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[19281] 【習作】スパロボJ 紫雲統夜×ガンダムSEED
Name: 碧輝◆324c5c3d ID:28ca8c51
Date: 2010/06/04 17:31
  初めまして、碧輝と言います。
  この物語はスーパーロボット大戦Jの主人公こと、紫雲統夜だけが
  ガンダムSEEDの世界にいるお話です。
  スパロボJをやっている方は知っていると思いますが、
  三人の女性は登場せず、シャナとフューリー関連は登場しますんで、
  願わくば、最後まで見守ってくれれば幸いです。

  すみません。ガンダムSEEDとスパロボシリーズが好きなので。
  このような物語があったらいいな と思う作者ですから。
  素人の投稿なんで、
  読者の皆様に楽しめるよう、頑張っていきますので、
  どうぞ、よろしくお願いします。


  さてさて、物語の開始です。



[19281] プロローグ
Name: 碧輝◆324c5c3d ID:28ca8c51
Date: 2010/06/04 17:33
  プロローグ  


人類が地球の周辺宙域をこえ
火星にまでその生活圏を広げた宇宙時代。
しかし地球環境の悪化と、
人が抱えるいくつもの問題は いまだ解決されてはいなかった。

遺伝子操作によって生み出される“コーディネイター”たちの出現。

人々は新たな時代が来ることを期待したが、
急激すぎる変化はそれに適応する者と拒絶する者を生み出すことになった。

その能力ゆえに宇宙へとおいやられたコーディネイターは、
新型コロニー群“プラント”を建設。
しかしコーディネイターが自分たちの統制下を
離れることを恐れた“ナチュラル”たちは、
“プラント”の独立を拒みつづけ、その対立は深刻さを増しつつあった。


そんな中、独自の自衛策を講じはじめたプラントの行動を
プラント宗主国に対する反乱であるとして、
大西洋連邦を中心とする地球連合諸国はでは
実力行使によってコーディネイターたちに制裁を与えるべきとの声が高まっていった。

コズミック・イラ70年・・・・
『血のバレンタイン』の悲劇によって
地球・プラント間の緊張はいっきに本格的武力衝突へと発展した・・・・
誰もが疑わなかった数で勝る地球軍の勝利・・・・
が 当初の予測は大きく裏切られ 戦局は疲弊したまま
すでに11か月が過ぎようとしていた・・・・

月にある廃墟と化した場所から、物語は始まる・・・


【月面・とある廃墟】

廃墟と化した中央にある慰霊碑に一人の少年が花を置き、
そして静かに目を瞑り、冥福を祈っている。

「(今日で父さんがいなくなってから四年が経った。
 今の俺は、父さんと母さんが十分なお金を残してくれたから、
 生活には困ってないし・・・それにザフトと連合の戦いが始まって、まだ日本は
 巻き込まれてないけれど、それでも何とかやっていけてるよ。)」

少年はゆっくりと目を開けて、無惨にも崩れている壁や垂れ落ちたコードなどを
じっと見回していた。
そして、訝しげに顔を顰めた。

「(・・・ニュースでは事故で、爆発が起きたと言っていたけど。
  結局、原因不明のままになっているんだよな。)」

少年は当時のニュースのことを思い出しながら、シャトルが置いてある場所へ
ゆっくりと来た道を戻りながら歩いていた。

「(そういえば、俺、父さんが月で仕事しているのは聞いていたけど・・・
  何の仕事をしていたのか、聞いたことなかったな。
  一応、調べたけど結局分からなかったし。)」

その時、少年の視界にキラッと何かが光った。

「?・・・なんだ? 今、何かが光ったような・・・」

少年は、足を止めて視界に入った光の下へ足を向けた。
そこに入り、目の視界に入ったのは、空間が広い場所だった。
周りをみると、どうやらここは格納庫のようらしい。
ざっと見回して、そこで得体のしれない存在がそこにあった。

「・・・これって、ロボット!?」

得体のしれない存在は巨大なロボットだった。
まるで、少年を待っていたかのように・・・悠々とそびえ立っていたのだ。
そして、また光が反射する。

「さっきの光って、あそこから? でも、何でこんな廃墟にロボットがあるんだ?
 誰もいないみたいだし、ともかく行ってみるか・・・」

少年は先程から淡く漏れている光の下へ近寄っていった。


それが、自分が巻き込まれることになる戦いの前触れだったことを、
このときはまだ知るはずもなかった。



[19281] 第一話 漂う宇宙の中で
Name: 碧輝◆324c5c3d ID:28ca8c51
Date: 2010/06/04 03:31
????

ある部屋に一人の男と一人の少女がいた。
そして、二人は深刻な様子で話していた。
男が重苦しいような口ぶりで言い始める。

「・・・様。あの方の居場所がわかりました。
 私はこれより説得にまいります。なんとしてもお戻りいただかなくては」

「それが可能であると、本当に思っているのですか?」

「・・・・・・」

「かの者の言葉、かの者の想いは、口にすることがかなわぬ
 わたしの言葉、わたしの想いでもあるのです。・・・かの者はもう戻らないでしょう」

「すべてが動き出した今となっては、もはや留まるわけにはいかぬのです。
 それはあなたがお認めになられたことでありましょう。
 あの方が戻らぬとあらば、私は・・・」

「かの者を殺す、というのですか。あれほどまでに敬愛していた者を」

「・・・私は騎士です。
 担うべき役割を果たさずに、あの時虚空へと消えていった無数の同胞たちに、
 そして刻を止めたままの我らが民たちに、どうして我が生の許しを求められましょう。
 我らの義務、それは貴女の方がよくおわかりのはず」

「・・・そうですね。確かに、わかりすぎるほどわかってしまう。
 この血に、我が身に託された父母の、そして彼らの想いが・・・」

「・・・・・・」

「失われたものを取り戻すことなど、もはやかなわぬとわかっている。
 それでも、それを望まぬわけにはいかないのですね。
 たとえ・・・どのような運命が待とうとも」

「・・・はい」

少女は哀しみを堪えるように顔を伏せて。
そして、男はひるがえして部屋を出て行った。




 第一話 漂う宇宙の中で




周りは何一つない、闇と光り輝く幾千万の星々。
そこで、一つの存在が漂っていた。

「・・・・・・う・・・うぅ、お、俺は・・・いったい・・・?
 それに、こ・・・ここは?」

少年は額に手をつけながら、目を覚ました。
ところどころに微かな痛みを感じるが、気にしてる暇はなかった。
何故なら、この状況についていけなかったからだ。
自分はどうしたのか、ここはどこなのか?

