生活してたの?」

「あ、校長先生、ここでは基本的に自給自足なんです、狩りをしないと肉も食べられませんから」
「因みにこのステーキ、クラナガンで食べたら1枚400万ですよ、相当なお金持ちでないと食べられません」

 先生方は、夕食のおかずに超高級ステーキをゲットした。





次回:ステーキのおこぼれをゲットしよう大作戦……



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第46話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/23 17:51
「しかしラッキーだったな、肉の方からやってきてくれた」

 この人の無敵さ加減には、誰も唖然とするだけだった。




「なあ、取り敢えずどうする?」

 俺たちは話し合った、まずエリカ達のチームに話を持ちかける、

「取り敢えず、模擬戦のチームで行動した方がよくね?」

 そこへアスティのチームが加わった。

「まず、安全を考えるなら先生達と付かず離れずの距離を取る事だ」
「先生達の近くにいれば、そんなに危険な事はないだろう?」
「それにエリオ先生が安全な水場や、食料の在処を知っているはずだ、だから交替でエリオ先生を見張るんだ」

「とにかく生き延びる為なら、どんな汚い手でも使わないとね」

 俺とバローロの話を聞いて頷く一同、やはり、生き延びる事を優先すればそれが一番の方法の様だ。
他のグループはそれぞれテントの設営を始めたり、食料や水を探しに動いたグループもあった。

「しかしこの蒸し暑さどうにかならないかしら」

「それはバリアジャケットになればいいよ、エリオ先生もキャロ先生もバリアジャケットだったろう?」

「それってどういう事?」

「バリアジャケットには、暑さ寒さから身を守ってくれる機能が付いているのさ、
宇宙空間でも30分ぐらいなら呼吸を維持してくれる」

 全員バリアジャケットになってみる。

「随分快適になったね」

 そんな話をしている内に先生達が動いた。 



 先生達は、どこかに秘密の塒(ねぐら)を準備している様だった。

「僕たちは、ここで生徒達を監視します」(エリオ

「ジャングル中に仕掛けたカメラがあるから、監視体制はバッチリです」(キャロ

「しかしこんな所に丸太小屋が有ろうとはな」(士郎

「ここは希少動物観測に使っている拠点の一つなんです」(キャロ

「最大13人泊まれますから」(エリオ




 俺たちは、気付かれない様に校長先生の後を追いかけた。
あの巨大な魔力は、簡単に消せる様な物ではなく、後を追いかけるには便利だ。

 そして見つけた、その丸太小屋を。



「じゃあ、夕ご飯にしようか?」(なのは

「ええ、生徒には悪いですが、私たちはちょっと豪華に行きましょう」(キャロ

 早速準備に取りかかる。

 まず士郎先生が、さっきの尻尾の皮を剥ぐ、かなり丁寧にやっている。

「お父さん、何故そんなに丁寧にやってるの?」

「いや、これお土産にしようと思ってな」

「お土産?」

「そう、オオトカゲの皮って事にして知り合いの工房に持ち込もうかな?と思ってな、まあ、桃子さんへのプレゼントだ」

 どうやら士郎先生は、ハンドバックに加工してお土産にするらしい。

「それに残った皮は、俺の刀の柄巻きにしようかなと思っている」

「そう言う所はしっかりしているのよねぇ」

 皮を剥いたら、切り分ける。



 その時だった。


 コンコン


 誰かがドアをノックする。

「ヴァロット君、どうしてここが……」

「後を付けてきたんですよ、それでもってお肉を少し分けて頂きたいなと思って……」
「もちろん、ただでとは言いませんよ、取引の材料は持ってきています」

「なっ」

「もちろん他のグループには内緒にしますから、大丈夫ですよ」
「俺たち、居酒屋でバイトしているグループだけですから」

「えっ?」

いつの間にか三つのグループが揃っていた。

「で、取引の材料って何なの?」

「これです」

 俺は、お酒を取り出した。

「日本酒5升瓶が1本、焼酎1升瓶が1本、ウィスキーが1ボトル、よく冷えた缶ビールが1箱有ります、お店から頂いてきました」
「どうしましょう?要らないなら、ジライオウの餌にしちゃいますよ?」

「くっ、痛い所を突いてくるわね、判ったわ、一人一切れね」

 交渉成立、こうして俺たちは美味しい食事にありつく事が出来た。



「しかし、何から何までいろんな物を持っているわね」

「あ、これ、先週お店が機材を入れ替えたんで、古い機材を貰ってきたんです」

 今、何げにステーキを焼いているのは、俺が出した鉄板焼きテーブルだったりする。
他にもガスコンロとか、ガスボンベ、生活必需品は全てエマルジョンコレクトの中に入っていたりする。

「しかし便利だな、まるでド〇えも〇の四次元ポケットだ」

 なんか前にも同じ事を言われた気がする。

 夕食のレトルトカレーもステーキも美味しく頂いて、最高の夕食だった。
しかし、ギンガ先生とエリオ先生は異常だ、あれだけあった肉が全て無くなった。
この人達が居ると、生き延びられる物も、生き延びられなくなりそうだ。

「じゃあ、僕らはこれで失礼します」

「あ、お酒は私が預かっておくわね」

「でもキャロ先生、ビールが温かくなりません?」

「大丈夫よ、私も出来るようになったからエマルジョンコレクト」

「えっ、それ俺の魔法」

「あれだけヒントを貰えば簡単ですよ、ちょっとコツを掴むのに時間が掛かりましたけど」

 キャロ先生までマスターしてるし、これは余り広めて欲しくないのだが……

「じゃあ失礼しますね」

「気を付けてね、夜は夜行性の肉食獣が多いから」

「大丈夫ですよ、既に安全な場所に塒(ねぐら)を確保しましたから」







次回、夜が明けて、本格的な食料探しが始まる。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第47話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/23 17:55
 さて、美味しい食事にありつけたし、今度は寝る場所作りだ。
先生達の丸太小屋は、ジャングルの中の高さ30mほどの崖の中腹にある岩棚の上だ。
この岩棚、かなりの広さがある。

 それにこの崖は1枚岩で簡単には崩れそうにないし、いくつも岩棚が出ている。
そんな岩棚の一つに、俺たちはベースキャンプを設営する訳だが、テントじゃあ支柱が立たない。

「仕方ない、あれを出すか」

 俺が取り出したのは、ダンボールハウス、組立式で広さは6畳ある。
6畳有れば、大人4人がどうにか寝泊まりが可能だ。
このダンボールハウス、黒猫商事が開発して、バニングス系列で売っている物だ。
元々は、災害発生時の仮設住宅が手に入るまでの間、急場を凌ぐテント代わりに開発された物で、
耐用日数半年という物だった。

 表面は防水素材で覆われており、少々の雨ではふやける事はあり得ない。
しかも組み立てが簡単で、大人二人いれば2時間ほどで組み立てる事が可能だ。
まず、アルミの土台を組み立てる、地面から30センチほどの土台が出来ると、その上にハウスを組み立てていく。
ハウス自体は、組み立ててマジックテープで止めるだけなので、非常に簡単に組み上げられる。
それに俺たちは飛べるから脚立も要らないし、楽な物である。

「一体、そんな物どうしたのよ~」

 エリカ達に突っ込まれる。

「これ、運送の仕事の時に不良品を見つけて貰ってきたんだよ」

 そう、こういう物は不良品は返品であるが、発送元も処分に金がかかるので受け取りを拒否する。
だから、ただで貰ってこられたのだ。
そして、不良品の具合だが、一部防水素材が破れていたりしたのだ。
別にガムテープを貼って使えば、何の問題もなく一月ぐらい使う事が出来るだろう。

「判ったよ、まだあるからお前達にもやるよ」

 こうして、それぞれの岩棚の上に1棟ずつ、可愛い小屋が完成した。
まあ、少々ガムテープだらけなのはご愛敬だ。
これで、夜は快適に眠る事が出来そうだ。

(ダンボールハウスのアイディアは、黒猫エリカさんから頂きました)

 その夜、低い場所にテントを張ったグループは、猛獣に追いかけられたり、ヤブ蚊に侵入されたりで大変だったという。





 翌朝目を覚ますと、既に先生方は各生徒の無事を確認に出ていた。
俺たちは、校長先生にチェックされる。

「しかし、あなた達はとんでもないわね、こんな小屋まで持って来てるなんて」

 そう言って小屋に手を掛けて驚く校長先生、

「えっ?これダンボール?」

「そうですよ、これダンボールハウスです、なかなか快適ですよ」
「テントの何百倍も快適です、それに軽いから持ってくるのも非常に楽でした」




 さて、今朝の食事は、インスタントのカップスープにパンが2個である。
これだけ食べても、お昼までは持ちそうにない。
水は、昨日あまり使わなかったので、かなり余裕がある。

 俺たちは作戦会議を開く、まず人員だが、
第1班、俺、バローロ、ロサード、ハウメ
第2班、レヴ、アスティ、ソリス(1-2、GW)、スクラティ(1-1、FA)
第3班、ヴィーニャ、ヴィラ、エリカ、ピノ

 以上12名だ。

 まず、手分けして食料を探す事にする。

「俺たち第1班は、狩りと釣りで食糧を確保する」

「第2班は、山菜とか果物とかを捜してくれ、ついでに水場も見つけてくれると助かる」

「第3班は、交替で先生方を見張ってくれ、絶対に安全な水場と食料の在処を知っているはずだ」

「お互い何か動きがあったら念話で連絡だ」

 じゃあ、散開!

 こういうサバイバルの場合、人数が多ければ、なるべく役割を分けて行動した方が効率的だ。
俺たちの食料探しが始まる。



 さて俺たちは、空を飛びながら回りの地形を把握する。
俺たちの居た崖はその上がテーブル状の台地になってかなり遠くの方まで続いている。
向こうの方に火山らしき景観の山が見えている。
振り返れば、ジャングルの向こうに海が見えている。
砂浜の切れ目が見えて大きな川の河口がある様だ。

(こちら第1班、バローロ、第2班聞こえるか?)

(こちら第2班、ソリス、用件は何?)

(ここから山へ向かって2キロほど飛んだ所に、バナナらしき植物が群生している、果物にありつけそうだ)

(了解、すぐに収穫に向かうわ)

「じゃあ俺たちは釣りに行こうか?」

河口へ向かって飛んでいく。




 途中、昨日の広場を見るとかなり大変な事になっていた。
広場に宿営した連中は、猛獣の襲撃を受け、擦り傷だらけ、おまけに朝飯まで獣に食われてしまって、
ボロボロで、座り込んでいるのが多い。
こんなんで生きていけるのだろうか?

