神様が普通のテンプレに飽きたようです(仮)
今の俺の状況をあらわす言葉があるとすれば
「テンプレ乙」
そう、なんてことは無い状況だ。
ただ単に、目の前に後光のさすよく分からない存在がいて、そしてついさっき俺は死んだらし
い。ついでにいうと今の俺の状態は魂魄体らしい。
よくテンプレでは、時には土下座するほど誤ってくる「間違っちゃった♪」系と、我の暇つぶ
しに付き合えという「唯我独尊」系などがいるが、どうやら俺の場合後者だったらしい。
神様なんていうのは威厳を保たないと信仰も何も無いからそれくらいがちょうどいいと個人的
には思う。
まぁ、俺の個人的な解釈などどうでもいいが、先ほどから状況を把握するために聞き流してい
た目の前の存在の話(かなり投げやりな口調だった)からすると、ちょっとしたチートはして
やるから別の世界で頑張って我を楽しませろ、ということらしい。
しかし、チートっていうとどこぞの弓兵だとか英雄王だとか、○○の何倍の魔力だ気力だ、某
使い魔のルーンの力などが定番だが……この神様その辺を知っているらしく、ちょっと趣向を
凝らした方法で力を選ばせてくれるらしい。
これからその説明が始まるみたいだ。
「……ふん、漸く状況が飲み込めてきたらしいな。
先ほどの上の空の表情がマシになったではないか。
まぁ、これから話すことを聞き逃せば、今後の永き時にわたるかもしれない寿命で大損する
ことになりかねんからな。
その辺をしっかりと押さえてくるあたり、お前は我を楽しませてくれるかも知れんな」
どうやら先ほどまでのこちらの状態はばればれだったらしい。
どうでも良さそうに話していたのはこちらの態度が悪かったようだ。
気になる発言もあるし、まじめに話を聞くか。
「話がずれたな。
先ほどの話の続きだが、お前に与える力はこれから我のいうルールに基づき選ばさせてやる
。
質問はすべてが終わってから言え。気が向いたら答えてやる。
命を持つものは自分で考え、自分で決断し、自分で行動してこそだからな。
他の存在から自分の知りたい情報をすべて教えてもらってからの判断なんぞ面白みも何も無
い。
では説明に移る。
能力はポイント制だ。持ち点は100ポイント。
最小消費ポイントは5ポイント、なにかを条件付けをする度に消費ポイントが2倍になって
いく。
たとえば、「お前の父親並みの筋力」という力を望めば、「お前の」・「父親並みの」・「
筋力」を望むことになり、消費ポイントは 5×2×2となり20ポイントとなる。
さらに条件指定としてお前の世界で空想の人物などとされるものを例に挙げた場合、初期の
消費ポイントが3倍になる。
また、「力」を望むとした場合、何の「力」になるかは分からん。
「筋力」かもしれんし「魔力」あるいは「神通力」かもしれん。
更に補足するとそれが「どの程度」の力かもわからん。ミミズ並みかもしれんし、お前の世
界で空想の存在とされるものたちの数倍の力かもしれん。
その「力」の種類にしろ「力」の強さにしろ、お前の存在の再構築する直前にダイスを作っ
て決める。
念のために言っておくが、我を比較対象にするような不遜をすれば……いや、言わなくとも
わかるか。
説明は以上だ。お前の望む力をいってみるがいい。」
ふむ、なかなか難しいな。
とりあえず、最初に思い浮かぶ能力は……
「質問してもよろしいでしょうか?」
「いってみろ」
「では質問させていただきます。
例えば「存在最強の力」が欲しいというのは可能でしょうか?」
「その条件で能力を作り出すことは可能だ。
ただし、それをお前に付与することはしない」
なんだそれ?できるのにやらないとか我侭か?
「それは何故でしょうか?」
「そういった存在は他の世界で見たことがある。同じものはつまらん」
パクリはよくない…か。
まぁいい。ならば自分の望む自分だけの能力を考えてみようじゃないか!
まずは条件の確認だ。
目の前の神様の説明だと、力の種類と強さはこちらで決めなければ運次第になる。
『存在』という漠然としたものでも条件としてはOK。
ただし、比較対象を指定していないから『存在』が何になるかは運次第だが。
力の数及び力がこの段階で限定されるなら、後々増やせるような発展性のある能力にすればど
うだ。
楽しませろという前提があるのだから、これから行く世界にも力をもった存在は多くいるはず
。
それに対抗でき、うまく上をいく能力があれば俺の望む人生を送ることができるだろう。
となれば、俺の望む能力は……
「決まったか?」
視線を上げるとこちらを楽しげに伺っている神様がいた。
俺が決めるのを待っていたようだな。
「はい。決まりました。
俺の欲しい力は
【空想を現実とする能力(20P)】【望む力を奪う能力(40P)】【最後のダイスを操る能力
(40P)】
以上の3つです」
言い終わると同時に、目の前の存在からの圧力が劇的に増す。
まるでこちらの存在ごと磨り潰し、消し去ってしまうかのような圧力。
「ほう。前2つの能力についてはいいとするが、3つめの能力。本当にそれを望むのか?
寛大な我がもう一度わかりやすく聞いてやろう。
お前は、我の戯れの一部でありながら、我の行動に干渉しようとするのか?」
やばいやばいやばいやばいやばい!!!
地雷を踏んだ! 我を通そうとすれば、殺されるっ!!