そして、自分が何に乗っているのか・・・
何一つ、解らなかったからだ。


 ビーッビーッ

そこで突如アラームがなった。

「何だ?」

いきなりのアラーム音に少年は驚く。
そして、何らかのウィンドウが出てきた。
どうやら、近くで戦闘が起こっているらしい。

「(戦闘?何で、そんなことが分かるんだ。
  それにこの画面が出てきたら、急に頭の中に・・・)」

膨大な情報が急に、頭の中で駆け巡る。
少年はいきなりのことに頭を抱えていた。
数秒か、一分か経った頃、少年は落ち着きを取り戻していった。

「うぅ・・・ま、まだ、痛むけど。
 と、とりあえず、戦闘が起こっている場所に行けば 何か分かるかも知れない。」

少年は操縦桿を握り、スラスターを噴かせて 戦闘が起こっている場所へ
向かっていった。

この時、少年はまだ気付いていなかった。
ロボットを操縦出来ていたことを・・・
そして、それが少年による初めての戦いの幕開けであるということを・・・


 

戦闘宙域に近づくと、またウィンドウが現れた。
どうやら戦闘している画面で、巨人兵と戦闘機みたいな・・・と戦っているようだ。

「あっちの巨人兵の方は確かジンという名のMSで、
 戦闘機の方はメビウスという名のMAだったっけ? ・・・・・・。
(あれ? 俺、今・・・何を言った? 何で、そんなことが分かるんだ?
  くそ、分からないことだらけだ・・・)」

少年は片手を額につけて、俯く。
視線をウィンドゥに向けると、どうやら10機中8機の戦闘機が
2体のMSの翻弄させて、2機の戦闘機が民間船を攻撃しようとしているらしい。

―――あの、民間船を沈めさせたらダメだ!
何が何でも助けなきゃ・・・!

少年はふとした意識の衝動に駆り出され、とっさに操縦桿を強く握り締めて
スラスターを全開に噴かした。


「・・・様! こちらの呼び掛けに応じません。」
民間船の操縦席に座るパイロット副機長が、慌ただしく応える。

「困りましたわね。こちらは戦闘行為を望んでいないのですが・・・」

少女が困り果てた顔で言う。
そして、もう一人のパイロット機長が慌てて叫び出した。

「っ!まずい、2機の戦闘機がこっちに向かってくる!!」

「しまった!ロックオンされた」


また、ジンというMSを操るパイロット二人も8機のメビウスに翻弄されながら、
今まさに、民間船に放たれようとしていたことに気付き・・・

「くそっ!」

「このままじゃ、沈められる!!」

メビウスからミサイルが発射された。
そして、ジンのパイロットの一人が叫んだ。

「ラクス様!!」

放たれたミサイルが当たろうかと思った矢先に、突如 上から光が放たれ、
その放たれた光の先には先程メビウスより発射されたミサイルを貫通させて
ミサイルは民間船に当たることなく、爆発した。


その光景にそこにいた者達は、一瞬動きを止めた。
今しがた起こった事に理解できなかったのだから・・・。

民間船を攻撃していたメビウスのパイロットは、呆然としながら口を紡いだ。

「な、何だ!今の攻撃は・・・ど、どこから?」

突然アラーム音が鳴り、回避しようとしたら先程と同じ光が2機のメビウスに当たり、
パイロット達は脱出する暇もなく爆発と共に消えていった。

そして、民間船の前に〝それ〟は現れた。

メビウスのパイロット達は、現れた〝それ〟に戸惑いながらも話していた。

「た、隊長!」

「あ、あれは何なんでしょうか?」

「ザ、ザフトの新型MSなのか!?」

「ええい、貴様等 情けない声を出すな!
 ザフトの新型であろうと、我らの目的は変わらん!」

「そうだ、現にあれによってメビウス2機を墜とされたのだぞ!!
 攻撃目標を変更! ザフトの新型MSに向ける!!」

メビウス隊の隊長と副隊長と思われるパイロットが、戸惑う隊員達に向けて
叱咤する。
そして、攻撃目標を現れた〝それ〟に向けて攻撃を開始した。

〝それ〟を駆る少年は、どうにか民間船を守れたことに安堵のため息を吐いたら、
今度は残ったメビウス隊が、自分の向かって攻撃しようとしていた。

---いきなり仲間を討たれたことによって、矛先をこっちに向けたのか?
けれど、攻撃してくるっていうんなら、やってやる。

少年は再び、操縦桿を握って戦場を駆った。
メビウスから攻撃してくるミサイルは撃ち落とし、先端から放たれるリニアガンは
かわしながら、メビウスを一機、一機ずつ墜としていく。

そして、またジンを駆るパイロット二人も困惑しながら、話していた。
いきなり現れた〝それ〟に味方とも敵とも判断がつかずに・・・
そして、メビウス隊が〝それ〟に向かって攻撃したことに対しても 尚、
判断がつかなかった。

「お、おい。 あれはザフトの物なのか?」

「知らないぞ、あんな機体。
 それに 俺たちがあれ程、苦戦していたというのに
 たった一機で次々と墜としているぞ?」

そう会話しているとき、最後のメビウスが爆発して消えていった。

---これで終わりか? 後・・・どうしようかな。

少年は全てのメビウス隊を墜とし終えたことを確認し、
そして宙域に残っているジンと民間船に目を向けながら、考えていた。
どうしようかと思考の海に漂っていた時・・・
一体のジンの銃がこちらに向けていた。

「っ・・・まだ、攻撃してくるのかよ!」

また、戦闘が始まるかと思いきや・・・

『お待ちなさい!!』

「!?」

突如 入った通信。
どうやら、通信の発信先は あの民間船からのようだ。

『ですが、ラクス様。
 あれは先程から、アンノウンの表示が出ているのです。』

『ザフトのものであるならば、味方の信号が出ているはずです。
 だから、信用できません。』

---おいおい、言いたい放題だな・・・。せっかく助けてやったのに・・・
   それにしても、また頭痛がしてきたな。
少年はジンのパイロット達に呆れつつ、片手をこめかみに押さえ込んだ。

『二人とも、お黙りなさい!』

『し、しかしですが・・・』

ジンのパイロットの一人が焦っている。
どうやら、先程の声の持ち主はここにいる人達の主だと思う。
それとも、重要な人物なのだろうか?

『たしかにこちらでも、アンノウンの表示が示されているのは解っています。
 ですが、あれは私達を助けて下さったのですよ?』

『『・・・・・・・・・』』

二人のパイロットは押し黙る。
確かに、〝あれ〟は敬愛する主を助けてくれた。
もし、〝あれ〟が現れなければ、我々はラクス様を失っていただろう。

二人のパイロットが何も言わないことに対し、今度はアンノウンに向けて通信してきた。

『先程は、私達を助けてくださった事を感謝します。』

いきなり、こっちに通信してきたことに驚いた。
そして、今更 気付いたが・・・この声の主はかなり若い女性のようで、
甘えも怯えもない、凛と上に立つものが出すような感じがした。

