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きょうの社説 2010年7月6日
◎大相撲賭博で処分 外部の力をもっと借りたい
大相撲の野球賭博問題で、謹慎が決まった日本相撲協会の武蔵川理事長に代わり、元東
京高検検事長の村山弘義外部理事が理事長代行を務めることになった。角界にはびこるあしき習慣の一掃には、外部の有識者をトップに据えるのが一番良い。外部の目を通して、反社会的勢力の徹底排除と、賭け事を習慣的に許してしまう古い体質を根底から変える必要がある。ただ、村山理事長代行の任期は名古屋場所千秋楽までの3週間しかない。外部の有識者 で構成する特別委員会で改革を進め、名古屋場所中に特別委員会の第1回会合を開く予定というが、こんな短時間で、やれることは限られる。改革の手応えがあったなら、そのまま外部の理事長をいただいても良いのではないか。理事12人のうち外部理事が2人だけというのでは、改革も進まないだろう。 角界には閉鎖社会ゆえの悪習が残り、問題が発覚するたびに身内意識で甘い処分を続け てきた。今回の賭博汚染も構造的な問題であり、背後に暴力団の関与を指摘する声も聞かれる。一般の組織なら存立が危ぶまれる事態にもかかわらず、協会幹部の危機感は鈍く、早い時期から名古屋場所の開催を前提として事態収拾を図る動きもあった。元東京高検検事長の代行就任は、今最も適役といえ、今度こそ、甘えと身内の論理を排し、国技再興の道筋を付けてほしい。 米国の野球や欧州のサッカーチームなども、かつては賭け事や八百長事件と深くかかわ り、批判を浴びことがあった。それでも今では失敗を乗り越え、一流企業顔負けの経営管理と販売戦略を持つプロ球団だけが生き残っている。大相撲も昔ながらのやり方では通用しないのは明らかだ。 外部からの理事長代行就任については協会内で反発もあった。理事長職は60年以上、 元力士が務めてきただけに、外部に渡すのは忍びないという思いも分かる。しかし、今一番求められているのは、豊富な経験と優れた見識を持つプロの能力である。古き良き伝統を守りながら、時代に適応していくために、外部の力を積極的に取り込んでいく発想の転換が必要だ。
◎遅れる地籍調査 気になる山林売買の実態
前原誠司国土交通相が、遅れている地籍調査を促進するため、2009年度に同調査を
行わなかった全国の市町村に対して早期着手を求める異例の要請文を送った。最近は、水源林など国土資源保全の観点から山林の地籍調査促進と売買実態の把握を求める声が高まっており、調査のピッチを上げたい。地籍調査はいわば土地の戸籍調査で、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調べ、境 界の位置と面積を測量する。現在、登記所にある公図の半分ほどは測量技術の未熟な明治期のもので、正確さに欠ける。土地取引や災害復旧事業などを円滑に進めるため、国土調査法に基づき1951年から調査が始まったが、市町村の負担が大きいため、歩みは遅い。 国交省の2007年度末のまとめでは、北陸の市町村の大部分は地籍調査に入っており 、調査着手率は富山県93%、石川県89%となっている。しかし、全体の調査進ちょく率は富山27%、石川13%と全国平均(48%)には遠く及ばない。中でも山林地域の進ちょく率は富山6%、石川3%にとどまる(全国平均41%)。 地籍調査に関連して指摘される問題点の一つは、山林売買の実態が十分つかめないこと だ。国交省によると、山間部の土地取引面積はここ10年間で倍増している。ただ、都市計画区域外での1ヘクタール以上の土地売買は知事への届け出が義務付けられているものの、不動産登記の要件ではないため、売買の完全な把握は難しいという。 あらゆる分野で国際的な資源獲得競争が激しい昨今は、外国投資家らが日本の山林の買 い占めに動いているという話も伝えられる。このため、国交省や林野庁も聞き取り調査に力を入れているというが、水資源や木材資源の保全という面からも山林の地籍調査を急がなければなるまい。境界確認ができないため相続した山林がどこか分からず、保全作業もできないといった問題も増えている。 山村部の地籍調査は所有者の高齢化や離村が壁になっており、時間が経つほど困難にな ることをあらためて認識したい。
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