こんこん、と窓ガラスが小さな音を立てた。
しかし、部屋の中は依然暗いままで、何かが動いた気配もない。
不思議に思い、再び窓ガラスを遠慮がちに叩いてみたが、やはり応答はない。
窓に手をやると、それはからりと音を立てて開かれる。鍵が掛かっていないことに驚いて、素早く部屋の中に入る。
中は外よりも暗く、足元に気を付けながらも勝手知ったる足取りで部屋の中を進む。
そうして電気を付けると。
ソファ上には、猫のように丸くなり眠っているその人が居て、山本は思わず破顔した。






At sacred night





ソファの上で眠るその人は、サンタクロースを待ちくたびれた子供のように、時計を片手に掴んだまま、無防備な寝顔を見せている。
まさか雲雀がサンタクロースなんて御伽話を信じているなんて思えないが、どっちにしても可愛い寝顔には違いない。
山本は、久しぶりに見るその人の姿に、胸の辺りがぽかぽかと温かくなっていくのを感じた。
足音を忍ばせて、そっと、ソファの上の雲雀に歩み寄る。
近付いても、雲雀が起きる気配は感じられない。人一倍警戒心の強い雲雀がこんなに無防備に寝ているなんて、疲れているのだろうか。
手に握りしめられている時計を、そっと取り上げる。時計の針は、まもなく0時を指そうとしていた。
ふと疑問に思う。なぜ、こんなところで寝ているのだろうか。こんなに寒い夜に、毛布も掛けずに。

その、いつもは鋭い眼光の所為で誤魔化されがちだけれど、意外に幼いカーブを描いている頬に触れようとして、直前で指を引っ込める。
自分の指先が思いのほか冷え切ってしまっていることに気付いたのだ。
それもこれも全て自分のくだらない意地の所為だった。
雲雀はいつも、己の感情を表に出そうとしない。自分は平気、と冷めた表情で山本を突き放すのだ。しかし、それが雲雀の本心じゃないことくらい、山本には分かり切っている。
例え雲雀が「違う」と言ったって、山本は誤魔化せない。だけど。たまには言葉で伝えて欲しい、と思うのは贅沢なのだろうか。
雲雀の傍を離れて約三ヶ月。気が狂うほど恋しくて、いつだって頭の中には雲雀が居て。出来る限りたくさん雲雀の声が聞きたくて電話もしたが、雲雀の方から電話をしてきたことは一度だって無かった。
そんなことも手伝い、妙に寂しさを感じてしまった山本が「俺に早く会いたくねーのかよ」と聞けば「別に」と冷たい温度でその声は響いて。分かってはいたが、とても寂しかった。
それならばと、ここ二週間ほど自分から連絡するのは我慢していた。雲雀にも寂しいと思って欲しかったのだ。それなのに、とうとう雲雀から連絡が来ることは無かった。
山本は少なからず怒っていた。雲雀にそれを望むのは間違いと言われるかもしれない。自分の我侭だということは分かっている。だけど。
そんなくだらない意地の手前、会いたくて会いたくて家の前まで帰ってきたものの、インターホンの前で躊躇うこと数十分。うろうろと家の周りをうろつくこと数時間。
昨日も帰ろうと思えば帰れたのに、妙に強情な意地のせいでなかなか決心がつかず、一晩獄寺の家に泊まらせてもらった。(物凄く迷惑そうな顔をしていたが)
さすがに今日も同じことは繰り返せない。結局、窓ガラスをノックしたのは、正面きって入っていくことが照れくさくて、考えあぐねた結果の行動だったのだけれども。

体温を取り戻そうと、ごしごしと両手を擦り合わせても、そんなとってつけたような行動で指先に熱が戻ってくるはずもなくて。
こんなに冷たい指で触れたら、きっと雲雀は目を覚ましてしまうだろう。触りたいのに、触れない。
決して子供に気付かれることもなく、その傍らにプレゼントを置かなければいけないサンタクロースも、もしかしたら、こんなもどかしい気分をいつも抱いていたのだろうか。

