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農家「処分強制」なら訴訟も 民間種雄牛問題

(2010年7月7日付)

 高鍋町で種牛を飼育し口蹄疫ワクチンの接種を拒否している農場経営者に対する県の殺処分勧告は6日に期限を迎えた。経営者の男性は勧告を受け入れず、県が強制殺処分に踏み切る場合、勧告取り消しの訴訟も辞さない構えを見せた。東国原知事は同日の定例会見で「種牛は残すべきだが、(接種を受け入れた農家との)平等性が重くのしかかっている」と苦慮。国は例外を認めない姿勢を堅持しており、期限切れを迎えてもなお、着地点を見いだせない状態が続く。

 男性は弁護士と相談した上で「訴訟もやむを得ない」と述べ、理由に(1)県の種雄牛の救済は特例で2度も認めている。「公」と「民」の種牛で区別するのは不平等(2)口蹄疫対策特別措置法では「まん延防止のためやむを得ない必要があるとき」を強制殺処分の要件としているが今はその状況にはない―などを挙げた。

 この問題により、児湯地域で16日に予定される家畜の移動・搬出制限の解除が延期される可能性については「早く安全宣言を出さないといけないという、公共利益の問題があるのは分かっている」と語った。

 その上で種牛以外に所有する牛408頭は殺処分して、国や県の防疫方針に協力したことを強調。「種牛は多くの農家が守ってくれという声もあり、日々消毒に明け暮れ守ってきた。今殺せば無意味の殺生となる」と訴えた。

 東国原知事は、会見で民間の種牛も「残すべき財産」と一定の理解を示しながらも、説得を続けた上での殺処分や抗体検査による種牛の安全性確認など、複数の案を検討していることを明らかにした。

 一方、山田正彦農相は同日、発生地域にふん尿などが大量に残る点を指摘し、特措法の「まん延防止のためやむを得ない必要があるとき」が続いているとの見解を示し、例外を認めない姿勢を強調。「危機意識が県に足りないのではないかという気がしている」と、早急に殺処分の同意を得るよう迫る。

 県農政水産部の幹部は「(制限解除予定の)16日までもう少し時間は残っている。それまでに落としどころを見つけて穏便に解決したい」と懸命に解決の糸口を探る。