例えばその関連性を、山本が身振り手振り教えたとしても。
きっとその人は、不思議そうに小首を傾げるのだろう。






charge






「雲雀さあ、ちょっと痩せた?」

そう言うと、腕の中の人が目線だけ此方に寄越した。
質問が悪かったのかもしれない。頬に掛かる黒髪をそっと指先で掬ってやりながら、もう一度問う。

「ちゃんと飯食ってるか?」

こめかみの辺りを擽られて細められていた瞳が、少しだけ不機嫌を帯びる。それが答えの様なものだ。
山本は一つ息を吐くと、髪先を弄っていた指で、白い身体を辿った。
首筋を通って、鎖骨を撫でる。やっぱり、前回触れた時よりも鎖骨が浮き出ているような気がする。さらに探る手を下方へやる。ぴくりと動いた身体には気付かない振りをした。
腹部を撫でる。もともと無駄な肉など付いていない綺麗な身体だったが、今は幾分頼りなく思える。自然、眉根が咎める様に顰められてしまうのも、仕方無いことだ。

「痩せすぎ」
「そう?」
「体重計あったかな」
「やだ、めんどくさい」

雲雀の拗ねた口調に思わず頬が弛む。まったく、こんな様子の雲雀の姿を見たら、獄寺辺りが暴れ出しそうだ。そんなことを軽く思うが、この痩せ方は黙って見過ごせない。
ウエストの辺りを撫でていた手のひらを、なんとなく移動させる。他意は無かったのだけど、結果的には際どい部分を撫でることになってしまい、雲雀の瞳がじろりと此方を睨んだ。まずい、と思ったが、腕の中の人は珍しくされるがままになっているので、嫌な訳では無いらしい。そんな雲雀の様子に、少しだけ浮ついた気持ちで尻の方に下げた手をさらに太腿の方へずらしても、とりわけ嫌がる素振りもなく、山本の好きにさせている。
そういえば。久々の再会を果たした雲雀は、記憶の中のその人よりも幾分素直だった気がする。雲雀が玄関を開けてくれて間を置かずに細い身体を横抱きにしてベッドに雪崩れ込んでも、目立った抵抗は見受けられなかったし、その後の行為も、いつも以上に積極的だった。仕種は、まるで甘えているようで。
そこまで考えて、まさか、と思う。自分の中で導き出した結論に、口元が綻びそうになるのを堪えられない。雲雀に問いただしたくもあるが、いくら今は甘えたな子供の様でも、許容範囲はあるだろう。雲雀は事実を指摘されることが大嫌いだから。

「ん…ま、もと」

熱を孕んだ吐息が胸の辺りに当たる。そっと表情を伺うと、目許を赤くさせ、酷く艶めかしい。視線は咎める様だが、本心は反対だろう。山本が戯れに手の内で弄んでいた雲雀の中心が熱を持っていた。

「や…」
「や?」

これはもう癖の様なもので、雲雀は何事に対しても、愚図る。しかし本心が求めていることなら、割と素直に受け入れたりするので、そこの見分け方が難しいのだが、今日のところ失敗はしていない。出来る限り優しく何が嫌なのか問うてみると、「もう少し休む」と返ってくる。行為自体に問題は無いらしい。だったら。

