福岡市中央区の健康器具販売会社「毎灸(まいきゅう)」が「病が治る」などとうその説明をして、体を温める温灸器を販売していたとされる事件で、福岡、長崎両県警は5日、特定商取引法違反(不実の告知)の疑いで、同社の女性社長、筒井直美容疑者(38)=同区高砂2丁目=と社員、元社員の計11人を逮捕した。福岡県警によると、同社は昨年10月までの2年半で、九州をはじめ1府21県の約7千人から約21億円を売り上げ、契約者の9割が65歳以上だったという。社内での指示関係や各自の役割などを調べる。
逮捕容疑は、11人は共謀して2008年2月-09年10月、ペースメーカーを装着している北九州市小倉南区の女性(75)のほか、福岡、佐賀、長崎3県の高齢女性6人の家を訪問。別の医療器具メーカーが製造した温灸器の説明書に「ペースメーカーが入っている方は使用しないでください」とあるにもかかわらず、「使っても大丈夫」などと、本来と異なる商品の効能を告げた疑い。
両県警によると、社員らは7人に温灸器セットを16万-37万円で販売。2人は容疑の一部を認めているが、筒井容疑者ら9人は「そんなことを言うわけがない」などと否認しているという。
捜査関係者によると、同社が販売した温灸器具はマットレス型の本体を温め、体に当てて使う。医療用具として1988年に厚生相(当時)の承認を得たが、承認された使用目的や効能は「灸の代用」で、効果は疲労回復や神経痛の改善などにとどまるという。
同社は07年4月設立。パート従業員が電話をかけ「話だけでもさせてほしい」と持ちかけ、相手が少しでも興味を持つと、社員らが自宅を訪問。セールストークを記した独自の「販売マニュアル」を基に、購入を持ち掛けていたという。
国民生活センターによると、全国の消費生活センターには07年度から今年6月末までに、毎灸に関する苦情・相談が計133件寄せられた。
=2010/07/06付 西日本新聞朝刊=