太平洋戦争の終戦間際に東京で演奏されたベートーベンの交響曲第9番を再演し、戦争中に音楽活動を続けた人たちの情熱を伝えようという演奏会が2日夜、東京の日比谷公会堂で行われました。
戦前から「音楽の殿堂」として親しまれた日比谷公会堂では、ベートーベンの「第九」の演奏会が、終戦間際の昭和20年6月まで定期的に開かれていたという記録が残っています。戦争中の「第九」を再演した2日夜の演奏会では、当時、日本交響楽団の名前だったNHK交響楽団が演奏し、合唱も65年前と同じ学校の学生たちやOBが務めました。研究者によると、当時の第九の演奏会には、国民の戦意高揚につなげるねらいがあった一方で、数少ない娯楽の一つとして、市民の心を癒やす役割も担っていたということです。2日夜の演奏会では、第4楽章の有名な「歓喜の歌」が会場いっぱいに響き、集まったおよそ2000人の観客は、戦争中にさまざまな制約のなかで、音楽活動を続けた人たちに思いをはせていました。昭和20年6月の演奏会で合唱に参加した、東京都内に住む85歳の藤井百合さんは「当時の感動を思い出すとともに、戦争で亡くなった人たちを思いながら、演奏を聴きました。若い人たちには、きょうの思いを後世に伝えてほしいです」と話していました。