「いえ、気に・・・しないで下さい。
 民間船が攻撃されていた・・のだから、助けたかった・・・だけです。」

少年は、一段と増してくる頭の痛みに耐えながら応えた。
けれど、限界のようで・・・

「・・・ご、ごめん。」

・・・

・・・・・・

『・・・はい?』

訳のわからない謝罪にそりゃ戸惑うだろうな・・・と思いながら、
薄れてゆく意識の中で、何とか言葉を紡ぐしかなかった。

「・・・後、・・・頼み・・ま・・す」

そこで俺の意識はブラックアウトした。



[19281] 第二話 記憶を失った少年とラクス・クライン
Name: 碧輝◆324c5c3d ID:28ca8c51
Date: 2010/06/04 17:35
 第二話 記憶を失った少年とラクス・クライン


夢を見ていた。
暗やみの中にぽつんと座り、
祈るようなしぐさで目を閉じている女の子の夢だ。

そっと塞がれた二つの瞼、かすかに震える睫毛。
やがて唇を開いた彼女は、かすかだけどとても綺麗な・・・

そしてとても悲しそうな声で、いつもこう言う。

許して・・・どうか許してください・・・
もう わたしには止めることができない
わたしには 止められないのです

滅びるべきは わたしたち
立ち去るべきは わたしたち
この世界はあなたがた子供たちのものなのに

待ち続けた永き刻の その暗闇の冷たさが
すべてを狂わせてしまった
どうか・・・力なきわたしを許してください・・・

少女の周りには、透き通るような髪のまわりでキラキラ輝く光の粒子と、
悲しそうなその声の響きだけ。
そこで、夢は途絶えた。


キラッと輝く光・・・
そして、かすかに動き出す影。

「・・・うっ・・・」

うっすらと目を開き・・・ まだ、視界がぼやけ再び目を閉じる
そして、そっと目を開いた。
視線の先には、真っ白な天井・・・。
ここはどこだろう?俺は何をしていたのだろう・・・
そして、いつの間に寝ていたのだろうと状況が飲み込めていなかった。
そして、重い鉛のように感じながら身体を起こし、辺りを見回した。

「・・・こ・・こは?」

「気付かれましたか?」

ふいに開いた扉の先から、あの時の彼女の声だと気付く。

「僕は・・・どうして・・・ここに?」

「あなたは先程の戦闘が終わった後、急に気を失って倒れていたのですわ」

倒れていたと聞かされ、あまりにも未だに状況が飲み込めないまま、右手で顔を被う。

「覚えていらっしゃいませんか?」

彼女の声に・・・ふと、我に返った
確かに俺は民間船を助けて、それから彼女と話してる最中に意識が遠くなったんだっけ

「いや、それは覚えているよ。 ところで君は・・・誰なんだ?」

それよりも意識を失った俺を助けてくれたのは、目の前の彼女なのだろうか?
とりあえず、俺は目の前の少女の名前が何となく知りたかった。

「私はラクス・クラインと言います」

彼女は微笑み、名前を教えてくれた。
けれど最初に聞いた声と・・・何というか違和感が感じるのは何故だろうか?

「ラクス・・・クライン?」

「そうですわ。」

『ハロ ラクス ハロ』
ふと、彼女の膝元にピンクの球体が何かしゃべってきた。
耳?いや羽なのだろうか?それをパタパタと羽ばたかせて、こっちに飛んできたのだ。
そして、俺の身体の上にポスンと乗る。

「・・・それであの・・・お名前を教えていただけますか?」

突然、彼女からの声に気付き そして彼女は自分の名前を聞いてきた。

・・・・・・

「あの?」

名前を言おうと思ったら、何故か言えない。
いや・・・言えないのではなく、答えられない。
俺の名前は何なのか何一つ、思い出せなかった。

そんな少年を見たラクスは違和感を感じ首を傾げて、少年を見やった。

「? 覚えていないのですか?」

「あ、ああ・・・記憶が・・・ない?」

確かに何一つ覚えていない。
ただ覚えているのは何かの機体に乗って戦っていて、
そして、この状況だけで・・・それ以前の記憶がまったく思い出せないのだから

ラクスは目の前の少年の言葉と状況に気付いた。
彼が・・・自分の名前が覚えていないことを・・・

「記憶が失われているのですね」

そう答えた時、少年は突然激しい痛みを感じて唸った。

「・・・うぐっ」

「あっ!まだケガが治っていないのです・・・、無理になさらない方がいいでしょう」
ラクスは彼の痛みに気付き、そっと彼の身体を支えて
横になるようにと勧めたが・・・

「・・・何故、助けてくれるんですか?」
ようやく、少年は気付いた。
何故、記憶が失っているのにも関わらず 見知らぬ俺を助けてくれるのか。

「え?」

ラクスは何故かキョトンとした顔で言った。俺は何か変なことを言ったのだろうか?
そう思っていると、ラクスは突然くすくすと笑った。
俺はそんなラクスの行動に眉をひそめた。
ラクスはそれに気付いて、笑いを収め

「笑ってしまってごめんなさい。でも、あなたは私達を助けて下さったのですし、
 そのお礼もしたいのです。それに私はあなたが気になりましたので。」

「・・・はい?」
余りにも情けない声を出してしまった。
何か今、最後の言葉に色々と気になったが、とりあえず無視しようと思う。
とりあえず、これ以上話しても仕方がないので
俺はさっきまで乗っていた機体の事を聞いた。
何故だか解らないが、さっきから あの機体だけは重要な存在だと頭の中で
警告というか・・・そんな感情が駆け巡ってくる。

「ま、まあ、ラクスがそれでいいって言うなら構わないけれど・・・
 それよりも、俺が乗っていた機体はどこに?」

そう答えたとき 再び、身体中に激痛と頭痛が少年を襲いかかった。
その様子にラクスは少年の身体を支えた

「・・・すみません」

「まだ、治っていないのです。 暫く横になられた方がいいでしょう。
 それとあなたが乗っていらしたMSは格納庫にありますので、
 心配しないで下さい。」

少年が横になり、ラクスはそっと一枚の毛布をかけた時、
穏やかな声がラクスの耳に聞こえてきた

「・・・ラクス・・さん」

少年の声に、ラクスは一瞬これまでになかった感情が湧き上がった
この気持ちは何でしょう? その気持ちを抑え込みながら、ラクスは口を開く

「ラクスで構いませんわ」

「でも・・・見知らぬあなたに、呼び捨ては出来ないですよ」

「わたくしに・・・敬語は必要はありませんわ」

微笑みながら答えるラクスに、少年は戸惑った。
今、会ったばかりの彼女に呼び捨ては出来るわけがないと
それでも、彼女の瞳には
呼び捨てで呼んで欲しいという想いが輝かせていた。
少年はそっと目を閉じ・・・彼女の望む通りに答えようと決めた

「・・・なら、そう呼ばせてもらうよ・・・ラクス」

「はい!」

ここで少年は静かな寝息を立てて、眠りについた。
そしてラクスは、そんな少年に微笑みつつ
自分の中に言いようのない感情と、先程の事を思案していた。


*****

あとがき

うーん、こんなものだろうか?

ここで夢の語りがでました。

でも、夢のことは何一つ覚えていないのです。

そして、アークエンジェルのメンバーより先にラクス・クラインとのご対面!!

