シベリア抑留者法が成立
シベリア抑留者法が成立 06/17 19:32

参議院選挙の日程が正式に決まったきのう、国会では元シベリア抑留者の人たちに特別給付金を支給する法律が成立しました。

元抑留者の補償問題は、去年、政権が交代してから政治解決に向け大きく動き出しましたが鳩山・前総理の突然の辞任など政局や与野党の対立に翻弄されました。

シベリア特別措置法はきのう、国会が閉会する直前にようやく成立しました。

元抑留者の人たちの中央に座っているのは平塚光雄さん、元抑留者の団体・全国抑留者補償協議会の会長です。

きのうの早朝、国会が始まる前に平塚さんを訪ねました。

1人暮らしの自宅マンションが、会の本部です。

●全国抑留者補償協議会・平塚光雄会長
「国として、『申し訳ない』と言うことが一番大事だったのではないか。どれだけの補償金額になるのかは分からないけれども、之まで国が何もしなかったことが、おれたちは気にくわないんだ」

第二次世界大戦の終戦後、かつてのソ連に連行され、極寒の地で強制労働に従事させられた元抑留者は、57万人を超えると言われています。

もっとも長い人は、11年にもおよぶ抑留生活を経て帰国したものの、事実上の捕虜労働に対する労働賃金は、一切支払われませんでした。

戦後続いた自民党政権下では、補償問題は遅々として進まず平塚さんたちは、政権交代した今こそシベリア抑留問題の最初で最後の政治解決の時期だとして、活動を続けてきました。

●議連総会で挨拶する平塚会長
「私たちも文字通り、老骨を鞭打って、最後の仕上げの闘いに臨む所存です」

鳩山前総理は野党時代から、シベリア抑留問題に関わってきました。

鳩山政権の下で、一気に政治解決するのではないかとの期待が高まりました。

●挨拶する鳩山由紀夫民主党代表(当時)
「(シベリア抑留問題が)今でも完全に解決をされていないということを、本当に申し訳なく思っております」(全国抑留者補償協議会創立30周年で・去年5月)

●平塚会長
「(鳩山)総理大臣は、俺たち20年くらいの付き合いなんですよ。だからこのシベリア問題は(総理自ら)何とかしなくてはいけないということで、ずーっと言っていた」

そして、先月20日には参議院の委員会で、シベリア特別措置法案が可決翌21日には参議院の本会議でも全会一致で可決され、あとは衆議院での審議を残すだけとなりました。

誰もが法律の成立は間近だと信じて疑いませんでした。

●元抑留者の遺族
「きょうは本当にありがとうございました、お父さんも本当に喜んでくれると思います、きょうは大好きなお汁粉でも、お餅でもいっぱいやって、お供えしたいと思います、本当にありがとうございました」

しかしシベリア特措法案が参議院を通過した先月下旬、政局は混迷の度を深めていました。

在日米軍普天間基地の移設問題、政治とカネ、鳩山政権は行き詰っていました。

●鳩山総理大臣辞任会見
「私も身を引く退きます。しかし、小沢幹事長にも幹事長の職を退いていただきたい」

平塚会長は、辞任会見を自宅のテレビで見ていました。

ひっきりなしに電話もかかってきました。

国会の会期末までは2週間しかありません。

また政治解決が遠のいてしまうのか?

不安がよぎります。

●平塚会長
「こんなことやってるうちに、6月だ8月だとなって、亡くなっていく人が僕らのほうは、どんどん多くなっていくわけだから、そしたらどうするの?ということになる」

菅・新総理の選出などで国会の審議は一時中断され、会期末の前日にはあきらめに近い言葉も思わずこぼれます。

●平塚会長
「(法律成立は)間に合わないかもわかんないな、だから、参院選が終わった後にやるんじゃないかな」

ところがこのインタビューの後、急転直下、法律が成立するめどが立ちました。

平塚さんは、審議を見守るためにきのう、会期末を迎えた国会に向かいました。

●平塚会長
「一週間に2回も3回も(国会に)何回も行ったことがある」

陳情のために数え切れないほど通った国会、この日が最後になるかもしれません。

この日の衆議院本会議で成立したシベリア特別措置法では、生存している日本国籍の元抑留者に対して抑留期間に応じ150万円から25万円が支給されます。

●元抑留者
「お金をもらうから嬉しいのではない。(国が)お金を出すということは、我々の労苦を認め、国が謝罪したと、私はそういう解釈で涙が出るくらいです」

●平塚さん
「皆さんと一緒になって…、ほんとに嬉しい…」

政権交代が「政治解決」の追い風となった形ですが、シベリア特措法の成立はほかの戦後処理問題にも影響を及ぼすことになりそうです。