大相撲名古屋場所の中継を中止すると発表するNHKの福地茂雄会長=6日午後4時32分、東京都渋谷区、山本裕之撮影
大相撲の賭博問題で、NHKは6日、名古屋場所の中継放送をテレビ、ラジオとも行わないことを決めた。再発防止に向けた日本相撲協会の取り組みが不十分で、中継をすれば受信料を支払う視聴者の理解が得られないと判断した。一方で相撲ファンに配慮し、午後6時台に幕内の取組を紹介するダイジェスト番組を20分間放送する。
本場所の中継を全面的に見送るのは、80年を超す大相撲中継の歴史で初めて。NHKの福地茂雄会長は記者会見をし、「野球賭博は暴力団との関与が指摘されるなど、極めて重大で遺憾な事態。視聴者からは連日、厳しい意見が寄せられている。再発防止のための改革の方向性が現時点では具体的にわからない」と述べた。同日夜には総合テレビで放送した広報番組に出演し、視聴者に向けて直接、経緯を説明した。
この問題でNHKは、執行権をもつ福地会長の指示にもとづき、中継中止の検討を始めた。相撲協会はこの日、村山弘義理事長代行らがNHKを訪ねて直接、中継の実施を求めた。だが、NHKは福地会長ら役員12人が話し合い、賭博をした力士の処分が決まるなど一定のけじめはついたものの、現段階での中継は時期尚早と判断。福地会長が村山理事長代行に電話をして中止を伝えた。
NHKは通常、総合テレビで午後3時過ぎから同6時まで、衛星第2で午後1時から同6時まで大相撲を中継している。これをそれぞれダイジェスト番組に切り替える。海外向けの放送もダイジェスト番組に変更。午後4時過ぎから同6時まで中継しているラジオでは結果のみを伝える。
2008年から5年契約で結んでいる放送権料は年25億円を超えるとされるが、この扱いについては今後協議するという。来場所以降の対応については明言を避けた。
NHKの大相撲中継は、1928年からラジオで、53年からテレビで始まった。戦時中、ラジオ中継の一部が録音に切り替えられた例はあるが、全面的に見送ったことはない。この問題でNHKに寄せられた視聴者の意見は、6月14日から7月5日までで約1万2600件に達し、そのうち中継に反対する内容は68%を占めていた。(丸山玄則、村瀬信也)