2010年06月09日

◆ 日本の財政破綻 【 重要 】

 日本の財政破綻は、あるか? あり得る。では、それを避ける方法は、増税か? 違う。

( ※ 本項は重要です。日本の破綻を回避するかどうかは、ここにかかっています。)


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 日本の財政破綻は、あるか? 結論から言えば、十分にあり得る。
 日本はギリシアと違って、国債は国内で消化されるから、財政破綻はない、……という見解がある。これは、過去の分については正しいが、未来の分については正しくない。これまで大丈夫だったからといって、いつまでも大丈夫だという保証はないからだ。

 では、どういうふうに破綻は起こるか? 簡単に言えば、きっかけとして、国内で国債が消化されなくなる可能性がある。(朝日・朝刊 2010-06-09 でも指摘されている。銀行の国債保有額が莫大になり、銀行が国債購入に慎重になり出しているという。)……今はともかく、将来的には、莫大な国債発行が市中で消化されなくなる可能性がある。そうなれば、「赤字国債頼みで予算を立てる」という現状の国家方針が破綻してしまう。
 そうなる可能性はある。では、それは、どういう場合に起こるか? 「将来の物価上昇が予想された場合」だ。この場合、「物価上昇の抑制のために、金利を上昇させる」という方針が取られる。市場金利が上昇すれば、同時に、既存の国債は暴落する。
 こういうことが将来的に予想される。とすれば、それ以前の時点で、国債をもつのをやめたがる。だから、将来になる前に、国債の購入をやめたがる。こうして、国債を誰も買わなくなる。
 こうして国債が売れ残る。すると、国債頼みの日本政府の予算が成立しなくなる。国家は金欠となり、業務ができなくなり、政府がマヒする。「日本破綻」だ。そして、そのことが予想されれば、日本の信用は落ちるから、いっそう国債を購入する人が減る。そこでさらに日本の破綻が深まるし、その時期も早まる。(悪循環ですね。)
 要するに、「物価上昇が予想された」という時点で、(国債の市中消化が困難になって)日本破綻が実現してしまうわけだ。

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 上記の問題は、「インフレ目標」とは正反対である。「インフレ目標」では、「物価上昇」が予想されると、人々の消費や投資が増えて、経済は好転するはずだ。
 一方、上記の話では、「国債暴落」を通じて、国家が破綻する。
 「物価上昇の予想」という同一のことが、前者ではプラスの効果をもたらし、後者ではマイナスの効果をもたらす。……では、どちらが正しいのか? 

 実は、どちらも正しい。「物価上昇」には、「経済拡大」の効果と、「国家破綻」の効果の、二つの効果がある。プラスとマイナスの、両方の効果がある。両面価値がある。
 当り前だが、何事であれ、メリットとデメリットがある。その両面が、上記に示されている。そして、その両面を示すことが、真実を語ることだ。
 その一方、プラス面だけを語り、世の中がバラ色になるとだけ示すような言葉は、詐欺師の嘘だとも言える。それが「インフレ目標」だ。そこでは、プラスだけが語られ、マイナス面が語れない。詐欺師的。

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 では、両面価値があるとして、そのどちらが強く出るのか? プラスとマイナスのどちらが大きいのか? 
 結論から言おう。
 「物価上昇」には、「経済拡大」の効果と、「国家破綻」の効果の、二つの効果がある。そして、そのどちらが強く出るかは、状況しだいだ。状況とは、次の二つである。
  ・ マイルドインフレ   (経済拡大をともなう物価上昇)
  ・ スタグフレーション (経済拡大をともなわない物価上昇)

 この二つは、どちらも物価上昇をともなうが、経済拡大をともなうかともなわないかが、異なる。

 (1) マイルドインフレ   

 マイルドインフレならば、特に問題はない。経済拡大をともなうから、人々は特に不安にはならない。特に、不況期のあとでは、順調な経済拡大が可能だ。(失業者が働くだけで経済は拡大する。経済拡大によって、将来の借金返済も担保される。)……経済は順調だから、社会は安定する。通常は、金利調整によって、激しいインフレは避けられ、マイルドインフレに収まる。マイルドインフレのまま、経済は順調に拡大してく。

 (2) スタグフレーション   

 スタグフレーションならば、大きな問題がある。経済拡大をともなわないから、人々は不安になる。特に、不況期のあとでは、所得の上昇をともなわずに、物価が上昇するから、デフレよりもひどくなり、最悪の状況となる。貧しいなかで、さらに貧しくなるわけだ。
 また、物価上昇は、上昇幅も大きくなり、それでいて、制御が困難となる。たとえば、物価上昇率が 10%とか 15%とかになる。それでいて、物価上昇の抑制のために金利を上げれば、ますます倒産や失業が増えて、生産力が低下していく。
 こうなると、社会は収拾がつかなくなる。国債は暴落し、経済は混乱し、まともな生産活動はできなくなる。倒産が増え、失業者が増え、経済はどんどん縮小する。生産力がどんどん落ちるから、物価上昇はさらにひどくなる。奈落の底に向かって落ちていく。