二人の邂逅はどのような影響を及ぼしていくのだろうか?

作者は気まぐれなので・・・とりあえず次回、頑張ろ・・・っと。



[19281] 第三話 導かれた出会いと共に  〈ラクス視線〉
Name: 碧輝◆324c5c3d ID:28ca8c51
Date: 2010/06/05 21:48
 第三話 導かれた出会いと共に  〈ラクス視線〉


ラクスは目の前に眠る少年を見ながら、思考に入っていた。

出発して、プラントから遠く離れて間もなくのこと
突然、地球軍のメビウスが接近してきて戦闘がはじまった。

私は戦闘行為は望んでもなく、停戦行為を呼び掛けてもダメだった。

その時、機長達がこのシルバーウィンドにミサイルがロックオンされ発射された
と言われたときは、一瞬 肝が冷えたのを覚えている。

ここで、私は消えるのでしょうか?と思ったら、二対の光が視界に入り
こちらに向けていたミサイルが光とともに大きな音を出して爆散したのだから。
それから、ミサイルを発射したメビウスも二対の光に飲み込まれて、消えていった。

一瞬、何が起こったのか分からなかった。
けれど、生きているだろうということは分かった。
そう思っていたら、このシルバーウィンドの目の前に影が落ちてきて
一体何だろうと視線を向けてみると、見たこともない機体がそこにあった。

そして、巨大な銃らしきモノを持っていた蒼いMSに似た感じのようなモノ。
あれはザフトのMSなのでしょうか?

残った地球軍のメビウス隊が〝それ〟に目標を定めたらしい。
〝それ〟は気付いたかのように、悠然と武器を構えて飛び出す。

メビウスから攻撃してくるミサイルは撃ち落とし、先端から放たれるリニアガンは
かわしながら、メビウスを一機、一機ずつ墜としていく。
その戦いに〝それ〟から緑の色をした光が淡く放っている感じがした。
まるで、消えていく命に対しての悲しみを受け止めて昇華するかのように・・・
私はそう見えた気がした。


数秒か、数分か、どれくらい経ったのか解らないけれど・・・
〝それ〟が最後のメビウスの一機を墜としたとき、淡く光っていた色が消えていった。

この場所で起こった出来事を夢だったのかと思えるほど、静寂に包まれた時・・・
一体のジンが〝それ〟に銃を向け始めた。
このままではマズイと思い、慌てて通信機を掴んだことは記憶に新しい。

「お待ちなさい!!」

そう言ったら、二人とも動きを止めてくれた。
そして、ジンのパイロット二人から 私を心配して言ってくれているのか
嬉しくもあったけれど、それどころではない。
何故だか解らないけれど、あの機体のパイロットと話してみたいと思った。
だから、これ以上の戦闘は止めて欲しいと願った。

それでも、引き下がらないようで・・・私はもう一度言った。
今、私たちを助けてくれた行動の意味を知らない筈がないと・・・

「たしかにこちらでも、アンノウンの表示が示されているのは解っています。
 ですが、あれは私達を助けて下さったのですよ?」

そう答えたら、モニター越しの二人は やっとわかってくれたようで、
銃を下ろしてくれた。

後は、あのアンノウンに通信を・・・
あの時、私はどんな方が乗っているのか ワクワクした気分がしたのを覚えている。
助けてくれた感謝の言葉を通信越しに言ったら・・・

『いえ、気に・・・しないで下さい。
 民間船が攻撃されていた・・のだから、助けたかった・・・だけです。』

モニターには出てないけれど、声だけが返ってきて驚いた。
どうやら、声の持ち主は若い少年のように思えた。
途切れ途切れに話しているけれど、通信の調子がおかしいのだろうかと思ったら

『・・・ご、ごめん。』

いきなり、訳のわからない謝罪の言葉が飛び込んできた。
それはジンのパイロット達も、この船のクルーもその言葉に戸惑っていたようで・・・
私はその謝罪の言葉に意味が分からず・・・ただ一言、無意識に返してしまった。

「・・・はい?」

そうしたら、苦笑と共にまた訳の分からない言葉が飛び込んできた。

『・・・後、・・・頼み・・ま・・す』

また、途切れ途切れに紡いでゆくと共に声が段々と小さくなっていった。

「あの、・・・後・・・頼みますってどういう意味でしょうか?」

そう聞いてみたら何の声もなく、ただ無言しか流れてこなかった。
私は困惑してしまった。 そしたら、副機長から・・・

「ラクス様、どうやらあのアンノウンのパイロットは気を失っているようです。」

「え?」

どうやら、声が聞こえなくなったのは気を失ったから、らしい。
ここで私は機長達と、ジンのパイロット達に言った。
アンノウンの機体と少年を救助するようにと、
そしてそれに伴い 私は格納庫へと足を進めた。


格納庫に着いたら、どうやら丁度〝それ〟のコクピットを開けたところから
パイロットを降ろしているところらしい。
ジンのパイロット達やクルー達が私に気付いた。

「あ、ラクス様!」

「ご苦労様です。 それで乗っていた方は大丈夫なのですか?」

そっと、視線をストレッチャーに乗っている人を見てみると
やはり思っていた通り、赤髪で若い少年だった。
その横で、医者が答える。

「気を失った理由は分かりませんが、全身に打撲のような感じが見られます。
 ああ、生命に関わるような状態ではないので、大丈夫ですよ。」

命に関わるような状態ではないと聞いて、ホッとする。
少年が医務室へ運ばれた後、私はクルー達に伝えた。
予定通り、あの場所に行くと共に・・・この機体に触れないようにと。
そう言い残して、医務室に向かっていった。

そこで丁度、治療を終えたようで出てきた医者と一言二言、言葉を交わした後
私は医務室の中に入った。
そして入ると同時に、ベッドから微かな呻き声が聞こえてきた。
どうやら、目を覚ましたらしい。

「気付かれましたか?」

起き上がった彼の姿を見たら、頭と胸の辺りだけ包帯が巻かれていた。
そして、彼の口から弱々しい声が聞こえてきた。

「僕は・・・どうして・・・ここに?」

「あなたは先程の戦闘が終わった後、急に気を失って倒れていたのですわ」

そう答えると、彼は苦痛した顔で右手で顔を被っている。
あの時のことを覚えていないのでしょうか?

