社説

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

社説:参院選 高速道路料金 つじつま合わせは困る

 高速道路料金の無料化が28日から始まる。とはいっても、あくまで社会実験としてであり、対象は37路線50区間の計1652キロのみ。対象外としていた首都高速と阪神高速を除く全路線の2割弱に過ぎない。

 無料化は鳩山政権下での迷走を象徴する一件だったが、参院選のマニフェストで民主党は、「段階的に原則無料とします」と記述している。前原誠司国土交通相は、無料化予算の増額を求め、来年度の無料化区間の拡大を図る考えを示している。

 ただ、マニフェストには、「無料化した際の効果や他の公共交通の状況に留意しつつ」という条件が付いている。そうしたこともあって昨年の総選挙で民主党が掲げた高速料金無料化が、そのまま実現すると考えている人はまずいない。

 しかし、社会実験を理由に、完成形の提示が先送りというのでは困る。鉄道やバス、フェリーなど競合する他の交通機関だけでなく、高速道路の利用者も、料金制度がふらついた状態では、どう対応すればいいのか迷うからだ。

 恒久的な値下げ財源は年5000億円に限られている。それをベースに料金上限を普通車で2000円とする案を4月に国交省がまとめた。

 ただし、時間帯別など他の割引がなくなるため、料金が2000円に満たない場合は逆に値上げになる。さらに、鉄道やフェリーに配慮して料金が加算されることになる本州四国連絡高速道路の利用者からの反発もあって、前原国交相は上限2000円案の見直しを示した。

 上限2000円案は、自民党時代に設けた土日休日1000円など各種割引の原資がなくなることから、それに対応した措置で、無料化とは別と位置づけられているようだ。

 国交省としてはそうなのかもしれない。しかし、この点についてどう考えているのかを、民主党として示すべきではないだろうか。

 高速道路、新幹線、空港といった交通基盤を、相互の連携を考えずに整備を続けてきた。そのゆがみが各所に出ている。そのため、総合的な交通体系の構築が課題で、自民党もマニフェストの中で触れている。

 しかし、総合的な交通体系の実現のためには、交通機関の役割分担をはっきりさせることが必要だ。民主党は交通基本法の制定を挙げているものの、どう役割分担をするのか、具体的な姿ははっきりしない。

 期間限定で用意された割引財源がなくなった後の料金制度、そして、無料化の対象、さらに交通機関の役割分担。つじつま合わせではなく、その姿をきちんと示すべきだ。

毎日新聞 2010年6月27日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

sn

PR情報

 

おすすめ情報

注目ブランド