 ──

 上の (1)(2) のように、まったく異なる二つの状況が起こりうる。そして、その本質的な違いは、経済拡大の有無だ。経済拡大があれば、インフレになるが、経済拡大がなければ、スタグフレーションになる。

 では、経済拡大の有無は、何によって決まるか?
 デフレ期であれば、供給力があるから、需要を増やすだけで経済拡大が可能だ。この場合は、弱い物価上昇があるが、経済は順調に拡大する。マイルド・インフレの状態だ。というか、正常な経済の状態だ。
 一方、供給力が頭打ちの状況では、需要を増やしても、経済拡大はなくて、物価ばかりが上昇する。……これは単純なインフレだ。
 さらに、供給力が縮小していく状況では、物価上昇と景気悪化が共存する。これがスタグフレーションだ。

 スタグフレーションが起こるとしたら、日本の経済力そのものが縮小していく状況だ。そういうことは、あるか? 普通は、ない。ただし、社会が混乱すると、社会不安のなかで、経済力が損なわれていくことがある。
 そして、そのような混乱とは、たとえば、不安から生じた資金の海外逃避による、「国債暴落」などがある。この場合、金利上昇にともなって多くの企業が倒産するので、日本の経済力そのものが損なわれる。社会不安が日本経済そのものを破滅させる。

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 以上をまとめると、次のように、3通りのケースが考えられる。
 (1) デフレ期には、減税によって、需要拡大から経済拡大をもたらすことができる。この場合は、マイルドインフレのもとで、実態経済は順調に拡大する。何も問題はない。
 (2) デフレ期に、将来の財政破綻の危険が認識されると、社会不安がひろがる。すると、「資金逃避」による「国債暴落」が起こり、そのせいで、金利上昇と倒産拡大が起こり、かくて、供給力が減少して、経済が縮小する。そのもとで、物価上昇が起こる。つまり、スタグフレーションとなる。……これは、心理によって引き起こされるスタグフレーションだ。そうなるかもしれないし、そうならないかもしれない。いずれにせよ、「危ない、危ない」と警告を鳴らしていると、その警告のせいで、かえって危機を招くことになる。
 (3) デフレ期に増税をすると、必然的に経済が縮小して、倒産が続出する。その場合、経済力が損なわれて、スタグフレーションの危険が生じる。この場合、国債暴落の危険性は、いっそう高まる。デフレ期に増税をすると、そのことでかえって、財政破綻とスタグフレーションを引き起こす。それも、直接的に。(ほとんど不可避的に。)

 ──

 とすれば、次のように言える。
 財政赤字については、「財政赤字が拡大した、増税が必要だ」と、声高に語りすぎるべきではない。そんなことを語れば語るほど、不安がひろがる。そのせいで、かえって破綻を招く。
 また、実際に増税を実施すれば、さらに悪いことになる。一挙に、消費の急激な縮小が起こって、倒産が拡大し、スタグフレーションに突入する。国債の暴落と、倒産・失業の拡大と、高率の物価上昇が、同時に発生する。日本の破綻を招こうとした行動(= 増税)が、かえって日本の破綻を招く。

 つまり、
 「財政赤字を縮小して、日本の破綻を避けよ」
 と語る人々は、二重の意味で、かえって日本を破綻させようとしているわけだ。(不安をあおるという意味と、直接的な消費縮小という意味。)
 彼らは、自分では気づかないまま、目的とは逆のことをなしてしまうのだ。(愚かだから。)

 ──

 では、われわれは、どうすればいいか? 何よりも先んじてなすべきことは、上記のような経済原理を理解することだ。真実を理解しない限り、何事も始まらない。
 そして、真実を理解したら、その上で、正しい処置を取ればいい。正しい処置とは? 財政赤字だけをことさら減らそうとするのではなく、経済そのものを拡大すことだ。これこそが本質だからだ。

 そして、経済の拡大のための方法は、次の二通り。
  ・ 供給不足のときには、供給の拡大。 (インフレ期)
  ・ 需要不足のときには、需要の拡大。  (デフレ期)

 現実は、後者であるから、後者が何よりも必要となる。30〜40兆円の需要不足があるのだから、この需要不足を埋めることで、日本経済は7%程度の経済拡大が可能となる。そのためには、生産性の向上などは必要ない。今働いている人がいっそう働く筆意用はない。今働いて否人々(失業者や遊休労働者)がきちんと働くことで、なし遂げることが可能だ。
( ※ 普通の人が必死に頑張っても、一年に2〜3%の生産性向上しかなしえない。生産量もその分しか増えない。しかるに、まったく働いていない人が働くようになる、ということが 10% の人々に起これば、それだけで、一挙に国全体の生産量は 10%も上昇する。生産性の向上なしに、生産量の拡大が起こる。)

