2010年5月10日 12時17分 更新:5月10日 13時9分
【ブリュッセル福島良典、ロンドン会川晴之】欧州連合(EU、加盟27カ国)は10日未明(日本時間同日午前)、ブリュッセルで開いた緊急財務相理事会で、ギリシャ財政危機の他国波及を防止するため、資金繰りの悪化したユーロ導入国を対象に総額最大7500億ユーロ(約90兆円)を融資する新たな支援制度の創設を発表した。また、欧州中央銀行(ECB)は10日未明、ギリシャ危機の拡大を阻止するため、ユーロ圏の国債や民間債を買い取る措置を初めて導入すると発表した。
ギリシャ危機以降、深刻化するユーロの信用不安の解消のため、EUとECBが異例の包括策を打ち出した格好だ。
新支援制度は総額5000億ユーロのEUの「欧州安定化メカニズム(ユーロ防衛基金)」と、2500億ユーロの国際通貨基金(IMF)融資の2本立て。欧州安定化メカニズムは、(1)EUの行政府・欧州委員会がEU予算を担保に市場から調達した600億ユーロ(2)ユーロ圏諸国が分担する4400億ユーロ--から成る。EU予算を担保に資金調達する従来の仕組みでは、調達額に限度があるため、ギリシャ支援と同様、各国の協力を得て、単一通貨ユーロの防衛に政策を総動員する。
新制度は「欧州版IMFに向けての一歩」(バロワン仏予算相)とされ、ポルトガル、スペインなどに、ギリシャの影響が波及してユーロが崩壊の危機に陥るのを防ぐのが狙い。新制度を適用して融資を受ける国々には、財政赤字削減に積極的に取り組むことを融資条件に据える。
EU条約は加盟国に対する金融支援の強行発動を原則として禁じているが、自然災害や「制御不可能な例外的な事態」に陥った場合には特例として認めている。非ユーロ圏の英国などが「新制度は禁止されている金融支援にあたる」などと難色を示したため、調整は10日未明まで11時間に及んだ。
ホワイトハウスなどによると、ギリシャ危機によるユーロの信用不安が世界同時株安を招いた事態を踏まえ、オバマ米大統領は9日、メルケル独首相、サルコジ仏大統領と相次いで電話協議し、「EU諸国が市場の信頼を確立するための措置を取る必要性」で合意した。
一方、ECBは国債や民間債券の買い取り措置の導入を決めた。市場や一部首脳や欧州委員会からも、ポルトガルやスペインなどへの危機拡大を防ぐため、ECBに国債購入の検討を促してきたが、国債購入は、ECBの資産劣化を招き、共通通貨ユーロの信認を損なう恐れもあり、ECBは一貫して導入に否定的な考えを示してきた。
しかし、ポルトガルなど深刻な財政危機に陥った諸国の国債は、市場で買い手がなく暴落が続いている。危機の根を断つには、ECBが国債などの買い手となり、市場の不安を抑制する措置が不可避と判断した。