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中国:日本企業買収加速 ラオックス再生を後押し

自ら路上に出て、中国人観光客に割引クーポンを配るラオックス本店の飯野店長(左)=東京都千代田区の同店前で2010年6月、井出晋平撮影
自ら路上に出て、中国人観光客に割引クーポンを配るラオックス本店の飯野店長(左)=東京都千代田区の同店前で2010年6月、井出晋平撮影

 自動車部品から家電量販店まで中国資本による日本企業の買収が加速している。買収で経営や仕事はどう変わったのか。中国の家電量販店グループ最大手「蘇寧電器集団」(南京市)傘下入りから1年を迎えた東京・秋葉原の家電量販店、ラオックスの変容ぶりを追った。【井出晋平】

 6月中旬、秋葉原のラオックス本店。午前9時の開店と同時に観光バスが次々に横付けされ、中国人観光客が店内に吸い込まれた。電気炊飯器を3個買った50代の中国人男性観光客は「中国語で丁寧な商品説明を受け、納得のいく買い物ができた」と満足気だった。

 8期連続の赤字決算など業績不振に陥ったラオックスは昨年6月、中国・蘇寧電器に出資をあおいだ。羅怡文(らいぶん)社長ら新経営陣の下、同10月末には本店を全館で免税手続きができるように改装、今では来店客の約6割は中国人観光客。デジタルカメラから炊飯器までまとめ買いする彼らの旺盛な消費力のお陰で「本店の売り上げは蘇寧傘下入り前から倍増した」と、飯野信和店長(40)は語る。

 店の様子も大きく変わった。本店の店員(約120人)の3分の2は中国やロシア、ブラジル、セネガルなどさまざまな国籍の外国人。いずれも複数の言語が話せ、日本語も含む123の言語で顧客対応ができるという。売り場には海外仕様の家電専用コーナーも設けられ、日本語とともに、英語や中国語の表示が並ぶ。

 89年入社の生え抜きの飯野店長は「もっとも変わったと思うのは、トップダウンによる経営決断の速さ」と語る。本店では、年明け以降、売り上げが増える一方、外国人社員は日本人のように残業はしないため、人手不足感が高まった。飯野さんが羅社長に相談したところ、「必要なだけ雇えばいい」と二つ返事でOK。4月には新たに20人近い社員を採用した。飯野さんは「以前ならこんな即断即決は考えられなかった」と話す。

 また、商品の仕入れも店ごとにバイヤーを置いて行う方式に変わり「売れ筋を素早くそろえられるようになった」(飯野さん)。バイヤーは中国人観光客らが欲しがる商品の詳細なリストを作り、家電だけでなく、老化を防ぐ成分を配合した化粧品などを仕入れ、それが売り上げ増加につながっている。

 ヤマダ電機やビックカメラなどメガ家電量販店との値下げ競争に敗れ、ラオックスは一時経営危機に直面した。かつて130以上あった店舗も蘇寧傘下入り前のリストラに次ぐリストラで現在は6店舗になった。メーカーに対する価格交渉力は弱く、「価格競争では今もライバルに太刀打ちできない」(飯野さん)。しかし、中国人観光客という新たな“お得意先”ができたラオックスにとっては、政府が7月1日から中国人の個人観光査証(ビザ)発給要件を大幅に緩和したことは追い風。3年後はラオックス全体で売上高を現在の7倍の700億円にする目標を掲げるなど、再建の道が開けつつある。

 【ことば】蘇寧電器集団 中国で業界首位の大手家電量販店グループ。90年に設立、本社は南京市。04年に深セン証券取引所に上場。09年の売上高は1170億元(約1兆5000億円)。中国の300以上の都市に900以上の店舗を展開。09年6月にラオックス買収を発表、持ち株比率29%で筆頭株主になった。

 ◇買収、製造業が5割 技術流出の指摘も

 M&A(企業の合併・買収)助言会社「レコフ」(東京都千代田区)によると、中国企業の対日M&Aは06年以降本格化。リーマン・ショックの影響で日本のM&A市場全体が前年比約2割減と落ち込んだ09年も、中国企業による対日M&Aは1件増の26件と増え、買収金額ベースでは約4.2倍に拡大した。

 今年1~3月期も前期比3件増の9件で、市場では「人民元上昇もあり、今後、中国企業の対日M&Aはさらに広がる」(米投資会社)との観測も出ている。買収の態様では、ラオックスやレナウンのように経営不振から中国資本の支援を仰ぐケースの他、最近は中国市場進出を狙って積極的に中国企業との資本提携を探る例も出始めている。

 中国企業の日本企業買収の内訳を見ると、約5割が製造業。電池会社から出発し、電気自動車(EV)を主力とする有力自動車メーカーに急成長した「比亜迪汽車(BYD)」(深セン市)が今年4月、世界的な金型メーカーの「オギハラ」から館林工場(群馬県館林市)を買収し、話題を呼んだ。

 優れた日本の製造技術の獲得が狙いで、対日M&Aは中国メーカーの中長期的な成長戦略に組み込まれつつある。中国企業のM&A攻勢に、日本の経済界や政府内には「技術流出で日本のモノ作りの競争力が低下しかねない」(経済官庁幹部)と懸念する声もある。一方で、潤沢な資金力を持ち、母国に世界最大の消費市場を抱える中国企業によるM&Aは「日本企業にとって一気に業容を挽回(ばんかい)できるチャンス」(アナリスト)との見方もある。

毎日新聞 2010年7月4日 9時29分(最終更新 7月4日 10時21分)

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