今月の結晶写真●水の顔  日本各地の雨水の結晶  
メッセージは空から……大気のようすを伝える雨水   

―月刊『波動』9月号より―      IHM総合研究所研究員 美津孝誠


IHM総合研究所では新しい水の評価法として、国内外の自然水や水道水、音楽を聴かせた水や文字を見せた水、その他さまざまな水の氷結結晶を写真に撮影しています。このコーナーでは最新の結晶写真を中心に興味深いものをご紹介します。

 「雪は天から送られた手紙である」雪の結晶研究で有名な中谷宇吉郎博士は、雪の結晶を分析すれば上空の大気の状態がわかることから、このような叙情的メッセージを残しました。水も同じように、様々な記憶を持っていることは、この「水の顔」のページで皆さんに紹介してきた通りです。今回は「天からの手紙」で、ある雨水を氷結結晶観察の視点から読んでみることにしましょう。
 『水からの伝言』の写真集の中にも、各地の雨水の代表的な結晶を載せています。限られたページ数の中で、どうしても、観察全体でみられる様々な結晶たちのすべてを紹介することはできません。
 そこで今回は、結晶の豊かな表情を理解していただくために、各地の雨水の結晶をそれぞれ3ショットずつご覧いただきます。3枚の写真の中には、最も美しかった結晶もありますが、汚れた雨水の現状を伝える「崩れた結晶」もあります。そして、最後のページにはIHM研究所で算出している結晶評価点数を表にまとめてみました。

A.結晶の中で最もきれいなもの
B.平均的なもの
C.最も不定形だったもの

◆◆◆◆
 さて、全国津々浦々の雨水の結晶というわけにはいきませんが、北から順に観てみることにしましょう。まずは北海道からです。テレビドラマ「北の国から」の舞台である富良野からほど近い美瑛(びえい)町。美しい大地に降る雨水からは、どこか素朴な感じの六角形の結晶が一つ、他のシャーレの結晶はほとんどが微小でした。3枚ある写真のうち最も小さい結晶が平均的に見られました。
 次は、札幌市内の雨水です。ここも一つだけ六角形の結晶が観察されましたが、素朴な美瑛町の美結晶よりも飾りの派手な結晶のイメージがあります。その他は、やはり崩れた結晶が多数を占めていました。
 つづいて宮城県仙台市です。放射上に伸びる結晶は、六角形の形状を目指しているようにも見えますが、分類では六角形には入りません。まったく結晶化しないシャーレも13個ありましたので、雨水の汚れが心配されるところです。
   その隣の県、福島県いわき市からも雨水を送っていただきました。今回の一連の観察では、いわき市の雨水のポイントが一番高くなりました。これは、六角形の結晶が3つ(今回掲載の写真以外に)観察されたためともいえます。
 それでは関東地方に入りましょう。まず、IHM総合研究所のある東京・浅草橋のビル屋上で採水したものです。傘を忘れた日などには、そのまま浴びている雨ですので、もう少しきれいなものを期待したのですが、大きな結晶が半分に割れたようなものがベストショットとなりました。
                      




 次は埼玉県所沢市ですが、実はこの企画で一番お見せしたかった結晶こそ、この所沢の美結晶なのです。『水からの伝言』で紹介したときは、徐々に良くなりつつある状態でしたので、ついに出てくれたという思いです。ここまで完璧な美結晶は、所沢では一つだけでしたがうれしい1枚です。




 
 さて、一気に西へ飛びます。大阪市中央区で降った雨からも六角形の結晶が二つ観られました。メロメロに溶けたような結晶もあり、酸性雨の影響なども心配されます。大気中の汚れが、雨に溶け込んでいるのは事実ですので、何らかの影響が結晶にも現れているのでしょう。
 四国は香川県仲多度郡琴平町からです。残念ながら形のしっかりしたものはほとんどありませんでしたが、その中でも一番きれいだったものと平均的なものを見ていただきます。どんな水に対しても美しい結晶を望む観察者にとって、六角形の結晶が一つも出ないというのは何ともやり切れない思いがします。一番身近な自然水である雨水が、私たちの生活によって汚されてしまっている事実を改めて痛感します。
           
