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所長
神浦元彰
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Military Analyst

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2010.07.06

 韓国紙「外資誘致めぐり対立」 張成沢Vs呉克烈 金総書記実妹の夫Vs金総書記の最側近 

カテゴリ北朝鮮出典 産経新聞 7月6日 朝刊 
記事の概要
韓国紙・中央日報は5日、韓国情報筋の話として、金総書記の実妹の夫で北朝鮮国防委員会の張成沢副委員長(64)と、金総書記が最も信頼を寄せる最側近の呉克烈副委員長(79)の間で、外資誘致をめぐる対立が生じていると報じた。

同紙によれば、軍部を基盤に外資誘致を取り仕切っていた呉氏は、昨年2月、北朝鮮の最高権力機関である国防委の副委員長に就任後、「朝鮮国際商会」を設立。昨年7月から最高人民会議の承認を得て、外貨誘致に関する利権を本格的に握り始めた。

これに慌てた張氏は、中国朝鮮族出身の事業家、朴哲●氏を呼び、外資誘致を掲げて「朝鮮大豊国際投資グループ」を設立。朴氏を総裁に任命した。

金総書記は関係部門に対し、「大豊グループの活動を保護するように」との命令を出したという。

情報筋は、「呉氏は自分が主導してきた外資誘致事業に割り込んできた張氏に対し、相当な不快感を抱いている」と指摘。

両者が本格的な権力闘争を繰り広げた場合、金総書記の後継体制にも影響が及ぶ可能性があるとの見方が伝えられている。
コメント
なんらカリスマ性を持たないジョンウン氏(三男)を後継者に決めても、金正日が死亡(あるいは廃人)すれば、党と軍の間で権力闘争が起こることは必至である。

その好例がこれである。今の北朝鮮にとって外貨誘致は国家の最重要な基幹事業である。北で外貨利権を握る者が、北朝鮮の権力を握ると言っても過言ではない。

そこで軍部を味方につけたい金正日は、先軍政治で軍を優遇し、呉克烈に外貨誘致(利権)を与えたのである。

しかし自らの健康不安から、三男ジョンウンを後継者に決め、義弟で党出身の張成沢をナNO2に据え置いた。

軍部にとってジョンウンは金正日ほどの利用価値はない。

金正日は父(金日成)と対日闘争を行った抗日パルチザンの生き残りを優遇することで、軍の指導部から「孝行息子」という言葉で体制保護を得たのである。

金正日が死ねば、軍部はジョンウンから何も得るものはない。しかし党と金ファミリーはジョンウン氏を担いで行くしかないのである。

この差が北朝鮮で権力闘争を生む最大の原因になる。

党が主導権を確立すれば、呉克烈をトップとする軍閥はすべて粛正されるのが北朝鮮の体制である。逆に軍部がクーデターで張成沢をトップとする党の勢力を排除すれば、張閥につながる者は粛正される運命になる。

北朝鮮では後継者問題が最大の政治混乱の要因になるから、金正日が今まで避けてきた体制存続の課題だった。

今後、金正日の健康不安が高まることと比例して、北朝鮮労働党と人民軍の権力闘争が激化するだろう。

64歳の張成沢にとって、79歳の呉克烈の自然死を待つことが出来ない緊迫した事情が北朝鮮の体制内にある。

北朝鮮軍と米韓軍が戦争をすることなど、想像することも無駄である。北朝鮮軍にとっては、軍の生死を分ける外貨利権の方がもっと重要だからである。
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