参院選まっただ中であります。で、産経政治部の記者たちも、手分けして主要な政治家の街頭演説などを追いかけているわけですが、その中の民主党の小沢一郎前幹事長の演説メモを読んでいて、ああ、変わらないなあというある感慨にとらわれました。私がかつて自由党を担当し、やはり小沢党首の地方遊説などを取材していたころと、同じ手法がくっきりと見えたからです。
それは、小沢氏独特の話芸というのか、一つの型として身につけている「マスコミいじり」についてです。この人は集会や講演などの場で、必ずと言っていいほど取材に来ているマスコミに言及し、あるいは嘲笑し、罵倒してみせるのです。それでいて、マスコミを利用して地方で発した自分の言葉が全国に発信される効果をきちんと計算しているのだから始末に悪い。マスコミに批判される自分を強調し、でもそれは本当の姿ではなく、自分はただ信念を貫いているだけだといつも繰り返すのです。
公示日以降のメモをざっと見ていて、あてはまる部分を拾うと
・
・
・
・
・
…小沢氏の選挙手法の一つに、師匠の田中角栄元首相直伝の「川上戦術」というものがありますね。遊説はできるだけ、都市部ではなく川上の、山村部から始めるという例のあれです。そして、小沢氏は毎回、ミカン箱や段ボールのような粗末な台の上に立ち、10数人からせいぜい100人前後の住民相手に演説をするという手法をとっています。
これ、一体何の効果があるのか。一般的には、草深い田舎で住民と直接対話し、信頼を勝ち得ることが水が川上から川下に流れるような波及効果を生んでやがて都市部にも支持が広がっていくなんて解説されています。でも、ちょっとそれ、信じがたいですね。仮に農村部で「小沢さんがこんなところまでわざわざ足を運んでくれた」と小さな感激を生んだとしても、それがどうして都市部住民にも共有されるというのか。
同僚記者とも話しているのですが、むしろ、これも一つのメディア戦術だろうと愚考します。小沢氏が地方の山村部に遊説に来れば、これはもう、地元紙も地元テレビ局も「確実に」大きなスペースを割いて取り上げるでしょう。そして、派手な手法はとらず、地方を地道に回り、気さくに住民と触れ合う小沢氏というイメージが、全県的に共有されていくと。
小沢氏は、ふだんは雲隠れしたり、マスコミから身を隠すように行動するのですが、こういう選挙のときは「来なくていい」などとブツブツと文句を言いながらマスコミをいじるものの、取材自体は避けようとしません。実は、マスコミが取材に来なければ困るというのが本音ではないかと見ています。
by hatlabo
鈴木茂氏への「出禁通告」と人…