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2010-07-03 飲みニケーションは押しつけーション? このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

タイトルがなんか80年代洋物ポップスの邦題っていうか、70年代の読み切り少女漫画っていうか、お前ナメとんのかみたいな押韻優先のアナクロ陳腐チョイスですが、僕としてはかなり真顔です。

それと、twitter発の話題を踏み台にして、勝手な自説をはてなダイアリーに書くのもどうかなと思ったんですが、わりと身近な話題でもあったので、こっちのホームで書いちゃう失礼をあえて。あと、長くなります。結論は、最後の一文のみなので、お急ぎの向きはそちらに。

 

 

■僕の話をします。

僕は、酒が大好きです。そして、飲みます。馬鹿かと言われるほど飲みます。さらに、たまに、言われるだけじゃなくて本当に馬鹿をやらかします。

かといって、飲み会ならなんでもいいってわけじゃないです。特に、急な飲み会は苦手です。サラリーマン時代も、「今晩いっとく?」的なお誘いはよく断ってました。だから、職場でも「あいつは独身でよく飲むけど、付き合いはあまりよくない」で通ってました。べつにそれで出世が遅れたり、仕事が滞ったこともありません。社内身内へのコミュニケーションと、社外仕事関係のコミュニケーションが別なのは当たり前。真夜中は別の顔。

 

それでも、すごく上の方の上司から「おう。今晩ちょっとつきあえ。飲みながら話したいことあっから」と言われて「嫌っす帰るっすマクロスの深夜再放送見るっす」とも言えず、苦笑い付きで「いやーこわいなあーいい話だったら喜んで付いてきますケドー」みたいなマウンティングで下になった猿になることもありました。そんな席、どんだけコミュニケーション能力があったって、嫌なもんは嫌ですよ。相手に注ぐ、向こうは気まぐれで返杯する、なんでこんなおっさんと間接キス?みたいな情けなさと、女将さんに子供扱いされることの情けなさで、もうね、今思い返しても嫌ですよ。

 

その後サラリーマンを辞めて、小さいながら会社を切りまわし始めると、お酒の席は断るとか断らないとかじゃない、生活の一部になってきました

営業系の自営業にとって、酒の席で本能に限りなく近いところでおつきあいするのが、商売というかオフィシャルな自分を売り込むのに一番いい手段になるからです。たまに、お酒の相手が自分をさらけ出しすぎて、実は僕と同類だったことに気付くなんてどうでもいいオマケもついてきますが

 

だから、飲み会が職場や仕事上のコミュニケーションの手段になっていることについて、まったくナンセンスでありかつ唾棄すべきイベントでありかつやりたければ黙ってひとりでやれとも思いません。

少なくとも、酒が飲める同士である、という前提において。

逆に言えば、酒が飲めなければチャンスがなくなるような職場や仕事については、酒が飲める者だけの間で完結しておけばよろしい。飲めない飲みたくない者に無理強いしてまでチャンスの押し売りをしなさんな、と思います。

 

 

■飲みニケーションは有効なのか。

有効か否かと問われれば、有効ですよと答えます。「ただし、場合による」が付きますが。*1

お互いに飲めるし、飲むことが好きな人にとっては、お互い簡単に共犯関係になれる手段なんですね、お酒って。

僕は個人的に、職場の知らない仲が早いとこお互いに打ち解けるのに一番有効なのはお風呂だと思ってます*2。これ、海水浴でも代替化。次いで、職場での徹夜仕事*3、お酒はその次くらい。

 

ちなみにこれは、組合時代に管理職から相談を受けることが多かった問いでもあります。

部下を酒に誘うんだけど、どうもうちとけないんだよな」という問い。

これには、よくゴルフに喩えて答えてました。オタクガンダムで喩えるといいように、おっさんにはゴルフで喩えてやるのが一番です。

一緒に楽しもうと思ってゴルフに誘ったけど、相手が断ったってことは、どういうことだと思いますか?」って聞けば、「ゴルフしたことないのかな。ていうか、やるかやらないかくらいあらかじめ聞いとくよ」と素直に返ってくるんですよ。

