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県内損失年426億円 宮崎大・根岸准教授試算

(2010年6月30日付)

 口蹄疫による影響は、年間426億円―。宮崎大教育文化学部の根岸裕孝准教授(地域経済)は畜産産出額の減少幅と、商業や運輸業など県内の各産業に波及する影響を地域経済学などの視点から試算した。

 根岸准教授は「(複数の畜産農家によると)口蹄疫発生前の生産水準に戻るまでには3〜5年かかるといわれている。合計1278億〜2130億円に上るのではないか」と話している。

 畜産業では、2008年の産出額のうち、疑似患畜とワクチン接種家畜の殺処分により23%が失われると試算。金額にして牛158億円、豚125億円の計283億円の減少となる。

 ほかの産業への影響は、05年の県内の産業構造を基にした県産業連関表から試算。総額は143億円に上る。最も影響を受けるのは、畜産物を加工して販売する飲料食料品で32億円。続いて、畜産物を運ぶ運輸23億円、飼料などを作る農業22億円、商業15億円、対事業所サービス11億円、金融・保険10億円など。このうち、会社員の給与など各産業における雇用者所得の減少が44億円を占める。

 根岸准教授は「試算にはイベント自粛による影響が含まれていないが、宿泊客1人につき1万3千円が地域で使われるといわれ、実際の損失はさらに大きい」と指摘。復興には「自粛を要請した行政が率先してイベントを誘致し、畜産業のみならず商工業を含めた幅広い経済支援を進めるほか、希望が持てる地域社会をつくるという精神的な視点も必要」と話している。