アウトボクサー・菅首相はゴングに救われる?
7月3日18時14分配信 産経新聞
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菅直人・首相 (写真:産経新聞) |
「1対1の真剣勝負ならいつでもやる。1対8の議論は議論ではない。下手をするとつるし上げになる」
菅首相が言っているのは、選挙期間中にテレビ各局が企画する党首討論会のことだ。つまり、党首討論に参加すると、菅首相ただ1人と残りすべての党首との対決の構図になるので、論戦で不利になるということを言っている。要は、党首討論になるべく出演したくないということのようなのだ。
実になさけない。与党第1党の党首たる者、他の全党を敵に回しても一人で立ち向かうぐらいの気概がほしいものだが、菅首相にはその気はないらしい。ちなみに、6月16日に会期延長することなく閉会した通常国会では、民主党は自民党が要求していた党首討論に応じることはなかった。国会での党首討論こそ、1対1の対決なのだが…。
ボクシングでは、打ち合う際のボクサーの戦術に大別して2種類のスタイルがある。インファイター型とアウトボクサー型である。インファイターは接近戦を得意とし、ガンガン打つ。これに対して、アウトボクサーは相手との距離を測りつつ、パンチを出しては逃げる。「ヒット&アウェー」を基本とする戦い方とも言える。
菅首相はアウトボクサー型の政治家と言えそうだ。
もちろん、アウトボクシングは単に逃げ回るだけの戦い方ではない。それだけだと、一発もパンチを打たずに終わってしまう。むしろ、「相手に打たれずにこちらが打つ」と言った方が適切かもしれない。
菅首相が有効なパンチを繰り出しているかどうかは疑問だが、それでも民主党は選挙戦前に会心の一撃を放っている。
それは、鳩山由紀夫前首相と小沢一郎前幹事長の辞任である。それまで劣勢だった民主党はこの一撃によって、一気に形勢を逆転。選挙戦で優位に立った。あとは、無理に相手に近づいて、強烈なパンチをもらうという危険を避け、フットワークを使って敵に距離を詰められないように戦えば、勝ち逃げできる。党首討論のような場はできるだけ避けたいのも当然である。
対する自民党は「消費税10%」というパンチを放ってきた。だが、菅首相は6月17日の民主党参院選マニフェスト(政権公約)発表にあたっての記者会見で、「自由民主党が提案されている10%という、この数字。10%をひとつの参考とさせていただきたいと考えております」と述べた。自民党が繰り出してきたパンチに対して、すかさずクリンチ(抱きつき)で封じる作戦をとったのだ。
しかし、ラウンドを重ねていくにつれて、そろそろアウトボクサーも疲れるころだと思っていたら、実際に各種世論調査で、菅内閣支持率はじりじりと下降し始めた。菅首相自身もふらつき気味である。消費税増税に伴う低所得者対策向けの還付制度をめぐっては、還付を受ける対象者の年収について、菅首相の発言は二転三転。6月30日の演説では、青森、秋田、山形の各県で全然違う額を挙げるなどふらふらだ。
ところが、追いかける自民党の方は、巧妙に動き回る菅首相をなかなかとらえきれない。インファイター型のハードパンチャーかと思ったが、そうでもない。必殺のパンチがあたらないどころか、必殺パンチ自体をほとんど繰り出せないまま、参院選投票日まで残り1週間あまりとなってしまった。投票日がもっと先なら、野党の逆転もあっただろうが、わずか1週間ではなかなか難しいのではないか。足がもつれて倒れそうな菅首相だが、ぎりぎりのところで投票日のゴングが鳴って…。
民主党にとっては「ゴングに救われた」という感じになるのかもしれない。(五嶋清)
◇…先週の永田町語録…◇
(6月27日)
▽16の春
原口一博総務相 子ども手当や高校無償化をばらまきと言う人がいる。本当か。アルバイトしないと通えない高校生もいる。15の春も、16の春も二度と来ない。(青森市の街頭演説で)
▽中身腐っている
江田憲司みんなの党幹事長 民主党政権は、包装紙はピカピカだが中身は腐っている。ばらまいて、無駄を削減できない付け回しを消費増税で国民に向けるかと思うとやるせない。(NHK報道番組で)