ところが、「一緒に飲もうと思って飲み会に誘ったけど、相手が断ったってことは、どういうことだと思いますか?」と、酒の席の話でその問いかけをやっちゃうと、「なんか俺に含むとこでもあるんかなあ」なーんてことになってしまいがちです。

飲み会を断っただけなのに、「あいつ、俺のことよく思ってねーんだな」なんて被害妄想が立ちあがってしまう。さらに「こんなことで俺を悩ますなんて、あいつコミュニケーション不全なんじゃないの?」と進んでいく。

そこで「ひょっとして彼、お酒が飲めないんじゃないですか?それか、お酒が嫌いなのか」と水を向けでもすれば、「じゃあ体質だってそう言えばいいじゃん。いや、だって酒の席ったって、上司と飲むわけじゃないか。それをさあ、自分が飲めないからってあからさまに嫌な顔するなんて、そりゃ会社員としてさあ」みたいな抵抗が出てきちゃうわけですよ。まるで今回のように。

 

理由を言わないと詰る前に、まず、先に聞きなさいよと僕なんかは思いますよね。会って間もない、会社に入って間もない、右も左も知らない人だらけの新人相手に、「ねえ、君、お酒はどう?飲める?別に飲めなくてもだいじょぶなんだけど、今度歓迎会したいからさ。お店、酒出す店にしてもそれにあわせようと思って」くらい、どうしてあらかじめ聞かないんでしょう。アクションを起こす自分からそれを聞かんといて、勝手に押し進めた挙句に断られたからって相手のコミュニケーション能力を詰るのって、典型的な「おいあれ」で事足りる家父長バリバリの親父文化じゃないですか。そんなことは、家族くらい濃密な関係になってからチャレンジすればよろしい。

 

 

■なぜ、飲みごとの話になると、断っちゃいけないなんて空気が立ち上がるのか。

それは、飲みニケーションに過度な期待を持ちすぎてるからだと僕は思ってます。

 

ほら、よくあるじゃないですか。上司が怒って、それがちょっと感情に走りすぎちゃって、職場のみんながチラチラ怒られた人の方を見ちゃうーみたいなことがあった後、その上司が帰りがけに「おい、みんな、今日は飲み行くぞ。○○(怒られた人)の分は、俺の奢りな」みたいなこと。

これ、断れないですよね。ていうかそもそも有無を言わせてないですよね。ここで「いや、私は結構です」なんて言おうもんなら、周囲があわてて「いやお前せっかく上司がああ言ってんだから」とか「角立てんなよー、お前は席についてるだけでいいんだからさあ、な?な?」とか言いだしちゃって、「いや、オフになってまでなんで俺のこと怒鳴り散らしたおっさんと飲まなきゃいかんねん」なんて結構当たり前なことが通りにくくはありますよね。

言いすぎたなと思えば、就業時間内に「ごめん、僕が言いすぎた。でも、僕が怒って君が謝罪したことそのものについては、間違いだとは思っていない。そこはよくかんがえてほしい」とでも言えばいいんです。でも、それがどうにも気恥かしくてできないから、飲みニケーションを借りようとする。だから、それが通用しない飲めない相手に相対すると、「お前、なんで俺とのコミュニケーションを閉ざそうとすんだよ。そんなんじゃ、やってけねえぞ」と、なる。やってけねえのはお前の方だ、と僕は思いますが。

 

でもね。それって、ゴルフなんてしたこともない人に「ゴルフいこーぜー。なにー?いかねー?お前社会人だろー。そこはゴルフできなくても行くって言えよーったくよー」と言うのと同じなんですよ。*4

要は、自分の土俵に相手を引きずりこんで、酒飲んで楽しい中での無礼講なんて自分本位の幻想を押しつけているだけ。飲んで無礼講なら、飲む前に断る無礼の何が悪いのかって話なんですけどね。

 

 

■とはいえ、飲みニケーションが必須な世界もある。

同業者との酒席はそうでもないんですが、異業種他社との会合、特に商工会議所とかJCとか各種任意団体系にどっぷりハマってる層との間だと、お酒はマウンティングの触媒になるので一般常識とは乖離して、さらにややっこしい話になります。

