第22回参院選(11日投開票)で、毎日新聞は2~4日の3日間、電話による世論調査を実施した。調査結果に高知支局の取材を加味し、高知選挙区(改選数1)の中盤情勢を探った。民主現職の広田一氏(41)が知名度を生かして一歩リード。自民新人の高野光二郎氏(35)が組織力を駆使し、追い上げる展開となっている。無所属元職の田村公平氏(63)は、自民支持層や無党派層への食い込みを見せ、共産新人の春名直章氏(51)は共産支持層をほぼ固めた。無所属新人の藤島利久氏(48)は支持拡大に努めている。一方で、約2割が投票先を決めておらず、最後まで予断を許さない情勢となっている。【千脇康平、黄在龍】
◆選挙区
民主の広田氏は1期目の6年間、年200回を目標に県内で街頭演説を行うなどしており、市部、町村部とも約3割の支持を集め、幅広く浸透している。民主支持層の8割を固め、公明支持層や無党派層の1~2割にも食い込んでいる。男女とも30~60代と幅広い年齢層で支持が厚いものの、20代のみ浸透が鈍く、今後の課題と見られる。また、投票に「必ず行く」「たぶん行く」と答えた人の3割を取り込んだ。
自民の高野氏は、自民支持層の7割を固めた。公明比例候補の後援会と政策協定を結んだ自公協力が功を奏し、公明支持層の6割を押さえている。35歳という若さで党の世代交代をアピールし、男女とも20代からの支持が目立つ。ただ、自民支持層は一定数が田村氏に流れ、さらに投票先を決めていない支持層もおり、組織の引き締めで票の上積みを図りたいところ。町村部では、広田氏に肉薄する勢いを見せている。
自民党県連が実施した候補者予備選に反発、無所属で出馬した田村氏は自民だけでなく、公明、民主支持層の1~2割、無党派層の2割まで取り込んでいる。また、男女ともほぼすべての年齢層で一定の支持を見せている。参院議員を過去2期務めた実績や、災害対策などでの県内への貢献度が、党派を超えた評価につながっているとみられる。市部での浸透度が比較的高く、これから町村部でいかに支持者を増やしていけるか。
共産の春名氏は、普天間基地問題での政府の対応や、大企業を優遇する税制を批判、共産支持層の9割を固めている。また、民主支持層にも若干の食い込みを見せる。無党派層の取り込みは他候補に遅れを取っているものの、消費税増税反対の立場を明確に打ち出しており、存在感を示す。50~60代の男女から一定の支持を得ているが、20代には浸透し切れていない。票の伸びが期待できる高知市などでの若い層への働きかけが浮揚のカギか。
無所属の藤島氏は浸透できていない。
◆投票行動
投票に「必ず行く」と答えた人は73%、「必ず行く」と「たぶん行く」の合計は92%で、ともに前回より1ポイント増えた。前回の投票率58・40%を若干上回る可能性もある。
年齢別では60代の82%が「必ず行く」と答え、最も高い。20代は最も低く36%だが、40%が「たぶん行く」と答えている。「行かない」では、20代が17%と最も多く、若者の関心の薄さがうかがえる。
また、各政党支持層の大半が「必ず行く」と回答。支持政党がない無党派層も90%が「必ず行く」「たぶん行く」と回答しており、無党派層の投票行動が選挙の行方に影響を与えそうだ。
◆比例代表
比例代表では、民主が約8割、公明と共産が8割強の支持層をそれぞれ固めている。自民は約7割にとどまっている。選挙区の自民・高野陣営が「比例は公明へ」と呼び掛けているが、自民支持層の内で、「公明に投票する」と答えた人は2割にとどまっている。自公の選挙協力で公明がどれくらい上積みできるかが一つの鍵となる。
市町村別では、民主が市部で約3割の支持を集め、2割の自民を引き離しているが、町村部では自民が民主をリードしている。
◆連立政権
「民主党の単独政権」を望むのが21%と最も多く、次いで「自民党との大連立」が13%。「国民新党との連立」は9%だった。
年代別にみると、「単独政権」が20代で24%、30代で25%と若年層を中心に支持を集めたのに対し、「自民党との大連立」を支持するのは70代以上で17%、60代は17%と、高年層に集中した。
また、支持政党別でみると、「民主党の単独政権」支持層の38%が民主党を支持している。一方、「自民党との大連立」の支持層で、民主党を支持するのは10%にとどまり、自民党支持が29%となった。
◆政党支持率
政党支持率は、民主23%▽自民19%▽公明、共産各5%▽みんなの党4%--などの順。
民主は前回参院選(07年)に比べ5ポイント下落。自民も4ポイント減らした。共産も3ポイント減。公明は変わらなかった。新党であるみんなの党の健闘が目立ち、既成政党に失望した有権者の期待が寄せられている。
民主は県内全域で、幅広い年齢層から支持を集め、自民は特に20、30代の若者層と70歳以上の男性から支持を得ている。
一方で、「支持政党なし」の無党派層は前回と同じ25%で、“最大勢力”となり、選挙結果を大きく左右しそうだ。
◆菅内閣
菅内閣を「支持する」が37%、「支持しない」が36%と、評価はくっきり分かれた。「支持する」の内訳は、民主支持層55%、自民10%、公明4%の順。民主支持層の84%が「支持する」と答えた。「支持しない」は自民が31%を占めて、公明11%、共産7%と続く。「支持しない」は民主支持層の6%にとどまった。
候補者別では、広田氏支持の74%、田村氏支持の36%、春名氏支持の27%が「支持する」と答えた。一方、「支持しない」のトップは高野氏支持の65%。春名氏支持が45%、田村氏支持が33%と続いた。
◆消費税
争点の一つに浮上した消費税引き上げ問題に対しては「反対」が51%(男47%、女55%)で、「賛成」の37%(男43%、女31%)を上回った。
賛否別の投票先をみると、「賛成」する人は44%が広田氏、18%が高野氏だった。逆に「反対」する人は、28%が高野氏、24%が広田氏。明確に反対を訴えている春名氏は田村氏の13%より低い12%にとどまった。
支持政党別にみると、公明、共産支持層の78%、自民の57%が「反対」。民主の34%、無党派層の59%も「反対」と答えた。「賛成」は民主支持層の60%、自民の36%など。無党派層の32%が「賛成」と回答した。
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田村公平 63 [元]建設政次官 (2)無元
高野光二郎 35 [元]県議 自新
広田一 41 国交委理事 (1)民現=[国]
春名直章 51 [元]衆院議員 共新
藤島利久 48 市民団体代表 無新
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2~4日、コンピューターで無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で、県内の有権者691人から回答を得た。
毎日新聞 2010年7月5日 地方版