米政府が在沖縄米海兵隊のグアム移転経費の負担増を求めてきたことで、菅政権は新たな難題を抱え込んだ。海兵隊グアム移転の日米協定は、その経費を日本側も提供すると明記。だが米側はグアムをアジア太平洋地域の軍事拠点として拡充しており、移転と無関係のインフラ整備に日本の資金が転用される懸念が付きまとう。
日本政府内には移転経費と一線を画すため日米協定とは別枠で、国際協力銀行(JBIC)を通じてグアム開発全般への融資を模索する動きも浮上。しかし、これが具体化すれば、海兵隊移転に端を発した資金協力が野放図になりかねない。
グアム移転をめぐる経費負担要求には米側の厳しい財政事情に加え、「米軍普天間飛行場の移設問題をめぐる鳩山由紀夫前首相の迷走により、日米同盟がぎくしゃくしたつけが回ってきた」(外務省筋)との見方も出ている。
2006年の日米合意は在沖縄海兵隊のグアム移転とそのための資金協力、普天間の沖縄県名護市への移設をワンセットと規定している。普天間移設が現実化しない限り、海兵隊グアム移転には応じないとの趣旨だ。しかし米側は在沖縄海兵隊だけでなく、各地の米軍をグアムに集約する計画で、普天間移設のめどが立たない現状でもグアムのインフラ整備を進めている。
米環境保護局(EPA)は今年2月、国防総省に提出した書面で海兵隊グアム移転について、軍施設の建設作業員を含めて最大7万9千人が流入し、現在の人口(約18万人)から約45%増加すると指摘。急激な人口増加で深刻な上下水道の整備不足なども懸念され、EPAは国防総省に整備と経費の見積もり算定を要請していた。日本への経費増額要求には、この影響もありそうだ。
民主党は09年に日米協定が国会で審議された際、「日本側負担の積算根拠や沖縄の負担軽減の程度が不透明だ」として反対した。菅政権が負担増を受け入れざるを得なくなったり、移転目的以外に資金協力を拡大する場合、説得力ある説明を果たさなければ、鳩山前政権に続いて普天間問題でつまずきかねない。
|