 

いますよね。「君、僕の杯が受けられんのかね」とか、佐分利信みたいな声で恫喝してくる人。「いや、私本日車でお邪魔しておりまして」なんて言おうもんなら、「なに、それはいかん。酒席に車などとんでもない。君、今すぐホテルをとりなさい。飲酒運転など皆に迷惑がかかる。さ、飲みなさい」って、結局飲ますんかーい!って座布団すっとばしてズッコケたくなるようなシチュエーション。

 

人とコネクションを作り、そのコネクションを毎日毎晩拡大していくことが目的になってしまった系のビジネスパーソンにとっては、飲み会での立ち居振る舞いとはすなわち自分を磨きあげるステージでもあるのです。

そんな人とご一緒してて、「次、私の店に行きましょう」なんて二次会のお誘いを受けて、行ってみたらいや別にお前の店じゃねーじゃんみたいな。ただの常連じゃねーかみたいな。そういう文化圏の人にとって、飲みニケーションを閉ざすことは、世の中で成功する可能性を閉ざすことでもあります。それだけに、酒の件で自分の都合、たとえば「飲めない」とか「飲みたくない」とかを理由に飲み会に出ない人々が、甘いと感じられるのでしょう。

ただ、たしかにある種の経営やある種の営業にとって飲みニケーションが必須のスキルであっても、別にすべての企業人、あらゆる社会人にとって必須とまで拡大はできません。

経営者が育っていく道と、それぞれの職種で勤める従業員が育っていく道と、同じ価値観でそのプロフェッショナル論を語ることはできませんもんね。

 

 

■結局、野暮かどうかって話だと思うんだなあ。

酒の話なんて、ぶっちゃけそこだけなんじゃないですか。結局。

僕はよく酒飲みのお手本として、なぎら健壱さんを挙げます。あの人は、テレビでけして酒を強いないですよね。自分が楽しむことだけを突き詰めてる。飲めない人が一緒でも、ここはご飯もうまいんだって、飲み助が嫌うような丼ものの隠しメニューとかをにこにこ勧めちゃう。

してみると、酒の話なんて、社会人がどしたとかしゃちこばることでもなくて、「野暮なこと言うない」ですべて片ついてしまいそうなもんです。

野暮にしたくなけりゃ、歓迎会をするときにまず歓迎する相手の意向を聞くのが当たり前です。

そりゃあそうでしょう。無理強いしてまで歓迎の意を受け取らそうなんてこりゃあ野暮の征夷大将軍です。

 

飲むのが好きで、飲み会が好きで、長いこと飲み会の幹事なんて続けてる身からすれば、楽しい飲み会にするかどうかは幹事の誘い方、セッティングの仕方次第でどうとでもなるもんです。

女性が多い飲み会で、見知らぬおっさんと尻を合わせるようなカウンターの屋台をセッティングしますか?

遠方から来る人が多い飲み会で、運転してきて飲めない人を想定せずにソフトドリンクなしの飲み放題なんて設定しますか?

それは、団塊系のおっさんが多い飲み会で1次会にカフェを設定したりしないのと同じくらいの、飲み会に誘う側の配慮だと思うんですよ。

 

飲み会にお付き合いできないからだめ?飲めないことを相手に伝えられないからだめ?

馬鹿言っちゃいけません。

誘ったのに喜んでもらえないのを相手のコミュニケーションのせいにするのが、一番だめなんでしょうに。

 

 

「飲めない人は飲めない理由を〜」について思うこと anond.hatelabo.jp

*1:これが付かないことなんて、世の中にはほとんどないって思うと失敗しないですよね。

*2:あくまで同性ですよ

*3:ただし上司は除く

*4:長いこと仕事してるとそういう人もいます。僕もそういう人に何人か会ってきました。「ゴルフしない奴は出世できねー」とか「ゴルフできないなんて、仕事する気がないんだ。甘えとる」なんて無茶なことを言う人にね。一緒に遊んでくれなきゃ仕事しないって、どっちが甘えてんだって話なんですけどね。