山本は、口元に苦笑を浮かべると、短めの前髪をさらりと撫でる。
やはり我慢できなくて、きっとそこだけは温かいであろう唇で、触れることのできなかった頬に、額に、それから唇に、そっと触れた。
そして、山本は身体を起こすと、思い直したように寝室に向かう。眠っている雲雀に毛布を掛けてやろうと思ったのだ。
その際、通り掛かったキッチンに何気なく目をやり、山本は驚愕に目を見張った。
そこには、二人分の料理が用意されていたのだ。それらにはラップが被せてあり、食べてくれる者を待ち侘びるようにひっそりとそこにある。
山本は信じられない気持ちで用意された食事に歩み寄る。
クリスマスらしく、ローストチキンや、グラタンなどが用意されている。雲雀が作ったのだろう。
胸が、ぎゅっ、と苦しくなった。
慣れていないくせに。あんなに、料理は嫌い、面倒臭い、と言っていたくせに。これだけの料理を作って、自分の帰りを待っていたのか。

暫らく、じっと立ったまま滲み出てくる愛おしさと幸福感を噛み締めていた山本は、ソファの上で眠る雲雀を思い出し、急いで寝室の毛布を剥ぎ取り、雲雀の元へと向かう。
そうして再び雲雀の寝顔を見た時、どうしようもないほど抑えていた感情が溢れ出し、自分の行動を抑制することなど、山本には出来るはずなかった。





ふいに息苦しさを感じて、雲雀は目を覚ました。
すぐには自分の置かれた状況が理解できない。それは、雲雀が低血圧で寝起きが悪いからとかそんな理由ではなく、もっと別のもので。
雲雀を包み込む匂いは、記憶の中に刻み込まれているそれだったから。

「…やまもと」

自分の上に覆い被さっている相手を確認しようと、そいつの胸を押したのだけど、びくともしない。
むしろ、変な体勢で眠ってしまったせいか、痺れた腕にビリ、という嫌な感覚が走って、閉口する羽目になっただけだった。

「ただいま、雲雀」

耳元で囁かれた山本の声に、だんだん現状が見えてくる。
自分はいつの間に眠ってしまっていたのだろうか。自分もこのくらいのことはできる、と山本に見せしめるために作った料理を終え、一息ついた辺りから記憶が飛んでいる。
そんなことに思考を巡らせていると、山本がぎゅう、と身体を抱き締めてくる。

「いたいよ」

抗議の声は、雲雀自身でも思ってもみなかったような柔らかく静かな音で唇を零れ落ちた。
多少ではあるけど、痛みを感じるような強さで抱き締められているのに、実は抗議するほど嫌なことではないのだ、と改めて気付く。
ここしばらく、受話器越しでしか存在していなかった相手の体温や、匂いや、確かな感触を、こうして肌で感じるのも悪くはない。
雲雀は緩慢な動作で痺れていた腕を持ち上げると、そっと山本の背に回した。
それが何かの合図かのように、山本の唇が、雲雀の額に降りてくる。
そっと触れるようなキスは、額から切れ長な目の縁に、それから頬に。
最後に山本のそれは、唇の上を優しく撫でるように掠め、それからその柔らかさを確かめるように、何度も何度もついばみ、そしてゆっくりと、深く、味わうみたいに唇全部で触れ合う。
しつこいくらい絡んでくる舌は尋常じゃない熱さで、雲雀も律儀にそれに答えると、その熱は簡単に身体全体にまで行き渡ってしまう。
ちゅ、と微音を立てて離れた唇は、そのまま首筋へと下りて行く。そして、既に山本によっていくつか外されたボタンの隙間から熱くなった手のひらが入ってきて、服を乱す。そうして現れた白い肌に山本は迷うことなく吸い付いた。
しかしそれを、雲雀の手が制止の意味を持って遮る。小さくはあるが、はっきりとした声で「待って」と言ったのに、勢いづいた山本はなかなか止めようとしなくて、山本の顔を、痺れのとれた手で強く押し戻す。

