mission1
気がつくと俺はどこぞのベッドに横たわっていた。
「ここは・・・どこだ・・・? っ!?奏っ!?」
あの世界で起こった最後の記憶。そう、奏が消えるのを見送った記憶。
「ははっ・・・いるわけないよな・・・。確かに消えたんだからさ・・・。」
消えた後も諦めきれずに何とか掴もうとする動作、何度も泣いて奏と叫んだこと。
すべて鮮明に覚えている。つい先ほどのことのように。
「まてよ・・・?ここは死んだ後の世界じゃないな?ここはどこだ?」
記憶を受け継いでまた同じ姿のまま生まれ変わる。そんなことがありえるんだろうか?
「ここでまたゆりとか来てくれたら楽なんだけどな・・・。」
あちらの世界での同胞、最後まで一緒にいた仲間の姿を反芻してみるが、やっぱり状況は変わらなかった。
「とりあえず行動してみるか。」
部屋を見回してみる。ごくごく普通の男の部屋のようだ。
「こいつは・・・たしかゲームギアだっけか?へえ・・・。」
音無が生きていたころに流行っていた携帯ゲーム機である。
もっとも、音無は受験勉強に専念していたため、こういった類の娯楽には全くの無知であったのだが。
「ちょっと借りてみるか。面白そうだし。・・・っ!?」
その時、音無はいやな予感がした。あの世界での戦闘の経験がなければ気がつかなかったであろう、戦いの気配というものだ。
『なんだ・・・?人の気配がするぞ・・・?』
音無は上着の内側を探り拳銃を出す。あちらの世界でも使用していたグロック17である。
『またこいつを使うことになるなんてな・・・。そもそも何でまだこいつが入っていたんだ?』
そう疑問に思ったが今はこの冷たい鉄の塊がとても心強く感じる。こいつが仲間たちと一緒に戦った記憶を思い出させてくれるのがありがたかった。