哨戒艦沈没:28年前に家出した実母、補償金を半額受領!?

父親、「容認できない」として提訴

実母、「法で保障された権利」と主張

 「息子が2歳のときに家出し、28年間も連絡を絶っておきながら、今になって死んだ息子への補償金を半分受け取ろうだなんて、そんなバカな話があるか」

 北朝鮮の魚雷攻撃によって沈没した哨戒艦「天安」の乗組員の一人、シン・ソンジュン上士(曹長に相当)の父親グクヒョンさん(56)=蔚山市南区=は2日、不快感をあらわにした。息子の死によって、軍人死亡補償金や遺族支援金を受け取ることになった途端、実母(49)が親権を主張し、補償金の半額を支給するよう求めてきたためだ。

 グクヒョンさんは先月10日、実母を相手取り、相続廃除を求める訴訟を水原地裁に起こした。提訴の理由として、グクヒョンさんは「死亡した息子の名前がメディアであれだけ報じられても、電話で確認することすらせず、補償金を受け取れることになった途端、『半分は自分の取り分だ』と主張するというのは、到底容認できないことであり、法に則って審判を求める」と主張した。

 国家報勲処(国家功労者を礼遇し、軍人・退役軍人の支援事業を行う省庁)などによると、シン上士の遺族が受け取れる額は8億ウォン(約5700万円)程度となる。その内訳は、報勲処が支給する軍人死亡補償金が2億ウォン(約1430万円)、シン上士が軍を通じて加入していた死亡保険金が1億ウォン(約710万円)、軍人たちの募金を元手とする遺族支援金が5億ウォン(約3560万円)となっている。未婚だったシン上士の場合、第1順位の相続人は両親になるため、原則として両親に半額ずつ支給されることになり、両親が特に話し合わない限り、受領の手続きを経て、補償金などを半額ずつ受け取れる。

 このため、シン上士の実母は、必要な書類を提出し、先月初めに軍人死亡補償金のうち1億ウォンを受け取った。また、死亡保険金の半額の5000万ウォン(約360万円)も、受け取りに向けた手続きを進めており、さらに最近、遺族支援金を受け取る方法についても問い合わせていることが分かった。

 これに対し、父親のグクヒョンさんは、「実母は二人の姉弟を置いて出ていった後、養育にはまったく関与せず、30年近く連絡もなかった。こうした特別な事情を考慮せず、ぴったり半分に分けて支給するという、補償金の支給規定は不当だ。裁判所の賢明な判断に期待する」と語った。一方、実母も弁護士を選任し、訴訟を起こす準備をしていることが分かった。

 シン上士の両親は1984年に離婚し、二人の姉弟は父親のグクヒョンさんに引き取られた。父親は「妻は息子が2歳だった83年に家出し、翌年に突然戻ってきて離婚を要求した」と話した。その後、父親は二人の姉弟を男手一つで育てた一方、実母は再婚し、京畿道水原市で20代前半の二人の息子とともに暮らしていることが分かった。なお、実母は2日、記者が数回にわたって電話取材を試みたが、電話に出なかった。

 一方、シン上士の姉は最近、実母に会って説得を試みたが、失敗に終わったため、その経緯や実母の名前・住所をインターネット上に書き込み、すぐに削除したものの、ネットユーザーらがポータルサイトなどを通じてネット上に広めた。このため、現在実母に対し、ネット上での攻撃が続いている。

蔚山=金学賛(キム・ハクチャン)記者

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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