 再び本州に戻って広島県深安郡神辺町の雨水からは、六角形の結晶が3つ観察されました。その中で1番きれいだった結晶と、これは雨水の特徴なのかもしれないのですが、溶けたような結晶もご紹介します。雨水で六角形が観察されると本当に嬉しくなります。
 最後は九州の福岡市です。多重構造のような放射状の結晶が観察されました。結晶を分類すると、不定形が多くなるものですが、そんな中、際立って陥没のある結晶が目立ちました。氷の頂点の結晶ができるべき場所が陥没している状態なのですが、その陥没した周辺を縁取るように結晶も成長していくものが多いようでした。水によっては、陥没したまま結晶化しない場合もあり、そんなときは、水のエネルギーの低下を感じてしまいます。
            

雨水は本来きれいなもの

 各地の雨水の結晶たちの姿、いかがだったでしょうか? 雨水は、私たちの生活の波動を最も含んだ水といえます。波動は物質的なものから発せられる場合もあれば、私たちの想いからも発せられています。その両方の影響を受けるのが氷結結晶だといえます。
 まず、物質からの波動について考えてみましょう。たとえば大気中の汚れ。
 化石燃料の消費によって排出される窒素酸化物や硫黄酸化物は、酸性雨の原因となり、氷結結晶を観察するまでもなく、環境破壊の要因として多くの人が危惧するところです。
 インターネットを覗けば各地で酸性雨の状況を知らせるホームページがあり、データを集める方の地道な活動に頭が下がるとともに、世間の関心の高さが伝わってきます。
 ここ最近の結晶写真のデータを見た限りでは、酸性雨の状況が改善されているとは思えません。結晶を観察していてまったく結晶のかけらも見られない時には、やはり雨水に含まれる不純物の影響を感じます。
 
 雨を汚いもののように感じてしまうのは、今の日本では当たり前のようですが、国によってそれは変わるようです。たとえば、降った雨をそのまま飲用する国もアジアには多くあることでしょう。
 私の友人は、タイに旅した際に甕(かめ)にためてあった雨水を飲み、そのおいしさに感動したと話してくれました。また、先日、出張でスイスに滞在中、雨の日に傘をささない人をたくさん見かけました。多くの人は、雨を気持ち良く浴びたいと思っているそうです。自然を愛するからこそ恵みの雨に心から感謝できるのでしょう。
 そう、雨水は本来きれいなものなのです。
 汚してしまった雨水が、きれいになってほしいという人々の想い。
 では、その想いの波動が雨水に及ぼす影響について考えてみましょう。前述した『水からの伝言』で掲載した所沢市をはじめ、各地の雨水の結晶。その後、本の情報は人から人へと伝わり多くの共感を得ています。

 雨水がきれいになって欲しいという想いは、きれいな結晶になって欲しいという具体的な想念を生み出しました。そんな多くの人のイメージは、酸性雨の中に華開いた結晶として実現したと考えています。もちろん、雨水から一つ二つ美しい結晶が出たからといって、自然環境が改善されてきているとはいえません。でも雨水は、本来きれいなものという忘れかけていた事実を結晶は教えてくれました。
 天からの手紙である雨水の結晶は、大気中の汚れで読みづらくなっているのではないでしょうか。汚れ自体が、メッセージであるなんて考えると寂しくなります……。
 雨水の結晶が、もっともっときれいになることこそ、私たちの生活が自然と調和していることになるのでしょう。調和した生活の中に降る雨。そんな雨こそ天を仰いで浴びたいものです。

 雨水を採水したポイントは、全国に点在する波動クリエイティブセンターのオーナーの方々や、IHMの関連企業の方にお願いして送っていただきました。この誌面をお借りしてお礼申し上げます。ご協力ありがとうございました。

■雨水氷結結果

 

試 料

美結晶

美傾斜

六角形

放射状

格子

不定形

陥没

無し

評価・点数

北海道富良野市

 

 

42

 

 21.8

北海道札幌市

 

 

40

 22

宮崎県仙台市

 

 

 

 

35

13

 10.8

福島県いわき市

 

25

10

 30

東京都台東区

 

 

 

 

35

 12.6

埼玉県所沢市

 

 

34

 24

大阪府大阪市

 

 

 

 

45

 

 14.4

香川県仲多度郡

 

 

 

31

 12.8

広島県深安郡

 

 

 

26

17

 21.4

10

福岡県福岡市

 

 

 

22

25

 

 18.8

※注釈:まず一検体(雨水)につき50枚のシャーレに数滴ずつ分けます。凍らせてあるシャーレ一つずつの結晶形状に対して点数をつけます。六角形の美結晶をもっとも秩序性のある結晶と定め100点とし、そのほか放射状、格子状、不定形、陥没などの形状によって分類して、点数化します。その総合点数を50で割った数値が結晶評価点数です。


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