「覚えていらっしゃいませんか?」

そうお聞きして、数秒経った頃 彼は顔をこちらに向けてきて
ちょっとドキリとしたけれど、それを表に出さずに首を少し傾けた。

「いや、それは覚えているよ。 ところで君は・・・誰なんだ?」

---そういえば、まだ紹介していませんでしたね・・・私も彼の名前が知りたいですし
そう思って微笑みながら、私は自分の名前を答える。

「私はラクス・クラインと言います」

静かな声で私の名を言った彼に肯定すると、突然ピンクちゃんが
動き出して、傷付いた彼の下へと飛んでいった。
ピンクちゃんも彼のことが気に入ったようで、彼の身体の上に乗っている。

私は彼の名前が知りたくて聞いてみたら、突然動きが固まった。
何か、不味いことを聞いてしまったのだろうか?と思ったら
何か様子がおかしかった。覚えていないのだろうか?と聞いてみたら・・・
彼は〝記憶がない〟と言った。
どうやら、彼は自分の名前が覚えていなかった・・・嘘偽りのない本当の記憶喪失・・・

この時、私は目の前の彼が何とも言えない何かを感じた。
孤独で儚い、そんな彼を護りたいと思った、救いたいとも・・・
そう思いながら、痛みに唸った彼を横になるよう勧めたら
彼から思いがけない言葉が飛び込んできた。
私はついキョトンとしてしまった・・・そして笑ってしまった。
彼が眉をひそめていたことに気付き、何とか私は笑いを収めた

私は笑ったことを謝罪して、そして助けて下さったお礼をしたいとも言った。
そして、最後に自分の偽りのない気持ちを言った。

それから、彼から自分の機体はどこにあるかと聞かれて・・・
また痛みに抱えた彼に今度こそ横になるよう勧めた。
機体のことについても大丈夫なのだと伝えながら、そっと一枚の毛布をかけた時、
穏やかな声が私の耳に聞こえてきた

「・・・ラクス・・さん」

少年の声に、私は一瞬これまでになかった感情が湧き上がった気がした。
---この気持ちは何でしょう?
その気持ちを抑え込みながら、何とか口を紡ぐ。

「ラクスで構いませんわ」

「でも・・・見知らぬあなたに、呼び捨ては出来ないですよ」

「わたくしに・・・敬語は必要はありませんわ」

彼は戸惑っているようで、けれど何故かそう呼んで欲しかった。
そして彼はそっと目を閉じたかと思うと・・・

「・・・なら、そう呼ばせてもらうよ・・・ラクス」

私が望んでくれたことを言ってくれて、嬉しかった。
ここで彼は静かな寝息を立てて、眠りについた。

『ハロ ラクス』
ピンクちゃんが私の膝の上で跳びはねる。

「ピンクちゃん、私は彼との出会いに導かれてるような感じがしますわ」



*****

あとがき

ラクス視線・・・

第2話よりちょっと長い文になった。

そして途中で文が変になっていくような気がした。

さて、ラクスの感情は彼にどのような影響を与えていくのか。

次回、お楽しみに?



[19281] 第四話 与えられた名と共に
Name: 碧輝◆324c5c3d ID:28ca8c51
Date: 2010/06/19 01:55
 第四話 与えられた名と共に


―――あれから一時間程経ったのだろうか?
頭痛も無くなったし、ケガはまだ痛むけど・・・だいぶマシになったと思う。
とりあえず、あの機体の所に行くしかないか 今の俺にはアレしかないし。
それにしても・・・

「よく眠れましたか?」

ラクスが微笑みながら、そう聞いた。ずっと、付き添ってくれたのだろうか?

「おかげ様でだいぶ良くなった、付き添ってくれたんだろ?
 とりあえず、ありがとう と言っておくよ」

そう言いながら、俺はベッドから降りて立ち上がった。
その様子にラクスは彼の行動に気付いたようで、

「格納庫へご案内いたしますわ。あなたの愛機が気になるのでしょう?」

何も言ってないのに、何故 ラクスは分かるのだろうか?
けれど、ラクスの言っていることは間違いはないので 俺はお願いした。
何故なら、この船のことを知らないし・・・うかつに動かない方がいいだろうと
頭の中で判断していた。

俺の機体があるであろう場所に行く途中、何人かの人と出会い
俺に向けられる視線には、興味津々に見られていた。
ここにいる人達は、どうやら目の前のラクスを本当に慕っているようで、
本当に不思議な人だなと思ってしまった。

・・・それよりも、何故に・・・俺の肩に乗っかかっているのだろう?
ピンクちゃんと呼ばれたこのハロは・・・・・・こっちはこっちで謎だ。

「どうやら、ピンクちゃんは貴方をお気になさったようですね。」

ラクスは俺に視線を向けると肩にピンクちゃんが乗っていたのを見て
くすくすと笑って言った。
そうこうしているうちに、格納庫に着いたようだ。
中には先程のジンというMSがあって、他に一体あった。
あの機体が俺の機体なのだろうか?

「ラクス、あれが俺の乗っていた機体なの?」

「はい、あなたが乗っていらした機体ですわ。」

本当に俺の機体らしい。
見たことも聞いたこともないのに、何故乗っていたのだろう?

―――いや、記憶のない俺が考えても仕方がないのかも知れない。
    何か思い出せる手がかりがあるといいんだけど・・・

「とりあえず、乗っても・・・いいかな?」

俺の機体なのだというけれど、どこか不安があるから一応、確認のために聞いた。

「ええ、あなたの機体ですから。ご自由になさってくださいな。」

ラクスは、なかなか信じられず戸惑いながら言う、俺の不安を取り除いてくれるかのように微笑みながら答えてくれた。
俺は決心し、一歩足を踏みしめて 無重力の中
コクピットであるだろう場所に向かって飛んでいき、その中に入る。
ふと視界に、緑のパイロットスーツを来た人達が俺たちの事に気付いてラクスの所に
移動しているのが見えたが、気にするのを止めた。

コクピットの中に入ると、一瞬何か異様な感触がしたが気のせいだと思う。
そして、シートにゆっくり座りながらあちこちと視線を彷徨わせた。

―――何だろう・・・なんか落ち着くような、不思議な感じがする。
     俺、ほんとにこれに乗って戦ったんだよな

シートに座った途端、不思議な感覚に包まれた感じがした。

「えーと、起動させるのはこれか?」

そうすると 起動音が鳴り、徐々に光があちこちと点滅してきた。
シート脇にあるキーボートを出して、ウィンドウを開く。
記憶の断片にある業か、何をどうしたいのか、必要な情報を全て出してゆく

「俺に関する、情報は何一つないな。ん?これ・・・この機体のことか。
 えっと、ヴォル・・レント?って言うのか」

最後に乗っていた機体の名前が分かった。
その名を呼んだ途端、ウィンドウに何らかのデータというのだろうか?
それが出てきて、知らない言葉が出てきた。

「サイ・・トロン? 何だこれ?」

本当に訳のわからない機体だ。
けれど、このヴォルレントは俺にとって大切な機体だということは分かる。
この先、俺はさっきみたいに戦う時が来るのだろうか?

