きょうのコラム「時鐘」 2010年7月6日

 あのような欠陥番付を相撲協会は出したくなかっただろう。解雇された大関名や謹慎処分者、退職予定の力士名も載っているのである

が、皮肉なファンもいる。希少価値があるからと、番付入手に意欲を見せている。場所が始まれば、これも希少な空白だらけの星取表が紙面に登場する。空白は角界の黒星を意味し、後世に残るのである

番付は日本社会が生み出した独特の総合評価システムである。明治・大正期の新聞には色々な番付が登場する。北陸の「資産家」「雄弁家」や、地域の「老舗」「料亭」「人気芸者」等々。今見ると、様々な評価と世の栄枯盛衰を示していて面白い

昔も今も、番付の評価は点数でなく理由の説明もない。強いてあげれば大衆の人気と選者の好みだろうか。いわく言い難い総合力で、だれもが納得する順位が出され、勧進元の信頼もまた、この格付けで問われるのである

「番付表」と「選挙結果」は同じとまでは言わないが、似ていなくもない。政治家が大衆にこびても冷厳な目でふるい落とされ、総合点で納得できる結果になる、ということを前提にしての話だが…。