「却下」
「盛りすぎ」
「あんただって、このままじゃ辛いだろー?」

そう言って握りこんだ熱の先端をぐり、と押すと、か細い声と共に白い身体が跳ねた。可愛い。少しだけ低い位置にある雲雀の唇を吸う。すると雲雀の方から舌を潜り込ませてくるものだから、もう止まれない。入り込んできた舌を此方からも絡ませると、負けじと更に激しくその人の舌が動く。時々聞こえてくる吐息に混ざった熱っぽい声に、否が応でも下半身が反応する。これでは繁殖期の動物だ。お互いに。
何度も鼻先を交わしながら、身体を雲雀の上にずらしていく。先程の情交では雲雀が上に乗ってくれたのだから、今度は山本の方が頑張らなければならない。
握りこんでいた熱からそっと指を離し、更に奥へと潜り込ませる。雲雀は何か文句の類を言おうとした様だが、中で指を曲げただけで力の抜けた吐息を漏らす。先程の情交から然程時間は経っていないので、幾分指も侵入しやすい。それどころか先程の名残でぬるついた感触や、中の熱さに、眩暈さえ覚える。
雲雀が可笑しそうに笑った。その人の視線を追うと、どうやら山本の下半身に当てられていて。すっかりその気になっているその部分を凝視されてはさすがに居心地が悪く、何か適当な言い訳を探していると、雲雀のすらりとした腕がその部分に伸びてきたので思考は中断される。そしてそのまま指先で擽られ、仕舞いには「まだ触ってもないんだけど?」と揶揄う様に酷く煽情的な表情で言うので、余計に入れたくて仕方なくなる。
投げ出された細い脚を開かせ、その間に体を割り込ませる。素直な雲雀は、とても協力的で、自らも迎えるかの様に入れやすい体勢をとってくれる。
そんなことに感動しながら、解れたその部分に十分に硬さを保っている中心を当てると、すぐに雲雀の両の腕が山本を求めて伸びてきた。それに応えてやるために上体を低くしてやりながら、少しずつ自身を埋めていく。ぎゅう、と首元に抱き付いてきた雲雀の呼吸が詰まったが、すぐに艶を含んだ掠れた音が呼吸に混ざる。

「ぁ…あ…」

耳元で聞こえるか細い音にも、ベッドの軋む断続的な音にも、どうしようもなく煽られる。
いい年してセックスに夢中になるなんて、少し恥ずかしい気もするけど、そんなことに構っていられない位その人の何もかもが絶品だし、焦がれていた期間だって相当で。
また当分会えなくなる日々が続く。そう思うと、これくらいの充電は必要。もちろんすぐに電源は限りなく少なくなるが。それは意外にも雲雀も同じようで、また離れて暮らす日々の中で雲雀が痩せてしまうのではと思うと、余計に離れ難くなる。
少しでもお互いの匂いや痕を残せるように、強く強く、その身体を抱いた。





その日の夕食の豪勢さは、雲雀が目を見張る程だった。
その上、どの食材も雲雀の好むもので、どれも物凄い量。これでは嬉しさよりも驚きの方が大きい。

「どうしたの、これ」
「はは、作りすぎちまった」

山本は軽く笑うが、作りすぎた、で済む量では無い。二人ではとてもじゃないが食べきれないだろう。

「誰か呼ぶつもり?」
「え?なんで?」
「だって、すごい量」
「遠慮せずたくさん食ってな!」

どこか見当違いな受け応えをする山本に雲雀は呆れた視線を投げつけると、諦めた様に息を吐き、箸を持つ。
「いただきます」とぶっきら棒に挨拶を済ませると、器用に箸を使い、次々に山本の手料理を口元に運んでいく。山本はその様子をにこにこと眺めていた。
雲雀は風貌に似合わず、大食漢だ。出されたものならば割と何でも食べるし、自分の好きな物ならば、余計に。それなのに、稀に食欲が無いと言って、まったく食事を摂らなくなる。それが何かしらの理由でお互いが傍に居られない時と重なるのだから、考え物だ。これでは草壁さんも苦労するだろうなあ、と思う。
改善策を考える。しかし、難しい問題だ。例えば山本が作る料理の味をきちんと再現できるようにレシピを作って草壁さんに渡したとしても、それは何の解決にもならない。寂しいという感情と食欲が直結しているのならば。

山本は自分も席に着くと、箸を取った。しかし本当に作りすぎたのでどれから手を付けようか迷う。雲雀の様子を伺うと鰤の煮付けを消化中だ。

「うまいか?」

むぐむぐと方頬を膨らませていた雲雀が、こくんと頷いた。胸が温かくなる。
離れたくねえなあ、そんな台詞は、心の中だけで呟かれた。




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