きょうの社説 2010年7月7日

◎地方の「天下り」問題 不信招かぬルールづくりを
 全国知事会の行政改革プロジェクトチーム(PT)が、都道府県の「天下り」問題につ いて見直す方向性を打ち出したのは当然である。中央省庁の天下りは高額の報酬や退職金、随意契約の多さなどが指摘されてきたが、地方の場合はそうした問題が少ないとはいえ、外郭団体などへの再就職の仕組みが不透明だと同じような疑念を抱かれかねない。

 石川、富山県議会でも県職員の天下り問題が取り上げられ、県側は公務で培った知識や 経験を地域社会に還元する意義を強調し、処遇についても適正であることを繰り返してきた。だが、定年後も安定したポストが用意され、自動的にそこに収まるような雇用慣行は、仕組み自体が公務員優遇との批判を受けやすい側面がある。

 全国知事会のPTがまとめた中間報告では、再就職については定年退職を原則とし、職 務の内容や経営実態に応じた適切な報酬額、退職金の不支給、再就職先の情報公開の徹底を都道府県に求めた。とりわけ、住民が納得できるよう情報をできる限り公開する姿勢は大事である。これを参考に石川、富山県も不信を招かないルールづくりを積極的に進めてほしい。

 全国知事会の中間報告によると、都道府県の再就職は定年退職のケースが多く、定年ま でかなりの年数を残して再就職する国の官僚とは異なる点や、都道府県としての優位な立場を利用して外郭団体に再就職を押しつけていないこと、報酬額も在職時より低く抑えられていることなどを挙げ、中央省庁の天下りとの違いを強調している。

 ただし、そうした実態の公開は必ずしも十分とは言えない。全国知事会も、中央の天下 り批判の風圧が地方に及びかねないとして改革を急いだのが実情だろう。

 地方では、外郭団体が施策遂行機関として中央以上に自治体と密接なつながりを持つケ ースが多い。行政経験豊かな人材が求められるのも理解できる。だが、幹部職員の指定席としてポストが固定化されれば、適材適所とは言えないケースも出てくるだろう。公務員OBでないと務まらないポストなのかどうかも含め、議論を深めてほしい。

◎レジ袋削減 継続してこそ価値高まる
 全国に先駆けて2年前にレジ袋有料化の取り組みを始めた富山県内の昨年度のマイバッ グ持参率が、前年度から2ポイント上昇して94%となり、削減したレジ袋も前年度を2千万枚上回る1億5千万枚に増えた。片や有料化から1年が経過した石川県内では、3月末現在でマイバッグ持参率91%と、まずは順調な滑り出しだが、一部で無料に回帰する動きも見られるだけに、息の長い運動にできるかどうか、真価が問われるのはこれからである。

 石川県内では昨年6月からスーパー、ドラッグストア、クリーニング店計430店舗で 、レジ袋の有料化がスタートした。91%という数字は、富山の初年度の92%に見劣りしないが、最近では有料化見直しに加えて、マイバッグを使用した万引も起きるなど、取り組みへの逆風も出てきている。

 先に行われた県レジ袋削減方策検討会議では、消費者団体から有料化継続を求める声が 相次いだが、マイバッグ持参率がエコ先進県としてのバロメーターにもなるだけに、気を緩めず、業者、県民への呼びかけを続けていきたい。

 もちろん、マイバッグ持参率の数値の向上は、あくまでも県民一人ひとりが自覚をもっ てできる地球温暖化阻止の手段の一つであって、それ自体が目的ではあってはならないだろう。

 金沢市は今月から、マイバッグ推進に限らず、「簡易包装の実施」や「地元産食材の販 売コーナーの常設」など、環境に配慮した取り組みを行っている市内の小売店を対象に「環境にやさしい買い物推進店」への登録受け付けをスタートさせ、ホームページやイベントなどでその店舗を紹介する。買い物のマナー向上や、食べ残しの追放など、県民のエコ意識の向上に向けて、各市や町の単位で今後も、継続性のあるキャンペーンを展開していきたい。

 県内では、金沢市で12月に「国際生物多様性年」の締めくくりとなるクロージングイ ベント(閉年行事)が開かれる。その際は里山里海保全だけでなく、マイバッグ運動をはじめとする環境啓発活動も紹介できるようにしたい。