 生徒会を初めとする、頭の良い連中は、高い木の上に避難していた。
ジャングルの背の高い木は、上の方がテーブル状に枝を張るので、テントを設営するには向いていた。
こいつら、なかなかやる。

 河口へ向かう俺たち、砂浜に降りるとすぐ後ろは椰子の木の林だった。

(こちら第1班ヴァロット、第2班聞こえるか?)

(こちら第2班、アスティ、どうしたの?)

(椰子の実を大量ゲットだ、水よりも旨いし飲み物の心配はなくなった)

(了解)

 俺たちは取り敢えず30個ほど椰子の実を収穫し、エマルジョンコレクトに放り込んでいく。
釣りをしようと思ったが、その前に上空から魚の群れを捜す。

 居た、それも巨大魚の群れだ。
取り敢えず、図鑑で確認する。

「どおやらクイーンフィッシュの群れだな、ミッドチルダなら高級グルメだ」
「それからあっちに見える群れはバラクーダだ」

「ハウメ、頼んだぞ」

 こう言う時、ハウメの槍が役に立つ、殺傷設定にすれば、そのまま銛として使えるのだ。
あっという間にハウメが1匹仕留めてくる。
2mも有る巨大魚をゲットした。
クイーンフィッシュをゲットして、今日の食料は充分なのだが、バラクーダも3匹ほどゲットしておいた。
そして帰る途中、あの広場の連中にバラクーダを2匹恵んでやる。

「おーい貸し1だからな~」

 彼らも驚いただろう、まさか俺たちに食料を恵んで貰う事になるとは……
しかも、バラクーダは3mもある巨大魚だ、大人数で食べても何とかなるだろう。



 ベースキャンプに戻ってくると、エリカ達が安全な水を確保していた。
どうやら、これで三日間、飢えて死ぬことは無くなった様だ。
そこへ、第2班が大量の食料をゲットして戻ってくる。
まあ、後は寝て過ごせば三日ぐらいすぐに過ぎていきそうだ。





次回、食料に飢えた生徒達がとんでもない行動に出る、襲撃!



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第48話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/24 18:08
「あ、ヴィーニャさん、お醤油取って」

「はいどうぞ」

 俺たちは昼の食事中だった。
机の上にあるのは、お刺身、バナナ、パンの実、マンゴー、パパイヤ、パッションフルーツ
バナナの葉をお皿にして宴会状態だ。
もちろん、飲み物は椰子の実ジュースである。

「しかし、パンに刺身は合わないやね」

「贅沢言わないの、ここ食糧事情じゃこれが精一杯なんだから」

「しかし俺たち、かなり良い物喰ってるよな~」

 確かに良い物を喰っていた、先生達よりも。
様子を見に来た校長先生が驚いている。

「あなた達、随分良いものを食べてるわねえ」

「先生も良かったらどうですか?バナナだったあげますよ」

「それはどうも」

 こういうサバイバルで重要な物は、安心して寝られる場所、安全な飲料水、たらふく食える食糧である。
俺たちは全て手に入れた。
後は二泊三日、寝て過ごしても平気だ。



 一方、広場の連中約70名、恵んで貰った魚を取り敢えず開きにして焼いた。
それを奪い合うかの様にして食べる。
昨日の夕方以来の食事だった。

 どうやら、急場を脱した彼らは、集団で移動を開始する。
取り敢えず安全に寝られる場所を探す様だ。


 そんな様子を木の上から見ていたのは、生徒会の連中だ。
他にも木の上から見ていた連中は多い。

「確か、あいつらが魚を持ってきた方角はあっちだったな」

 海岸へ集結する彼ら、上空から魚の群れを捜す。
やがてバラクーダの群れを見つける。
何人かが特攻し、何匹かの魚を手に入れる。
そして彼らも、食事にありついた。
おまけに、椰子の実も手に入れていた。



 こちらは、歩き出したあの連中、水を求めて歩いている。
そして崖沿いに出ると、俺たちとは反対方向に歩き始めた。
その先、崖の下に大きな洞窟を見つけた。
中は相当広い、おまけに猛獣も居ない。
彼らはここを宿営地に選んだ様だ。
水もすぐに見つかった、崖の岩の割れ目から水が噴き出していたのだ。
これで彼らも、水の心配をしなくても済んだ。



「ねえ、みんなで泳ぎに行かない?海へ」

「やだ、裸で泳ぐの?」

「水着くらい持ってきてるでしょ?」

 俺たちがそんな会話をしている頃、彼らは困っていた。
遅い朝食兼昼食にありつけたのはいい、だがそれだけで足りるはずもなく、
今は水だけで、空腹を凌いでいた。

「くそう、腹減った」

「声を出すな、それだけカロリーを使うぞ」

 洞窟の外で見張りをしていた何人かが、魚の焼ける匂いをかぎつける。

「誰かが魚を焼いてるぞ」

 その瞬間、理性を失った空腹集団は、奪い取ることを決意した。

 魚を焼いていたのは、生徒会を初めとする樹上生活グループだ。
人数にして152人ほど、いくつかのグループに分かれて魚を焼いていた。
そこへ、洞窟組の72人が襲撃を仕掛けたのである。

「食い物をよこせ~」

「この馬鹿野郎が~」

 途端に会長達の砲撃が始まる。
もはや全面戦争だった、洞窟組の72人の方がやや攻勢だったりする。
これは、下克上でもあり、反乱でもあったのだ、

 不意を突かれた生徒会グループだったが、暫く交戦した直後だった。
上空に信じられない強大な魔力が発生する。
校長先生だった、キャロ先生が転送したのだ。

「私は、あなた達をそんな風に育てた覚えはありませんよ、真剣に頭冷やそうか?」

「ディバイ~~~~~~~~ン・バスタ~~~~~~~~~」

 こうして、彼らは、地獄を見るハメになった。
いつもの、お説教代わりのディバインじゃあない、エクシードクラスの強力な奴だ。
これに勝てる奴などいるはずもなく、あっという間に全員フルボッコだった。

 彼らはその後、何時間にも渡ってお説教をされることになった。




 その頃、俺たちは波打ち際で戯れていた。
全員水着持参だったのだ。
ついでに言うなら、でかいシャコ貝やら、大きな伊勢エビやら、サザエやらも獲れた。
今夜の夕飯が楽しみだ。



 夕方、洞窟組の連中が来たので引き上げる。
彼らはこれから魚を捕って食事をするらしい。



 夕食は、鉄板焼きにした。
クイーンフィッシュも捌いた物の、お昼に食べたのはほんの僅かだ。
何せ2mもある巨大魚、12人で刺身を食べても5kgも食べていない。
さっき捕れた魚介類、それから魚の切り身を美味しく鉄板焼きで食べている。
それから、エビの頭、クイーンフィッシュの中骨でスープも作る。
具材は、アスティの採ってきた山菜だ。

「なんか俺たちいつもより良い物喰ってない?」

「なんかもう、この生活がずっと続いてって感じだよね~」

「でもお風呂がないのが辛いわよね、臭うし、汗と潮で体中べたべただし」

「じゃあ、明日、温泉を探しに行こう」

 こうして二日目も無事に暮れていった。








次回、温泉でドッキリ



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第49話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/07/02 06:26
 さて、三日目の朝、今日1日生き延びれば明日の夕方には迎えが来る。
朝は俺たちの小屋の前から始まる。

 まず、ダッヂオーブンでパンの実を焼く、実が大きいので一つずつ焼いていく。
焦げた固い皮を剥がすと、中は焼きたてのパンだ。

 一方、まだある魚の中骨でダシを取って、拾ってきた海草を加え、塩加減を調節すればスープの出来上がりだ。
後はフルーツ、食後のコーヒーも欠かせない、俺が持ってきているので問題なくコーヒーも飲める。
そんな優雅な朝食をみんなで取っていると、キャロ先生に突っ込まれる。

「これはサバイバル訓練なんですよ、趣旨と違うことはしないで欲しいのです」

「と言ってもなぁ、俺たち超余裕だし~この辺り食べ物の心配はないし、生活するにも良い環境だしなぁ」

エリオ先生が苦笑いしていた

 ここへ来て、異常にテンションの高い先生が居る。
士郎先生と、ビリー先生だ。
この二人、ジャングル生活がよほど気に入ったらしく、生徒そっちのけで狩りをしたり、果物を取ったりしている。
まあ、これだけ人数がいれば、獲物の数はすぐに減ってしまうが……

 さて、洞窟組と樹上生活組、そして俺たち以外にあと21組84名はどうなったのか?
あの恐竜襲撃の時、バラバラに逃げ出した彼らは、あの場所からかなり離れた所にそれぞれキャンプしていた。
俺たちの様に小さなグループを作って生き延びている様だった。

 あるグループは、海岸近くの椰子の林の中にキャンプを張り、飲み物と魚介類で過ごす。
またあるグループは、果物の林近くにキャンプを張り、果物だけで生活するといった感じだ。
でも、猛獣の襲撃を警戒して、交替で寝るなど、かなりハードな状態の様だ。





「さて、食事も終わったし、温泉でも探しに行きますか?」
「でも、その前に狩りがしたいよね、魚は食べ飽きたし、そろそろお肉が食べたいし」

 話し合いの結果、温泉を捜しながら、狩りをしようと言う事になった。
このグループ、飛べない人間が3人いるが問題はなかった。
丁度、召喚師が3人、つまりジライオウが3匹いる。
飛べない人は、ジライオウに乗って飛べばいいのだ。

「じゃあ、出発」

 昨日見たあの山へ向かって飛ぶ、かなり高い山だ。
山の中腹までは木があるが、その上はない。
頂上に噴火口がある様だ。
温泉の期待は大きい。

 山の向こうは、海岸から続く砂丘地帯、砂漠と呼んでもいい規模だ。
砂漠側の山肌は、木が生えていない、きっと風と気候の影響だろう。
そんな山の中腹に流れ落ちる一筋の滝を見つけた。

 温泉だった、源泉では触れられないほど熱いが、ある程度下った滝壺ならちょっと熱いが入れそうな温度だ。
43度か、まあ我慢すれば入れない温度じゃないな。
取り敢えず、温泉はどうにかなりそうだ。

(こちらヴァロット、全員聞こえるか?温泉を発見した、ちょっと熱いが入れない温度じゃない)

(了解!)