 ──

 結局、デフレ期に政府がなすべきことは、「減税」だ。それによって、需要の拡大をもたらし、状況をマイルド・インフレにもっていく。こうすれば、経済の拡大と弱い物価上昇が発生する。
 逆に、デフレ期に「増税」をすれば、需要の縮小をもたらし、倒産や失業が続出して、供給力が損なわれ、状況はスタグフレーションに移ってしまう。こうなれば、経済の縮小と高い物価上昇が発生する。

 人々は「財政再建」を声高に唱えるが、その方法を間違えてはいけない。
 「減税」ならば、物価上昇と所得向上が起こる。すると、「経済拡大」を経由して、順調に財政再建が可能となる。……これは、迂回する経路なので、「急がば回れ」である。
 「増税」ならば、増税の分だけ物価は上がるが、所得は減ってしまう。すると総需要が減って、「経済縮小」を経由して、国家経済は破綻する。短期的には帳簿が黒字になるように予想されるが、現実には、かえって赤字は拡大する。……これは、「短気は損気」である。

 今の日本は、倫理観ゆえに、「財政再建を」「増税を」と唱える人が多い。しかし、倫理ばかりが高くて、経済学に無知であるせいで、かえって破滅への道を選んでしまっている。
 このような無知の状況を改める必要がある。つまり、真実を知る必要がある。さもないと、粗忽者が急いで走り出したのと同じで、つまづいて、落とし穴に落ちてしまう。あるいは、川の対岸に移ろうとして、川に飛び込んで、溺れてしまう。
 今の日本は、生きるか死ぬかの、瀬戸際にある。そして、まさしく、集団死に向かって進みつつある。レミングの大群のようなもので、まわりの流れに乗って進むばかりなので、その先にあるのが集団死であると理解できないのだ。

 ── 

 結論。

 「日本は財政破綻の危険性がある」
 という人々の直感は正しい。ただし、
 「財政破綻を避けるためには、その危険性を指摘して、増税をすればいい」
 という人々の主張は、完璧に間違っている。それは、財政破綻を避ける道ではなくて、財政破綻を招く道である。

 そして、その理由を知るには、マクロ経済学の理解が必要なのだが、人々はその理解がない。そのせいで、危険を避けようとして、かえって危険に正面衝突してしまう。── 無知なまま突っ走ることほど、危険なことはない。命を救おうとして、命を失うハメになる。 (ガラスの扉に正面衝突して死ぬようなものだ。)
 


 [ 余談 ]

 以上のことは、あらかじめ私の予想として示しておこう。
 これまで、私の予想は、すでに当たってきた。次のことだ。
 「小泉の構造改革は、逆効果だ。不良債権処理も、逆効果だ。量的緩和は、無効だ」
 このように述べて、「構造改革」「不良債権処理」「量的緩和」という、それぞれの主張を否定した。そして、実際に、その予想の通りになった。
 本項の話は、上記のような明白な予想ではなくて、「そうなる可能性がある」というだけにすぎないのだが、実際にそうなる可能性はある。そこで、あらかじめ、危険を示して、また、回避策も示しておこう。それが本項の趣旨だ。

cf. 不良債権処理が失敗だったことについては、別項で説明した。)



 [ 補足 ]
 補足的な話を加える。(特に読まなくてもよい。)

 財政破綻の恐れが高まると、資金が海外に逃避することも考えられる。「日本の国債を買わないで、海外の国債や資産を買おう」と。
 実は、このような行動は、過去に見られた。かつてロックフェラーのビルなどを日本がどんどん買い占めていたころのことだ。その結果は、どうなったか? 円の上昇によって、海外資産の価値が暴落したので、超巨額の損失となった。簡単に言えば、百億円でビルを買って、70億円の価値になってしまった。円高になったせいで。
 こういう過去の体験があるから、日本の銀行は、海外資産を購入したがらない。それが現状だ。そして、そのことが、日本を破滅から救っている。(ギリシアとは違う。)

 将来はどうなるかは、不明だ。
 ただ、一般に、日本の経済が不安になれば、資金は海外逃避を起こす。そうなると、そのことで、かえって破綻が起こる。
 逆に、日本の経済が順調に拡大していくときには、円高になりがちだから、海外資産を買うのは馬鹿げている。こういうときには、日本の株や土地を買うのが賢明だろう。いずれにせよ、そのことで、株や土地を売った人が、消費をする。この場合、ミニバブルが発生する。その分、日本経済の回復が加速される。それはそれで、問題ない。
  



 【 関連項目 】

  → 増税と物価上昇 (前項)

 財政再建のためには「増税」と「物価上昇」という二つの方法がある、という基本原理を示している。本項はその続編ふうの位置づけだ。前項をよく理解しておくと、本項の趣旨もよくわかるだろう。
 
posted by 管理人 at 19:32 | Comment(0) | 経済
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