悪説 桃太郎

338 名前:悪説 桃太郎:2010/03/07(日) 11:43:20 ID:n5KIhuxG
あるところに、鬼達が住む楽園がありました。
鬼はは人間と同じ姿をしています。人間と違うのは、頭に角があり、力が人間に比べて大層強いこと。
たったそれだけのことで、彼らは人々から強くうとまれていました。
ですから、やさしく温和な心を持つ彼らは、人間達と仲良くしたいと思っていますが、その願いは中々叶えることはできません。
元々、彼らは人間達の住む里から離れた、山の奥ふかくに住んでいたのですが、人間が生活の場を拡げたことで、だんだんと住処を追いだされてしまいました。
住み場所が無くなった鬼達ですが、彼らは人間達を責めません。
人間達は生活の場所を拡げるに相応しい発展をしただけなのだと受け取ったのです。
山が完全に人間の物になると、彼らは海へでて、人間達の住処から離れた島に向かうことにしました。
何時かこういう日が来るのではないかと、鬼達は遥か昔から、山の木で作ったイカダを備えていたのです。
人の寝静まった夜に、ひっそりとイカダを浮かべて、海を渡ること半日。
次の日の昼には島についておりました。
まだ人間も、もちろん鬼さえも、住んではいない島。
そこにはおいしい果物のなった木々が並び、美しい獣達が静かに暮らしている、まさに楽園でした。
元々は山に住んでいた鬼達です。新しい自然の中でも、すぐに溶け込み、彼らの文化を築いてきます。
いつしか、そこは鬼達の住む島、「鬼ヶ島」と呼ばれるようになりました。

これからする話は、鬼ヶ島が出来てから200年の時が過ぎたころのお話です。

ある日、鬼六が田んぼ仕事をしていると、
明るく元気な声が聞こえてきました。彼が声のする方を振り向くと、美鬼が美しい色の果物を手に持ち、走ってくるところが見えました。
「美鬼じゃないか、嬉しそうな顔をして、どうしたんだ?」
美鬼はその名が現す通り、器量のいい、元気な娘です。鬼六は、彼女のことを慕い、また彼女も鬼六のことが好きでした。
「忙しいときにごめんなさい。鬼六さん、これ差し入れです」
そう言って差し出すのは、あの可愛らしい形をした果物です。
「おお、桃じゃないか。珍しいなあ。俺はこれが大好きなんだ」
大きな体をしていながらも、鬼六は甘い物に目がありません。一口かじり、うまいうまいと大喜びです。
「人ノ島へ行った夏鬼から送られてきたの。今向こうでは大人気なんだって」
美鬼は笑顔で言いました。
人ノ島に旅立った三人の鬼、夏鬼、絹鬼、真鬼は、美鬼の幼いころからの親友です。
彼女達は、人間達が自分たちと仲良くしてくれるかどうかを知るために、自分達から人の都へと出向いて行ったのです。
「むこうでは、桃がよく採れるんだろうなあ。行ってみたいなあ」
舌なめずりをしながら、夢見る様子で鬼六は言います。彼も他の鬼達同様、人間達と仲良くすることを強く願っているのです。
「大丈夫よ、鬼六さん。この桃が届いたのはきっと、三人が人間達と仲良くなった証よ。私達の夢ももうすぐ叶うわ」
そうだなと、鬼六は笑い、つられるように美鬼も笑いました。二人の笑顔は、鬼ヶ島を照らす太陽のようでした。

339 名前:悪説 桃太郎:2010/03/07(日) 11:43:50 ID:n5KIhuxG
「桃様、これで1週間になります。このままではあの娘は餓死してしまいます」
ここは人間の住む都、その中でも最も美しいと噂される建物、桃之御殿です。
御殿の主人犬山桃太郎は、召使いの言葉を聞いても露ほど表情を変えません。
「だが、他の娘は口にしたのだろう」
「はい、絹鬼、真鬼は、桃様の力を封じ込めた『きび団子』を口にしました」
「変身はどのぐらいかかるかな」
「真鬼は既に犬の力を手にし、絹鬼は後僅かで鳥の力を手にすると思われます」
召使いの言葉に、桃太郎はほくそ笑みました。
それは、仕えて10年になる召使も、思わず背筋にぞくりと、震えが走るほどの冷たい笑みでした。
「今から真鬼の様子を見に行く。支度をせい」
 
