人力車を引いて日本一周に挑んでいる男性が先日、九州全県をまわって関門トンネルから本州へと戻りました。
2年前、三重県を出発した男性は旅の途中で出会った人生のパートナーとともに11月のゴールを目指して旅を続けています。
山田祥平さん、人力車で日本一周にチャレンジしています。
山田さんは、2008年5月に、三重県の伊勢市を出発しました。
京都大学に在学中、アルバイトで車夫として人力車を引くうちに、大きな魅力を感じたといいます。
●山田祥平さん
「人力車っていう仕事が、単に観光地を走るだけで終わるんじゃなくて、何かこう人と人とが繋がるための架け橋になれたらいいなと思って。そういう役割をもたせたいと思ったときに、じゃあ旅をしてみたら、いろんな人と出会えるし、その出会いの中で興味を持ってくれた方に出会えるし、乗ってもらったりひいてもらったり、伝えたいことを感じてくれたらいいなと思う」
三重を出発して太平洋沿岸を北上。
東北、北海道をまわり、日本海側を南下して、今年4月に九州に入りました。
山田さんは、旅の途中に、人生のパートナーとなる中川水帆さんとも出会い、現在は、2人で旅をしています。
●中川水帆さん
「ただのタクシー代わりの乗り物じゃなくて、何か大きな可能性をもっている。日本中をかき混ぜていったら、きっと何かが起こるぞという、直感的なものを感じて、応援したいなと思った」
旅の途中、2人はたくさんの人に声をかけられました。
途中のガソリンスタンドでひと休み。
人力車を通して出会った2人は今年11月に、ゴールした後、結婚式を挙げる予定です。
「おめでとう」の言葉とともに、ガソリンスタンドの人から、飲み物の差し入れもいただきました。
●水帆さん
「そうやって支えてもらって、ここまで旅が出来ているし、今ここで出会う人に支えてもらってるから次の人と出会えるし、生きていけてるからまた明日も誰かと出会える」
人力車の重さは230キロ。
上り坂は2二人で、人力車をひきます。
1日およそ10時間引いても進む距離は15キロほどです。
雨が降れば、軒先を借りて、ほんの少し雨宿り。
この間に、旅の記録をつけます。
いつも、相手への感謝の気持ちを持つ2人、かけあう「ありがとう」の言葉が、まるで山びこのようです。
山田さんらは夜はテントを張ったり、出会った人の家に泊めてもらったりしています。
ところが、この日は人力車を置く場所を探していたのですが、なかなか場所が見つからず、徐々に険悪なムードに。
●祥平さん
「分からないよ。俺だって分からないよ」
●水帆さん
「じゃあ戻ろう。とにかく戻ろう」
●祥平さん
「どこに、どうして(嫌な顔)」
●水帆さん
「そろそろ決めようねって言ったじゃない」
●祥平さん
「だから、橋を渡ってから決めようと思ってたの」
●水帆さん
「私はあそこだったら事故の心配もないし、安全だと思ったの」
●祥平さん
「じゃあそう言ってよ、そのときに」
●水帆さん
「まず尊重したの、『そう言ってよ」っていうのは変でしょ。一番こだわるのはあなたじゃん、その場の気とか、人気とか、雰囲気とかにこだわって、いいとか悪いとか言うのは、あなたでしょ」
●祥平さん「うーん、みほがそこでいいっていうならそこにしよう」
なんとか、駐車場を借りることができました。
最後に水帆さんから、「『そういってよ』っていうのは間違いだよ」と言われた祥平さんでした。
翌日山田さんらは行橋・苅田を越えて北九州を目指します。
人力車に興味を持った子どもには体験してもらうことも…。
北九州市では、今年3月に鹿児島県の奄美大島で出会った、古賀さんの家に泊めてもらいました。
古賀さんは旅の話を聞きたいと再会を心待ちにしていました。
●水帆さん
「旅中に誰かにお世話になって恩送りっていうんですかね。私たちを助けてくれる人たちも、聞くと昔旅したことがあったとか」
●古賀敦之さん
「事故なく、ゴールに向かってつきすすんでもらいたい」
旅の途中、何度もパンクした人力車。
ようやく2人は関門トンネルを抜けて、本州に入ります。
●祥平さん・水帆さん
「九州は温かすぎて、長居しました。人のつながりがいい。自由で無理がなくて」
●水帆さん
「大玉ころがしのようにみんなで運んでもらって、結束力、つながりを感じました。ゴール後の自分たちの人生に橋渡ししていけるよう、集中して、ギュッと、ラストスパートみたいな感じですね」
今年11月、三重にゴールするときには旅で知り合った仲間たちが迎えてくれる予定だということです。