(こちらロサード、肉になりそうな獲物を発見した、1班は集合してくれ)




「……何だよ、あれ、食えるのか?」

「図鑑には美味だと書いてあるぞ」

 俺たちの視線の先には、巨大なサンドワームが居た。
一昨日の恐竜より遙かに凶暴そうだ。

「あれをどうやって捕まえろと……?」

 捕まえるのが大変そうだ。
取り敢えず、サンドワームに攻撃を仕掛ける。
予想通りに追いかけてきた。砂漠地帯から岩場までおびき出すと、大量の魔法陣で囲む。

「エマルジョンコレクト・アウト」

 実はまだこの前の大会の砲撃が数千発残っていたりする、もちろん特大の奴もある。
流石に強烈な砲撃を浴びては、サンドワームでも一溜まりもなかった。
倒れたサンドワームにトドメを刺したのは、ハウメだった。

「どうするよ、これ」

 目の前には、直径3m近いサンドワームの胴体、一番いい部分を関節三つ分頂いた。

「でも、この場に捨てていくのも勿体ないしな~」

「そうだ、他の人を呼ぼう」

(あ~こちら1-4ヴァロットだ、生徒諸君、聞こえるか?肉の食いたい奴、すぐにこの場に来い)
(サンドワームを仕留めた、大きすぎて食べ切れそうにないから分けてやる)

 あっという間に、集まってくる、いや転送されてくる。
エリオ先生やキャロ先生もいる。
エリオ先生の話によると、サンドワームは体内にリング状の骨があるそうで、骨より外側の肉は、
スジっぽくて食べられた物ではないそうだ。
ただ、非常に良いダシが出るので、干物にしておいてあとからスープに使うのがコツなのだとか。
骨と、内臓の間にある肉はジューシーで軟らかい最高のお肉らしい。

 と言う訳で、長さ30m以上有ったサンドワームは跡形もなく片付いてしまった。

 肉を頂いた生徒達は転送で帰っていった。

「さて、俺たちも帰るか?」

「その前にひとっ風呂浴びてかねぇ?」

「いいねぇ」

 俺たちは例の滝壺にやってきた。
服を脱ぎ捨て、ちょっと熱めの湯に入っていく。

「きゃ~~~~~~~~~~」

 湯気と滝の音で気付かなかった、エリカ達8人が入っていたのだ。






次回:P音連発です、大変なことになります。
最後には、なのは先生のディバインバスターが炸裂します。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第50話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/26 16:34
「こんにちはブリッツキャリバーです、今回は不適切な表現がございますので、そう言う箇所をP音で消させて頂きます」




「お母さん、すいません、俺、もうすぐ男になります!」

 俺たちは、後ろ手にバインドを掛けられ、足にもバインドを掛けられた状態で岩の上に転がされていた。
素っ裸の状態で……

 そして、ロサードが既に白くカサカサの状態で干物に成りつつある。
今、ハウメがギンガ先生に犯されている。

 何故こうなったのか?

 俺たちは温泉に入りに行ったのだ。
でも、まさか、エリカ達が入っているとは思わなかった。
それまではラッキーだったのだが、俺たちには一瞬にしてバインドが掛けられた。
まさか、ソリスとスクラティがこれほどバインドの達人だとは思わなかった。
何でも、夏休み前に校長先生に鍛えて貰ったのだとか。

 で、滝横の大岩の上に転がされる俺たち、そしてヴィーニャさんがハウメのチP~に足をかける。
もう体を隠すこともしない。

「あなた達、私たちの裸が見たかったんでしょ?いくらでも見せてあげるわよ?お互い裸なら条件は同じだしね」

 そして足でハウメのチP~をグニグニと踏みしだく、堪らずハウメが悶える。

「あら可愛い、こんな事で感じるなんて、とんでもない変態さんね、変態チP~だわ」

 この人Sだ、とんでもないSだ。
今度はバローロの所に、ヴィラさんがやってくる。
バローロのチP~を指でつまんでみる。

「意外と堅いのね」

 今度は手で握ってみる。

「なんか変な感じ、でも可愛い」
「あ、なんか汁が出てきた」

 俺の所に、レヴさんとスクラティがやってきた。
二人で俺のチP~に悪戯し出す。

「あなた達、何をやってるの?」

 そこに現れたのはギンガ先生だった。



 今から20分ほど前、

「あの子達どこに行ったのかしら?鉄板焼きテーブル借りたかったのに」(なのは

「あのー私が捜してきましょうか?」(ギンガ

「多分、さっきの岩場近くで食べてるんじゃないでしょうか?」(エリオ

「じゃあ、転送お願いね」(ギンガ

 そして捜すこと18分、滝壺を見つけた訳だが……

 俺たちを見た瞬間、ギンガ先生の目が金色に変わる。
金色の目が血走っている。

「男よ~久しぶりのオ・ト・コよ~」

 そこには、飢えた一匹の野獣が居た。

 そして、服を脱ぎ捨てるとロサードのチP~にむしゃぶりついた。
それから30分、あっという間にロサードが白くカサカサになっていく、
そして今度はハウメに襲いかかった。

 それを見ていたスクラティの目の色が変わる、彼女も戦闘機人だったのだ。
ギンガ先生を真似て俺のチP~にしゃぶり付いた。

「舐めてみて」

 レヴさんが俺の顔の上にまたがる。

「あなた達、そこで何をしてるの?!ちょっと頭冷やそうか?」

「ディバイ~~~~~~~ン・バスタ~~~~~~~~~」

 チュド~~~~~~~~~~ン

 プスプス






「ったく、女の子がよってたかって男を犯すとは……世も末です!」

「ギンガ先生まで仲間に入って、何をやってるんですか!」

「ブリッツキャリバー、取り敢えず映像を提出しなさい」

「ハイ、これですどうぞ」

 他のデバイス達も、映像を提出させられる。

「取り敢えず事情は分かりました、そこの思考がフリーズしている4人、帰ってヨシ!」

 エリカ、ピノ、アスティ、ソリスは難を逃れることが出来た。

「さて、ギンガ先生、それから他の4人、帰ったら地獄の補習を受けて貰いましょう」

「それから男子4人、あなた達も少しはいい思いをした訳ですから、少しばかり補習を受けて貰います」

「いいですね?」

「「「「「「「「「ハイ」」」」」」」」」

 その後、ギンガ先生は減俸処分を喰らったそうだ。



 結局、お昼を随分過ぎてしまい、おやつ代わりの果物を食べながら、さっきの肉を解体する。
一関節分でも凄い量だ。
残りはいつもの如く、俺が保存する。

 しかし驚いた、本当にリング状の骨が入っている。直径2mちょっと、太さは10cm位だろうか?
関節と関節の真ん中当たりに入っていた。

 まず、外側と中側の肉に分ける、俺たちは中側の肉をステーキ状に切り分ける。
女子は外側の肉を棒状に切り分け、更に薄くそぎ切りにする、そのまま干物にする為だ。
もの凄い量だ、残りの食事、全てステーキでも食べ尽くせない。
まあ、保存だ。

 一方、他の生徒達は、会長の指示の元、取り敢えず昼食をとる。
もちろん、肉を串焼きだ。
残った肉を、切り分けて汲んできた海水に浸す。
その後は、燻製を作り始めた。
これならすぐに腐ることはないし、煙の出ている間は、猛獣が近寄ることもない。
残りの食事をこの燻製で凌ぐらしい。
外側の肉は薄くそぎ切りにして干物にする。

 三日目の夜にして、ついに飢える者が居なくなった。

 俺たちは、もちろんステーキ、それからスープにパンの実、フルーツ、椰子の実ジュース、
相変わらず充実している食事だった。








次回:最後の夜、ガールズエロトークに花が咲く、P音連発



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第51話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/27 17:05
「こんにちはレイジングハートです、今回は不適切な表現がございますので、そう言う箇所をP音で消させて頂きます」




「やっぱりこれがあると便利よね~フライパンじゃ1枚ずつしか焼けないし、凄く時間掛かるのよね」

 俺たちはステーキを焼きながら、夕食を取っている。
校長先生が今ステーキを焼いている。
実は、先生方と食事を一緒に取っている訳だが……

 キャロ先生はちゃっかりしていた。
俺たちの次に良い部分を関節5個分頂いていたのだ。
まあ、あの二人の食欲じゃあ仕方がない。


「先生、スクラティって何者なんですか?戦闘機人ってギンガ先生達だけじゃあなかったんですか?」

 先生達が急に怖い顔になる。

「この話は、もう二度としないで欲しいの」

 そう言って、話してくれた内容によると。
3年前、フェイト執務官が摘発した違法研究組織があった。
その組織の研究所の生体ポッドにスクラティは入っていたのだとか。
見た目は12~13才ぐらいだったのだが、まだ何の戦闘プログラムも
ISも組み込まれては居なかった。
つまりは、まっさらな戦闘機人素体のままだったのだ。
 
 遺伝子検査の結果、スバルさんの妹に当たることが判ったのだが、本人がナカジマ家入りを拒否した為、
マリーさんという人が引き取ったのだとか。
今は、マリーさんが保護責任者をしているとのことだ。

