何一つ譲らないくせに、困ったように笑うのも、いつもどおり。
何かに追われるように、急性に唇を合わせるのも、いつもどおり。
なし崩しにベッドに押し倒されるのも、正常な思考回路が保てなくなって、どうすればいいのか分からないまま、その背中に爪を立てるのも、いつもどおり。






長い夜






その行為の意味を未だに理解することのできない雲雀は、今しがた行われていた行為が終わると、ひっそりと溜息を吐いた。
すると、傍らで何が面白いのか枕に片肘をついて雲雀の表情を眺めていた山本が表情はいつもの調子で、「なんで溜息吐くんだよ」と声だけで拗ねてみせる。
雲雀はそんな山本を睨み上げると、今度は呆れたみたいに大きく溜息を吐いた。

「もしかして、痛かった?」

山本の問いに、雲雀はそれが当然のことであるかのような態度をとる。表情で「愚問だ」と訴えている雲雀に、山本は思わず笑ってしまった。
笑うことによって、顰められた眉がより険しいものへ変化するのだけど、それすらも山本にとってはお気に入りの表情の一つなのだ。

「じゃあさ、嫌、だった?」
「嫌だったらしない」

はっきりした雲雀の声にだらしなく破顔してしまった表情を隠すためか、はたまた、思ってもいない言葉に感動したためか、山本は雲雀の小さな頭を己の胸の中にすっぽりと埋めてしまう。
雲雀は、今更その行動に何か文句を付けたり、抵抗したりなどはしない。それくらい、二人の間でこういった行動は日常茶飯事なのだ。
少しの間そんな風にじゃれ合い、いつもなら、そのまま眠気に身を委ねてしまうのだけど。今日は、違った。まだそんなに遅い時間じゃないからだろうか。

「ただ、わからないだけだよ」

だから、雲雀がぽつりと呟いた言葉も、深い意味があるわけではなくて。
ただ、なかなか眠気が訪れないから。それだけのこと。

「んー?何が?」
「君の思考回路」

髪を柔らかく撫でられ、気持ち良さそうに目を細める、猫のような雲雀を知っているのは山本だけ。
雲雀は髪を撫でられる感触が気に入ったのか、珍しく饒舌になっていた。そんな雲雀は滅多にお目に掛かれないので、山本は雲雀を促すように、こめかみに唇を押し付ける。

「君は、どうして僕とするの」

その問いかけが意外で、山本は一瞬考えてしまう。
どうして、雲雀とするのか。

「僕として、どんなメリットがあるの」

雲雀の真剣な視線に山本は気押しされる。
もともと単純にできている脳は、難しいことを考えるのは極端に苦手で。

「メリットって言われてもな…キモチイイから、とか?」
「わざわざ同性である僕としなくても、君ならいくらでも相手がいるだろ」

雲雀のそんな言葉に、女とすればいいだろう、と言われている気がして、山本は一瞬怒ったほうがいいのだろうかと思ったのだけれど。
相手は、雲雀だから。山本は小さく息をついて、そして、その髪に鼻先を埋めた。

「なあ、知ってる?今日は一年で一番夜が長い日なんだってよ」
「冬至?だから何。答えになってないよ」
「せっかくだしさ、一晩中考えてていいよ。それでも分からなかったら教えるから」

不満気な表情を見せる雲雀に、山本は愛おしさを覚える。

「ヒントは一晩中出してやるからさ」

そう言い、静まりつつあった熱を刺激するように山本の唇が雲雀の首筋を辿る。
尚も何か言いたげな表情を崩さなかった雲雀だが、山本の舌がやがて大胆な動きをみせると、諦めたように瞳を閉じた。

メリットがあるから抱くのではなくて、抱くことがメリットなのだと。
雲雀はそんな簡単なことに気付かない。
気持ち良いから抱くのではなくて、好きだから気持ち良いのだと。
それは、同じ意味に聞こえるかもしれないけど、全然違う。何が違うのかは、雲雀自身が気付かなくては意味がないと山本は思っている。

「ゆっくり考えていいぜ、夜はこれから、だし」

雲雀の包まっていた毛布を剥ぎ取ると、現れた肌に唇を当てていく。
そして、最上級のヒントを何度も、囁く。
例えば、雲雀が「しつこい」って怒り出しても、分かるまでやめてやるつもりは無い。

「ひばり…大好き」

一晩中。何度でも。


今日は、一年で一番長い夜だから。




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