「雲雀?」
「ここではやだ」

その言葉に、山本は思わずくすりと笑みを零した。
そういえば、雲雀はベッドでするのが好きだった。広いほうが落ち着くのだろう。今のベッドだって奮発してキングサイズのダブルベッドにしたのだ。
たった三ヶ月程度の期間で人間はそこまで変わらないだろうけど、それでも、いつになったって変わらない雲雀が山本には愛おしい。自然、発せられる声も優しいものになる。

「じゃあ、ベッドなら、いいか?」

耳元にそう問いかけたら、雲雀はなんとも艶めかしい笑みをつくり、「仕方ないね」と言う。
久しぶりなのだから、もっとお手柔らかにお願いしたい。目の前のその人にあまりにも欲情して、どうにかなってしまいそうだった。



軽々と雲雀を持ち上げた山本は、勝手知ったる足取りで寝室を目指すと、大き過ぎるベッドに雲雀の身体をそっと下ろす。そして早速雲雀の服を脱がしにかかったのだが、またも白い手に阻まれてしまう。
山本が顔を上げると、至極真面目な顔をしている雲雀と目が合う。

「君の欲しい物は何」

雲雀の唐突な言葉に、山本は思わず目を見開く。相変わらず表情の見えにくい雲雀の顔は、いくらまじまじと見たからと言って、やはり心の中までは見えない。
まっすぐと山本を見つめる雲雀に、それが当然であるかのように「雲雀」と答える。それは、嘘偽りの無い、心からの答えで。
雲雀は「そう」と、感情の篭もらない音で言うと、満足気に口角を上げた。官能的ともいえるその笑みに、山本は頭の中まで熱くなるのを感じる。
その上、雲雀からぎゅうと抱きついてきて、「早く、」と急かされてしまっては、山本もいよいよ抑えが効かなくなる。
だけどなるべく乱暴にならないように、丁寧に乱れたシャツを脱がしていく。
しかし、その僅かな時間さえも我慢できずに、肌蹴た部分から唇を落としながら。

離れていたのは、他人に言わせればほんの僅かな間かもしれないけど。
山本にとっては、長い長い間で。そう思っていたのが自分だけではないことが、縋り付いて来る雲雀の様子から簡単に分かって。
山本の手のもたらす感覚に、小さく身体を震わせて応える雲雀を何よりも誰よりも愛おしいと思う。
どうして昨日、会いに来なかったのか。
一緒に居られる時間は決して長くはないのに。
つまらない意地を張らなければ、もっとたくさんの時間を一緒に過ごせるはずだった。
さみしくてさみしくて、どうしようもなくて。なのに、雲雀は平気なのかと思うと余計にさみしくなって。
雲雀がさみしくないはず、ないのに。そんなこと、分かっていたはずなのに、誰にそのさみしさをぶつければいいのかわからなくて、こんな子供じみた真似をしてしまって。
側に居れば、こうして肌をぴったりと寄せ合っていれば、どんなことが起きても、二人を引き離すことなんかできるわけないとさえ思えるのに。

「ん、」

そんなにたくさん触れたわけでもないのに、すでに目許を真っ赤に染めて、限界を訴えてくる。
それだけ、山本を待ち望んでいた証なのかもしれない。さみしい想いを抱えていたのは、気持ちを上手に表現できない、この腕の中のひとも同じ。
そう思うと、山本は、次から次へと溢れ出る雲雀を想う気持ちに息苦しささえ感じてしまう。
早く繋がってしまいたくて、白い脚を割り、奥まった場所へと指を忍び込ませる。雲雀も、それを手伝うかのように脚を広げるから、視覚からの思わぬ刺激に眩暈を覚える。
潜り込ませた指先が感じとる温度は、本当に久しぶりで。今すぐにでもこの熱を堪能したくなるが、僅かに残った理性でその衝動を留める。
山本にとって、雲雀を感じさせることなんて容易いことで、覚えたように指を動かせば、たまらない、とでも言うように長く白い脚がもどかし気に動き、シーツに皺を作っていく。
もともと限界を訴えていた雲雀のそれの、吐精を促すように指を動かすと、雲雀の手が山本の腕を掴み上げた。