 こうして、俺たちにまた一つ共通の秘密が出来た。



「先生、今からお風呂行きませんか?」(アスティ

「良いねえ」

「男子は来るなよ」(ピノ

「いかねえよ」(俺

 結局、校長先生、キャロ先生、ギンガ先生、シャマル先生と女子8人、温泉へ出かけていった。




「ふう、かなり熱いけど良いお湯ね」

「シャマル先生お疲れ様でした」

 シャマル先生は、初日から怪我をした生徒などを治療して回っていたのだ。
中には腐った物を食べて、腹をこわした奴もいた様だ。

「大変だったわよ、ひ弱な子が多くてね、獣の襲撃くらい簡単に押さえ込まないとダメよ」

「シャマル先生も厳しいねえ」
「所で、あなた達、一体なんであんなことしたの?」

「それは、一度でいいから足コキしてみたかったからです」(ヴィーニャ
「快楽と苦痛に歪む男の子の顔を見ながら私も自分でP~~に耽るみたいな事がしてみたいと……」

「ヴィーニャ、愛読書がエロ本だもんね~」(ヴィラ

「とんでもないわねあなた達」(なのは

「今時エロ本ぐらい普通に読みますよ、ねえ」(ヴィーニャ

「いや、同意を求められても困るのよねぇ」(レヴ

「それに早いことすること済ませたかったし、勢いでやっちゃえみたいな」(スクラティ

「でもギンガ先生凄かったよね、ほとんど野獣だったし」(ヴィラ

「あ、あれはね、スイッチが入っちゃうと、もうどうにも止まらないの私たち戦闘機人は……」(ギンガ

「で、あの台詞からして男に振られたんですか?」(レヴ

「う……振られたというか逃げられた」(ギンガ

「まあ、逃げられた理由は大体想像付くけどね」(シャマル
「HOTELまでは行ったんでしょ?次の日から忽然と彼が消えたってとこかな?」

「う……その通りです……捜さないで下さいって」(ギンガ

「でも、なんで突然襲ったの?」(なのは

「あの……美味しそうなチP~が4本も目の前にあったし……お初物ぽかったし……つい……スイッチが入っちゃって」(ギンガ

「まあ、仕方ないか、あの状態では……」(なのは

「所で、校長先生はどうだったんですか?初・体・験」(ヴィーニャ

「にゃ~~、そ、それはね……」(なのは

「凄かったのよ、なのはちゃんは(笑」(シャマル

「シャマル先生ば、ばらさないで欲しいの~」(なのは

「良いじゃないそれ位、誰もが通る道なんだし(笑」(シャマル
「あれは中学に上がるほんのちょっと前だったわよね」

「うっ、あれは元々フP~~ちゃんがいけなかったの」
「クP~君のベッドの下に隠してあったエロ本を見つけてね」(なのは

「クP~君ってもしかしてクP~提督ですか?」(レヴ

「そうよ、それでね私とフP~~ちゃんとはP~ちゃんで、そのエロ本を見てる内に我慢出来なくなって」(なのは
「二人でフP~~ちゃんを押し倒したの」

「おいおい、百合か?」(ヴィーニャ

「それでね、女の子3人でP~~してる所へ、クP~君がユP~君を連れて帰って来ちゃって」(なのは

「それで今度は3人がかりでその二人を押し倒したと……」(スクラティ

「あはははは~、そうなんだよね~二人と三人で代わる代わるやっちゃって、凄いことになってた」
「そこへエP~~さんとリP~~さんが帰って来ちゃって、見つかってこってり搾られたよ」(なのは

「その後エP~~さんに、クP~君をテイクアウトされちゃって、ちょっと悔しかったな」(なのは
「まあ、一番悔しかったのはフP~~ちゃんだったと思うよ、お兄ちゃん大好きっ子だったから」

「兄妹で禁断のP~~ですか?」(ヴィーニャ

「別に良いじゃん、血は繋がってないんだし」(なのは

「先生だって私たちとやってること、そんなに変わらないじゃないですか?あんなに怒らなくても良いのに」(ヴィラ


「所でそっちの5人は何故フリーズのしてるの?」(シャマル

「まだお子様なんですよ」(レヴ

「って言うか、なんでキャロまでフリーズしてるの、毎日してるでしょエリオ君と」(なのは

「なのはさん……」(キャロ

 ブバッ

「きゃ~~~~~~、鼻血鼻血」(スクラティ

「相当リアルに妄想してたみたいだね」(なのは

「もう上がりましょ?逆上せちゃうわよ」(シャマル




 一方、男子チーム

「どうした?ロサード、ハウメ」

「「チP~の先っぽが擦り剥けてもの凄く痛い」」

「女って怖ええ」


 こうしてそれぞれの夜は更けていく






次回:まだまだ終わらない林間学校、事件発生



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第52話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/28 17:55
 朝が来た、今日の夕方には迎えの船が来る。
俺たちは、最後の朝食を優雅にとって居た。
まずはパンの実、そしてスープ、今回はサンドワームのスジ肉をダシにしている。
それから各種フルーツ、最後の締めはコーヒーだ。
ああ、なんて優雅な朝食だろう。

 それはふと見た西の空に現れた。

「なんだあれ?」

「なんか芋虫の様な……」

「あれ、戦艦じゃね?」

「あいつらまた性懲りもなく……」

 そう言ったのはエリオ先生だった。

「何なんですか?エリオ先生」

「あいつらは、次元海賊の密猟ツァー御一行様だ、今度こそ逮捕してやる」

「校長先生、危険を伴う作戦ですが、実行したいと思います。生徒全員を集めて下さい」



「校長より生徒全員に連絡します。これより地図で示した地点に全員集合しなさい」
「ただし、木よりも高く飛んではいけません、なるべく地上近くを飛んでくる様に」

 ほとんどの生徒が食事をしている最中だった。
慌てて飲み込むと、すぐに集まってくる。

 集合を確認すると各生徒の前にモニターが開く、

「今、次元海賊の船を補足しました。これから全員で逮捕したいと思いますが、その前に編成等を決めたいと思います」
「指揮官研修の12人は集合して下さい」

 俺たちは集合した。

「今から、あなた達に合議で作戦を決めて貰いたいと思います、良いですね?」

 いきなり、とんでもないことになった。


「そんなこと言われても、敵の戦力が判らないことには作戦の立てようがありません」(ネロ

「敵については僕から説明します」(エリオ
「敵はM級戦艦1隻、ツアーの参加者は10~25名、一人につき1~2機のガシェットドローンⅢ型が付いています」
「今までのパターンではその程度の戦力でしたが、ガシェットドローンに時間を稼がれている間に
ほとんど逃げられてしまって、いつも逮捕出来るのは5~6人程度でした」

「流石に僕とキャロだけではそれが限界です」(エリオ

「なるほど、ガシェットドローンⅢ型が相手では、レベルの低い生徒では太刀打ちが出来ませんね」(シャマル

「大変です、明け方早くに環境保護隊の隊舎が砲撃を受けて壊滅しました。死者は居ませんが重傷者多数です」(キャロ

「寝込みを襲われたな?」(士郎

「次元航行隊は?」(なのは

「今連絡を取っていますが、出航準備中だそうです。到着は今日のお昼を過ぎるそうです」(キャロ

「孤立無援か?」(士郎

「いや、まだ勝機はこちらにある、こちらは奴らに発見されていないんだ」(ネロ

「キャロ先生、まずは保護隊全員をこちらに召喚して下さい、ここで手当てしましょう」(俺

「シャマル先生、メディカルチェックをお願いします、ダメと判断された生徒は、救護任務に当たらせます」(ネロ

「それから敵の様子はどうなっているのでしょうか?」(ネロ

 すぐにモニターが開く、既になのはがWASを行って抜かりなく敵の様子を探っていた。

「え、何これ?」(バローロ

「ガシェットドローンⅣ型だわ、とてつもなく厄介な相手、以前こいつに殺されかけたことがあるの」(なのは

「状況は極めて厳しいわね」(なのは

「Ⅳ型ってそんなに強いんですか?」(俺

「強いと言うか、極めて厄介なのよ、光学ステルスを搭載していて、見えなくなるの、
消えた状態で相手に近付いて、相手を一刺しにするから、気が付いた時には刺されているの」
「しかも、単独では行動しないわ、数機で相手を囲んで攻撃する集団戦法を得意としているの」(なのは

「他に何か変わった性能とかは持っていませんか?」(バローロ

「他のガシェットドローンに比べて、動きが速いこと、装甲が厚くて簡単には攻撃を通さないこと、
AMFバリアを搭載していること、空は飛べないわ」(なのは

「先生、あいつを倒せるだけの力のある生徒はどれだけ居ますか?」(ネロ

「どういう基準で?」(なのは

「あいつのバリアを抜いて、ついでに装甲も破壊出来る奴です」(ネロ

「そう言うことなら、約50人位かしら」(なのは

「その内長距離砲撃型は?」(ネロ

「あなたを含めて8名ほど居るわ」(なのは
「あ、カトリーヌちゃんを含めれば9人かな」



 一方、海賊サイド、

「はっはっは、今回は儲けさせて貰うぜ、あの鬱陶しい龍騎士も召喚師も転勤で居なくなったし、
保護隊は壊滅したし、ぼろ儲けだぜ」

「ガシェットドローンⅣ型200機は、いらん投資だったかな?」



 スクールサイド

「……と言う訳で、校長先生、一番最初にあの戦艦を落として下さい、その後作戦指令をお願いします」

「まあ、正攻法でしょう、でも決して無理はしないでね」



 こうして、俺たちスクールと、次元海賊の戦いが始まろうとしていた。







次回:次元海賊とスクールの死闘、その時スクラティは?「開眼、振動両断覇」



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第53話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/29 17:51
 俺たちは、例の洞窟を前線基地に、陣を張った。
万が一、攻撃部隊を突破された場合、他の生徒が囲まれるのを防ぐ為だ。
洞窟なら入り口を固めるだけで防御が出来る。
ある意味、一番安全な前線基地である。

 俺たちは、まず、ガシェットドローンⅣ型に勝てるだけの実力を持った者50人を選抜し、攻撃部隊とした。
内、砲撃魔導師をジャングルが見える高台に配置、Ⅳ型を長距離から仕留められる配置とした。
残りは二手に分かれて、彼らを川の河口の砂浜に追い込む作戦だ。
士郎先生とエリオ先生がそれぞれの隊長だ。

 ビリー先生はフリーで動く、ツアーの客を仕留める算段だ。

 ギンガ先生は、守備隊隊長、キャロ先生とシャマル先生は救護班だ。
召喚師は二人を覗いて救護班、その二人は俺とフィノだ。
フィノは砲撃部隊に同行、作戦が進み次第、カトリーヌちゃんを召喚して攻撃だ。
俺は校長先生のガードだ。

 それぞれの配置に付くと、作戦が開始される。
キャロ先生が、俺と校長先生を戦艦の斜め後ろに転送する。




「艦長、巨大な魔力が発生しました。4時の方向です」

「打ち落とせ!」

「ブラスターⅡ」

「全砲門開け!一斉射撃」

「ディバイ~~~~~~~~~~~ン・バスタ~~~~~~~~~~~~~~~~ァ!」

「攻撃転送!」

 俺たちに向けて放たれた艦砲射撃も、巨大なディバインバスターも全て戦艦に命中した。
いや、戦艦を打ち抜いていた。

 巨大な(と言ってもL級戦艦より一回り小さいが)戦艦が一撃で打ち抜かれて、今まさに轟沈しようとしていた。
戦隊のあちらこちらから火を噴いて、だんだんと降下していく、そして砂浜の直前で大爆発した。

 彼らも驚いただろう、突然の砲撃、しかも自分たちの放った砲撃まで全て帰ってきた。
そしていきなりの轟沈、簡単にやられるとは思っても見なかっただろう。

 戦艦を落とした俺たちは攻撃部隊が攻撃を開始した。
攻撃部隊は、主に剣などの近接戦闘型のデバイスばかりだ。

 密猟者達は驚いただろう、いきなり1個中隊並みの攻撃を受けたのだ。
いきなりのことに、ガシェットドローンでさえ統率を失って右往左往している。

 ガシェットドローンが消える前にどんどんスクラップに変わっていく、主に士郎先生とエリオ先生の攻撃が効いている。
彼らは、真っ二つに切り刻まれて、爆発し、屑鉄の山だ。

