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天声人語

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2010年7月3日(土)付

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 〈Tシャツの男がS字カーブでUターン〉。アルファベットは形を言い表すのに重宝する。ただ、26字でも間に合わないのが不規則に動くものだ。この時節で思いつくのは、カタツムリと内閣支持率か▼前首相の退陣表明から1カ月が過ぎた。幹事長を道連れにした功で支持率はV字回復し、グラフの続きは高原型、記号でいえば「√(ルート)」になるかと思われた。民主党は「V」の余勢で参院選を戦うはずだった▼ところが、菅首相が消費税10%に言い及んで風向きが変わり、支持率はロシア文字の「И(イー)」を描こうとしている。慌てて低所得層への払い戻しを「口約」するなどバタバタだ。準備不足の政策を選挙戦術で持ち出したツケだろう▼メディアに終日さらされ、菅さんは妙な軽さを見せ始めた。外交デビューのカナダでは、エマージング・カントリー(新興国)と言うべきところをエマージェンシー・カンパニー(緊急会社?)。言い間違いと侮るなかれ。首相のうっかりは国益を損ねもする▼そんな折、今や一兵卒のはずの前幹事長が、マニフェストを守れと執行部批判に出ている。「И」字に高ぶったか、小沢グループは秋の代表選にて一戦交える勢いで、分裂選挙の兆しさえある▼かすむ公約、軽い言葉、派閥抗争。有権者がとうに見限ったあれやこれやの再来は、もはや与党病と呼ぶべきか。疑問だらけの政治に似合う記号は当然「?」である。その形をなぞってみる。上がるだけかと思いきや、くるりと回って真っ逆さま、果ては露と消え……。大丈夫ですか、菅さん。

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