「雲雀?」
「いや、だ」

一瞬、どういう意味か分かりかねたが、君も、という熱い吐息とともに吐き出された言葉に、心臓がぎゅっと掴まれたような気がした。
雲雀は身体を起こすと、問答無用で山本の服を脱がしにかかる。特に抵抗もしないので瞬く間に裸にされた山本は雲雀の意外な行動に言葉を無くした。

「ひばりっ、」

今までも何度かそうしてもらったことはあるが、雲雀が自らそんな行動に出たことなんてなくて。
驚きのあまり息を止めている山本の様子を、上目使いに見とめると、雲雀は楽しそうに笑みを作る。やはり雲雀には敵わない。
遠慮など端からするつもりもない雲雀は、大きく口を開けて、山本の熱く成長したものを咥える。そして舌を何度も擦りつけ、絶妙なタイミングで吸い付いてみせた。雲雀だって、山本を陥落することなど、朝飯前なのだ。

「ひばり、これ以上はまずいって、」

苦しげに熱い息を吐く山本に、雲雀は目を細めると更に奥まで咥え込もうとする。
このままでは本当に達してしまいそうで、恥ずかしげもなく音を立てながら咥える雲雀の頭を軽く押す。
すると、案外簡単に雲雀は顔を離したが、自分のものも、雲雀の唇の周りも唾液やら滲み出た精液やらで濡れて光っており、とんでもない光景に頭がじん、と痺れる。
山本は手の甲で自分の唇を拭う雲雀の頭を抱き寄せる。身体に力が入らないのか、ぽすりと雲雀の身体は腕の中に納まった。

「昨日、帰らなくて、ごめん」

耳たぶに唇を押し当てて、囁く。
それからもう一度、準備は整っているか確認するように、雲雀の体内を指で探る。
待ってたんだろ?、そう聞いても、雲雀の震える唇から洩れるのは、声にならない切なげな吐息だけで。
もう、なにもかもがどうでもいいような気がしてくる。大好きで、愛しくて、欲しくて欲しくてたまらない人が、今、ちゃんと腕の中に居て。

指を引き抜いた代わりに、雲雀によって限界まで膨らんだそれを、ゆっくりと挿入する。
雲雀の中は、熱くて、柔らかくて、山本が一番安心できるところでもあって。
幸福を噛み締めるように、一度ぎゅうとその身体を抱き締めると、少しづつ腰を動かしていく。すると、気丈に振舞っていた表情が少し、歪む。
中を堪能するべく、単純に出し入れを繰り返しただけでも、雲雀は息を詰める。切なげに顰められた柳眉が絶妙な色香を放っていた。
次第に早まっていく律動に合わせるように、上がりきった呼吸を整えようとするが、なかなか上手くいかないようだった。
それでも山本には手加減してやる余裕が残っていなかった。しかし、手加減したところで、プライドの高い雲雀は怒ってしまうのだから、これで丁度いいんだ、と思うのは勝手過ぎるだろうか。
ふと、雲雀の身体に目をやると、全身汗で濡れていて、雲雀も過剰な快感に興奮しきっているのがわかる。なんて愛しいのだろう。

「…はっ、あ、」

だんだん、忙しない呼吸音に、泣きそうに上擦った声が混ざってくる。こんな時くらいにしか聞くことの出来ないその声は、山本を煽る役目を十分に果たしている。
顔を命一杯背けているせいで剥き出しになった白い首筋に吸い付くと、雲雀の身体が大袈裟なくらい揺れる。唇を離すと、小さく赤い痕が残っていて、山本はそこを何度も舐めた。
目を固く閉じて、鎖骨辺りまで肌を赤くさせる雲雀は何よりも美しく、山本の目には映る。