 生徒達も負けては居ない、主に生徒会、ツインタガーのクロ、大剣のエミリオ、
巨大ブーメランのロロニスが良い働きをしている。
あっという間に、スクラップの山を築いていく。

 それでも、ガシェットドローン達は姿を消して、逃走を始めた。
どこかで体勢を立て直す様だ。

 流石にほとんど姿が見えなくては、攻撃もしづらい、なんとか見えればもっと早く殲滅出来るのだが……

「キャロ先生、この辺り一帯に海水の雨を降らせたいのですが、転送出来ますか?」

「ヴァロット君、何をするつもり?」

「俺に考えがあります」

 直後、上空に海水の塊が現れる。
そして雨となって降り注いだ。

「今度はよく乾いた土か砂をお願いします」

「ゴホッゴホッ、何するんだ!」

 怒っている奴も少なくはない。

「よく見ろ、うっすらとだが、奴らの姿が見えるだろ!」

 そう、海水はこびり付き易いのだ、それに加えて土埃が加わったことで光学迷彩を無効化していた。
姿が見えていれば何の問題もない。
囲みを突破したガシェットを砲撃組が破壊していく。
勢いを取り戻した攻撃組が、どんどんガシェットを仕留めていく。

 だが、包囲網を突破したガシェットが、洞窟の前まで来てしまった。
この位置では下手に砲撃も出来ない。

 ギンガ先生が対処するが、6体相手ではかなりキツイ、

「振動拳仙突」

 ギンガ先生もISは「振動破砕」だった。
だが、スバルさんとは振動の特性が違う、スバルさんと比べると、周波数が低く振幅が大きいのだ。
そのため、打ち砕くスバルさんに対して、突き抜くギンガ先生という感じだ。

「スクラティ、下がりなさい!」

「いやだ!私もここで戦うんだ!」
「みんなが戦っているのに、穴の中で何もしないなんて願い下げだ!」

「今のあなたじゃ手に負える相手じゃあない!」

 ギンガ先生が、どうにか1体破壊した物の、他の生徒はじり貧だ。
レヴがどうにか牽制出来る程度の攻撃を見せては居た者の、他の生徒の攻撃はほとんど通らない。

 その瞬間だった、レヴが斜め後ろから攻撃を喰らってしまった。
肩口から血があふれ出す。

「よくもレヴを!」

 その瞬間、スクラティの目の色が変わった、濃いブラウンの目から、金色の目へ……
戦闘機人として覚醒した瞬間だった。
そして、彼女の両手のガンナックルが砕けて散った。

 彼女の両手は白く輝いていた。

「うおおお~~~~~~~振動両断覇!」

 一撃だった、その一撃でまるで斬鉄剣に斬られたかの如く、滑らかに真っ二つにガシェットは斬られていた。

「行くよ!姉さん」

 そのまま二人で残り4体を片付ける。

「スクラティ、今姉さんって……?」

「べ、べつにまだ家族になった訳じゃないからな」

「もう、照れ屋さんなんだから」

「でも、あなたが自分自身のISに目覚める時はそろそろだと思ってたわよ」

「どういう事?」

「昨日温泉で、戦闘機人化しかかったでしょ?あれでピンと来たの」
「私もスバルも発見された時は、まっさらな素体のままだったの、でも、自分自身のISに目覚めることが出来た」
「あなたも、もうそろそろ目覚める年頃かなって思っていたの」

「だけど凄いわね、私たちファミリーの中で最強のISじゃない?」

「そ、そんなこと言われると照れるな……」



その頃、攻撃部隊が最後のガシェットを破壊し、海賊やツアー客を逮捕していた。







次回:次元航行隊が到着、やっと林間学校が終了する。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第54話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/06/30 18:15
「レヴは大丈夫?」

「平気よ、攻撃を避け損ねて肩口に掠っただけだから30分もあれば何とかなるわ」

「シャマル先生、すいません」

「良いのよ、この先もっと強く成りなさい、怪我をしない様にね」

 俺たちは、海賊共を逮捕して洞窟に帰ってきた。
こちらの人的被害は、軽傷者が4名という極めて軽微な物だった。

 海賊達は、ほとんどが重傷、爆発に巻き込まれた者は死亡という有様、全部で30名。
ツアー客が20名だった。

 ツアー客も実弾銃で応戦したのだが、ビリー先生に腕を打ち抜かれて全員逮捕されたらしい。

「こっちの連中は止血だけにしておきます。暴れられても困りますし」
「医療魔法講座の生徒達集まりなさい、今から緊急手術になるかも知れません」

 それは、環境保護隊の人たちだった。
戦艦からの砲撃で、重傷者が多数出ていたのだ。
シャマル先生の診察が続く、骨折者は骨を接いで回復魔法で何とかなった。
裂傷の者も、回復魔法だ。

 でも何の機材もないジャングルの中、診断の付かない者も二人いた。
顔色も悪い、シャマル先生は、事態を重く見ていた。

「困ったわね、この不衛生な場所では手術が出来ないわ」

「シャマル先生、俺たちのダンボールハウスを使って下さい、地面の上よりはかなりマシです」

 丁度、ダンボールハウスを片付ける所だったのだ。
すぐに、ダンボールハウスを洞窟の前まで転送する。

 だが、その必要はなかった。

「シャマル先生、本局のオペレーションセンターと話し合いが付きました、今から転送します」

 キャロ先生だった。

 彼らは地上本部の高度医療センターに転送され、一命を取り留めることになる。




「校長先生、お話があるのですが……」

 環境保護隊副隊長ミラ・バーレット だった。

「不躾だとは思いますが、キャロを返して欲しいんです」

「ダメよ、この子だけは手放す訳にはいかないの」

「何故なんですか?」

「この子は管理局の希望なのだから、絶対に手放す訳にはいかないの」
「でも、この子の教え子だったら、次の4月からお渡し出来るわよ、今の内につばを付けておいたらどう?」

「判りました、でも、まだ諦めませんよ、やはりキャロはこういう装備も何もない所にこそ必要な存在なのだから」

 やはり、彼らも召喚魔導師の重要性に気が付いた様だ。






「さて、そろそろお腹も減ったし、少し早いお昼にしますか?」

 流石に鉄板焼きセットを出すと他の生徒の反発を喰らうだろう、ちょっと考えた。

「会長、スクラティ、ちょっと付き合ってくれないか?」

 俺たちは、川の向こうの戦艦の撃墜地点にやってきた。
残骸から厚手の鉄板を頂く為だ。

「スクラティ、この残骸から、鉄板を40~50枚ほど切り出して欲しい、大きさは1m四方前後だ」
「会長は、切り出した鉄板を俺の魔法陣に放り込んで欲しい、俺じゃあ重すぎて放り込むことも出来やしない」

 こうしてスクラティが切り出し、会長が放り込んで俺が転送すると言う事を繰り返す。
これでお昼の準備は万端だ。

 広場では、他の生徒達が転送された鉄板で、肉を焼く準備をしている。
どおやら説明しなくても、判った様だ。

 今日の昼ご飯は最高の食事になりそうだ。




「スクラティ、一体どうしたんだ?」

 彼女の食欲が異常だ、ステーキを焼いても焼いても追いつかない食欲、何が起きてるんだか?

「いや~、なんかもの凄くお腹へってさあ……」

 どうやら戦闘機人として覚醒したことの影響らしい、このグループ、ギンガ先生達を含めて異常な食欲の持ち主が3人もいる。
昨日捌いた肉は、ほぼ無くなった。

「しかし、スクラティが覚醒したんだね、スバルでももう少し掛かったのに」(なのは

「でも、ガンナックルが……」(スクラティ

「デバイスを含めて、新しく作り直した方が良いわね」(ギンガ




 昼食を取っている所へ、次元航行隊の船が到着した。

「済まんな、なのは、随分遅くなった」

 クロノ提督自ら迎えに降りてきた。
そして、武装隊に引き立てられていく海賊とツアー客、どうやらこれで一件落着しそうだ。

「お、お前ら、随分良い物を喰ってるな、俺にも分けてくれよ」

 なんか随分気さくで、いい人そうな人だ。
昼の後片付けが終わると全員乗艦し、これで林間学校は修了した。

俺たちのダンボールハウスは、その後環境保護隊の隊舎が復旧するまでの間、
仮事務所として使われたそうである。




 乗艦した直後、先生方はブリーフィングルームに集められた。
帰るまでにまだ何かあるらしい。








次回:思いも寄らない展開に



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第55話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/07/01 17:52
 ここは、次元航行戦艦クラウディアのブリーフィングルーム

「疲れている所を済まないな、これから、生徒達をお借りしたい」

 クロノ提督はそう切り出した。

「実は、あのスパイ事件の関係者が明らかになった」

 驚きを隠せない一同。

「フェイトにはやて、それにティアナ達が頑張って調べてくれたおかげだ」

 あのマフィア達がついに自供した結果だった。

「今夜作戦を決行する」
「目標は、グリエモ・リザーヴ一般評議会議長、サンセール本局企画官の二人だ」

「なっ」

「ただ残念なことに、この二人、昨日から旅行に出ていて、帰りは今日の夜だそうだ」
「帰ってきた所を捕縛したい」

※一般評議会:日本で言えば国会に当たる

「奴らは、かなり多くの私兵を抱えている、この船の武装隊だけでは人出が足らんのだ」

「判りました、そう言うことでしたら、スクールは協力します」

 早々に協力を決めたなのはだった。





 生徒達は、クラウディアの大型貨物室に収容されていた。
突然、先生達からの通達があった。

「……と言う訳で、疲れている所申し訳ないけれど、あなた達には、作戦に参加して貰います」
「逮捕するのは、この二人です」

 各モニターに写真が映し出される。

「先生、さっき逮捕したツアー客の中によく似た人物が二人いたのですが……」

「何ですって?」

「すぐにクロノ提督に報告が行く」

 ……本当に逮捕されていた。
クラウディアの留置室にブチ込まれた逮捕者の中に、二人は居たのである。
どうやら二人の共通の趣味は狩猟だった様で、密猟ツアーに参加していたのだった。
ただ、スクールの林間学校の予定を知らなかった様だ。




「……はは、俺がしてきた準備って一体……」

 クロノ提督は笑うしかなかった。





 結局、作戦は中止になり、船はゆっくりとミッドチルダに向けて梶を切った。





 クラウディア艦長室

「ネロ君と言ったね?」

「ハイ」

 生徒会長は、艦長室に呼ばれていた。

「今回の作戦の立案と、指揮の補助をしたと言う話だが本当かね?」

「はいそうです、それが何か?」

「君、卒業したらうちに来ないかね、君の様な優秀な人材が欲しいんだ」
「武装隊の小隊長からだが、是非来て欲しい」

(も、もしかして俺目立ってる?もの凄く目立ってる?)

