布川事件再審
2009年12月18日
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裁判所も反省と検証を
茨城県で1967年に男性が殺害された「布川事件」の再審開始が決定した。今回の再審決定は、DNA鑑定という決定的な冤罪(えんざい)の物証があった「足利事件」とは違い、目撃証言など新たな状況証拠の積み重ねによって認められたもの。今後の再審請求の間口を広げる前例となる決定だ。遅きに失した感があるとはいえ、冤罪の疑いが強い過去の裁判について、現在の司法が正面から検証する姿勢を見せたといえよう。日弁連などによると、戦後に発生し、無期懲役か死刑が確定した事件で再審が決まったのはこれで7件目である。再審では、審理中の「足利事件」を除いてすべて無罪となっており、「布川事件」も無罪となる公算が大きい。自白に頼った乱暴な捜査の過ちが、再び明らかになることになる。
忘れてはならないのは、「布川事件」は42年前の事件とはいえ、人権面などが配慮されたはずの現行の刑事訴訟法の下で取り調べが行われているということだ。この事件で問題になっている自白の誘導や、一部の目撃証言に頼った捜査は、現在でも起こり得る。
さらに、再審請求審の高裁では、取り調べの録音テープが編集されていたことも認定された。いま議論されている司法制度改革にかかわる問題ともつながっており、特に取り調べの全面録画・録音など可視化を求める声は高まるだろう。
今後始まる再審公判では無罪を言い渡すだけでなく、冤罪が生まれた原因がどこにあったのかを究明するよう一歩踏み込んだ審理を行ってほしい。
進行中の足利事件の再審では取り調べを録音したテープを証拠採用し、あらためて再生するなどの取り組みが始まっているが、まだまだ不十分だ。「布川事件」で浮き彫りになった、拘置所の代わりに警察の留置場を使う「代用監獄」や、別件逮捕の問題点も、もう一度考える場にしなければならない。
言うまでもなく、すべての再審事件は1度有罪が確定している。それはすなわち裁判所が冤罪を見抜けなかったということにほかならない。強引な捜査を行った警察、検察は当然批判されるべきだが、裁判所も審理自体が自白を過剰に重視した、偏ったものだったのではないかという反省と再検証を求められている。心せねばならない。
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