そうしてヴォルレントのリンクをOFFし、コクピットの外に出たら
ラクスが最初の時と変わらずにずっと立っていて、俺が出てくるのを
待っていてくれていたようだ。
そんなラクスに俺は苦笑を浮かべながら、ラクスの下へ静かに降り立った。

「何か分かりましたか?」

苦笑を浮かべた俺に向けて、ラクスは首を傾げながら聞いてきた。
首を傾げて微笑むラクスに俺は目を静かに瞑って首を横に振り、先程調べた俺の機体に目を向けながら言った。

「俺に関する情報は何一つ得られなかった。」

俺は今、苦しんだ表情をしていると何故だか分かる。

「けれど、この機体の名前だけは分かったよ。」

「何とおっしゃるのですか?」

「ヴォルレントというらしい」

俺はその名を告げ、決心しようにも・・・なかなか踏み出せずに迷っている。
これに乗ったら、何かを失ってしまうような・・・二度と戻れない〝何かが〟失いそうで怖い気分になってくる。

「貴方はこれから、どうなさるのですか?」

ふとラクスが俺にこれからのことを聞いてきた。
これからと言われても、俺はどうしたいのか分からない。
俺の記憶を探すべきなのだけれど、どこから手をつければいいのか分からない。
だから、俺は笑ってラクスに聞いた。

「これから、どうしようか?」

そんな言葉を投げたら、ラクスは呆気にとられた顔をする。
普通は言わないだろうと思う、当然の反応だよな・・・とも思った。
それでも、一歩踏み出せる答えが欲しかった。
俺自身が進むべき道を・・・

「では、私の傍にいてくれませんか?」

その言葉に今度は俺が呆気に取られた、というより驚いた。

「何故、俺がラクスの傍に? 素性の知れぬ俺がいるのはマズイのではないのか」

本当に分からない。一体、彼女は何者だろうか?と益々、謎が増えていく。

「どうしようか?と聞いたのは貴方ではありませんか?」

―――確かに言った。けれど、それとは別の様な気がする・・・。

「貴方が私の傍に居てくれることは、既にこの船の皆さんも承諾済みです」

いつの間に!!と思った。
けれど、行く当ても無いことは確かな事で 取りあえずラクスの恩を受けようと思う。

「まあ、行く当てもないから ラクスの恩を受け止めてもいいかな。」

そう言ったら、何故かラクスは嬉しそうに微笑んでいて、
・・・顔がほんのり赤くなっていたことは見間違いだろうか?

「それから、名前はどうなさいますか?名無しでは、これから不便もありましょう。」

―――確かにこの先、いつ記憶が戻るか分かったものじゃない。
     名前がないと、色々と問題が起きそうだし・・・

「そうだな名前がないと困るよな。
 ラクスでよければ、俺に名前を付けてくれないかな?」

だから、俺はラクスに頼んだ。
彼女ならきっと、俺の名前を付けてくれるだろう。

数秒か、数分か経ったのだろうか? ラクスの口から俺の名前が紡がれる。

「・・・ウィル。 ウィル・クールドと呼んでもよろしいでしょうか?」

「ウィル・・・。うん、気に入ったよ。
 ありがとう、俺に名を与えてくれて・・・ありがとう。」

記憶を失った俺に【意志】という名を与えてくれるのは、
彼女なりの優しさなのかもしれない。
けれど、ラクスが名付けてくれた名前なのだから・・・
その名に恥じない存在で在り続けようと思う。
いつの日か記憶を取り戻す・・その時まで・・・

「ラクス、俺は・・・俺に与えられたウィルという名と、
 俺の愛機であるヴォルレントと共に歩いていこうと思う」

そう言うと、ラクスは穏やかな顔で首を縦に振った。
俺は今、迷いを振り切るように一歩踏み出したと思う。きっと・・・
だから、俺はここから始めよう。
俺に与えられた名と俺の愛機であるヴォルレントと共に・・・・・・



*****

あとがき

ようやく記憶の少年とその機体に名前が入りました。

ただ、彼の本当の名前はまだまだ先です。

その時まで、ウィルという名前で通させていただきます。

後、俺の好きな機体はベルゼルートとヴォルレントで、どちらにしようか迷いました

でもベルゼルートは接近戦は不利なので、ヴォルレントにしました。

次回は・・・まっ、お楽しみに



[19281] 第五話 意志という名を  〈ラクス視点〉
Name: 碧輝◆324c5c3d ID:28ca8c51
Date: 2010/06/26 19:53
 第五話 意志という名を  〈ラクス視点〉


―――あれから一時間程経った頃でしょうか?

彼が目覚めて、上半身だけ起き上がり自分の身体の調子を確認するように手を開いたり、閉じたりしていた。 
調子が良くなったのでしょうか?
ふと、彼がこちらに視線を向けてきた。

「よく眠れましたか?」

私は微笑んで、そう聞くと。
彼もまた微笑んで応えを返してくれた。

「おかげ様でだいぶ良くなった、付き添ってくれたんだろ?
 とりあえず、ありがとう と言っておくよ」

そう言いながら、彼はベッドから降りて立ち上がった。
その様子に私は彼の行動に気付いた。
彼が最初に気にしていた、彼が乗っていた機体の所に行こうとしているのを。

「格納庫へご案内いたしますわ。あなたの愛機が気になるのでしょう?」

そう言ったら、彼は驚いた顔をした後、破顔一笑してお願いしてきた。
その笑った顔に私は嬉しく思ったというのだろうか?

部屋を出て格納庫に向かう途中、何人かのクルーに出会い、そのクルー達が興味津々しながら彼を見ていた。
居心地が悪くなってないだろうかと思っていたのだけれど、それは杞憂だったようでホッとする。
ふと、私は彼に視線を向けると、どうやら彼は興味津々に見られてると気付いても、まったく気にしていなかったらしい。
そして、視界に入ったピンクちゃんが彼の肩に乗っているのを見て、思わずくすくすと笑いながら言ってしまった。

「どうやら、ピンクちゃんは貴方をお気になさったようですね。」

―――私が気になった人だから、ピンクちゃんも気に入ったのでしょうね。

そうこうしているうちに、格納庫に着いた。
彼はザフトのMSであるジンに視線を向け、そして最後に彼が乗っていた機体に目を向けた。 そして、戸惑うかのように私に聞いてくる。

「ラクス、あれが俺の乗っていた機体なの?」

「はい、あなたが乗っていらした機体ですわ。」

私は彼に不安を与えないように、微笑んで答えた。
そう言った後の彼は再び愛機の方に視線を向けて、複雑な顔をしていた。
私は何故、彼がそんな顔をするのか分からなかった。
自分の機体であるのに、何故複雑な表情をするのか・・・記憶がないから、複雑な表情をしているのだろうか? 
それとも、別の意味があるのだろうか?