「よ、喜んで」

 ネロ、早くも就職先決定。





 こうして俺たちは、ミッドチルダに帰ってきた。
次の日、補修があることも忘れて……
でも、今回の林間学校は、一生忘れることの出来ない思い出だろう。





 一方、ナカジマ家

「あの子をマリーさんの所から引き取るって?」
「また娘が増えるのか?なんか食費が大変そうだな」

「大丈夫よ、すぐに社会人として自立するから」





 こちらは、アテンザ家

「うーん困ったわね、ノーヴェと同じガンナックルじゃぁ、とても持ちそうにないわ、
研究中の新システムを搭載した新しいデバイスを作らないとね」

 スクラティの新デバイスを作ることに情熱を燃やすマリーさんだった。






次回、スクラティの新デバイスが完成する。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第56話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/07/02 17:54
 手にしたのは、未来を切り開く為の力、負けない勇気、もう、今までの弱い自分じゃない。
彼女の目にあるのは今までの卑屈で弱気な光ではない、希望と自信に満ちた強い光だ。

 早朝、海岸には何本もの鉄骨が突き立てられていた。
そして、少女の両手が白く光り出す。
次の瞬間、少女は鉄骨の間を駆け抜けていた。
後ろで鉄骨が滑らかに切断されて滑り落ちる。

「凄いわね、目覚めてからまだ三日でそこまで使いこなしているなんて」

 彼女の練習を見に来ていた一人が声をかける。
彼女の6人の姉の長女、ギンガだった。

「確かに凄いよ、私だって使える様になるまで1ヶ月以上掛かったもん」

 そう答えたのはスバルだった。

「私の振動拳は、どんな過酷な運命をも打ち砕く力だってなのはさんに言われた」
「ギン姉の振動拳は、自分の意志を貫き通す力だって言われた」
「君の振動拳は、未来を切り開く為の力だね」

 自分の手を見て、自信と勇気が湧いてくる。
少女は思った、いつか誰にも負けないほど強くなろうと。

「あ~あの超々高周波(ウルトラソニックウエーブ)に耐えうる素材が見つからない」

 研究室でマリーさんが悩んでいた。

 




 彼女は、始めてスバル達に会った日、自分の弱さに涙した。
ISもない、魔力も極めて弱い、格闘技すらろくに出来ていない自分が、たまらなく情けなかった。
一般人と戦っても負ける情けない戦闘機人、屑鉄並みの存在だと自分を卑下した。
だから、もの凄い強さを持った姉たちの元には行きたくなかったのだ。

 でも、今は違う、最強のISを手に入れた。
格闘技だって今練習中だ。
組み合わせ方によっては、もう相当な強さの相手にだって勝てる気がする。
体力だって随分付いた。
今の目標は、卒業までにこの学校で最強になることだ。
彼女の中で、大きな野望が芽生えていた。







 その日、俺たちは学校のプールにいた。

「あなた達には、補習代わりにプール掃除して貰います、今日の午前中に済ませる様に」

 そう、開校以来このプール使われたことがなかったのだ。
水も一度も入れ替えられていない、藻が生えてぬるぬるだ。
だから俺たちに掃除をしろと言うのだ。

 今は土曜日の午前中、朝8時を回った所、まあ、昼までには終わるだろう。
水は前日から抜いてあった。
まあ、広いプールの掃除ではあるが、何とかなりそうだ。

「まあ、今回は掃除だけで助かったよ、あいつらに比べたらかなりマシだからな」

 俺たちの視線の先では、ヴィーニャさんを始めギンガ先生や食糧を奪おうとして襲撃事件を起こした連中が
校長先生からとんでもない訓練を受けていた。

「さあ、次はアクセルシューターを避ける訓練だよ」

 上空に現れたのは数千発の魔力弾、雨の様に襲ってくる。
彼らは地獄を見ることになる。

 こんな授業が、毎日一週間続いたそうだ。






 そんな中、補習に出られないのが一人、スクラティだった。
今、彼女のデバイスは修理中なのだ。
来週には、新しいデバイスとなって帰ってくるそうだ。





「お、掃除は終わった様だねぇ、じゃあ今日の午後から生徒にプールを開放します、事故の無い様に」

 どうやら、その為に俺たちを使った様だ。

「どうやら、業者を頼む金が無かったみたいだね」








「出来た、ついに完成したわ、これならあの子に合うでしょう」

 マリーさん会心の自信作だった。








次回:新デバイスの性能が明らかに



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第57話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/07/03 16:55
「さあ、名前を呼んであげて」

 渡されたのは、縦長の青い宝石をペンダントにしたデバイスだった。

「トライエッヂ、セットアップ」
「これが私の新しいデバイス?」

「どお、前の子からデータを移植して、あなた用に調整した新しいデバイスは?」

「なんか凄く良いです、しっくり来るというか初めからこれを使っていた様な感覚というか?」

 その姿はこれまでより大きく強化されていた。
今までのブルーとグレーを基調にしたボディースーツにガンナックルだけというスタイルから、
ボディースーツには赤のラインが追加され(ウルトラマンティガっぽい?デザインに変更され)
レガース追加、肩当て追加、首回りのパーツ強化、ガンナックルを廃止してアームガードに変更、
背中に小型の5角形をしたランドセルユニット追加、ランドセルユニットからは、短いが、
ジェット機の羽の様な物が生えており、ロケットノズルが2個縦に並んでいる。

「じゃあ説明するわね、まず、武器はアームガードの中よ」

 彼女が右腕をかざすとジャキッと刃渡り30センチほどの剣が飛び出す。

「両手にあるからね」
「あなたの場合、ISその物が剣みたいな物だから、この方が良いかと思っているの、
同じ動きで違和感なくISに移行出来るでしょ?」

 手首から先のパーツを廃止したのは、彼女のISにパーツが耐えられない為だ。

「それから、一番大きな変更点は、背中のランドセルユニットよ」
「あなた飛べるけど、飛行速度が遅いでしょ?だから飛行速度を強化しておいたの」
「それに、元々スピードのある動きと機動力はある方だから、防御力を強化しました」
「そして、今回の目玉は、新システムの搭載です」

「なんか今のところだけかなり力が入っていた様な……」

「あなたは元々カートリッジシステムは持っていなかったけど、それに変わる新しいシステムを搭載しました」

「新しいシステム?」

「そう、新しいシステム、エナジーパックシステム」
「ランドセルユニットに組み込まれているわ」
「それで、必要な情報は左手の計器に表示される様になっているの」

「えっこれのこと?」

「そう、腕の内側にあるそれ、丸いのがブースト計、タコメーターになってるわ、
それから、今グリーンの表示いっぱいまで光っているのがエナジーパックの残量計、
今1個しかゲージが光っていないのが魔力計、使用魔力量を表示するわ」

「なんかよく分からないなあ」

「まあ、使いながら覚える事ね、このシステムは、言わば自動車のバッテリーの様なシステムで
魔力を充電しておいて使用するシステムなのだから」

「あのう、充電ってどうやるんですか?」

「待機状態の時、あなたの魔力を少しずつ吸い取って充電してるの、他に急速充電器もあるわよ」
「コンセントに差し込んだら、ここにデバイスを置いて2時間ほどで充電完了よ」

 それは、まさに急速充電器だった。
電力を魔力に変換して、充電するシステムで、小型トランクに入っていた。

「うわっ、重っ」

 かなりの重量がある様だ。

「じゃあちょっと模擬戦してみようか?」

 訓練室に準備されたのは、ガシェットドローンⅢ型3機である。

「攻撃レベルはAAA、連携はA、スピードもAに設定してあるわ」

「ちょっと待って下さいよ、私この前までCクラスだったんですよ、いきなりオーバーAランクなんて無理です」

「大丈夫よ、Ⅳ型を3機も倒した実力なら勝てるわ」
「じゃあ、開始ね」

 いきなり始まった戦い、彼女が両手の剣を構える。
そこへ、中央の1体が魔力のビームを撃ってくる。
まずは、バリアで防いでみる、かなりの強度を持ったバリアだと実感出来る。
左の1体が剣の様な鞭の様な腕をふるって攻撃してくる。
それをシールドでいなしてみる、これも問題がない様だ。

 右の1体がさっきと同じく腕をふるって攻撃を仕掛けてくる、それを紙一重で避けると、
右手の剣に魔力を込める、エナジーパックから魔力が供給され、魔力ゲージが跳ね上がる。

「なるほど、こういう事か?」

 そのまま振り抜いた剣は、ガシェットドローン3型を一刀両断にしていた。
残り2体、剣を引っ込めると両手が光り出す、目の色も金色に変わる。
2体の間に飛び込んで両手を振り抜いた瞬間、2機のガシェットドローンは、それぞれ真っ二つに両断されていた。

「凄いわね、これであなた自身の魔力が付けば、S級の強さよ」

 彼女は理解した、自分の本当の強さを、自分の持つISの強さを。
後は、格闘技の腕と、魔力が課題だった。

「でも気を付けて、急に大きな力を持つとどうしても試してみたくなるから」
「それにあなたのISは危険すぎるわ、注意して使わないと相手を殺しちゃうわよ」

「判っています、だから、自分自身がもっと強くなる必要があるんです」

「どうやら判ってる見たいね、じゃあ、これを渡しておくわ、暇潰しにでも見なさい」

「北斗の拳?ってなんですか?これ?」

「まあ、何かの参考にはなるわよきっと」






次回:夏休み終盤、ヴァロット、故郷に帰る。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第58話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/07/04 17:10
「うっこの魔力は……ハウメ、貸し切りの札を出しておいてくれ」

 俺はあの魔力を感知した。
直前に手を打たないと、店に損害が出る。

「え~~~~~貸し切り?」
「仕方ない、余所へ行こう」

 帰っていったのはナカジマシスターズ。
スクラティが、ナカジマ家に養子に入って、スクラティ・ナカジマとなった。
その日から数日、ギンガ先生とスバルさんが彼女を連れ出しては食べ歩いている。
大食い挑戦の店も、スクラティに荒らされまくっている。
どうもナカジマ3姉妹は、飲食店にとって天敵であるらしい。

 林間学校が終わって一週間、相変わらずバイトに精を出している。
夏休みと言えば、大概の生徒が家に帰る所だが、帰るに帰れない奴や、帰らない奴もいる。
俺もそんな一人だ。

 因みに、俺たち4人の中で家に帰っているのはバローロだけだ。
バローロの実家は音楽スタジオを経営している、夏休みのこの時期は芸能人の野外ライブが多く、
その会場設営で大忙しだ。
平日は、ロサードとハウメもバローロの所でアルバイトしている。