御殿には、見とれるほどに美しい庭もあれば、ほおが落ちる程の食べ物もあります。
ですが、多くの者たちは地下にある、大牢獄のことを知りません。
桃太郎を案内する召使いは、この薄暗い牢を知る者の数少ない一人です。
この場にはそぐわない、きらびやかな衣装をまとう桃太郎は、石の敷き詰められた廊下を召使いと歩いていきます。
やがて、一つの牢に辿りつきました。厳重な鎖が、扉に付けられています。
「ここか。鬼娘、真鬼がいる牢は」
「はい、今開けますので……」
召使いが鎖に付けられた鍵を開けます。
先に危険が無いか確認しようと言う召使いですが、桃太郎は、
「俺を襲えば切るまでよ」
そういい、桃太郎は何のためらいもなく、牢に入って行きました。
牢の中には、鬼娘の一人、真鬼がいました。体には犬のような白い体毛、長い耳が生えています。
可愛い尻尾がゆらゆらと揺らす様は、鬼と言うよりも犬そのもののように見えます。
彼女は石の床に横たわって寝ていましたが、主人の匂いを感じ取ったのでしょうか、びくりと体を震わせて、目を覚ましました。
短く切った髪は男の子のような溌剌さです。
柔らかく豊かな胸、細い手あし、そしてしなやかな腰をもった彼女は、とても元気で健康的な雰囲気を持っていました。
犬のような体毛は、彼女の乳房、下腹部を覆い隠していますが、彼女の備える色気を損なうものではありませんでした。
それどころか、ますます妖しく、美しいものにしている、そう桃太郎は思いました。
「真鬼」
桃太郎が、尊大な調子で真鬼に語りかけました。すると、真鬼は途端に頬を赤らめ、媚びるような目で桃太郎を見上げました。
「ずっと待っていました、桃太郎さまあ」
甘い声、熱い吐息が彼女の唇から放たれます。まるで、発情した犬が見せるような、淫靡な仕草です。何かをおねだりするように、彼女は膝をすり合わせていました。
「どうだった、きび団子の味は。えも言われぬ美味さだっただろう」
桃太郎の声一つ一つが、彼女の興奮を燻ぶるようです。首を縦に振り振り、彼女は答えます。
「はい、とてもおいしかったです。あんなおいしいものを食べたのは初めてですっ!」
「そうか。だが、あれで満足してはならん。この世にはもっとうまいものがあるのだ」
 そう言って、桃太郎は真鬼のあごを指で軽く持ちあげました。とろけた真鬼の顔は、桃太郎に見つめられて、さらに溶けだすかのようでした。
「これから手伝ってほしいことがあってな。お前が俺の言うことを聞くなら、お前を満たしてやらんことはない」
主人の手が彼女の胸に伸びます。体毛の上から感じる主人の指の感覚に、すぐに真鬼の体が悦びを感じ始めます。
びくびくと震える体は、彼女の興奮のあおりをうけ、ますます快感をせがみます。
「はあっ、ごしゅ、はあっ、はぁ」
外に伸びた桃色の舌は、熱い口内から逃げだそうとしているかのようにも見えます。
その様子を満足げに見つめる桃太郎は、いじっていた彼女の乳房から手を離しました。
「あっ、ご主人様、もっと……」
未練がましそうに腰をくねらせる真鬼に、桃太郎は言います。
「最高のご褒美は、主人の与える仕事を終えてから楽しむものだ、真鬼。言っただろう。手伝ってほしいことがあるのだ」
もう一度、彼は真鬼の瞳を見つめました。
「お前は俺のためなら何でもするか」
「はい、わたしは御主人のためならどんなことだってやり遂げて見せます」
「かつての友人を陥れるようなこともできるか」
「できます!」
元気に言う彼女は、桃太郎が満足するほどに、冷酷さを秘めた笑顔で言いました。