「とりあえず、乗っても・・・いいかな?」

彼がふいにこちらに向けて、そして聞こえてきた声は不安な声が混じっていた。
私は、もう一度まだ信じられず戸惑いながら聞いてくる・・・彼の不安を取り除くかのように伝える。

「ええ、あなたの機体ですから。ご自由になさってくださいな。」

そして、彼は何か決心したように足を踏みしめて 無重力の中
上に向かって飛んでいき、自らの機体のコクピットに向かい入って行った。
ふと視界に、緑のパイロットスーツを来た人達が私たちの事に気付き、近寄ってくる。

「ラクス様」

「よろしかったのですか?
 素性も知れないのにも関わらず、おまけに記憶がないと聞き及んでいましたが・・・」

ジンのパイロット達は先程、コクピットに彼が入っていったことを目撃し
不安と警戒を持ちつつ、ラクスの所に聞いてきた。

「大丈夫ですから、心配しないでください。 この機体は彼の物ですし・・・
 記憶を取り戻す手がかりはこれしかないのですから。」

私はパイロット達の不安を取り除くように微笑んで言う。

「ピンクちゃん、私たちは彼が出てくるまで、ここで待ちましょうね?」

「ハロ ラクス オマエモナー」

ピンクちゃんが無重力の中、フワフワと飛び回る。
そしたら、彼が乗っていた機体が徐々に碧い色が・・・淡く光っていた。
まるで、命が吹き込まれたかのように。
そして、それが彼が起動させたのだと分かった。
この場にいたクルー達は起動したことに驚いて警戒していたのだけれど、私が何も慌てなかったのを見て、警戒を解けてくれたのを嬉しく思った。

数分か経った頃でしょうか。
機体が静かに光が消えたのを見て、そしてコクピットから彼が出てきた。
何故か、私を見た途端・・・苦笑をしていた。何故、苦笑していたのか分からない。
彼は苦笑を浮かべながら、私の下へ静かに降り立った。

「何か分かりましたか?」

苦笑を浮かべた彼に、私は首を傾げながら聞いた。何か分かったのだろうか?
けれど、彼は目を静かに瞑り・・首を横に振り、先程調べた自らの機体に目を向けた。

「俺に関する情報は何一つ得られなかった。」

彼は悲しみとも苦しみともいえる様な、そんな顔をしていた。

「けれど、この機体の名前だけは分かったよ。」

「何とおっしゃるのですか?」

「ヴォルレントというらしい」

彼はその名を呼んだ時、何か決意したように・・・けれど、どこか迷っているようで。
まるで何か酷く恐れてるような、そんな表情。

「貴方はこれから、どうなさるのですか?」

私はこれからのことについて決めたことを、今ここに聞く。
出来ることなら、彼はここに残って欲しい・・・そんな希望を抱いて。
けれど、この問題は彼自身が決めることで そう言えなかった。
彼はこちらに視線を向けて・・笑って・・・笑っ・・て?

「これから、どうしようか?」

彼の言葉に私は呆気にとられた。
どうしようか、などと聞かれるとは思ってもいなかった。
何故かそう言った割にはあんまり困った顔なんかしていなくて、笑っていて
そんな彼に、私はどこかで嬉しさと喜びと切なさが出てきて・・・

「では、私の傍にいてくれませんか?」

その言葉に一番驚いたのはジンのパイロット達でもなく、クルーの人でもなく、
記憶喪失の少年だった。

「何故、俺がラクスの傍に? 素性の知れぬ俺がいるのはマズイのではないのか」

「どうしようか?と聞いたのは貴方ではありませんか?」

そう答えると、彼は困惑した表情をしてきて・・・
ここで私は彼が寝ている間に、クルー達に言って承諾してくれたことを言う。

「貴方が私の傍に居てくれることは、既にこの船の皆さんも承諾済みです」

そう言うと、今度はビックリとした表情をしていて何だか可笑しく思ってしまった。
彼の色んな表情が見られて、どこか嬉しい反面があったと思う。
彼は少し考えて、そして今度は穏やかな表情で言ってきた。

「まあ、行く当てもないから ラクスの恩を受け止めてもいいかな。」

彼が言った言葉に私は嬉しくて、微笑んで・・・
この時、顔がほんのり赤くなっていたことを私は気付かなかった。

―――彼が私の傍に居てくれる事が決まった今、今度は彼の名前が必要となるでしょうね。

「それから、名前はどうなさいますか?名無しでは、これから不便もありましょう。」

そう聞くと、彼は何か考え事をしていて・・・
どのような名前にするのか考えているのだろうと思っていたのだけれど、違った。

「そうだな名前がないと困るよな。
 ラクスでよければ、俺に名前を付けてくれないかな?」

今度は私に彼の名前を付けて欲しいと言われた。
どこまで彼は優しいのだろう。過去を求め、そして今を生きようとする
彼の道はどのような道を辿るのだろうか。
そんな彼に私は、彼に相応しいとも言えるのか言えないのか分からないけれど、
いつの日か掴んで欲しいという思いを込めて名前を伝える。

「・・・ウィル。 ウィル・クールドと呼んでもよろしいでしょうか?」

ウィルの意味は【意志】という意味。
記憶のない彼に、この名を決めたのは自らで未来を手に入れて欲しいという思いがあったからかもしれない。
そして、彼自身の記憶が思い出させることを願っての意味も含まれてるのかもしれない。たとえ、そうでなくても何故かこの名を与えたかった。
その名に恥じない存在で在り続けることを、いつの日か記憶を取り戻す・・その時まで・・・

「ラクス、俺は・・・俺に与えられたウィルという名と、
 俺の愛機であるヴォルレントと共に歩いていこうと思う」

そう言った彼に私は穏やかな顔で首を縦に振った。
彼、ウィルは迷いを振り切るように一歩踏み出して・・・前へと歩みはじめた。
与えられた名とウィルの愛機であるヴォルレントと共に。


*****

あとがき

ラクス視点、微妙に変な文章になっている気がする。

まあ、読者様の反応を待つ俺です。

さあ、次の展開は・・・

・・・・・・・・・次回をお楽しみに。



[19281] 第六話 哀しみの星々の海の中で
Name: 碧輝◆324c5c3d ID:28ca8c51
Date: 2010/07/03 18:54
 第六話 哀しみの星々の海の中で


現在、ウィルは私の傍で座っている。
あれから、ウィルから〝この世界のことについて色々と教えて欲しい〟と
言われたため、立っているのもなんなので 客室デッキに移動し、このような状況にいる。

ウィルはヴォルレントの中にあったのか、ノートPCを持ってきて色々な情報を漁っていた。

―――これでは、私が教える意味がありませんわね。

ラクスは顔には出さないが、不満そうだった。

ウィル、自分で言っておきながら、それですか?

