琴光喜、大嶽親方を解雇…野球賭博問題

大相撲の野球賭博問題で、臨時理事会に臨む大嶽親方（左）と大関・琴光喜関

　日本相撲協会は４日、名古屋市内のホテルで臨時理事会を開き、野球賭博に関与した大関・琴光喜関（３４）＝本名田宮啓司、愛知県出身、佐渡ケ嶽部屋＝と大嶽親方（４２）＝本名納谷忠茂、元関脇・貴闘力、兵庫県出身＝の解雇処分を決めた。角界からは永久追放となる。現役大関の解雇は史上初めて。大嶽親方には退職金が支給されず、琴光喜関には支給する。ただ琴光喜関の退職金は減額の可能性が高いという。

　２０人全員が出席した臨時理事会では、名古屋場所を謹慎する武蔵川理事長（元横綱・三重ノ海）に代わる理事長代行に、元東京高検検事長の村山弘義外部理事（７３）の就任を正式に決めた。相撲協会の危機管理の在り方などを見直す独立委員会の設置も決まった。

　現役時代に野球賭博に関与した時津風親方（元幕内時津海）は、肩書を主任から最下位の平年寄に降格させ、５年間据え置きとした。複数の弟子が野球賭博に関与した阿武松親方（元関脇益荒雄）は委員から平年寄に２階級降格させ、１０年間据え置く処分も決めた。

　賭博問題の特別調査委員会（伊藤滋座長＝早稲田大特命教授）の報告も発表し、野球賭博をした力士と親方ら計２７人の名前を公表。力士２４人のうち、１８力士が謹慎処分で、名古屋場所に出場できない。野球賭博にかかわった力士の師匠という理由などで謹慎となる親方１１人、さらに野球賭博以外の仲間内の賭け事を行ったが、同委が問題なしと判断した４９人のうち未成年者を除く４６人の名前も明らかにした。

　武蔵川理事長が７、８月の２か月で３０％、そのほかの協会幹部らも２か月で１０～２０％の減俸とすることを決めた。名古屋場所の観戦チケットの払い戻しにも応じる。

　臨時理事会に続く評議員会終了後、まず野球賭博に関与した力士とその師匠がそろって謝罪。武蔵川理事長が「心よりおわびします。厳しいご意見、ご指導をしっかり受け止め、今後このような不祥事を起こさないよう努力していく」と述べた。続いて仲間内で賭け事をしていた横綱・白鵬関らが頭を下げた。

　阿武松部屋で野球賭博に関与した幕下力士の古市、床山の床池からそれぞれ引退届と退職届が出されたが保留とされ、今後懲戒処分を決める。

　解雇された琴光喜関は「今さらながら大変なことをしたと反省しています。このような形で処分されたのは仕方がない」という談話を発表し、大嶽親方は「一社会人としてまた働いて頑張っていく。こういう形になって申し訳ない」と話した。

　大相撲の賭博問題での処分者は次の通り。

　【解雇】大嶽親方（元関脇貴闘力）大関琴光喜関

　【降格】阿武松親方（元関脇益荒雄、２階級）時津風親方（元幕内時津海、１階級）

　【謹慎】＜親方＞武蔵川理事長（元横綱三重ノ海）出羽海事業部長（元関脇鷲羽山）陸奥生活指導部長（元大関霧島）九重審判部長（元横綱千代の富士）八角親方（元横綱北勝海）佐渡ケ嶽親方（元関脇琴ノ若）境川親方（元小結両国）春日野親方（元関脇栃乃和歌）宮城野親方（元十両金親）木瀬親方（元幕内肥後ノ海）阿武松親方

　＜幕内・十両＞隠岐の海関、若荒雄関、豊ノ島関、雅山関、豪栄道関、豊響関、大道関、清瀬海関、普天王関、千代白鵬関、春日錦関

　＜幕下以下など＞光法、古市、大和富士、松緑、能登桜、大瀬海、松乃海

　＜床山＞床池

　武蔵川理事長「みそぎが終わったなどとは全く考えていない。不祥事の大きさを真摯に受け止め、協会として今後の在り方をしっかり考えていく。うみを全部出し切って、きれいな協会にしたい。そのレールを敷ければ、わたしはいつでも責任を取る」

　琴光喜の師匠、佐渡ケ嶽親方（元関脇琴ノ若）「処分は厳粛に受け止めます。厳しく指導してきたつもりだが、師匠として力が足りず深く反省している。（琴光喜は）第二の人生で頑張ってほしい」

　大嶽親方「ファンならびに相撲に携わる皆さまに、ご迷惑をかけまして申し訳ありません。自分としては悔いはない。いい相撲人生だったと思う。さみしい気持ちもあるが、ここで協会を批判したりすることはない」

　豊ノ島関「もう賭け事は一切しません。完全に失ってしまったファンの信用を取り戻せるよう真剣に相撲に取り組み、しっかり結果を出していきたい」

　◆日本相撲協会の処分　寄付行為施行細則で年寄、力士ら協会員に対する賞罰を規定している。処分は軽い順にけん責、給与減額、出場停止、番付降下（親方の場合は降格）、解雇の５種類。このほか、別の条項で解雇よりも重い除名処分があり、親方や行司の代表による評議員会で、出席者の４分の３以上が賛成すれば適用される。現行制度になって除名処分はない。以前から、除名の場合は退職金（養老金）を支給しない。不祥事による解雇が相次いだことを受け、相撲協会は昨年２月、解雇の場合に退職金の支給可否や減額の規定を設けた。