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処理下水、豪へ輸出実験 千葉・川崎から水不足の鉱山へ

2010年7月6日3時1分

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 千葉市、川崎市の下水を高度処理してオーストラリアに輸出する実験が今秋にも始まる。下水はほとんどが処理後、川や海に捨てられていた。これを豪州からの鉄鉱石を運び終えた空の大型船に積み込み、雨が少なく水不足に悩む豪州の鉱業会社に供給する。成功すれば、日本の「水資源」を輸出する初の事例になる。

 5日、国土交通省などが始める実験に、ウェスタンオーストラリア州政府が協力することで合意した。売却候補地は、リオ・ティントなど世界的な鉱業会社が進出している豪州西部の鉄鉱石産地だ。

 鉱業会社は、鉄鉱石を洗ったり、粉じんが舞い上がらないようにしたりするために大量の水を使うが、豪州は全土が水不足。国交省によると、鉱業会社がいま使っているのは、海水を飲料水レベルまで淡水化した水で、1トン当たり4〜5豪ドル(300〜400円)もするという。

 今回の試みは、豪州のような水需要国と、水余りの日本をビジネスベースで結ぼうとの発想で始まった。

 日本国内で出る下水は処理済みベースで年間約140億トン。その約2割は公園の水遊び場でも使えるレベルまで高度に処理しているが、下水の再利用率は2007年度で1.5%に過ぎず、ほとんどが海や川に捨てられている。

 日立プラントテクノロジーなどの企業が参加し、東京湾で水を船に積み込み、豪州に運ぶ。ただ、水を「荷物」として輸出すると、輸送コストが高く、ビジネスとしては成り立たない。そこで、鉄鉱石を豪州から運んできた船の帰り便を活用することにした。

 日本で鉄鉱石を降ろした空船は通常、船体を安定させるため、「バラスト水」と呼ばれる海水を船内のタンクに入れて帰る。その海水の代わりに下水処理水を注入する。

 実験は、まずドラム缶で水を豪州に運び、輸送後の水質の変化を調べる。水質が大きく変わってしまうと、現地で追加の水処理が必要になるためだ。さらに、現地で港から鉱山に水を運ぶ方法やコストも調べるほか、改造した船に処理水を注入して運ぶ実験を行い、早ければ12年度の事業化を目指すという。飲料水や農業用水には転用しない。

 「水資源」ビジネスが注目される背景に、世界的な「水の偏在」がある。豪州の国土の8割は年間降水量が600ミリ未満と、東京の3分の1以下。地球温暖化の影響もあって渇水は各地で深刻化しているとされる。中東なども水不足が常態化しており、経済産業省は、水ビジネスの市場規模は15年後に現在の2.4倍に拡大すると試算している。

 今回の実験で課題が克服されれば、日本が「資源輸出国」になる可能性がある。(鳴澤大)

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