このまま、時が止まってくれればいい。
この一瞬で、永遠に時が止まってくれればいい。
身体を繋げた瞬間、そう思ったのは、きっと山本だけではないはずで。

同じ想いを、苦しいほどに温かい熱を共有している相手も、抱いているはずだから。




瞼を直撃する陽射しの眩しさに、山本はゆっくりと目を開いた。
傍らに眠る雲雀は、その陽射しにもめげずに起きる気配はまったくない。
その寝顔をじっと見つめる。腕枕の上で、山本の胸に擦り寄るようにして眠る雲雀は何よりも可愛い。
山本は、少しの間、目を閉じていると幼く見えるその寝顔に見入ってしまったが。
くう、という情け無い音が腹から聞こえて、我に返る。昨日の夜ご飯を食べ損ねてしまっているのだ。お腹がすくのも当たり前と言えば当たり前だった。
確か、キッチンに雲雀の手作りのご馳走が用意されていたはず、と思い立ったが、自分が動いては雲雀が起きてしまう。
雲雀を起こすのは、やはり躊躇われた。
雲雀がここまで熟睡してしまっている理由は、もちろん、十分すぎるほど見に覚えのあることで。
どうしたものか、と思案していると、ふいに雲雀の白い瞼がゆっくりと開かれた。幼かった顔は、途端に秀麗なものへと変わる。

「おはよ」

身体、大丈夫か?、と言葉を付け足すが雲雀からは特に何の反応もない。
まだ眠いのだろうか、とも思ったが、折角起きてくれたのだから、自分にはしなければいけないことがあった。
そっと、雲雀の頭の下から腕を抜き取ると、放り出されたスーツの内ポケットの中を探る。
雲雀は、一部始終をベッドに身を投げ出したまま見ていた。
お目当ての物を見つけた山本は、至極嬉しそうに、それでいてどこか緊張した面持ちでベッドの上に戻る。
そして、そっと、白くしなやかな左手首を取ると、細い薬指に、美しく輝くそれを通す。

「メリークリスマス」

山本はそう言って、少しだけ照れくさそうに頬を掻いた。
しかし、山本のそんな様子に雲雀が気付くことはない。なぜなら、雲雀の瞳は己の左手の薬指に輝く細く小さなそれを、捕らえていたから。
雲雀が暫らくそうして、黙って指輪を見つめていた。その無感動な表情に、さすがの山本も少し不安になる。
端っから雲雀が大袈裟に喜んでくれるなんて思っていなかったが、もう少し何かしら反応してくれると思っていたのだ。
もしかして、やはり帰ってくるのが遅かったことを怒っているのだろうか。山本は少しだけ焦ってきた。

「あのな、ひばり、」
「ねえ」

山本が声を発したことなど、雲雀にとってはどうでもいいことのようで。
雲雀は、ようやく、ゆっくりと、その細い指から山本へと視線を移した。

「僕が、たいせつなの?」

山本は一瞬息を止めた。
雲雀が、何も含まない、あまりにも純粋な声でその言葉を言うから。
山本は、思わず息を止めたままこくりと頷いた。
すると雲雀が満足気な仕種で再び指輪へと視線を移した。その表情が、どこか嬉しそうに見えるのは目の錯覚じゃないはずだ。
途端に堪らない気持ちになって、山本は雲雀の身体を優しく、だけど力強く、自分の気持ちすべてが雲雀に届きますようにと願いながら、その身体を抱き締めた。拒絶はない。

「たいせつ…すっげえ大切…何よりも大切」

だからずっと側に居てくれよ、そう耳元で囁く。
相変わらず、雲雀からは何の言葉も返ってこないけど、背中に回された手のひらの温かさは山本に雲雀の心を教えてくれる。
愛しくて愛しくて、この肌から離れられそうもない。そんなことを思いながら、腕の中の可愛い恋人に、山本はそっと口づけた。

尚も、左手の薬指は柔らかな光を放っている。
クリスマスの日の二人を祝福するかのように。




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