広島−巨人 完投勝利で10勝をあげ、ファンとタッチする前田健=マツダスタジアムで(由木直子撮影)
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◆広島5−1巨人
歓喜のハイタッチを交わし終え、ズボンの右ポケットにウイニングボールを押し込んだ。巨人を相手につかみ取ったその重み、価値は分かっている。お立ち台に上がった広島の前田健は「気持ちいい。最高です」と声を張り上げた。巨人戦の開幕からの連敗を8で止め、自らはリーグトップに並ぶ10勝目をマーク。今季3度目の完投で、4年目にして初めて2けた勝利に到達した。
振り出しも背番号18だった。4月2日、今季最初の巨人戦で敗戦投手になり、そこからチームは王者に負けっ放しの苦い思いを味わった。「巨人に勝てなくて悔しかったので、何とかオレが止めてやろうと」
制球の良さに加えて、3回には抜群の投球センスを見せた。1死三塁、カウント1ボール2ストライク。内海がスクイズの構えに入ったのを見て、チェンジアップの握りのまま外寄りに外した。難しいはずの手元の操作を苦にもせず、内海を空振り三振に仕留めて、飛び出した三塁走者も塁に戻らせない。併殺でピンチを切り抜けた。
9イニングを投げきり、被安打わずか4安打。9回は小笠原からど真ん中の直球で空振り三振を奪うという離れ業も見せた。両リーグ最多得票で初選出されたオールスターを前に10勝にたどり着き、「壁という意識はなかったです」。チームのエースは、球界全体にまで目を配る。「ワールドカップで日本代表は負けたので、これからは野球を応援してください」。負ければ自力Vの可能性がなくなる大事な一戦での快投。成長著しい22歳にとって10勝は、通過点でしかない。 (永山陽平)
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