 また、帰れない奴、帰らない奴というのは何らかの訳ありな奴が多い。
ロサードとハウメは、施設出身で、帰る家は無い、ついでにヴィーニャさんも同じ施設の出身だったりする。
昔からの知り合いで悪友で腐れ縁だ。

 俺の実家は、クラナガン郊外の漁村で貧乏この上ない家族だ。
兄貴が家を継いだので、俺は士官学校は進んだ。
最近は、アルバイトで稼いでいるので、学費も生活費の仕送りも断っている。

 まあ、たまには家に帰ってみようかと思っている。
そう言えば、明日は校長先生に呼ばれていたっけ。




 次の日、校長室

呼ばれたのはアマネさんに会長、バローロ、俺の4人だ。

「さてあなた達、この前の人質救出作戦の査定が出ました。今からお渡ししますね」

「えっ、横で見ていただけで2万もあるんですか?」(ネロ

「俺は10万有るよ」(バローロ

「嘘だろ?55万もあるよ」(俺

 誰もが振り込み明細を見て驚いていた。

「先生、こんなに頂いても良いんですか?」

「それが妥当な査定よ、心配しなくても良いわ、その代わり、時々嘱託魔導師のアルバイトがあるかも知れないわね」

「それから、この前の海賊捕縛の査定は暫く掛かりそうだから、もう少し待ってね」

 嘱託魔導師というのはかなり儲かるらしい。
事実、それを専門にやっているプロもいる、ただし、命の危険は相当な物らしいが……

「私も嘗て嘱託魔導師をしていたことはありますよ」

「え、校長先生が嘱託魔導師をしてたんですか?」

「小学校の頃にね」

「へ~それでいくらぐらい稼いだんですか?」

「えとねえ、VX級戦艦1隻買えるぐらい」

「一体どんな小学生だったんですか?化け物過ぎです」

「いや~PT事件も、闇の書事件も信じられないぐらい査定が良かったんだよね」

「一体どれだけ金を持ってるんですか?」

「さあ?確認したことないし、資産管理は銀行任せだし」

「そう言うのは一度確認した方が良いですよ」

 なんか、この学校の先生はいろんな意味で伝説を残している様だ。





 さて、金も入ったことだし、明日は日曜日だし、久しぶりに家に帰ってみるか?


 翌朝早朝、俺はとある漁港近くを歩いていた。
漁師町の朝は早い、もう船が港に戻ってきている。
この港に上がった魚は、午後にはクラナガンのスーパーに並ぶのだ。

「よう、兄貴」

「なんだヴァロット、何時戻ってきた?」

「今さっき」

「おやじは?」

「今魚河岸の方に魚を持っていった」

「そうか」

「なぁ、ヴァロット、帰ったらみんなで食事にしないか?久しぶりに」

「ああ」

 そして俺は歩き始める、家に向かって。
俺の家は、港から歩いて10分の所にある。
帰ると、お袋が朝飯の準備をしていた。

「あら、何時帰ってきたの?」

「ついさっき」

 ぶっきらぼうに答えると、家の中に上がっていく。
まだ、弟たちは寝ていた。
実は俺4人兄弟の次男だったりする。
家族で、魔力があるのは俺と下の弟だけだ。

「おら、起きろ、お兄ちゃんが帰ってきたぞ!」

 弟たちをたたき起こした。



 少しすると親父達が帰ってきた。
そのまま、朝食が始まる。

「あの試合は凄かったな~」

 どうやら、模擬戦大会のTV放送を見ていたらしい。
それだけでなく、近所の人たちまで集まってくる。
どうやら俺はこの辺りのヒーローらしい。

「しかし、あの試合、なんで降伏なんてしたんだ?」

「無理だよ、SSS の化け物になんて勝てる見込みはなかったし」
「でも今度やったら勝つ!」

「随分言う様になったじゃないか?」

 そんな風に、俺の休日は過ぎていった。





「本当に仕送りはしなくていいのかい?」

 帰りがけに、お袋にそんなことを聞かれたけれど、断った。

「大丈夫だよ、アルバイトで稼ぎまくってかなり余裕があるんだ、
これであいつら(弟たち)に何か旨い物でも食わせてやってくれよ」

 そう言って5万置いて帰ってきた。




「あの落ちこぼれのヴァロットがねぇ」

 近所の人たちの間で俺のことが暫くの間噂になったという。




 翌日から俺は、運送屋のバイトが忙しかった。
夏休み終盤、バカンス先からの帰宅ラッシュでとんでもない荷物量だった。
こうして、俺たちの夏休みは暮れていった。









次回:いよいよ新学期いろんな事が発表されます。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第59話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/07/05 17:47
 9月1日、新学期が始まる。
始業式の場で、夏休みに行われた執務官補佐試験の結果発表があった。
本来、一割受かるか受からないかの試験だが、受験110人のうち、51人合格という快挙だった。
ティアナ先生は、鼻高々である。

 バローロの奴も合格していた。
主席合格は信じられないことに会長だった。
あの人は勉強だけは出来る様だ。

 バローロ達はこの先執務官補佐として働きながら学ぶことになるらしい。
また、落ちた奴も、この冬にもう一度試験があるそうだ。(執務官補佐試験は年2回ある)

 そして、校長先生からとんでもない発表があった。
2学期から、大きく授業内容が変わるという。
体力テストの結果如何だが、ビリー先生の体力作り教室は終了の予定だという。それに伴い、午後に行ってきた授業が、
午前にスライドし、午後からは現場実習が入るという話だ。

 また、時々現場実習のない日は、特別授業が組まれるという。

「始業式はこれで終了します、本日はこれで解散です」
「明日、体力測定と魔力測定があります、体を休めておく様に」
「執務官補佐は残って下さい、まだ説明があります」


「え~まずは合格おめでとう、よく頑張ったわね」(ティアナ
「今から制服を渡します、これからは、この制服を着用する様に」

 その後、校内に青と黒の制服が目立つ様になる。

「それから、あなた達がこれほど多く合格するとは思っていませんでしたので、
あなた達を何人かの執務官に振り分けたいと思います」(ティアナ

 こうして10人の執務官に5人ずつ振り分けられていった。(余った一人はフェイトさんの所に振り分けられました)
因みに、バローロはティアナ先生の下で、アマネさんはフェイト執務官の下で、会長はクロノ提督の下に振り分けられた。

 ただでさえ人手不足の管理局、執務官補佐の増強は、各執務官にとって非常に仕事が捗る増援となった様だ。



 始業式の日の午後、生徒会の連中が職員室を訪れていた。

「先生、生徒会にも何か学校行事を仕切らせて下さい、このままでは生徒会の存在意義が無くなってしまいます」

 会長が直談判していた。

「良いわよ別に、まあ二学期の予定としては、模擬戦大会の団体戦はダメとして、体育祭代わりの個人戦と
学園祭をお任せしようかしら?」

「えっ、個人戦?」

「そう個人戦、これもTVが入るんだけど、組み合わせとか段取りとかその辺をお願い出来るかしら、
それから、なるべく視聴率が取れるカードが多くなる様にしないと、プロデューサーさんに怒られるよ」
「日程としては、個人戦大会が10月の9~11日、学園祭は11月の20~22日を予定しているわ」

「判りました、なんとかこなして見せます」

「でも大丈夫?、あなたクロノ君の下に居るんでしょ?あそこはきついわよ」

 この時、まだ会長はクロノ提督の恐ろしさを知らなかった。




 翌日、海上訓練施設

「こらーきびきび走らんか~」

 体力テストが始まった。

 流石にこの3ヶ月鍛えられただけのことはある。
夏休みも運送の仕事で随分鍛えられた。
テストは余裕でクリアした。

 まあ、落ちたのは、1年生が数人程度だった。
こいつらは、この後2学期中補習が続いたという。

 そして、魔力測定、毎日魔法を使っていたせいか、結構数値が上がっていた。
でも、2年生は上がり方が半端でない物が多い、生徒会の連中はもう何時卒業してもおかしくないほどだ。




 さて、翌日授業が始まる。

「ハアハア、ギ、ギンガ先生、もう僕たちだけじゃあ彼らを抑えられそうにないですね、
そろそろ教頭先生と校長先生にも入って頂かないと……」

 やはり、強くなってきた2年生80人を相手にするには相当きつい様だ。



「そうよ、味方の動きに合わせて、穴にならない様に援護射撃するの、相手は味方が居ない所から突っ込んでくるわ」
「そろそろ、収束砲も教えるからね」


 こちらも良い仕上がりを見せている。




「皆さん、魔力と魔力運用と集中力を鍛える訓練をやりますよ~」
「皆さんにはコンテナジェンガをして貰います」

 コンテナジェンガとは、貨物コンテナでするジェンガ(積み木)のことだ。

「コンテナの中には土嚢袋が詰めてありますから相当重いですよ~」
「これを転送魔法で崩さない様に出来るだけ高く積み上げて下さいね~」
「あと、立ち位置はここですよ~崩れたら死にますから注意して下さいね~」

 キャロ先生は、相変わらずさらっと恐ろしいことを言う。



「おら~ウジ虫共!射撃訓練を始めるぞ!」

「ふむ、100mまでは問題なく当たる様になったな、今年中に300mまで当てられる様になって貰うぞ!」

 射撃の正確性も随分上がってきた。



「じゃあ舞花棍からの連突き行ってみようか?」

 ひゅぉぉぉぉぉ~と言う風切り音、「ハッ」というかけ声と共に、一糸乱れぬ動きで棍を回し、突く、
かなり様になってきた。

「拳法組は組み手をやるよ」

 こちらは、拳法の基本的な組み手が始まっていた。



「乱取り始め!」

 俺は相手が掴みに来た右の手首を逆手で取る。
そのまま力に逆らわずに、右下の方へ引きながら左手で相手に右の肩を押さえて右腕をひねりあげる。
それでもう相手は動くことが出来なかった。

「なかなか良い感じだ、技もだいぶ覚えたな、そろそろ初段当たりという所か?」

 御式内は柔術である以上は、関節技や、投げ技だけでなく、打撃技や蹴り技もある。
だが、そのどれもが非常に地味で、見ていても何時蹴ったのか判らない、小さなモーションの技だった。
でも、喰らってみると恐ろしいほどの威力、こういう派手さのない分効く技というのは、実戦の時ほど役に立ちそうだ。




 2限目の授業、選択授業を変わりたいという奴が一人いた。
スクラティだった。
 彼女は、士郎先生の御式内から、月花先生の拳法講座へ変わりたいと言ってきたのだった。
理由は、自分のISが御式内より拳法の方が相性が良いからだというのだ。
そして彼女は、鉄骨を相手に見事な鳳凰十字拳を披露した。