「ラクス?」

ウィルはラクスの様子に気付き、話し掛けてきた。

「は、はい!」

ラクスは急に呼ばれたことに驚いて、思わず叫びにも似た声を出してしまった。
そんなラクスの声にウィルはどうしてそんなに驚くのか分からなくて、首を傾げる。
ラクスは何とか落ち着きを取り戻しながら、呼び掛けられた事に理由を聞こうとした。

「あの、何か分からないことでもありましたか?」

「ああ、一応少しは分かったようで分からない事もあるけど、この〝ユニウスセブン〟って?」

ウィルがPCに私に向けさせて、〝ユニウスセブン〟という画面と言葉を見て聞き、私は顔を沈ませた。

俺はラクスの表情が沈んだ顔になったのを気付き、不味いことを聞いてしまったのだろうかと思った。

「ごめん、なんか聞いちゃ不味かったみたいだな」

俺は慌てて、謝罪しながら別の話題を探そうとしたら

「いえ、お答えします。 この世界について色々と教えて欲しいと言ったのですから。」

ラクスも慌てて答えた。
ウィルが教えて欲しいと言われたのだから、それに応えようと。

「無理…しなくてもいいけれど?」

ウィルはラクスの表情がまだ曇っている感じがして、話題を別のことに変えようと
思っていたが

「大丈夫です。」

それでもラクスは教えてくれるらしい。
もっとも、ラクスは別の意味で応えようとしているのだが…ウィル自身は気付かない。

俺は軽く首を縦に振った。
それを見たラクスは静かに言った。

「〝ユニウスセブン〟は私達が住むプラント120基あるコロニーの一つで、食料生産コロニーでもあったのです。」

ラクスはウィルに分かるように静かに話していく。

「今から…一年程前の事です。
 その日に『血のバレンタイン』という〝ユニウスセブン〟の悲劇が起こったのです。」

ラクスは両の手を握り締めて、再び顔を曇らせた。
ウィルは顔を顰める。

「『血のバレンタイン』? 重要な誰かが亡くなったの?」

「いえ、そのコロニーに核ミサイルを撃ち込まれて…
 〝ユニウスセブン〟に住んでいた24万3721名が犠牲になったのですわ。」

「…そんな悲しい事件があったのか。」

ウィルは核と24万という犠牲に驚き、そして心の中で嘆く。

「…はい。それで私達は今、デブリベルトに向かっています。」

私は今、これから向かう場所の事を告げる。

「デブリベルト?」

そう告げたら、デブリベルトのことも知らないようで 私は再び答える。

「そこに〝ユニウスセブン〟があるのです。
 私達は『血のバレンタイン』の一周年式典に際し、ユニウスセブンの残骸への追悼慰霊団の派遣調査の為に行くのですわ。」

「そっか、その道中 俺に出会ったというわけだね。」

「はい」

ラクスはこれからのことについて詳しく教えてくれた。
色々と教えたことに満足したのか、曇っていた表情がなくなっていた。

俺はそんなラクスにほっとした気分もあったが、このユニウスセブンのことを考えると
これほどの悲しい事件があったのに、何故記憶に無いのか思い出せないのか
複雑な気分だった。
ウィルはPCのキーボートを叩きながら、色々と考えていた。

ラクスは再びPCに向けたウィルを見ていた。
そして、先程24万という犠牲になったことを驚いたウィルの表情を思い出していた。

―――あの表情は驚いていたというよりも、悲しみ嘆いていたようでしたわ。

あの表情は一瞬の出来事だったけれど、忘れたくないと思った。
私が話している時、ウィルはただただ静かに聞いてくれたおかげか 心地良い時間を感じていた。

そんな思考の海に漂っていると…耳元に声が聞こえてきて

「…ス、ラクス」

「あ、はい?」

今度は、ポケっとした返事をしてしまった。

―――私って…どうしてこう返事してしまうのだろう

微笑みの顔でウィルに向けた私は、今度はどんな質問なのだろうかと首を傾げる。

「こんな事、訊くのはどうかと思うけど…さっき、核ミサイルが撃ち込まれたって言ったよね?」

「…はい」

「何処が、核ミサイルを撃ったんだ?」

本当に訊いちゃ不味いことだって分かるけど、どうしても知りたかった。
PCに載っていることが真実だとは限らないと思ってきたから。
何故ならPCに記載されてる情報は、プラントの自爆作戦だとか自作自演だとか
批判されてるような文章が書いているのだから。

「・・・・・・」

―――あ、沈黙・・・別の話題に変えよ。

「あ、えっと・・・その悲劇の引き金によって戦争が始まったんだよね?
 どこと、どこが戦っているのか教えて欲しいんだけど?」

PCによる情報は戦争が始まっただけで、どことどこが戦っているのか分からなかった。
だから、今度はこっちの質問に変えたのだ。

―――ホントにこの情報 意味ないや・・・いや、役に立たないな。

そう聞いてくると、今度は答えてくれた。
というよりも、何処が核ミサイルを撃ったかも教えてくれた。

「詳しいことは分かりませんが、地球連合軍が核ミサイルを撃ったとも聞いています。
 そして今、起きている戦争は地球連合軍とザフトの両軍が戦っているのです。」

ラクスは哀しみという表情で目を伏せている。

「地球連合軍とザフト? 」

ウィルはまた首を傾げて、頭の上にクエスションマークが見えた気がした。
今度は地球連合軍とザフトのことについて、詳しく教えようと思ったラクス。

「今度は地球連合軍とザフトのことについて教えてあげますわ。」

「あ、ごめん」

くすくすと笑うラクスにウィルは申し訳なさそうに謝った。

「地球連合軍とザフト。
 つまり、ナチュラルとコーディネイターに分かれているということです。」

今度は聞いたことのない別の単語に、俺は首を傾げた。
これだけの単語が記憶にないというのは一体どういうことなのだろうかと思った。

「自然と調整?」

首を傾げて、そう答える彼に私は苦笑してしまったと思う。

「意味はそうですが、違います。
 一切の遺伝子操作を受けず、自然に生まれた人々をナチュラルと呼び・・・
 遺伝子操作によって生まれた人々をコーディネイターと呼ばれています。」

「それがナチュラルとコーディネイター」

「そして私は、コーディネイターの一人でもあります」

「そっか」

私がコーディネイターであることを告げたら、ウィルは驚きもせずにただ一言きっぱりとはっきりとあっさりと返していたことに、ポカンとしてしまった。

「あの・・・気にならないのですか?」

「・・・何が?
 あぁ、ナチュラルとかコーディネイターとか俺はそんなの気にしてないから」

これもあっさりと返ってくる。
ウィルは嫌悪とか嫉妬とか そんな感情もなく、ただ純粋な思いで言ったのだ。
私はどう反応して良いのか困惑してしまったけれど、何故か嬉しい気分になった。

―――もし記憶があっても、きっと同じような事を言っていたでしょう。
     心配することはありませんでしたわね。

横でラクスが嬉しそうな顔をして笑っていて、俺はほっとした。
何故なら、最初に見た曇っていた表情が無くなっていたから。だから、俺も笑った。

―――これで、だいたい・・・この世界の事を知った。 今、起こっていることも。
     なら、さっきのは地球連合軍の奴らか。 また、彼らがこの船を襲う可能性も高い。
     だったら俺はヴォルレントの力で守ろう。

そんな事を思い、俺は色んな事を軽く話してくるラクスと、笑い合った。


静かな星々の海の中で、シルバーウィンドは哀しみに渦巻くデブリベルトへ着々と近づきつつあった。


*****

あとがき

とりあえず、こんなもんで・・・

ウィルはコーディネイターとかナチュラルとか、興味はないのです。

その理由は別の何話かで明らかになるでしょう・・・と思う。

では、次回をお楽しみに。


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