EU:「ユーロ防衛基金」創設決定へ 13兆円規模で調整

2010年5月9日 21時0分 更新:5月10日 1時1分

 【ブリュッセル福島良典、ロンドン会川晴之】欧州連合(EU)は9日、ブリュッセルで緊急財務相理事会を開いた。ユーロ導入国がギリシャのように財政危機に陥った場合、金融支援を行う新たな基金「欧州安定化メカニズム(ユーロ防衛基金)」創設を正式に決める見通し。詳細は理事会後の会見で公表するが、関係筋によると、新基金は08年のリーマン・ショック後にハンガリーやラトビアを支援した際に使った基金を発展・拡充させて創設。資金規模を最大1100億ユーロ(約13兆円)とする方向で調整している。

 ギリシャ危機が日米欧の同時株安など世界に波及した事態を踏まえ、EUは10日の東京などの株式・為替市場の取引開始前に、新基金創設などユーロ防衛策を打ち出す考えだ。ただ、市場は欧州中央銀行(ECB)によるユーロ圏諸国の国債買い入れなど、より強力な措置を求めており、今回のEUの対応策が市場の安定化につながるか予断を許さない。

 ユーロ圏諸国と国際通貨基金(IMF)は先週、総額1100億ユーロのギリシャ支援策をまとめた。しかし、市場の動揺は収まらず、株安とユーロ安が加速。このため、7日のユーロ圏緊急首脳会議は、ユーロの安定と信認維持に向けた新基金創設で合意した。これを受け、9日のEU財務相理事会は新基金の詳細を議論した。関係筋によると、現在500億ユーロの財源がある非ユーロ圏向け融資枠に、EUの行政府である欧州委員会が市場から調達した600億ユーロ程度を追加。資金枠を総額1100億ユーロ規模に拡充したうえで、融資など支援対象をユーロ圏を含むEU27カ国に広げた新基金に衣替えする方向だ。

 さらに、市場の混乱などで一時的に資金調達が難しくなった国に対して、加盟各国やECBが保証して資金調達を支援する枠組みも検討されている模様だ。

 ただ、ポルトガルやスペインなどへの財政危機の波及の懸念が高まる中、市場では、ECBによる各国の国債買い入れなど、より迅速で強力な措置を求める声が強い。また、ユーロ圏常任議長のユンケル・ルクセンブルク首相が「ECBも貢献し、水も漏らさぬユーロ防衛線が必要」と強調するなど、ユーロ圏の一部首脳や欧州委員会内からもECBに国債買い入れの検討を促す声が出ている。

 しかし、物価安定を最重視するECBは、08年以降の金融危機対応でも国債買い入れを見送っており、ECBが今回のユーロ防衛でどのような協調策を打ち出すかは不透明な状況だ。

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