340 名前:悪説 桃太郎:2010/03/07(日) 11:47:43 ID:n5KIhuxG
真鬼の牢から離れた場所で、捕えられた鬼娘の一人、絹鬼は、必死に自分と戦っている最中でした。
飢えに耐えきれず、差し出されたきび団子を口にしてしまってから、彼女の体にも真鬼と同じように、変身が始まっていたのです。
彼女は鳥の力を得ようとしていました。既に背中からは美しい玉虫色をした、鳥の羽根が生えています。
「……いあ……いやだ……」
彼女は、まだ幼い体を自らで抱きしめるようにし、床にかがみこんでいました。
そうしている間にも、本来の彼女の優しい心は一つ一つばらばらにされていき、これまでになかった新しい感情、残酷な気持ちがあふれていきます。
「わたしがわたしじゃなくなる」
声も、感情を徐々にうしなった、抑揚のないものになってきているのに、彼女は気づいていました。
流し続けた涙ももう出ません。涙を流すということが、どういう感覚であるのかを、彼女はもうすっかり忘れていました。  
凶気をはらんだ瞳の光は、ただ虚ろに前方の扉を見つめていました。
すると、彼女の目の前で、扉が開いたのです。
「ほう、これはなかなか面白い見せ物だな」
絹鬼の主人、いや、彼女達を捕え、きび団子を食べるように仕向けた人間、桃太郎でした。
はばかりない、好奇の視線を投げかけられて、絹鬼の中に、自身でさえ戸惑いを覚える程の、強い殺意が湧きおこりました。
「そうだ。俺が欲しいものはその凶気」
悠々と桃太郎は、絹鬼に近づいていきます。彼女の美しい髪に桃太郎が触れました。すると、先ほどまで彼女が抱いていた殺意はかき消えて、
かわりに深い安心感がやってきたのです。


341 名前:悪説 桃太郎:2010/03/07(日) 11:48:07 ID:n5KIhuxG
「だめっ!」
彼女は叫んで、顔をそむけました。
桃太郎に心を一瞬でも許そうとした、自分を恥じるかのようでした。
「これは残念だ。お前はかなりの人見知りらしいな」
桃太郎はこの状況を楽しんでいました。そして、外に隠していた、絹鬼の仲間の名を呼んだのです。
「真鬼。出番だ、絹鬼を慰めてやれ」
「ご主人様、おまかせくださいませ」
その声と共に牢へ入ってきた真鬼の姿を見たときの絹鬼の表情は、驚きというよりも、恐怖に近い物でした。
絹鬼の友達の真鬼が、まるで犬のような姿に変わり果てていたのですから。
そしてその恐怖は、真鬼の姿を「美しい」と思ってしまった自分にも向けられたものだったのです。
「へえ、絹鬼ちゃんは鳥なんだ。すごくきれいな羽が生えてる」
真鬼は、全く恐れることもなく、絹鬼に近づいていきます。
姿は変わっても、心までは変わっていない。そう絹鬼に思わせるほど、真鬼はあくまで「いつも通り」でした。
でも、普通はこんなに恐ろしいことがあったなら、どうかなってしまうものではないでしょうか。
そう思うと、絹鬼は急に、真鬼の自然さが不気味に思えてきたのです。
「こないで!真鬼ちゃんは普通じゃないよ!」
「何を言っているのよ。わたしはきび団子の力で生まれ変わっても、わたしのままだよ。
絹鬼ちゃんも食べたんでしょ?なら、わたしがどんなにしあわせなのか分かるはず」
嘘だと絹鬼は思いました。
きび団子を食べても、わたしはわたしのままという、真鬼の言葉には嘘があるのです。
だって、このやりとりの間にも、絹鬼は自分の心が、とても邪悪なものに塗り替わっていくのを感じていたのですから。
葛藤の間にも、変身は続きます。絹鬼の足の指から、鷲のようなかぎ爪があらわれ始めました。
変化とともに、何とも言えない気持ちよさが体を包みます。
「いやあ、ううう……」
目を固くつむりながらも、変身がもたらす気持ちよさに耐えることができません。
ですが、真鬼も、絹鬼が今感じているような気持ちよさの末に、あんな姿になったのだと思うと、心をゆるすことはできないのです。
「無理しなくていいの」
震える絹鬼に、真鬼はやさしく囁きました。
耳元で囁く真鬼の顔は、先ほどの笑顔とは一転、冷たい表情に変っていたのですが、絹鬼には分かりませんでした。
「たとえ、あなたが変わっても、わたしはずっと友達でいる。約束よ」
表情が変わっても、その可愛い声には全く邪気が見えません。
絹鬼の行き場のない心は、次第に真鬼に傾いていきました。
「ずっといっしょ?」
「そう、ずっといっしょ」
真鬼の指が絹鬼の人さし指に絡みました。
指きりゲンマン、嘘ついたら針千本飲ます。
固く閉じていた絹鬼の目が、ゆっくりと開きました。見るものに恐怖を与え、委縮させる、鋭い眼光が溢れています。
「ありがとう」
感情のこもらない声で絹鬼が言ったあとすぐです。彼女の身体は、一気に鳥の姿へと変わっていきました。
手足の鋭いかぎ爪、ピンと伸びた尻尾。薄い胸には、羽の色と同じ、玉虫色の衣が覆っていきます。
急速な変身を見て、微笑をたたえているのは桃太郎だけではありません。
犬奴隷となった真鬼も、変身を続ける絹鬼自身も、この異常な事態を楽しんでいました。
心の底から楽しんでいました。

