宮崎県の口(こう)蹄(てい)疫(えき)問題で、高鍋町の畜産農家の男性がワクチン接種を拒否している種牛6頭について、山田正彦農相が口蹄疫対策特別措置法に基づく強制殺処分を県に求めたことを受け、6頭を飼育する男性側は6日、西日本新聞の取材に応じ、接種と殺処分を拒否する考えをあらためて示した。国や県が殺処分の強制執行を決めた場合、法的措置も辞さないとしている。
県は6月29日、男性に特措法に基づく殺処分勧告をしており、7月6日が処分期限。男性側は法的措置について、殺処分の執行停止の申し立てや、殺処分決定の取り消しを求める訴訟などを検討しているとみられる。
男性の種牛6頭は、県内の民間農場で唯一、国の検査に合格して種牛と認められ、年間約2千本の精液を県内外に供給している。男性は6頭以外にも肥育牛など約300頭を飼育していたが、これらはすべて接種と殺処分に応じた。しかし種牛は「公益性があり宮崎の畜産業再生にも必要」と接種を拒否している。
東国原英夫知事は山田農相の指示を受けて勧告したが、現段階では強制執行には消極的な姿勢を見せている。
男性は取材に対し「特措法がいう『緊急の必要があるとき』という状況なのか。今はまん延状態ではない。種牛の抗体検査を行い、シロと確認できれば問題ないはずだ」と話した。さらに、県所有の種牛5頭が特例措置で家畜移動制限区域外に避難、殺処分を免れたことにも言及し「民間の種牛も貴重であることは同じだ」と、同様の保護を訴えている。
一方、山田農相は6日午前、省内での口蹄疫対策本部の会合で、男性の種牛の問題について「家畜の所有者が泣くような思いで、家族同然の健康な家畜にワクチン接種、殺処分という大変な犠牲を払っている。そういった意味でも(県に対し)特措法によるきちんとした対応を求めていきたい」と述べ、公平性の観点からも殺処分するよう県にあらためて求めた。
=2010/07/06付 西日本新聞夕刊=