口蹄疫(こうていえき)の拡大を防ぐために宮崎県以外の九州各地でも家畜市場が止まり、出荷できずにいる和牛の子牛が、鹿児島など九州5県で約2万頭に上ることがわかった。農畜産業振興機構(東京)によると、昨年度の子牛の市場価格は平均36万円。適齢期での出荷を逸すれば価格が落ち、飼料代がかさむため、子牛を育てる繁殖農家は一日も早い市場再開を望む。各県は飼育指導や資金援助などを始めた。
和牛農家には、子牛を産ませて一定期間育てる繁殖農家と、その子牛を買って肉用牛に育てる肥育農家がある。
九州は和牛の子牛の主要生産地。農畜産業振興機構によると、2009年度に全国で取引された和牛の子牛は約39万頭。このうち、福岡県を除く九州6県の市場から約20万頭が出荷されている。
ところが、口蹄疫発生により宮崎など各県の子牛の競り市が中止・延期された。
最も影響が大きいのは和牛の子牛飼育数が全国一の鹿児島県。4月25日以降、開催を予定していたすべての家畜市場が止まり、繁殖農家では1万頭を超す子牛が滞留。同県ではさらに6月以降の競り中止も決まった。長崎、熊本両県でもそれぞれ3千頭以上の子牛が出荷できずにいる。
鹿児島県での延期は、県外からの買い付けが4割を占める県内最大規模の曽於中央家畜市場が最初。JAそお鹿児島畜産部によると、4月25〜28日と5月25〜28日の開催日に計約3500頭の出荷が予定されていた。担当者は「県外客が集まらなければ、競りに出しても値が上がらない。かさむコストやイメージ低下など目に見えない被害を生産者は心配している」と話す。
曽於市は、出荷が見送られた子牛1頭当たり月1万円、総額2550万円ほどの見舞金を決め、5月末をめどに農家に振り込むという。