「残留血痕は元死刑囚のDNAとは一致せず」--。三浦市で1971年に起きた一家3人殺害の「三崎事件」の再審請求に伴う血液のDNA鑑定で、神奈川歯科大の山田良広教授(49)の鑑定結果が2日、明らかになった。
横浜地裁横須賀支部に出された鑑定書によると、荒井政男元死刑囚(病死)が事件当時、運転していた車の中にあった大工道具袋に付着した微量の血痕を調べた結果、3カ所で血液反応が出た。DNAの塩基配列を分析したところ、複数の種類のDNAの型が検出。荒井元死刑囚は「自分の血」と主張していたが、いずれも元死刑囚の型とは一致しなかった。
血痕は事件後、県警の鑑定で、殺害された食料品店主の男性と同じ血液の型とされ、死刑判決の重要な物証となった。90年の死刑確定の翌年から再審請求を続ける支援弁護団は「結果は残念だが、複数のDNA型検出から、県警鑑定にも疑問が投げかけられている。今後も新証拠を提出していきたい」と話す。
一方、三浦市の遺族は「死刑確定から20年もたちながら、被害者の思いは何も変わっていない。冤罪(えんざい)の足利事件とはまったく違うと思う」と複雑な思いだ。【網谷利一郎】
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■ことば
1971年12月21日夜、三浦市三崎の食料品店で夫婦と娘が殺害され、5日後、知人の荒井政男元死刑囚(09年9月3日に東京拘置所で病死)が、借金を断られたことを理由に包丁で殺害したとして逮捕された。公判では否認したが、90年に最高裁で死刑判決が確定した。
毎日新聞 2010年7月3日 地方版