ＮＨＫが名古屋場所の生中継取りやめ…史上初の事態

名古屋場所生中継の取りやめを決断したＮＨＫの福地茂雄会長

　大相撲の野球賭博問題をめぐり、ＮＨＫの福地茂雄会長は６日記者会見を開き、１１日に初日を迎える名古屋場所（愛知県体育館）の生中継を取りやめることを発表した。代わりに録画のダイジェスト番組を、取組終了後の午後６時台にＮＨＫ総合とＢＳ２で放送、ラジオも同じ時間帯に取組結果を放送する。

　ＮＨＫは１９２８年にラジオで、５３年にテレビで本場所の中継を開始。一場所を通じてテレビの生中継を取りやめるのは初めて。

　福地会長は理由について「日本相撲協会の改革の方向性について具体的な道筋はまだ立っていない。一方で視聴者から厳しい意見が寄せられている。総合的かつ慎重に判断した」と述べた。また相撲協会に対して「１００年に一度の緊張感を持ち、待ったなしの改革に取り組むことを強く要望する」と注文した。

　ＮＨＫによると、５日までに視聴者から寄せられた意見は約１万２６００件。うち約８６００件（６８％）が中継に反対、賛成は約１６００件（１３％）だった。

　福地会長は野球賭博問題について「反社会的勢力の関与が指摘され、極めて重大で遺憾な事態」と指摘。中止については「不祥事に伴う異例中の異例の措置。今回に限る」との考えを示した。

　相撲協会の村山弘義理事長代行らは６日、東京・渋谷のＮＨＫを訪問し、福地会長らと面会。４日の臨時理事会で、賭博に関与した元大関・琴光喜関と元大嶽親方の解雇などの処分を決定したことや再発防止への取り組みなどを説明し、ＮＨＫ側に名古屋場所の中継を要請した。

　中継をめぐっては、福地会長は１日の定例記者会見で「公共放送なので、やるにしてもやらないにしても責任がある」とし、「国技なので、クリーンで国民に愛されるスポーツであってほしい」などと発言していた。

　日本相撲協会・村山弘義理事長代行「日本相撲協会は、このたびの名古屋場所ＮＨＫテレビ中継中止のご処置を厳粛に受け止めております。協会においては、新生した姿で、名古屋場所を立派に務めるべく、全員一丸となって総力を挙げて取り組みます。みなさまの変わらぬご支援のほど、お願い申し上げます」

　横綱・白鵬「中継がされずに残念です。名古屋場所も目前なので、けいこに集中して頑張ります」

　相撲解説者の舞の海秀平氏（元小結）「全く予想もしていなかった。大相撲の本場所は年６回のお祭りのようなもので、子供のころはテレビの相撲中継を見て、力士になりたいという夢を抱いたものだった。残念としか言いようがない」

　◆ＮＨＫの大相撲中継　ＮＨＫラジオは１９２８年から、テレビは５３年から中継を開始。民放テレビ局も過去にダイジェストとして放送していたが、現在はＮＨＫが独占中継している。ＮＨＫによると、大相撲中継の放送権は現在５年契約。契約金額は明らかにしていない。大相撲テレビ中継の平均視聴率（関東地区、ビデオリサーチ調べ）は、最高が千代の富士の初優勝の５２・２％（８１年１月）。次いで貴ノ花の初優勝の５０・６％（７５年３月）となっている。