 その後彼女は、中国拳法講座への変更が認められた。

 こうして、1学期とは比べ物にならないほどレベルアップした生徒達、
2学期は更に濃い4ヶ月になろうとしていた。






次回:午後からの現場実習が始まる。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第60話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/07/06 18:02
「へ~、ヴィーニャさんとレヴさんも受かったんだ執務官補佐」

 一目でそれと判る青い制服に身を包んだ3人は、午後からはティアナ先生の下で働く、
ティアナ先生も、執務官と二足の草鞋なので相当忙しいとのことだ。

 俺たち現場実習組は、クラナガン市内のいろんな所で管理局任務を遂行する。
まあ、早い話が、108部隊の人たちと市内をパトロールしたり、防災署で救助訓練に参加したり、
場合によっては、犯罪者の逮捕といったこともあったりする。

 他にも、嘱託魔導師の仕事なんて言うのもあったりする。
こちらは模擬戦のチームで行うことになるが、仕事内容にそれぞれランク分けがあったりする。
Bクラス以下~Aクラス、そしてSクラスまで様々だ。
ただし、それぞれのチームがランク分けされていて、Sクラスの仕事が受けられるのは、
生徒会チームと俺たちだけだ。
でも、いずれのチームも指揮官が抜けてしまっている為、実質仕事は出来ない。

 仕事のランクによって当然報酬も違う。
Bクラス以下は、およそ50万以下の仕事、
Aクラスは、Aが50~100万、AAが100~300万、AAAが300~1000万の仕事だ。
Sクラスは1000万以上の仕事だが、SS、SSSと言った仕事はスクールには回ってこない。
それは生徒には危険すぎる為だ。

 S級以上とはプロが受ける仕事である。

 因みに、この前の人質救出任務は、AAA相当の仕事になるそうだ。
あれを自分たちで人や機材を集めて行わなければならない訳で、それで1000万で済まされると儲けは相当少なくなる。
だからこそプロの仕事なのだ。


 まあ、地道に市内パトロールから始めることにした。
これだって雀の涙ほどではあるが、日当は出るのだから。





「じゃあ、まず、書類の整理からやってみようか?」

 クロノ提督は、にこやかにそう言った。
ネロ達の前には信じられない量の書類が準備されていた。
彼らはこれから3月までずっと地獄を味わうことになる。
ネロ達も噂には聞いていた、クロノ提督は提督職にありながら、
現役バリバリで執務官の仕事をこなしているとんでもない人だと言う事を。



「執務官はね、みんなが思っているほど現場へ出ることはないの」
「むしろデスクワークが多くて、実際の捜査も捜査官に任せることが多いよ」

 フェイトはそう言って指導を始めた。
まずは、事件の書類を整理することからだ。
こちらも凄い量の書類が準備されていた。



「執務官は接客業よ、身だしなみには注意しなさい」

 そう指導を始めたのは、ティアナ先生だ。

「執務官とは、捜査官、検察官、裁判を兼ねているけど、一番多くの書類を作るのは裁判関係の書類です」
「経験から言うと、刑事事件1に対して、民事事件3ぐらいの割合で扱うことになるわ」
「民事の関係者とも打ち合わせることが多いから、身だしなみだけには注意して欲しいわ」

 ティアナ先生は身だしなみから入る様だ。



 俺たちは歩く、ひたすらに歩く、決められたパトロールコースを歩いていく。
今日のチーフはマッシュさんだ。

「昔はさあ、週に2~3軒の強盗事件なんてざらだったけど、最近は平和になったよ」
「月に1件有れば多い方だ、このクラナガンは本当に平和になった」

「へ~マッシュさんこの仕事長いんですね」

「ああ、15年やってる」

「でもその割に出世してませんね」

「それを言うなよ、俺みたいなBクラスじゃ一生掛かっても1尉まで出世出来ん」

 なんか凄く悲哀を感じる。

「あ、アレなんか様子が変」

 その瞬間だった。

「ひったくりだ~」

 スクーターでふらふらと走っていた二人組は、その先を歩いていたおばさんのハンドバックをひったくると
全力で走り去ろうとした。

 だが、次の瞬間、信じられないことに二人とも地面に縫い付けられていた。
誰がバインドを?そう思った瞬間だった、通りと交わる路地から一人の男が出てきた。

 丸いメガネが光っている。
長身痩躯、長い髪の毛を背中の後ろで一つに縛っている、ピンクのリボンで。
そして品の良いスーツを着こなしている。

 一見するとただの優男だが、にこやかに笑うその目の奥の光は信じられないぐらいに鋭い、
彼は「フッ」っと笑うと回りを見渡した。

「げっ、来た~~~~~~~~~~ぁ」

 そう言って猛ダッシュで逃げ出した。

「先生~~~~~~~~待って下さ~~~~~~~~~い、原稿を書いて下さ~~~~~~~い」

 編集者に追われる作家の様だ。
これが俺とユーノ先生の出会いだった。





次回:スクールにユーノ先生が加わって、2学期の授業が本格化する。



[17297] 魔法戦記リリカルなのは School! 第61話
Name: 酔仙◆4db7ea90 ID:c98a9d59
Date: 2010/07/07 18:07
 俺たちは、さっきのひったくり犯を取り敢えず108部隊まで連行する。
チンク捜査官とティアナ先生が取調を始める。

 バローロ達は取り敢えずメモを取りながら見学だ。

「さてあなた達には、裁判を受ける権利と弁護士を呼ぶ権利があります」
「ただし、現行犯であること、明らかに有罪であることから実刑は免れません」
「弁護士に出来ることは減刑をすることぐらいです」
「また、捜査に非協力的であったり、嘘の証言をすればそれだけ罪が重くなるので正直に答える様に」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「名前は?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「答えなさい!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「捜査に非協力的なので20%刑期を増量します」

「○○○です」

「◇◇◇◇です」

「今回が初犯ですか?それとも再犯ですか?」

「初めてです」

「もし嘘を付いていると更に刑期30%増量ですよ」

「ひったくりというのは、刑法では強盗罪になります、今回は未遂なので懲役1年3ヶ月ですが、
再犯だった場合、それだけで倍になりますよ、今、あなた達の指紋とDNAデータを各警防署でも調べています」

「余罪とか、再犯かどうか正直に答えておいた方が良いですよ、嘘を付いていれば、
それだけ外に出てくるのが遅くなるのですから」

 犯人達は、うなだれるしかなかった。

「あなた達、お手柄だったわね」

「いえ、捕まえたの俺たちじゃあないです」

 俺たちは、現場であったことを説明する。

「それユーノ先生ね」
「今度の金曜日から、講義に来られるわ」

 またとんでもない人がやって来ると、俺たちはそう思った。

「ユーノ先生は、なのは校長に魔法を教えた人の内の一人よ、特にあのすれ違いざまにバインドを掛ける技術では
未だに校長先生でもユーノ先生には勝てないのだから」

 ここにも化け物が居た。
校長先生繋がりは、伝説というか化け物というか、凄い人たちしか居ない。




 ここでユーノ先生の略歴を少し紹介しよう。

 氏名:ユーノ・スクライア
年齢は校長先生と同じだそうだ。
現在、クラナガン大学考古学教室教授 兼 無限書庫司書長
そしていくつかの雑誌に連載を持つ作家でもある。
著書に「ガレア戦記」「覇王伝」「瞑王伝」「異世界の少女」など挙げればきりがない。
ミッドチルダに住んでいる人間なら、どれか一つは読んだことがあるだろう。
結界魔導師であり、結界魔法、転送魔法、バインドの達人、他に、検索魔法や探索魔法、
変身制御、回復魔法なども使いこなす。




 金曜日の午後は現場実習はない。
代わりに、特別授業がいくつか準備されている。

 最初の2限は50分ずつ、ユーノ先生の一般教養と歴史の講義だ。
ね、眠い、食事の後に興味のない授業は恐ろしく眠い、
しかも聞いているだけで何もする事が無いのは恐ろしく眠気を誘う。

 俺は、眠気にやられて眠りそうになっていた。
その瞬間、恐ろしい早さでチョークが飛んでくる、しかも信じられない正確さで……

 咄嗟に攻撃転送してしまった。


 しかし、信じられないことはその瞬間起こった。
攻撃転送の出口の魔法陣に更に魔法陣がかけられ、チョークは俺の後ろから飛んできた。

「なるほど、こうやって返せば良いんだね」

 ユーノ先生は一目で俺の魔法を見抜いていた。
それどころか、その瞬間それをコピーしてカウンターで返したのだ。
戦慄、そんな言葉が頭を過ぎった、それ以上に背中に冷たい物を感じて眠気なんてどこかへ吹っ飛んでしまった。

 ユーノ・スクライア、魔力はともかく、とんでもない実力者だ。
にこやかに笑っているのに、瞳だけが笑っていない、とてつもなく鋭い光を宿している。
この人は、どれだけの修羅場を潜り抜けてきたのだろう?俺はそんなことを考えていた。

 生徒達は更に驚いていた。
今のところ、俺の魔法をコピー出来た奴はまだいない、それを一目見て一瞬でコピーしてカウンター、
とても人のなせる技じゃない。

「ユーノ先生、今どうやってそれを返したのですか?」

「ただ真似しただけだよ、僕も転送魔法は得意なので真似るのは簡単さ」



 ただ真似して出来る物じゃない、相当な分析力とそれを具現化する能力が必要だ。
ユーノ先生は、生徒の間では究極のカウンター使いと認識された。



「ユーノ先生、先生は昔かなり強大な敵と戦ったことがあると聞いたことがありますが、
補助を主体とする結界魔導師がそれほど大きな攻撃力を出せるのですか?」


「魔法は使いようさ、大した魔力を込めなくても、大きな攻撃をすることは可能なんだ」
「一見、攻撃性のない魔法でも、使いようによってはかなり大きな攻撃力を持つんだよ」

 そう言うと、目の前に大きな岩を召喚した。
そして、手から伸びるのは、ストラグルバインド、それを鞭の様に振るうと、岩がスパッと二つに切れた。

「まあ、こんな物でしょうかね?」

 そんな馬鹿なことが……
攻撃性のない筈のバインドが岩を切り裂く、有っては成らない、あり得ないことだった。


 だが、そこに俺が目指す道があった。
俺には攻撃性のある魔法が一つもない、もしかしたら、ユーノ先生のように使いこなすことが出来たら、
今よりすっと強くなれるかも知れない。
俺は、ユーノ先生に弟子入りすることを考え始めていた。






 
次回:会長がヴァロットを呼び出す、そして、密約


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