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生活保護:大阪・中国人48人申請 これは母の遺志 呼び寄せ残留邦人姉妹が反論

来日の思いを語る林愛英さん(左)と珠英さん=大阪市内で2010年7月4日午後1時2分、平川哲也撮影
来日の思いを語る林愛英さん(左)と珠英さん=大阪市内で2010年7月4日午後1時2分、平川哲也撮影

 中国残留邦人の親族48人が、来日した直後に大阪市に生活保護を申請した問題で、大阪市在住の残留邦人姉妹、林愛英さん(79)と林珠英さん(78)が4日、毎日新聞の取材に応じた。親族を呼び寄せた理由を「日本で家族一緒に暮らすという母の遺志を実現したかった」と語った。【平川哲也】

 48人のうち32人は既に生活保護を受給している。市は入国審査に疑義を唱えており、残留邦人姉妹は「親族3人は仕事を見つけたが、今回の件が問題になって断られた。生活保護目的で来日したと見られとても悲しい」と手を震わせた。

 姉妹は福建省生まれ。父は中国人、母は日本人。1960年代後半から始まった文化大革命では、日本から持って来た母の本や写真は焼き捨てられ、愛英さんは中国人から鉄の棒で頭を殴られた。貧しくて病院にも行けず、傷口に鶏肉を当てて止血したという。

 「いつか日本で暮らそう」と涙ながらに話していた母は、97年に一時帰国したが、DNA鑑定しておらず日本人と認められなかった。99年、死亡した。姉妹は9年後の08年に来日。DNA鑑定で福岡のおばと血縁関係が確定、日本国籍を取得して大阪に移住した。

 1年以上かかって在留資格を得た後、入国期限(3カ月間)の今年6月までに次々と親族が入国。珠英さんの次男(42)は、入国後に区役所を訪れて生活保護制度を知ったといい、受給目的の入国を否定した。生活保護を申請しているが、「早く仕事をして市民として納税したい」と語る。

 現在、市の要請で大阪入国管理局が48人の在留資格を再調査中。愛英さんは「中国では『日本人は帰れ』と言われてきた。やっと家族で暮らせると思ったのに」と声を押し殺した。

 ◇入管再調査、焦点は身元引受人

 大阪入管の再調査の焦点は、48人を扶養するとしていた身元引受人だ。実際には扶養しておらず、入国申請書類に虚偽があれば、在留資格の取り消しもあり得る。

 出入国管理法は「生活上国や地方公共団体の負担となる恐れのある者」は上陸できないと規定。入管によると、48人は親族でない人物を身元引受人とし、その人物の納税証明書を提出していた。引受人の経済状態が悪化して扶養できなくなった可能性もあり、入管は「直ちに扶養が虚偽とは言えないが、入国直後に生活保護申請しており、慎重に再調査する」としている。

 一方、残留邦人の問題に詳しい空野佳弘弁護士(大阪弁護士会)は、「法をしゃくし定規に適用すれば、残留邦人や難民は誰も入国できない。柔軟に運用すべきだ」と話す。【小林慎】

毎日新聞 2010年7月5日 大阪夕刊

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