日本郵政グループの郵便事業会社は1日、日本通運の宅配便事業「ペリカン便」を「ゆうパック」に吸収して新たなスタートを切った。33年間親しまれたペリカン便ブランドは姿を消した。当初は、両社の共同出資会社「JPエクスプレス(JPEX)」での事業統合を目指したが、総務相の認可が下りず断念。この間の混乱で顧客離れが進み、サービス向上などで巻き返しを図るが、再起を果たすまでの道のりは険しそうだ。
新ゆうパックの取扱窓口は、ペリカン便の約6万カ所が加わり約13万5000カ所にほぼ倍増。配達時間帯も5区分から6区分に細分化し、夕・夜間帯の配達ニーズに応える。1日の式典で鍋倉真一・郵便事業会社社長は「全社を挙げてより良いサービスを提供する」と話した。
しかし、両事業の統合をめぐる混乱は今も影を落としている。
統合計画は07年、当時の西川善文・日本郵政社長が打ち出した。だが、業績悪化を懸念する総務相が認可せず、JPEXにはペリカン便だけが移行した。統合を前提にしたシステム投資などでJPEXの赤字は膨らみ、現経営陣はペリカン便を郵便事業会社に吸収する方針に変更した。混乱で顧客離れが進み、08年度に両ブランド合計で6億個あった取扱個数は今年度は計3億9000万個と大幅に減る見通しだ。
ライバルとの競争も厳しい。宅配便市場はヤマト運輸と佐川急便が取扱個数の約7割を占める。さらに、両社は夕・夜間帯にパート社員による配達を増やし、サービス向上とコスト削減を図っている。一方、郵便事業会社は、JPEXの従業員4100人(日通からの出向者を含む)を引き受け、さらに政府は非正規雇用の正社員化も求めている。コスト削減が難しい構造になっており、ライバルと開いた差を詰めるのは容易ではない。【望月麻紀】
毎日新聞 2010年7月1日 21時00分(最終更新 7月2日 0時58分)