342 名前:悪説 桃太郎:2010/03/07(日) 11:48:51 ID:n5KIhuxG
最後の牢には、真鬼と絹鬼をまとめるお姉さん役のような鬼、夏鬼がいます。
彼女の目の前には、とてもおいしそうなきび団子が置かれています。
たった一つの、それも一口でほおばれるほどの、とても小さな団子ですが、それでもお腹が減っている夏鬼にとっては、喉から手が欲しい程の食べ物だったのです。
ですが、彼女がそれを口にしないのには理由があります。彼女を捕えた桃太郎が言ったのです。
「このきび団子をくえば、お前は俺のものになる。体が強く変化し、心も邪悪に染まってな」
その言葉を聞いているのですから、手を出そうとしてもだせないのです。
「真鬼たちは今どうしているの」
弱った声でつぶやく夏鬼は、もう立ち上がる元気もありませんでした。
長い髪を床に垂らして、じっと時間が過ぎるのを待っていました。ですから、牢の扉が開いても、すぐにはその方向を見ることもできませんでした。
「夏鬼。お前の仲間を連れて来てやったぞ」
彼女を捕えた桃太郎の声です。その声を聞いても、抵抗そぶりも見せないほど、夏鬼は弱っています。
ですが、聞きなれた声が耳に届いた時、夏鬼にまだ残っていた元気があふれてきたのです。
「夏鬼さん、まだきび団子食べてないの〜」
「わたし達と同じように、桃太郎様に染めて頂いたらよろしいのに」
まぎれも無く、真鬼と絹鬼の声です。ですが、彼らの言っている意味が分かりません。
つかの間の元気は、不安に塗り替わってしまいました。
(二人は何を言っているの)
頑張って顔をあげ、夏鬼は二人の声のする方を見ました。
彼女達は以前とは違う姿に変貌していました。
犬と鳥。驚きの声をあげようとした夏鬼ですが、夏鬼が驚いた顔をした時にはすでに、獣のように変身した真鬼が、素早い身のこなしで夏鬼に襲いかかっていたのです。一瞬で、真鬼に羽交い絞めにされてしまい、身動きが取れなくなってしまいました。
「ちょっと、真鬼!どうしたのよその格好!絹鬼も!普通じゃないよ!!」
暴れようとする夏鬼ですが、きび団子によって力を得た真鬼は、鬼達が驚くぐらいに強い力を持っていました。
真鬼の熱い吐息が、夏鬼の首筋にかかります。
「はやく食べてよ夏鬼さん。わたし、夏鬼さんがどのような姿になるか、楽しみなんだからさあ!」
興奮した真鬼の声は、発情した犬のようです。
「夏鬼さんは恐れているだけなんです。わたしもそうでしたが、今では、なぜ自分があんなに強情になっていたのか分かりません。受け入れるのも勇気ですよ」
きび団子を手に、ゆっくりと夏鬼に近づいてくる絹鬼の顔は全くの無表情で、声にも感動というものがありませんでした。
ですが、その瞳はぞっとするぐらい恐ろしい光を湛えていたのです。
夏鬼は恐ろしくなって、ますます暴れ出します。ですが、真鬼の前では赤ん坊同然でした。
その様子を静かに見守っていた桃太郎がいいました。
「この二人はすすんで俺の出すきび団子に手を出したのだ。こんなにおいしいものは他にないと言ってな」
「嘘よ!」
「嘘ではない。だからこそ、二人は今までの自分を捨てて、俺に仕えているのだからな」
桃太郎との問答している最中にも、きび団子を持つ絹鬼の手が、すぐ顔の前にきていました。
「嫌っ!!わたしは変わりたくない!!嫌よ!!」
歯を固く食いしばり口に入れまいとする夏鬼に、桃太郎は感心したようでした。
「とても強い精神力を持っているな。このままでは、餓死するまでお前はきび団子を口にしないであろうな」

