宮崎県での家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」の感染拡大を受け、県内の市や町が独自の対策に乗り出している。感染防止のために消毒剤を配布しているほか、飼料への助成などで畜産農家の経営を支援。畜産関係者は「万全の態勢で県内発生を防ごう」と緊張感を高めている。
九重町は18日、町防疫対策本部を設置。町役場での本部会議で、本部長の坂本和昭町長は「口蹄疫がいったん地域に入ると、大変な被害が出る。万全の態勢で食い止めたい」と決意を示した。
町職員が総務、防疫、経済対策、交通規制、文教対策の5班に分かれて、今後の対応を協議する。22、24日には、牛や豚を飼う町内の全畜産農家約200戸に消毒用の消石灰を配布する。
この日は、杵築市でも口蹄疫対策検討会議があり、市内の畜産農家111戸に消石灰の配布を決定。市場の中止で子牛を出荷できなかった畜産農家41戸には飼料やミルクを無償で配る。
このほか、別府市や佐伯市、国東市、日出町は、市場中止の影響を受けた畜産農家に飼料を無償配布。日田市、豊後大野市、竹田市、豊後高田市、玖珠町も近く消石灰を配る。県が全畜産農家に消石灰を一度配ったが、散布した消石灰が雨で流出したことなどから、市町が独自配布が必要と判断した。
口蹄疫は野生のシカやイノシシから感染が広がる恐れもある。このため、日田市は猟友会会員にも消石灰を配り、感染が疑われる動物を見つけた場合は早期に通報するように呼び掛ける。
豊後高田市は、畜産農家や職員らによる口蹄疫対策の会合でも、必要最小限の人数で行っているという。市担当者は「人が多く集まることが、感染拡大につながる可能性もある」と細心の注意を払う。
農場への出入りから感染が広がる恐れもあり、日出町は畜産農家22戸に「関係者以外立ち入り禁止」の立て看板を配り、農場入り口への設置を求めた。国東市も同様の看板を近く配る予定だ。
県内外から人が集まる観光施設でも感染防止の取り組みが進んでいる。九重町の九重“夢”大吊橋や、玖珠町にある道の駅童話の里くすでは、消毒液を染み込ませたマットを出入り口に敷いた。
=2010/05/19付 西日本新聞朝刊=