11日投開票される参院選長崎選挙区(改選数1)で、毎日新聞は、2~4日に実施した特別世論調査とこれまでの取材の結果を総合的に分析し、中盤情勢を探った。今のところ、再選を目指す民主現職の犬塚直史氏と前知事で自民新人の金子原二郎氏が激しく競り合っており、予断を許さない状況となっている。みんな新人の中嶋徳彦氏、共産新人の渕瀬栄子氏は2大政党との対立軸を打ち出すが、伸び悩んでいる。ただ、有権者の3割弱が態度を決めておらず、終盤の展開次第では情勢が変化することも予想される。【阿部義正】
調査はコンピューターで無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で行い、長崎選挙区の有権者746人から回答を得た。
犬塚氏は「時計の針を元に戻してはならない」と訴え、昨年の衆院選に続く、民主党勝利をアピールする。事業仕分けをさらに進めて「公会計法」制定による国の税金の無駄遣いの根絶を約束。菅直人首相が「10%」と言及した消費税増税には「順番が違う」と指摘している。
連合傘下の労組の組織票を支えに、民主支持層の7割を固める。しかし、無党派層には浸透が今ひとつで、金子氏にリードを許す。公示後、閣僚を次々と投入し、支持拡大に懸命だ。男女別では、20~50代男性の支持が高い。衆院選挙区別では、大票田・長崎市の1区で一歩リードするほか、国営諫早湾干拓事業の開門調査で揺れる諫早市などの2区でも他候補を上回る。陣営は「主戦場となる長崎市でさらなる票の上積みが必要」と引き締める。
金子氏は3期12年の知事時代の経験と実績を強調。野党ながら、医師連盟や建設業協会など約700団体の推薦を得て、組織選挙を展開している。同時に「首相が交代したのに予算委員会も開かないのはおかしい」と政権批判を繰り返し、民主党の参院過半数阻止を訴える。
抜群の知名度を生かし、自民支持層の8割強、後援会レベルで選挙協力する公明支持層の7割弱を固める。民主、みんなの支持層にも食い込み、無党派層にも浸透する。男女別では、60代以上男性、40代以上女性の支持が高い。市郡別では、郡部で他候補を引き離し、市部でも犬塚氏に迫る勢い。衆院選挙区別では、大村市と離島の3区でリードし、地盤でもある県北部の4区でも優位に立つ。自民支持率が低迷する中、リードを許す1区などで巻き返せるかが注目される。
中嶋氏は自民党を離党し、公示2週間前に出馬を表明した。県内に組織はなく、街頭演説一本で選挙戦を展開する。みんな支持層の4割強を固め、支持拡大を図る。市郡別では、市部で支持が高い。
渕瀬氏は4回目の国政挑戦。「国民の暮らしを大切にする政治を」と消費税増税には断固反対を唱える。共産支持層の7割を固めるが、あまり広がりは見られない。唯一の女性候補として女性票獲得にも力を入れる。
◆投票に行くか
「投票に行くか」の設問には、男性の8割強と女性の7割弱が「必ず行く」と答え、男性の1割強と女性の2割が「たぶん行く」。年代別では、「必ず行く」と答えた人が20~30代で7割強となった。逆に40代は7割弱と最も少なかった。
投票に「必ず行く」と答えた人のうち、4割弱が民主、2割が自民支持層で、2割強は「支持政党なし」だった。「たぶん行く」と答えた人の3割弱が民主、1割弱が自民支持層だが、5割強が「支持政党なし」で、無党派層の動向がポイントになりそうだ。
一方、「たぶん行かない」と答えた人の2割強は民主支持層で、5割弱は「支持政党なし」。また、「行かない」と答えた人の4割弱が共産、2割弱が民主支持層だった。
菅内閣に対しては、投票に「必ず行く」と答えた人の5割が「支持する」。3割が「支持しない」だった。
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犬塚直史 55 党県常任顧問(1) 民現=[国]
金子原二郎 66 [元]知事 自新
中嶋徳彦 35 [元]佐世保市議 み新
渕瀬栄子 54 党県事務所長 共新
〔長崎版〕
毎日新聞 2010年7月5日 地方版