「……もうし…わけあr………ませ……ん。
先…ほど……の願い…は………撤回……します」
しゃべることさえ難しい圧力の中、必死に声を出す。
と、数秒後 圧力が消える。
はあぁっ!!はあぁっ!!はあぁっ!!はあぁっ!!はあぁっ!!
今の俺は魂魄であるはずなのに、今まで経験したことの無いような酸欠状態になったかのよう
に酸素を求める。
あまりの苦しさに立っていることさえできず、片ひざをつく。
甘く見ていた。
どこぞのネット小説のように揚げ足を取ろうとして、まさかここまで強く反応されるとは。
本当に唯我独尊な神様のようだ。
「一度だけ許す。
さて、残りのポイントで願いを言ってみろ」
寛大な言葉とともに俺に視線を向ける神様。
ただし、その視線は次につまらないことを言ったら、今後一生、魂の続く限り後悔し続けるく
らいのことになるといっているように見えた。
今の反応からすると、俺を再構成する前に、あるいは神様が直接的に行動することに対する干
渉はNGだということだろう。
ならば再構成後に有利になる力にするしかないか。
「私の望む残りの能力は【運を自在に操る能力(40P)】です」
先ほどの圧力の影響で片ひざをついた状態で能力を訂正する。
今度は禁忌にNG項目に触れなかったようだ。目の前の神様が鷹揚にうなずく。
「ふむ。いいだろう。
お前の望む3つの能力を付与してやる。
せいぜい能力が規模が大きくなるように祈っておくんだな」
そういうと、神様は俺に向かって手を向けた。
動く力も無い俺はその手を見ていることしかできない。
そして、その手から光が出ると同時にその光は俺を包み込んだ。
「本来ならばダイスの結果を見せてから再構成してやるところだが、先ほどの発言に対し無罪
とするのも詰まらんからな。
結果を見ることなく、先に無垢な魂魄状態になっていろ。
次に意識が覚醒するのはおそらく再構成後だろう。」
それはまずい!
何がどの程度できるかも分からずに知らない世界に行くのは自殺行為だ!
それにどこに行くかもまだ聞いていない。
光はだんだんと強くなっていく。時間は無い!
「お待ちくださいっ!
それではあなたの望むような面白い結果を出すことができないかもしれない!
せめて自身の能力の把握はさせて頂けないでしょうか!?
それにこれから行く世界についても聞いていない。
何かしらの情報は頂けないでしょうか?」
目の前の神様は俺の必死な嘆願に対し皮肉気に哂った。
「ふっ。
お前が望む結果を出せねば、新しい奴を呼べばいいだろう。
必死に状況に打ち勝つ決断・行動をしてみせろ。
先に行ったはずだ。
『他の存在から自分の知りたい情報をすべて教えてもらってからの判断なんぞ面白みも何も
無い』とな。
まぁ世界の名前くらい教えてやる。
『巡る世界』だ。
お前が良い人生をまっとうすることを期待する。ではな。」
その言葉を聞くと同時に、声も出せぬまま俺の意識は白く染まった。
SIDE 神?
「さて、次はダイスを振るとしようか」
無垢な魂魄状態になった矮小なる存在を視界からはずすと手の中にダイスを呼び出す。
「今回のおもちゃはどうなるかな?」
先ほどの問答を思い出す。
こちらの会話の穴をつき、自らの欲望をなそうとする姿は不敬ではあったが、それなりに頭が
回りある程度の度胸があるということだ。
もっとも、その要望はプレッシャーに負けてかなのか撤回したが。
あのまま我を通そうとしていれば、また違った楽しみが生まれただろう。
あの存在してみれば何をしてもでも避けたいだろう'戯れ’になっただろうがな。
そういう意味では引き際も言いといえるか。
「ふっ。今までの奴らはほとんど面白くなかったからな。
今回は少々期待してもいいだろう。」
その言葉に返すものはここにはいない。
哂った表情のまま、一人ダイスを振るう。
………カラン…カラン…
「ほう。このような能力になったか。
もう少し広く浅い能力になるかと思ったが予想が外れたな。くっくっくっ…」
まぁいい。早速予想を裏切ってくれたのだ。
少々酷な条件でスタートしてやろうかと思ったが、ちょっとした能力のヒントくらい与えてや
るか。
そう思考をまとめると、放置していた魂魄に力を込め次元の扉を開く。
次元の扉は開かれると徐々に魂魄を引き寄せる。
扉を通過すればその先はもう異世界だ。
その様子を眺めながら、その場にいる唯一の意識をもつ存在は哂いながら言葉を紡ぐ。
「さて、名も知らぬ矮小な存在よ。
せいぜい我を楽しませてくれ。」
答えなど無いことはわかっている。
これは僅かでも期待できる存在に対する激励のようなもの。
―――精々足掻け、そうすればあるいは届くかも知れんぞ。お前の理想に―――
そうしてひとつの魂魄はその場から消えた。
あとがき
はじめまして、サボり癖です。
このご時世のせいなのか、はたまた只の引きこもりであるせいなのか、暇だったので普段の妄
想を文章にしてみました。
理由が理由なのでチラ裏です。
とりあえず、コンセプトとしては考える主人公ですかね?
普段は報告書みたいなものしか書いていないので、こういうのは新鮮ですね。
書き方、描写方法等で改善案などありましたら指摘してくださると有難いです。
では、PV・感想次第ですが続きがあればまた会いましょう。
ついつい最後に厨二的な台詞を入れてしまった。
これに意味は無い、、、はず?ww