343 名前:悪説 桃太郎:2010/03/07(日) 11:49:17 ID:n5KIhuxG
絹鬼の方を向き、桃太郎は命令しました。
「女には下半身にも口があるだろう。そこから食わせてやれ」
「え、うそ!やめて!!いやあああああ!!」
抵抗も空しく、絹鬼の鋭い爪は、夏鬼のまとっていた褌を切り裂きます。夏鬼の秘密の部分が、牢の中にあらわになりました。
「くくく、可愛いものだ、夏鬼。女のホトから食うという贅沢、真鬼も絹鬼もせなんだぞ」 
絹鬼の爪が、優しく夏鬼の核に触れました。その鋭くも甘い感覚は、夏鬼の体の力を一層こわばらせました。
「許して、いや、いや、いやだあああ!!食べる!口を開くから、そこだけはやめて!!」
「なに、既に口は開いているではないか。……絹鬼、夏鬼を少し素直にしてやれ」
いったん絹鬼の手が止まります。そして、絹鬼は夏鬼の瞳を見つめます。
「夏鬼さん。じっとわたしの目をみつめていてください。そう、じっと」
「ああ、あ……」
絹鬼の瞳を見つめたときです。夏鬼は、絹鬼の瞳に自分が吸いこまれていくような感覚を覚えたのです。
再び、絹鬼は夏美の秘密に手をのばしました。
「ははは、存分に楽しめ、夏鬼」
桃太郎のあざけるような声も既に夏鬼には聞こえていないようです。
狂乱状態に陥りながらも夏鬼は、大事なところを慰められて、深い心地よさを感じずにいられません。
後ろからも、真鬼の甘い吐息が鼻孔をくすぐってゆきます。
その吐息が体に入ると、夏鬼の心には淫らな思いが湧きおこり、体も熱く、さらに熱く、溶けだしていくように興奮していったのです。
いつの間にか、夏鬼は興奮に耐えきれず、真鬼のように発情した吐息を漏らしていました。抗いの言葉はもう発していません。
下の方も大変なことになっていました。
絹鬼の指は、いつの間にか、水っぽい音を立てています。
夏鬼のたまらない興奮が、彼女の体を濡らし、絹鬼の指にも注いでいたのです。
「ふああっ、ああ、いいの、もっと、ほし……」
僅かな時間で、淫乱になってしまった夏鬼ですが、これは仕方ないことなのです。
彼女の精神は、桃太郎達が牢に足を踏み入れる前から半ば壊れていました。
そこに、真鬼の甘い息、絹鬼の眼を受けては、どうしようも無いのです。
絹鬼の瞳を見つめた者は、心の全てを絹鬼にさらけだし、意のままに操られてしまいます。
また、真鬼の甘い吐息を吸った女はみな、性欲に身をたぎらせる牝と化し、我を忘れるのです。
彼女達の力を、何の抵抗もうけることなく受け入れるほど、夏鬼は弱っていました。
耐えろ、というほうが酷という物でしょう。
二人の責めによって淫らに染まった夏鬼の股からは、食べ物をせがむかのように、女だけが放つヨダレが溢れては地に落ちて行きました。
「さあ、夏鬼。食事の時間だ。存分に味わえ」
その言葉と同時に、絹鬼の指がきび団子を夏美の肉壺に入れてしまいました。
「ふあああああ!!」