▽首相は空き缶
安倍晋三元首相(自民) 菅直人首相が言っている政策はうそっぱちだ。まったく中身がないから「空き菅(缶)」だ。空き缶はリサイクルしよう。(兵庫県尼崎市の街頭演説で)
(6月28日)
▽最後のご奉公
小沢一郎前民主党幹事長 レールだけきちんと敷いて若い人にバトンタッチするつもりだ。強大な権力を打ち倒して乗り越えなければいけない。最後のご奉公の決意だ。(愛媛県今治市での支持者との意見交換会で)
▽与党ぼけ治す
小泉純一郎元首相(自民) 参院ではもうちょっと野党が強くなり、民主党の横暴、独裁をチェックする役割を果たす。自民党はしばらく野党で、与党ぼけを治して頑張らなければいけない。(千葉県市川市の演説会)
▽増税食い止めよう
志位和夫共産党委員長 かつて大平内閣が大型間接税(一般消費税)を打ち出した。共産党は断固反対の旗を立て大躍進し、増税を撤回させた。共産党を伸ばし、増税を食い止めよう。(千葉県柏市の街頭演説で)
(6月29日)
▽民主は昔の自民
小泉進次郎自民党遊説局長代理 昔の自民党を教えてくれるのが今の民主党だ。かつて自民党は「政治とカネ」問題を解決しようとせず、首相が言ったことに党内が反対してさんざん批判された。(大阪市の街頭演説で)
▽徹底的に洗う
蓮舫行政刷新担当相 一度できた事業は30年、40年たってもやめない構造で、お金が垂れ流されてきた。積もり積もった行政の無駄を徹底的に洗いたい。高い壁だが、乗り越えないと国民から政治が信頼されない。(さいたま市の街頭演説で)
▽10%はたわ言
亀井静香国民新党代表 弱肉強食の政治から決別すると言った民主党がぶれている。生活に困っているみなさんの懐に手を突っ込んで、消費税10%アップなんてたわ言を言い出している。(広島市の街頭演説で)
(6月30日)
▽てこ入れ
枝野幸男民主党幹事長 地域にもよるが、各衆院議員の足腰の強さが(参院選)情勢に反映している。足腰の弱い所を党本部として、どうてこ入れするかで十分勝ち抜ける。(松山市で記者団に)
▽逃げている
大島理森自民党幹事長 米軍普天間飛行場移設問題で菅内閣は逃げている。民主党は沖縄に公認候補を出さなかった。県民の選択を仰ぐために公認候補を出して訴えることこそ民主主義だ。(那覇市の街頭演説で)
▽洗脳
舛添要一新党改革代表 閣僚は相当勉強して、役人にだまされないようにしないといけない。菅直人首相は財務相のときに頭のいい財務官僚に洗脳されて、消費増税を言ったのだと思う。(東京・JR秋葉原駅前の街頭演説で)
(7月1日)
▽私の方が
樽床伸二民主党国対委員長 菅直人首相は理科系の頭を持っているので非常に緻密(ちみつ)に話す。話すと誤解が広がっていく。だから本当は私の方が首相にふさわしかったかもしれないが、それは横に置く。(消費増税論議をめぐりJR横浜駅前の街頭演説で)
▽クーリングオフ
小池百合子自民党広報本部長 9カ月試しに使ってみた政権にいろいろ問題があるので、投票日の7月11日を返品期限にしよう。クーリングオフのチャンスだ。(党本部の記者会見で)
▽麻生氏といい勝負
与謝野馨たちあがれ日本共同代表 菅直人首相は主要国首脳会議に行って、相手国の大統領の名前や、英語を知ったかぶりで間違っている。随分漢字を読み間違えた麻生太郎元首相といい勝負だ。(東京・JR秋葉原駅前の街頭演説で)
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最終更新:7月3日18時14分
- 菅直人(かんなおと)
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- 所属院 選挙区 政党:
- 衆議院 東京都第18区 民主党
- プロフィール:
- 1946年10月10日生 初当選/1980年 当選回数/10回
- (写真提供:時事通信社)
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