2010年5月6日 10時42分 更新:5月6日 11時41分
1995年12月のナトリウム漏れ事故で停止していた日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市、28万キロワット)が6日午前、運転を再開した。高速増殖炉は熱伝導にナトリウムを使うため、空気中の水分と反応して火災を起こしやすい難点がある。火災による停止から14年5カ月。原子力施設では世界でも異例となる長期の運転停止期間を経て、国が未来のエネルギーと位置付ける核燃料サイクルの中核施設が動き出した。
原子力機構は6日午前10時36分、19本ある制御棒のうち1本の引き抜きを始め、原子炉を起動させた。8日には、出力0.03%で核分裂反応が連続して起きる「臨界」に達する見込み。
もんじゅは85年に着工し、94年に初臨界に達した。しかし、出力40%で運転中の95年12月8日、2次系ナトリウム配管の温度計が設計ミスで折れ、ナトリウム約640キロが噴出。空気中の水分と激しく反応して火災が起きた。原子力機構の前身の旧動力炉・核燃料開発事業団(動燃)は、事故直後に現場を撮影したビデオの一部をカットして公表。「情報隠し」と強い批判を受けた。その後、組織改革などを進めて体制を見直し、07年5月に改造工事を終えた。
運転再開は当初、08年2月に行う予定だったが、ナトリウム漏えい検出器の取り付けミスや自治体への通報遅れなど不祥事がまた相次ぎ、再開は4回延期された。結局、09年度末までに予算ベースで9032億円が費やされた。
今後は、11年度に出力を40%にまで上げるなど、約3年をかけて3段階で出力を引き上げて性能試験を行う。発電は11年5月ごろの予定で、試験をすべて終了し本格運転に入るのは13年4月になる見込みだ。【酒造唯】
消費した以上の燃料(プルトニウム)を生み出す原子炉。燃えないウラン238に高速中性子を当て、燃えるプルトニウム239に変換する。中性子を減速させない冷却材(一般にナトリウム)を使うのが特徴だ。発電は1951年の米国の実験炉が最初で、現在、商業炉として世界的に主流の軽水炉より先行していた。だが技術的、経済的課題を克服できず、フランスは実証炉を放棄。各国も商用化には至っていない。