宮崎県の家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」問題で、政府の対策本部は19日、発生地点から10キロ圏内のすべての牛と豚にワクチンを接種した上で殺処分し、10―20キロ圏では早期出荷を促す新たな防疫対策を決めた。対策に伴う農家の損失は国が負担する。対象は同県川南、都農(つの)、高鍋、新富の4町。被害が限定的なえびの市周辺は対象外。国内で口蹄疫ワクチン使用は初めて。感染の疑いのある牛が初めて見つかって20日で1カ月となる口蹄疫への対策は新たな段階を迎えた。
赤松広隆農相は会見で、「目いっぱい踏み込んでやろうという首相の意向。感染抑え込みに全力を挙げる」と述べた。
国と同県はこれまで、家畜伝染病予防法に基づき10キロ圏内の移動制限措置をとってきたが、感染拡大に歯止めがかからないため、全頭処分に踏み切った。20日にもワクチン接種を始める見通し。
ワクチンは感染を完全に防ぐことはできないが、ウイルス放出を抑制する効果がある。ワクチン使用で感染拡大の勢いを止め、埋却用地や獣医師確保のめどが付き次第、殺処分を進める。
殺処分の対象は牛約5万頭、豚約15万5千頭の計20万5千頭。牛1頭につき60万円、豚1頭につき3万5千円程度を農家に支給する。費用は2010年度予算の予備費を充てる。経営再開後は別に、支援金を交付する。
10―20キロ圏では、出荷基準に満たない家畜の出荷を求め、本来の価格との差額を補てんする。対象は牛約1万6千頭、豚約1万5千頭の計3万1千頭。早期出荷後は新たに牛や子を育てず、家畜数をゼロにして感染を止める緩衝地帯とする。
これまでに殺処分した家畜には同法に基づき評価額の8割が支給されるが、個別の評価額が確定する前に仮払いで対応し、農家の負担軽減を図る。同県が負担する残り2割も、国が特別交付税として全額補てんする。
不足している獣医師を50人、防疫措置に携わる自衛官170人を追加派遣することも決めた。
=2010/05/19 西日本新聞=