それだけのことで、夏鬼は快楽の果てに達してしまったようでした。
天を仰いで、口をだらし無く開いています。力を失って倒れそうな彼女を、しっかりと真鬼は抱きとめていました。
「そろそろだね!夏美さん!」
「怖がることはありません。力に身を任せてください」
真鬼と絹鬼の言葉を、夏鬼はぼんやりとした様子で聞いています。自身をすでに失ったようです。
彼女の変身が始まったのはすぐのことです。
抜けた筈の力が、また体に戻ってくるのを夏美は感じました。
徐々に体が動くようになります。力が完全に戻りました。ですが、まだ力の奔流は止まりません。
「ああ!?ああああ!うがっああ!!!」
彼女に、なめらかな山吹色の毛が生えてゆきます。
同時に、引き締まったお尻からも、細長い尻尾が生えてきました。
「かわる。わたし、かわるんだ」
うわごとのように言う夏鬼の表情に、嫌悪は全く現れておりません。それどころか、口元には笑みさえ浮かんでいます。
いつの間にか、真鬼は夏鬼を離していました。真鬼は欲情にまみれた顔を隠そうともしていません。
絹鬼も、相変わらずの無表情ですが、目には喜びの色が浮かんでいます。
美しくも細い彼女の体に、体内のきび団子がさらに「力」を送り込みます。
既に彼女の体は、詰め込まれていく「力」に、今にもはちきれそうになっていました。
狂気をはらんだ力は、彼女の精神を侵していきます。
そしてついに、夏鬼は溢れる力に心を支配されてしまいました。
「あああ!!があああああああああ!!!!!おああああああああああ!!!!!」
夏鬼は、背を大きく反らせて、地下牢中に響くかのような、狂気の叫びをあげました。
この時、夏鬼は桃太郎の僕として生まれ変わったのです。


344 名前:悪説 桃太郎:2010/03/07(日) 11:49:54 ID:n5KIhuxG
変身が終わりました。美しい肢体にまとった山吹色が、艶やかに動きます。夏鬼は猿の力を手にしたようでした。
限度無く、体に力を蓄えておける能力です。
「ご主人様」
夏美は桃太郎の前にひざまずきます。
「わたしは馬鹿でした。早くきび団子を頂いておりましたら、すぐにでもこの姿を桃太郎様にお見せできましたのに」
心の底から悔しそうな声を出す夏鬼の頭をなでながら、桃太郎は言った。
「謝らずともいい。俺は嬉しいのだ、夏鬼。お前が美しく変身してくれたのだからな」
「ありがとうございます、ご主人様!」
 


人ノ島で何があったのかを知らない鬼六と美鬼達は、送られてきた桃に期待感を寄せていました。
この桃はきっと、人が鬼を受け入れてくれた証なのだと。

彼らは知りません。1カ月後に、かつての仲間を率いた桃太郎が、鬼ヶ島を自分の物にしようとやってくることを。

彼らは知りません。送られてきた桃は、桃太郎からの宣戦布告の証だということを。



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