野球賭博問題で日本相撲協会は4日、名古屋市内で臨時の理事会、評議員会を開き、大関琴光喜(34)=佐渡ケ嶽=と大嶽親方(42)=元関脇貴闘力=の解雇処分を決定した。琴光喜、大嶽親方ともに最も重い「除名」を免れ、琴光喜には功労金を除く、退職金が支払われる。現役大関の解雇は史上初で、2人は角界から永久追放となる。また、野球賭博以外のマージャン、花札賭博に関与した横綱白鵬(25)=宮城野=をはじめとする46人の協会員が公開で謝罪した。
◇ ◇
「解雇以上」が決まっていた琴光喜に解雇処分が下された。現行制度で前例がなく、最も重い「除名」の可能性もあったが、最悪の事態は免れた。臨時理事会では、琴光喜に対しては退職金(約2600万円)が支払われることも決定。功労金は支払われないが、協会からの“温情”とも取れる決定となった。
理事会に出向いた琴光喜は、理事らに野球賭博に関与した事実を認め、事情を説明した上で解雇を受け入れた。立ち去る際は手で何度も顔をぬぐいながらも無言だった。関係者によると、琴光喜はその後、滞在先で号泣…。角界を去ることにショックの色が濃かった。その後、談話を発表し「今さらながら大変なことをしたと反省している。このような処分が出たのはしかたがない」などと心境を明かした。
琴光喜と同じ解雇処分ながら、協会は大嶽親方への退職金の支払いを拒否した。原則的に除名なら退職金は支払われないが、解雇は状況に応じて退職金は支払われる。2人の処遇の差に関して村上泰弁護士は「(野球賭博の)賭け金の大きさと、(協会の事情聴取時の)虚偽の内容の差異です」と説明した。
問題を重く見た協会は、特別調査委員会の勧告を受けて、野球賭博以外の賭博に関与し公表されなかった49人の協会員のうち、未成年を除く46人の氏名を公表。また、3日に理事らを中心にした会合で、野球賭博以外の賭博に関与した協会員にケジメとして謝罪させることを決めていた。
評議員会終了後に未成年の3人を除く、野球賭博以外に関与した横綱白鵬ら46人(親方9人、幕内6人、十両6人、幕下以下16人、行司1人、若者頭3人、呼び出し3人、床山2人)の協会員が会見場に現れ“公開謝罪”。協会員を代表して白鵬は「相撲ファンの皆様に心からおわびしたい」と、頭を下げた。
協会は、野球賭博以外の賭博に関与したものについては名前を公表しない方針だったが、一転して全員の名前を公表。村上弁護士は「社会からの逆風が強いと判断し、このままでは名古屋場所が開催出来ないと判断した」。異例の横綱による“謝罪会見”に至った経緯を説明した。
5日に武蔵川理事長が警察庁に出向き、謝罪を含めて一連の問題について報告し、6日には文科省とNHKを訪問する。2人の解雇という強い姿勢を示し、一連の賭博問題にひとつの“決着”をつけた形だが、相撲界再建には、いばらの道が待ち受ける。