“きみのちから みとどけさせてもらった。みごとだったよ”
喪服の老婆と手を繋ぐ金髪の子どもが言った。
俺の目の前で喪服の老婆が喪服の淑女に、金髪の子どもが金髪の老紳士に変わった。
“闇に潜み、時が来る日を待ち続けたもの達よ”
金髪の老紳士が言葉を紡ぐ。
“今、新たな闇の悪魔が誕生した”
金髪の老紳士は俺を真っ直ぐ見つめた。
そして一言。
“時が来たのだ”
その一言と同時に二羽のヤタガラスが俺の後ろに飛び去る。
“混沌の悪魔の軍勢は、ルシファーの命があり次第目覚める。”
以前、蠅の王が言っていた言葉が頭を過る。
混沌の悪魔は皆その時を待っているとも言っていた。
遂に待ち望んだ時が来た。
ヤタガラスが飛び去った方には、黒い、太陽のような球体が一つある。
俺はそれを真っ直ぐに見据える。
“集え! そして行こう!”
老紳士が号令をかける。
“我らが真の敵のところへ!”
その言葉と同時に今度は、俺の後ろに無数の悪魔達が現れる。
俺は無数の悪魔達と、今までずっと一緒に戦ってきた仲魔達と共に歩きだす。
隣には、最初からずっと一緒だった大切な仲魔のピクシーと、初めは敵だったが途中で共闘し共にボルテクス界を生き抜いた相棒の十四代目葛葉ライドウがいる。
俺たちは負ける気はしなかった。
だが、真の敵へと向かう途中、頭の中に声が響いた。
あの天使は、己が心のかたちに似せて、新たな悪魔を創りたるか。
ならばわたしは滅びをおこう。わたしとおまえの間に。
わたしの末とおまえの末の間に。
次の瞬間、目の前が明るすぎる光に包まれた。